株式会社三菱UFJ銀行 デジタル戦略統括部事業開発グループ インタビュー/変える側に立つという選択。銀行でブロックチェーンに挑む理由

ブロックチェーン技術が「実験」から「実装」のフェーズへと移行する中、従来の金融システムのあり方そのものが問われる時代を迎えています。三菱UFJ銀行のデジタル戦略統括部事業開発グループは、ステーブルコインやトークン化預金といった次世代金融サービスの社会実装に向け、「ビジネス」「テクノロジー」「規制」の三位一体で挑戦を続けています。
BIS(国際決済銀行)主導の「Project Agora」に参画し、G-SIBsによるデジタルマネー検討の枠組みに日本の銀行として唯一参画し、議論をリードする一方で、金融庁との議論を通じて日本の規制づくりにも関わる――ブロックチェーンが金融構造を根本的に変革するポテンシャルに備え、エンジニア主導の態勢構築を目指しています。
今回は、チームを率いる次長 寺田鉄平様、上席調査役 咲間康之様、そしてコンサルティングファームから転身した鈴木友也様に、銀行がブロックチェーンに本気で取り組む理由、金融のオンチェーン化が描く未来、そして変革の最前線で働く醍醐味について詳しくお話を伺いました。
Index
ブロックチェーン時代を見据えてキャリアを選択
江頭
まずは、皆さまのご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
寺田様
新卒で入行して以来、一貫してIT領域に携わり、システム開発にコミットしてきました。ダイレクトバンキングの立ち上げや銀行統合プロジェクトなど、大規模な開発にも関わってきました。その後、シンガポールに赴任し、現地でフィンテックの台頭やブロックチェーンの黎明期を間近で体験しました。
現在はデジタルアセット領域に注力し、ステーブルコインやトークン化預金といった新たな潮流の中で、チームを拡大しています。銀行としてブロックチェーンという新技術にどう向き合い、どう戦略を描き、どのようにサービスへと実装していくのか。まさに今、その方向性を真剣に考えるフェーズにあります。

咲間様
私も新卒で入行し、主に市場部門で為替のセールス&トレーディング業務や企画業務を中心に取り組んできました。もともと「国際金融の舞台で活躍したい」という思いから銀行を志望しました。現在は、デジタルや新しいテクノロジーを活用し、銀行のお客様にこれまでにないサービスを提供する取り組みを進めています。

鈴木様
私は新卒で国内のSIerに入社し、技術系の部署でアジャイル開発や新規デジタルビジネスの開発に約5年間携わってきました。その後、外資系のコンサルティングファームに転職し、アジャイル開発やデジタル戦略を起点に、さまざまな業界のクライアントに対してコンサルティングを行っていました。
コンサルタントとして、多くのお客様に「デジタル化の重要性」を伝えてきましたが、次第に「自分自身が事業の当事者として、最後まで責任を持って推進したい」という思いが強くなっていきました。そんな中で、MUFGがデジタルアセット領域で本気で世界を取りにいこうとしていることを知り、この領域がこれから確実に社会に浸透していくと確信し、その“変革の最前線”に飛び込んでみたいと思い、2025年6月に入行を決めました。

