株式会社TSUIDE 代表 インタビュー/「リード」の意味すら知らなかった元GSマンの逆襲——100万円の貯金からVisionalグループ参画を果たすまで

ゴールドマン・サックスで高い基準を叩き込まれた男が、貯金100万円を元手に起業し、無調達・オール黒字で総合ITコンサルティング会社を築き上げ、Visionalグループへの参画を果たす——。株式会社TSUIDE代表の松田輝正氏のキャリアは、華麗な経歴の裏側にある泥臭い試行錯誤の連続です。
「リード」という営業用語すら知らない状態からスタートし、年間1,000人に会って事業の基本を一から学んだ創業期。テレアポ代行から営業コンサル、そしてSalesforceとの出会いを経て総合ITコンサルへと進化を遂げた事業の軌跡。その原動力にあるのは、「自分の足りなさと向き合う」という、ラグビーで培われた愚直な姿勢でした。
今回は、外資金融の第一線から起業の荒波へと飛び込んだ松田氏に、創業の苦悩から事業拡大の転機、そして未経験者採用や「コンサルの内製化」を見据えた今後のビジョンまで、じっくりとお話を伺いました。
Index
順風満帆な就活から一転、怒られ続けた外資時代
尾股
まずは、自己紹介をお願いします。
松田様
松田輝正です。桐蔭学園中・高等学校を経て、慶應義塾大学環境情報学部に進学しました。新卒ではゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)に入社して、その後フィデリティ投信に移り、2020年に独立して、株式会社TSUIDEを立ち上げました。
ゴールドマン・サックスでは、いわゆるリテールの投資営業部にいました。個人の金融資産をどう「貯蓄から投資へ」動かすか、といった世界ですね。新しいファンドを組成したり、そのファンドをどうプロモーションするかを考えたり、既存のファンドをどう売り直すかを考えたり。実際には証券会社や銀行などの販売会社を通じて、最終的にどれだけお金を集められるか、その最大化に取り組んでいました。
尾股
幼少期はどんな少年でしたか。
松田様
ザ・スポーツ少年みたいな感じでしたね。水泳、体操、野球、バスケ、何でもやっていました。一方で、家では「勉強もしなさい」という環境だったので、スポーツをやりながら勉強もしていました。
尾股
中学からラグビーを本格的に始めた理由は。
松田様
本当の理由でいうと、バスケ部の顧問と喧嘩して「やめろ」って言われて、「じゃあやめます」ってなって。たまたま職員室の横にいたラグビー部の顧問に「うち来れば」って言われて、「じゃあ行きます」と。ガチでそれです。
ただ、別の理由でいうと、ラグビー部は全国を目指せる環境だったんですよ。やるならやっぱり高みを目指したい、一番を目指したいという気持ちはずっとあったので。結局、そういう環境で切磋琢磨するのが好きで、大学までラグビーを続けましたね。
尾股
就職活動では金融業界を選ばれました。
松田様
正直、就活は順風満帆でした。様々な企業からお声かけ頂いた、という感じでした。金融が好きだったというより、単純に入るのが難しいといわれる会社に行きたかったんですよね。人数が少ない方が裁量もあるだろうなとも思っていたし、その中でも一番難しそうなゴールドマン・サックスに行ってみたかった、という感じです。
尾股
実際に入社してどうでしたか。
松田様
バカ切れされていましたよ。マジで。上司とか一部じゃなくて、全員に(笑)。
そもそも、英語ができない状態で外資に入っているので、そりゃ怒られますよね。周りは東大、京大で、インターンから高成績で入ってきた人たちが多い中で、僕は英語もそんなにできないし、一発本番の面接で入ったようなタイプだったので、最初はめちゃくちゃ差がありました。
尾股
かなり厳しい環境だったのですね。
松田様
でも、やめてから思いました。その環境は、本当にレベルが高かったなって。今は社内でパワポとか誤字脱字などを指摘する側になっていますけど、当時はずっと怒られる側だったので。あそこにいたから、自分の基準が上がったんだなと思います。
尾股
その環境を出ようと思ったのはなぜですか。
松田様
5年間いたけれど、出世できないなと思ったからです。トップセールスでキラキラしてスターです、みたいな人では全然なかった。むしろ落ちこぼれで、ポンコツで、激ギレされていた立場だったので。
あと、そもそもサラリーマン向いてないなとも思っていました。ただ、ラグビーはずっとこつこつ毎日練習してきたので、別に根性がないとか、頑張れないっていう話でもないんですよね。やろうと思えばできる。でも、適材適所で、そこが自分の一番活躍できる場所ではなかった、という感じです。

