『未来をつくる』コンサルの興奮と、引き換えに失った『怒り』の感情。図書館長として人と向き合う日々で蘇った『愛』/志賀アリカさん インタビュー【BEYOND-CONSUL─元コンサルの生き方─】

BEYOND-CONSULシリーズでは、コンサルティング業界を経験した方々が、その後どのようなキャリアを歩んでいるかを追います。
新卒でコンサルティングファームに入社し、4年間の経験を経て退職。アニメスタジオでの挫折を乗り越え、現在は小布施町立図書館まちとしょテラソの館長として地域の文化拠点を運営する志賀アリカさん。
図書館長として着任後、スタッフ体制の充実や予算確保に努めながら、「誰も排除しない」図書館を目指して運営改革を推進。多世代が参加するコミュニティづくりなど、地域の文化拠点としての役割を果たしています。
「感覚」を信じてキャリアチェンジを重ねてきた志賀様の軌跡と、コンサル経験が図書館経営にどう生かされているか、そして次なる挑戦への思いをお聞きしました。
※2026年3月時点での内容です
Index
NPOから一度離れる決断、『Win-Winの座組』を学ぶためのコンサル修行
アクシス
志賀さんはコンサルティングファームに入社されたとお聞きしております。最初からコンサル業界へ進もうと考えていたのでしょうか?
志賀さん
いいえ。国際基督教大学(ICU)在学中にリーダーシップ教育を行う学生団体を組織したので、卒業後もキャリア教育やリーダーシップ開発の領域で事業をしようと、学校をサポートする団体の立ち上げを進めていたのです。
しかし卒業間近になって、「このまま進んでいいのか」という自分自身に対する問いが首をもたげました。事業の価値に不安はなかったのですが、このまま私が社会に出て代表としてやっていっても今以上のパフォーマンスを出すことはできない、能力が頭打ちになると感じました。
当時は学生と言うこともあり、本当にたくさんの方がサポートしてくださって、とても感謝していると同時に下駄を履かせてもらっているという自覚もありました。このまま我流でやっても、「本当にこれを届けたい」と思った事業を広く展開できない未来が見えて、恐怖を抱いたのです。
アクシス
そこからコンサル業界を志望されたのですね。
志賀さん
はい、ビジネスの構造を学ばなければと思ったからです。学生時代は国際協力として貧困課題解決の活動にも取り組んでいました。母が通訳をしていたこともあり、幼い頃から海外に行く機会が多く、東南アジアで路上にいる子どもたちを実際に見てきました。そうした体験がある人とない人では、こうした問題に取り組む熱意が全く違う。どんな正しいことを言っても、現実的に「自分たちが動く理由」やインセンティブが働かないと、善意の搾取や疲弊に繋がり、何も変えられないことを学びました。
この問題を解決するのは、やはりビジネスしかない。今は取引先とWin-Winの関係性を築けるような座組をどうやって組むのかを学ぶ必要があり、そのためには一度教育の世界やNPOの世界から離れて、ビジネスのサイドに行かなければいけないと思いました。


※ガーナの児童労働問題を追ったドキュメンタリー映画『バレンタイン一揆』(2013年公開)にも出演。大学では国際協力に関するNPO活動に取り組む。
アクシス
コンサルティング会社に入社された経緯もお教えください。
志賀さん
前職は、事業のひとつにビジネスとアートを掛け合わせたサービスを持っていました。左脳的で分析・論理思考の強い人だけがコンサルになれると思っていた私は、アートという一見対極にある、論理で説明がつかないものを内包していることに衝撃を受けました。と、同時に自分がリベラルアーツを重視する大学にいたので、そういった対極を融合する、右脳と左脳を行き来するような事業を持つ会社に魅力を感じ、入社しました。
アクシス
コンサルティングファームには4年間在籍されていたとのことですが、当時の仕事内容についてもお聞かせいただけますか?
志賀さん
もともとは人・組織の領域のメンバーとして採用されたのですが、1年目は事業側をきちんと触って理解してほしいということで、新規事業開発や用途開発など事業創造型の案件に携わりました。
そこでコンサルワーク、いわゆるコンサルらしい思考とデリバリーを経験し、その後、私のバックグラウンドが生かせる人材育成、組織開発の領域での事業に3年間参画していました。そこではクライアントへの提案からデリバリーは勿論、自社サービス開発もしていました。
アクシス
どういったところにやりがいがありましたか?
志賀さん
未来をつくる実感を持てたことが、大きなやりがいに繋がっていたと思います。
入社してすぐ、上司に「コンサルがただの高級人材派遣業か否かは、コンサル自身に当事者として未来をつくる意思と覚悟があるかだ」と言われ、感銘を受けました。
コンサルはお客さまのイシューを特定し、解決に導く伴走的な一面もありますが、分析的思考だけでなく、「もし自分が経営者だったら」と物事を考え、「どうしますか?」ではなく「こういう未来を一緒につくろう」と投げかけることが多くありました。会社の数字的成長だけでなく、どういう社会を創造したいかも含めたビジョン策定など、未来を描く案件に携わるのは非常に楽しかったですね。
アクシス
当時はどのように成功したキャリアを築こうとされていたのですか?
志賀さん
今この瞬間に目の前に現れたオファーやチャンスに対して、「面白そう」と心が動いた時、それに飛びつくだけの勇気と実力があるか、ということを意識してキャリアをつくっていました。
あまり成功という概念はなかったのですが、あえて言葉にするなら、自分自身が生き生きとしながら社会に貢献できていることを、「成功したキャリア」だと当時は思っていたのかもしれません。
『何に怒り、何を愛するのか』を見失った危機感からコンサルを退職。「心が動くもの」を見つけ出す旅路
アクシス
コンサルを辞める決断をした理由、そしてなぜ転職ではなく退職を選択されたのか教えていただけますか?
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