金融サービスの変革期。デジタルアセットの潮流の裏にある顧客への価値提供
江頭
保守的なイメージもある銀行が、なぜブロックチェーン技術に向きあい、デジタルアセットを活用したビジネスモデルの検討を進めているのか。その背景を教えていただけますか。
寺田様
ブロックチェーンの進化は、金融業界にとっても大きなインパクトをもたらすものです。私たちは「この技術を使って、銀行としてどんな新しい事業を生み出せるのか」を真剣に考え始めました。当初は経営企画部の事業開発室で、事業化のオポチュニティを探るところからスタートしましたが、BISによるProject Agoraなど、ブロックチェーンが金融インフラを変革する潮流が見えた現在、デジタル戦略統括部に拠点を移し、実際にブロックチェーンサービスの実装を見据えて、本格的な事業化フェーズに入っています。
江頭
そもそも、なぜ銀行がブロックチェーンに取り組む必要があるのかが少し不思議にも感じますが。
寺田様
ブロックチェーンのアーキテクチャで金融サービスを展開できるようになると、従来の金融機関が持つ伝統的なシステム構造が根本から変わります。信頼を担保するために積み上げてきた多重の仕組みやコスト構造が、ブロックチェーンによって大きく簡素化されてしまう可能性があるからです。
実際、ビットコインは10年以上、一度の重大な障害もなく稼働し続け、中央管理者を持たずに価値を高めてきた。この仕組みが金融の世界に実装されるようになると、 銀行における既存のシステム資産のあり方そのものが問われることになります。
米国ではブロックチェーンを基盤にした暗号資産交換業者のような新たなプレイヤーがバンキング領域へ本格参入しており、競争環境が変化してきています。それが、私たちがこの領域に向き合う理由です。私たちのチームでは、国内外の「ビジネス」・「テクノロジー」・「規制」を踏まえながら、ただ様子を見るのではなく、自ら先頭に立って事業化の検討を進めています。
構想から実装へ — 現在進行中の取り組み
江頭
実際に、御行のデジタル戦略統括部ではどのような取り組みをされているのでしょうか。
咲間様
我々のチームはデジタル戦略統括部の中でも、デジタルアセット領域を中心に、新しい事業を構想して実装していくことを目的とした部署です。私たちは各事業部門や信託銀行や証券等の他業態とも連携しながら、ブロックチェーンなどの新しい技術をどう活用できるかを検討し、実証実験や事業化の検討を進めています。取り組みのテーマは幅広く、デジタルアセットを入れる器としてのウォレットなど、いくつかの実証実験も行ってきました。
足元でいうと、この1年ほどは、特にステーブルコインやトークン化預金といった決済領域に注力しています。米国を中心にデジタルアセットへの関心が高まる中で、銀行としてもこの領域をどう位置づけるか、当行の戦略的な位置づけを見極めているところです。
江頭
グローバルでもプロジェクトが進んでいると伺いました。
咲間様
はい。たとえば、BIS(国際決済銀行)やIIF(国際金融協会)が主導する「Project Agora」という国際的なプロジェクトがあります。これは、中央銀行と民間金融機関が共同で金融プラットフォームを利用し、トークン化された中央銀行マネーと商業銀行預金をシームレスに取引する方法を検討するものですMUFGは日本の銀行としてこのプロジェクトに参画しており、主要な海外金融機関と次世代金融の姿について議論をしています。
また、その他にG-SIBsとの取組でも、デジタルマネーの発行を含めた国際的な検討の枠組みに参画し、規制に準拠したユースケースの在り方について議論を深めています。

江頭
他のメガバンクもこの分野に取り組まれていますが、MUFGならではの違いはどこにあるのでしょうか。
寺田様
やはり一番の違いは──「我々がいる」ことだと思っています。MUFGには、ブロックチェーンが金融構造を変えるポテンシャルに早期に気付き、チームを組成するトップマネジメントがいます。また、ブロックチェーン技術を活用した銀行サービスをいかに実装していくかを、フロントに立って考えているチームがある。これこそがMUFGの財産ですし、他行との一番の違いだと思います。
「ビジネス」「テクノロジー」「規制」が交差する面白さ
江頭
この領域は「ビジネス」「テクノロジー」「規制」が複雑に絡み合っている領域だと思います。「ビジネス」や「テクノロジー」の観点の面白さについて教えていただけますか。
鈴木様
ブロックチェーンが広がっていくことで、基盤や構造が変わるだけでなく、顧客体験そのものも大きく変わっていくと感じています。これまで私たちが提供できていなかったサービスを、新しい技術を通じて実現できるようになる。あるいは、フィンテック企業が先行して提供しているような価値に、私たち銀行も追いつき、さらには超えていくことができる。そういった意味で、ブロックチェーンを活用することでビジネスが大きく広がっていく可能性を有していることが、この領域の面白さの1つだと思います。
また、テクノロジーの世界は本当に日進月歩です。新しい技術が次々と登場し、気づけば廃れていくものもある。その中で、MUFGとしてどの技術を採用し、どのように実装していくのか。どのような戦略で動いていくのかを見極めることが非常に重要です。この領域は、「ビジネス」「テクノロジー」「規制」が三位一体で動く世界。私たちはそれらを同時に検討しながら、お客様に真に価値があるサービスを形にしていく。そのプロセスこそが、この仕事の一番の醍醐味だと感じています。
江頭
ありがとうございます。一方、「規制」という観点ではいかがですか。
咲間様
面白さは大きく2つあります。1つは、グローバルに取り組めること。国ごとに法制度が異なる中で、どの地域をスコープに事業を展開するか。規制の違いを踏まえながら戦略を描くこと自体が、MUFGとしての独自性を発揮できる部分であり、非常に面白いところです。
もう1つは、規制を“守る”だけではなく、制度整備が進む過程において、民間としての実務的な知見を示すことで検討に寄与できることです。デジタルアセットはまさに黎明期であり、より実効性のある制度づくりに貢献できる点は、銀行として取り組む大きな意義だと感じています。
江頭
ブロックチェーン技術が進化していく先には、どのような未来があるとお考えですか。個人がより自由になるのか、それとも企業が新たな価値を得るのか。この技術によって生活がどう豊かになるのでしょうか。
寺田様
未来がどうなるかは、誰にも断言できません。今は多くのプレイヤーが、それぞれ自分たちの理想の未来を描いて動いている段階だからです。
特に米国のトッププレイヤーはブロックチェーンを活用して、新たなサービスや付加価値を生み出そうとしています。最終的には、“お客様が求めるサービス”を誰がどう形にするかに尽きると思います。その結果として、信頼と利便性を両立するための技術として根付いていくのではないでしょうか。
そして私たち銀行は、新しい技術の波を冷静に見極め、社会に安心して届けられる形に整える。その役割を果たすことが、銀行としての使命だと考えています。