「日本なら死なない、だから起業した」
尾股
起業された背景を教えてください。
松田様
大きく2つあります。
1つは、何をするにも結局お金が絡むじゃないですか。だったら、一度ちゃんと稼ぎ切ってみて、お金がいらない状態で自分がどんな決断をするのか見てみたかったんですよね。それでも仕事を選ぶなら、本当に仕事が好きなんだろうし、旅行ばっかりしているならそういう人間なんだろうし。お金に左右されない状態での自分の選択に興味がありました。
もう1つは、日本にいたら死なないなと思ったことです。水道水も飲めるし、牛丼だって安く食べられる。バックパッカーでいろんな国に行きましたけど、明日生きるか死ぬかみたいな国もあるわけですよ。その中で日本は、ちゃんと生きようと思えば生きられる国なんですよね。だったら、何かやってみるのもありだなと思いました。
尾股
ちなみに、社名の「TSUIDE」にはどのような意味があるのでしょうか。
松田様
もともとは複業人材の活用から入っていたので、「いつものついでに手伝ってね」の“ついで”ですね。それが最初の意味でした。
ただ、今は少し意味合いが変わってきています。会社を経営していると、マーケはここ、テレアポはここ、システムはここ、と一社ずつ問い合わせるのは、大変じゃないですか。だったら、「あそこなら大丈夫でしょ」と全幅の信頼を置いて、いつものついでに相談できる存在になれた方がいい。今はその意味合いの方が強いですね。
100万円で生き残るために、年間1,000人に聞きまくった日々
尾股
創業当初はかなり苦労されたそうですね。
松田様
めっちゃ苦労しました。貯金100万円で始めた会社なので。借金もせず、未調達で、100万円が尽きたらゲームオーバー。というビジネスモデルだったので。
しかも、前職ではゴールドマン・サックスやフィデリティ投信の看板があって、大手金融機関がお客さんだったので、かなり恵まれた環境だったんですよね。一方で、起業して資本金100万円、一人でやっています、という会社が相手にされるわけない。既存顧客を連れて独立したわけでもなく、完全にゼロからでした。
尾股
何が一番大変でしたか。
松田様
何も知らなかったことですね。今だから笑い話ですけど、当時「リード」という言葉を知らなかったんですよ。Salesforceを見て「リードって何?」って本気で思っていました。これまでずっと取引責任者スタートの世界で生きてきたので、見込み顧客の概念がなかったんです。
テレアポも、問い合わせフォーム経由の営業もやったことがない。既存の大手企業を相手に、部長や役員と話すのが普通だったので、「アポって取れないんだ」と、起業してから知りました。
尾股
そこからどう立て直していったのですか。
松田様
お金もないし、何とかしないといけない。なので、とにかく人に会って、わからないことを聞きまくりました。「どうやって稼いでいるんですか」「人材紹介ってどういうモデルなんですか」「利益率何%ですか」「どうやって集客してるんですか」って。
何もない時ってライバル視もされないので、案外みんな教えてくれるんですよ。サイバーエージェントにいる級友や後輩を捕まえて、「デジタルマーケって何?」「なんで伸びたの?」「代理店事業ってどうなってるの?」と、一から百まで聞く。そうやって人を捕まえて、事業モデルや収益モデル、構造、現場の話を全部聞いて、世の中はこうなっているんだというのを知っていきました。
1日に3アポは必ず入れていたので、年間1,000人近く会っていたと思います。バーで隣に座った人にも聞いていましたし、友達の友達にも聞いていました。
尾股
そこまで聞けるのはなぜでしょう。
松田様
わからないことを知りたいという欲求が、人より数倍強いのかもしれないですね。
だから、利益率とか、年収とか、何が目的なのかとか。みんなも本当はそこが知りたいのに、ぼかすじゃないですか。そういうところを、僕はパーンと聞いてしまいます。それは今も変わらないですね。時間がある時は、BtoBの広告で気になった会社の資料を全部ダウンロードして、提案してもらったりもします。「こんな営業なんだ」「こういうトークなんだ」って、今でも見ています。
尾股
その姿勢は、今の事業にも通じていますか。
松田様
めちゃくちゃ通じています。面接でも定型の質問をするというより、「どうなりたいんですか」「何が目的なんですか」「お金なんですか」って、結構ストレートに聞きますし、DXの相談でも同じです。DXをやりたいというけれど、本当は何を改善したいのか。見栄えの話なのか、現場を本気で変えたいのか。そこを聞かないと意味がない。
結局、本音が聞けないと正しい支援はできないし、事実が見えないと改善もできないんですよね。まず事実はどうなんだ、をちゃんと知る。そのうえで、本質的に改善するにはどうするかを真剣に考える。そこはTSUIDEの社風としてかなり染みついていると思います。