知見を共有するチーム文化
江頭
ここからは、組織と人に焦点を当てて伺っていきます。鈴木様は、コンサルティングファームからMUFGに転職されたと伺いました。実際に入ってみて、最初はどんな印象を持たれましたか。
鈴木様
そうですね。ブロックチェーン固有のテクノロジーに関する知識はもちろんですが、金融のベースとなる知識の習得は、他業界からの転職だったので、最初はかなりハードでした。
特に技術面だけでなく、先ほどお話にもあったように、規制や法制度といった分野も並行して理解する必要がある。ちょうど今、法規制が整備されつつある過渡期でもありますから、そこを日々キャッチアップしていくのは大きなチャレンジだと感じています。
ただ、チームのサポートが非常に手厚く、最初の1〜2カ月は週1回のペースで勉強会を開催していただきました。チーム内の専門家が講師となり、基礎の基礎から質疑応答を交えながら学べる環境があったおかげで、早い段階で議論に参加できるようになりました。
江頭
非常にオープンで、学び合う組織なのですね。
寺田様
そうですね。デジタルアセットは非常に専門的な領域です。共通の用語や知識がないと議論が成り立たない。チームには中途入社のメンバーもいれば、社内異動で入ってくるメンバーもいます。そういった方々に向けて、定期的に勉強会を開催しています。
勉強会の良いところは、教える側も学びになることです。自分が“わかったつもり”になっていた部分を改めて整理できたり、ほかの視点から新しい発見があったりする。そうやって得た知見やナレッジを、チーム全体で積極的に共有していく仕組みになっています。
金融の次の標準を、自ら描き、駆動する
江頭
今回求めていらっしゃる人物像について伺います。エンジニアで金融知識がある方が理想ですか。
寺田様
金融知識はあればベターですが、必須ではありません。重要なのは、「金融サービスをブロックチェーンで変革したい」という思いがあるかどうかです。どの業界出身でも構いません。私たちは金融機関としてこの領域に挑んでいますから、安心・安全を守る姿勢は欠かせません。そのうえで、金融構造を変革するポテンシャルのあるブロックチェーン技術をどう安全に実装するか。このバランスに面白さを感じられる方が向いていると思います。難易度の高い課題に好奇心を持って取り組める方に来てほしいですね。
江頭
エンジニアとしては、どんなスキルを求めていますか?
寺田様
特定のハードスキルは問いません。ブロックチェーンのアーキテクチャやSolidityなどの知識は入ってから学べます。ブロックチェーンの技術は日進月歩であり、標準も何も無い状況であり、専門家になりやすい領域といえると思います。ビジネスサイドと要件を詰めるタイプの方も、コードを書く方も、どちらも歓迎しています。
大切なのは「新しい技術を金融サービスにどう活かすか」を自分で考え、動けること。生成AIなども積極的に取り入れ、生産性を高めていくフェーズにあるので、テクノロジーを楽しめる方にぜひ参加してほしいと思います。
江頭
今後のチームのビジョンについて教えてください。
寺田様
短期的には、現在進めている実証実験を早期に商用化へつなげることです。いくつかのユースケースはすでにお客様に提供できる段階まで進んでおり、「実証・研究」から「サービス開発」へ移行するフェーズが視野に入ってきています。
中期的には、ブロックチェーン上で金融サービスを提供できる社会に備え、銀行の既存システムとブロックチェーンのアーキテクチャをつなぐことが重要になります。その実現の鍵はエンジニアリングです。私たちは「ビジネス」「テクノロジー」「規制」が一体となりサービス開発できる組織を目指しています。
長期的には、金融取引の多くがオンチェーン化される世界を見据えています。その中で「銀行として何を提供すべきか」を定義し、信頼と利便性を両立する新しい金融の形をつくっていくこと。それが私たちの次の挑戦です。
江頭
今お話を伺っていて、インターネットの黎明期のようなフェーズにいらっしゃるのかなと感じました。
寺田様
まさにそんなイメージですね(笑)。今はまだ黎明期で、具体的に何が正解かは誰にもわからない。一方で、金融サービスをオンチェーン化する潮流は止まらないと考えています。2030年頃には、ブロックチェーンが金融の“当たり前”になる。そのとき、この領域で経験を積んでいた人の価値は、きっと計り知れないと思います。
江頭
最後に、候補者の方へメッセージをお願いします。
寺田様
ブロックチェーンを「試す」段階は終わり、金融サービスとして実装し、社会に届けるフェーズにいます。銀行の大規模・高信頼なシステムとブロックチェーンをどう接続するか。その答えを設計とコードで示すのがエンジニアの役割です。ユーザーが求めるものを言語化し、技術選定から設計、実装まで深く関わり、金融サービスを刷新する。難易度の高い課題を楽しめる方と、変革の中核を担いたいと考えています。


2004年にシステム企画担当として新卒で三菱UFJ銀行に入行。ダイレクトシステム再構築等のプロジェクトにおいて基盤を担当し、2011年~2018年にシンガポールに赴任、アジア域内システムの基盤集約・アプリ標準化等の施策を推進。また、シンガポール金融当局(MAS)とのブロックチェーンに係る実証実験を担当。2022年からデジタルアセット領域での新規事業開発業務に従事。現在に至る。

2005年に新卒で三菱UFJ銀行に入行。法人営業を経験後、市場部門における為替のセールス&トレーディング業務や企画業務を中心に担当。2022年からデジタルアセット領域での新規事業開発業務に従事。現在に至る。

2015年に新卒で国内SIerに入社し、アジャイル開発の導入/活用支援を担当。2020年に外資系コンサルティングファームに転職し、デジタル・アジャイルに関わるプロジェクトに従事。2025年に三菱UFJ銀行に入行。現在に至る。

1919年(大正8年)8月15日設立、従業員数は銀行単体で31,756名、国内421・海外104の拠点を有する(従業員数と拠点数はいずれも2024年3月末時点)
三菱UFJフィナンシャルグループの中核企業として、「預金」「融資」「決済」の主要業務を中心に、あらゆる金融サービスを国内に限らずグローバルに事業を展開。

アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。
株式会社三菱UFJ銀行の求人情報
| 募集職種 | 新規ビジネス開発・ユースケース創出(事業開発) |
|---|---|
| 職務内容 | 【組織のミッション】 ・金融業界をグローバルに取り巻く最新技術への着眼 【募集職種の概要】 新技術を活用した新規ビジネスの立ち上げに係る事業開発担当者 【募集背景】 ビジネスの更なる発展・拡大に向けた増員 【主な役割】 事業開発チームメンバーとして、社内外と連携しつつ、新技術を活用した新商品・新サービスの検討・事業化を行う ①マーケット調査、ユーザー分析、プレゼンテーション作成・交渉 【配属先】 デジタル戦略統括部 事業開発Gr デジタルアセットチーム(現9名) 【当該ポジションの魅力・特徴】 最先端の技術かつトップバンクのリソースを活用したダイナミックなプロジェクトにおける知見の修得が可能。業務を通じ、企画立案・戦略策定・マネジメントスキルの向上も図ることが可能。新たなビジネスの創出、日本の未来を担う気概のある方を歓迎 【キャリアパスイメージ】
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| 応募要件 | 【必須経験・要件(以下のご経験をお持ちの方)】 大企業(上場企業や大手コンサルティングファームおよびそれに準ずる企業)において、経営・事業・商品等の戦略企画や、新規事業開発のプロジェクト等に主体的に携わった経験 ※2年以上(上記に類する経験でも可) 【歓迎経験・要件】
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| 募集職種 | エンジニア担当(新規事業) |
| 職務内容 | 【組織のミッション】 ・金融業界をグローバルに取り巻く最新技術への着眼 【募集職種の概要】 対顧向けプロダクト開発を担うエンジニア 【募集背景】 ビジネスの更なる発展・拡大に向けた増員 【主な役割】 新サービスのプロダクト開発メンバーとして、社内外と連携し、プロダクトの検討・開発を行う ①フロント・バックエンドシステムの開発、維持保守 【配属先】 デジタル戦略統括部 事業開発Gr デジタルアセットチーム(現9名) 【当該ポジションの魅力・特徴】 最先端の技術かつトップクラスバンクのリソースを活用したダイナミックなプロジェクトにおける知見の修得が可能。業務を通じ、企画立案・戦略策定・マネジメントスキルの向上も図ることが可能。新たなビジネスの創出、日本の未来を担う気概のある方を歓迎 【キャリアパスイメージ】
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| 応募要件 | 【必須経験・要件(以下のご経験をお持ちの方)】 ①コンサル、SIer、スタートアップなどにおける企業向けソフトウェアソリューション構築PJ経験(2年以上目安) ※①②とも事業会社・外部委託先企業、どちらの立場でも構いません 【歓迎経験・要件】
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