顧客の課題を追いかけてたどり着いた、総合コンサルへの道
尾股
今の総合ITコンサルという形に至るまでの流れを教えてください。
松田様
最初はテレアポ代行から始めたんですけど、やっているとわかるんですよね。「これ、テレアポじゃないな」って商材がある。なのにテレアポしか持っていないと、どうしてもテレアポを売りたくなる。それって顧客満足度を下げるなと思ったんです。
一方で、市場全体を見ると、売りたい側はどんどん増えていく。そうなると、一社一社の満足度を上げて、アップセルやクロスセルにつなげるしかない。だったら、絶対に顧客満足度が重要だなと。実際、商材と営業手法がミスマッチな企業も多かった。だったら、手段を売るより、何が一番合うのかを整理して営業全体を最適化する方が価値がある。そう思って、営業コンサルを始めました。
尾股
その後、営業コンサルからITに広がっていったのですね。
松田様
営業コンサルをやってみると、当たり前だと思っていたKPI管理や数値管理、営業管理をそもそもやっていない企業が多かったんですよね。そこを整えたら、普通に売上が伸びた。じゃあ次は、もっと細分化できないか、もっと自動化できないか、となって、そこでSalesforceにたどり着きました。
コンサルに入ってSalesforceを入れる、またコンサルに入ってSalesforceを入れる、みたいなことを繰り返していたら、Salesforce社から「パートナーって知ってますか」と声がかかったんです。
尾股
Salesforceとの取り組みが転機になったのですね。
松田様
かなり大きかったですね。もともとSalesforceって、ただ入れればいいものじゃなくて、商材や営業体制に合わせて最適なKPIをつくることが大事なんですよ。でも当時は、営業をやったことがないSIerやコンサルが要件定義しているケースも結構あった。そりゃ解約もされるよなと思っていました。
そこを、ITに詳しい人と営業に詳しい人がセットで要件定義するようにしたら、お客さんの満足度が一気に上がって、うまく回り始めたんです。
その後、Salesforce自体がどんどん領域を広げていって、データやマーケティングも含めた総合的な世界観になっていったので、それにくっついていく形で、うちも自然と総合領域に広がっていきました。
ただ、1つの製品だけでは課題解決できない場面も多いんですよね。Salesforceが合う時もあれば、別のプロダクトの方がいい時もある。だったら、最初から1つの製品ありきじゃなくて、フラットな立場で選定できた方がお客さんのためになる。そう考えて、総合ITコンサルに舵を切りました。
最初から総合ITコンサルをやろうと思っていたわけではないんです。自社ができることを増やしながら、お客さんの課題を追いかけていった先で、結果的にそこにたどり着いた。だからこそ、もともと総合ITコンサルをやっていた会社とはちょっと違う、独自の文化ができているんだと思います。
尾股
事業が広がっていく中で、Visionalグループに参画した背景も教えてください。
松田様
会社としては創業以来オール黒字で、無調達で来ていたんですけど、がむしゃら感は少し減っていたんですよね。その時に自分の人生を振り返ると、結局、厳しくフィードバックしてくれる人がいる時に伸びてきたなと思ったんです。塾でもラグビーでもそうでした。
僕、性善説でも性悪説でもなく、性弱説なんですよ。人は弱いって思っている。自分も弱いと思っているから、メンターが必要だし、自分にノーを言ってくれる人を周りに置きたい。そんなタイミングでご縁がつながって、ビジョナル株式会社の代表取締役、南壮一郎さんとお会いして、役員の方々とも話して、「ここ、おもろいな」「自分がもう一段伸びる環境だな」と思った。それが大きかったですね。
IT上流、スキルの型化、そして内製化へ。TSUIDEが仕掛ける次の一手
尾股
今後のビジョンについて教えてください。
松田様
3つあります。
1つ目は、エンジニアやITバックグラウンドのある人に、もっと上のレイヤーに挑戦するチャンスをつくることです。今って、業務がわかる人がITの知見を少し身につけて、きれいにプロジェクトを回すコンサルティングが多いと思うんですけど、実際にプロジェクトを見ていると、ITの軸はどんどん強まっているんですよね。だからこそ、開発を含めたITのバックグラウンドがある人が上流に入るニーズは、これからもっと強くなると思っています。
要件定義やRFP作成も、ITがわかる人が入るだけで精度が全然変わるんですよ。うちはもともと開発も含めたITバックグラウンドがあるので、そこは強みです。僕自身、「上流」「下流」みたいな言い方はあまり好きじゃなくて、上下じゃなくて横並びの役割分担だと思っているんですけど、世の中的にはまだ分かれて見られている。だからこそ、本当はもっと上を目指せる人がチャレンジできる環境をつくりたいなと思っています。
2つ目は、コンサルスキルを型化したいということです。僕自身、小さい頃に百マス計算を毎日やらされて、数字に強くなった成功体験があるんですよ。結局、長時間の研修とか複雑なことをやらなくても、毎日少しずつ積み上げるだけで身につく力ってあると思っていて。今、社内でもコンサルの知見がない人が毎日30分以内のドリルでスキルを身につける取り組みをしているんですけど、そういう形で学べる環境はもっとつくれると考えています。
3つ目は、その型化したコンサルスキルを社外にも展開していくことです。何でもかんでも全部代理店任せ、全部コンサル任せ、というのは本質的じゃないと思っていて。お客さんが外注しているところの一部を内製化できるようになった方が、絶対にその会社のためになる。内製化と外注って、どっちかではなくて、本当はハイブリッドがいいはずなので。だからこそ、コンサルの内製化を促進するところまでやりたいです。

「お金だけじゃない、仲間だ」TSUIDEが求めるのは、自身の足りなさと向き合える人
尾股
そうしたビジョンを実現するうえで、人材採用や育成も重要になりますよね。未経験者採用にも積極的ですが、その背景を教えてください。
松田様
僕自身が未経験なんで。ITコンサル出身じゃない社長がここまで来てるんだから、「絶対できるやろ」と思ってます。日本全体でIT人材は足りていないし、ちゃんと育てて、お客さんに満足いただける品質にできるなら、日本にとっても意味がある。成長したいという意欲があれば、人はできるようになると思っています。もちろん、楽じゃないよとは言いますけどね。「頑張れる?」とはちゃんと聞きます。
尾股
どんな人と一緒に働きたいですか。
松田様
現状に不満や迷いがある人ですね。自信家があまり好きじゃなくて。人って、自分の足りないところを認められる人が、本気で成長したい人だと思っているんですよ。「成長したいです」ってみんな言うけど、表層的な言葉だけじゃなくて、自分の悪いところとか、改善しなきゃいけないところにちゃんと向き合えているかが大事だと思っています。
尾股
その考え方には、ご自身の経験も影響していますか。
松田様
ありますね。僕もゴールドマン・サックスを出て、起業して、何もわかってなかったんだって気づいて。リードも知らない、契約書も請求書も知らない、全部誰かが支えてくれていたんだって後からわかった。調子に乗っていた自分が、一回底まで落ちたからこそ、本気で変わりたい人の感度は上がったと思います。
だから、僕は言うんですよ。親にも言われないようなことを、スパンと言う。「それ、人生通じてそうでしょ」「昔から逃げてきたでしょ」って。もちろん全員にじゃないです。本気で成長してほしいと思った人には言う。どうせ向き合わないとボロが出るなら、最初から言った方がいいと思っているので。これって、僕自身が言われたかったことでもあるんですよね。
尾股
最後に、貴社へ興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。
松田様
会社をやってきて思うのは、結局、事業づくりって仲間づくりなんだなということです。一人で稼ぐことよりも、仲間と一緒に会社を伸ばしていく方が、僕はずっと面白い。今はそう思っています。
TSUIDEは、仲間として迎え入れた以上、本気で成長に向き合う会社です。一緒に100億、1,000億、その先の会社をつくりたいとか、新規事業やM&Aも含めて面白いフェーズに飛び込みたいとか、そういう人にはすごくいい環境だと思います。楽ではないです。でも、面白い経験は提供できると思う。そういう環境に来たい人には、ぜひ来てほしいですね。

松田 輝正/Matsuda Terumasa
兵庫県出身。桐蔭学園中等教育学校、桐蔭学園高等学校、慶應義塾大学環境情報学部卒業後、2016年に新卒でゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社に入社。リテール向けのファンドの組成や、資金調達セールス業務に従事。米国株ファンドを中心としながら、債券・通貨・オルタナティブ等幅広いアセットに携わる。その後、ボストンを本社としたフィデリティ投信株式会社を経て、総合ITコンサルティングファームである株式会TSUIDEを設立。2025年、Visionalグループにグループイン。時代を代表する会社を創るべく、引き続き代表取締役として舵取りを行う。

「世の中の仕事の49%がAIに奪われる」
そんな発表がされてから数年が経ちました。
だからこそ、TSUIDEは人が関わる仕事の価値は
上がり続けると確信しています。
それは、情報が無限にあり、
似たようなサービスが溢れる現代において
人は“何を勧められたのか”よりも
“誰に勧められたのか”を大切にし始めているから。
人の価値は、この先もっと高まっていく。
TSUIDEは、そんな未来を信じて動き続ける会社です。

アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。
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