アートは経営のアクセサリーではなく「エンジン」──“創造的破壊”時代の文化資本経営論/株式会社エディット 深井厚志氏【EDGE】

前回は、アーティストから学ぶべき「3つの本質」と、AI時代における人間の創造性について深井厚志氏に語っていただいた。今回は、アートを経営にどう実装するかという実践論に踏み込む。
「KPIは?」「利益は?」——企業がアートを経営に導入する際、必ず立ちはだかるこの問いに、深井厚志氏はどう答えるのか。
美術誌編集者からコンサルタントへ、そしてアートと社会経済を結ぶ起業家へ。その歩みを通じて見えてきた、アートの効果測定の本質、日本企業ならではの文化資本経営の可能性、そして「芸術の生態系」を再構築する挑戦について聞いた。
※【EDGE】シリーズ:
変化の最前線にいる実践者が語る、まだ多くの人が気づいていない洞察。次の時代を読み解くヒントを届ける。
前編はこちら:
「アート思考」に潜む誤解──ビジネスマンがアーティストから本当に学ぶべき「3つの要素」/株式会社エディット 深井厚志氏【EDGE】
Index
アートが持つ本質的な価値創造を、社会の中で機能させたい
アクシス
深井様のこれまでの歩みと現在に至るまでの経緯をお聞かせください。
深井様
海外の大学で西洋美術史と建築史を学び、帰国後は美術雑誌の編集者としてキャリアをスタートしました。『月刊ギャラリー』という、全国のギャラリー情報を網羅するような専門誌で、現代美術、洋画、日本画、骨董、とあらゆる分野の様相から裏事情までを学びました。しかし、リーマンショックの影響で元々産業としては弱いアート業界全体が一気に冷え込んでしまい「このままアートの現場で続けるのは難しいかもしれない」と感じ、一度IT業界のDeNAに転職しました。
転職先では、徹夜続きで校了を迎える編集時代とは違って待遇もよくなり、仕事もやりがいを感じていました。ただ、一方で何かが欠けているような感覚がずっとありました。そこで気づいたのは、自分はアートの近くにいないとパッションが湧かない人間なんだ」と。そうして再びアートの世界に戻り、『美術手帖』の編集者になりました。
アクシス
アート業界に戻られてどんな変化がありましたか。
深井様
特定のアーティストや美術動向だけでなく、マーケットからアカデミック、美術だけでなくデザイン、漫画、建築、ファッションとの境界線を行くような記事を多く担当するうちに、アートをより構造的・俯瞰的に捉えるようになりました。作品そのものだけでなく、それを取り巻く仕組みや動向に関心が移っていったのです。同時に、「社会とアートをどう結びつけられるか」というテーマを強く意識するようになりましたが、メディアという立場では、啓発はできても実際に社会を動かすところまでは届かない。そんな限界も感じるようになっていきました。
アクシス
そこから、前澤友作さんの財団(現代芸術振興財団)に入られたのちに、コンサルティングの世界にも進まれていますね。
深井様
前澤さんのもとでは、社会にはたらきかけることや、そのダイナミズムを学びました。加えて、アートの世界の外にも(今思えば当然ながら)こんな超人的な人がいるのだと初めて知ったときです。右脳の左脳の両面で規格外な前澤さんという人は、私がアートとビジネスの融合、あるいは往来する人を想像するときのモデルケースです。いっぽう、アートの構造は理解していても、「社会の構造」はまだ分かっていないと痛感した時期でもあります。どうやって経済が回り、事業が設計されているのか。その根幹を学びたくて、井上ビジネスコンサルタンツに入りました。
井上智治さんはコンサルティング業界のレジェンド的な存在で、日本のIT企業の黎明期を影で支えた方です。井上さんやコンサルタントの先輩のもとで、社会実装や経営の仕組みを体系的に学びました。社会の辛さを目の当たりにすることで、言葉を選ばずに言えば、アート業界の“甘さ”も実感しましたし、翻って、アートにしか持ち得ない貴重な資質にも気づいていくのです。同時に、井上さんが代表理事を務めるカルチャー・ヴィジョン・ジャパンという財団にも参加しました。ここは上場企業の経営層が集まり、「文化と経済をどう接続するか」を議論する場。そこでの経験は、現在のAEDIT(エディット)にも直結していますね。
アクシス
アートの世界からビジネスの領域へと軸足を広げていかれた経緯については、どのように捉えていますか。
深井様
私は「アートからビジネスへ移った」というよりも、軸足はずっとアート側にあります。むしろ、アートの視点を持ちながら社会の中に入り込む“スパイ”のような存在かもしれません(笑)。最終的な目的は、アーティストやアートが社会の中で息づき、機能する世界観をつくることです。つまり、ある種閉じたアートの領域で高みを目指していたところから、次第にその輪を社会全体へと広げていった、そんな感覚に近いです。
私自身、アートに対して「心を豊かにし、日々を潤してくれるもの」という見方は変わりませんが、今はそれだけでは語り尽くせないと思っています。アートとは本質的に「価値を創造する行為」だと捉えています。もちろん、起業家やスタートアップが新しい仕組みや事業を生み出すことも価値創造です。何もないところから新しい価値を生み出すという点で、両者は等しいです。
違いがあるとすれば、その先です。生み出した価値をどう社会に実装していくか。資本主義の世界では、価値創造は「いくらお金を生むか」という尺度で測られがちですが、アートはそうではありません。社会の中でどのような機能を果たすか、どのようなシステムや思想、思考として根づいていくか。そこにこそ、アートの価値創出があるのだと思います。

アートとは人の中に眠る創造の回路を呼び覚まし、組織を動かすための「エンジン」
アクシス
深井様は編集者、コンサルタント、そして起業家として、さまざまな角度からアートと向き合ってこられましたが、そもそも「アート」とは何なのでしょうか。
深井様
難しい問いですね。人生の中で、幾度となく突きつけられてきた問いでもあります。実のところ、アートには共通の定義は存在しません。だからこそ、人によってその意味も形も異なる。社会の中で置かれたときのアートの定義と、ギャラリーで作品と1対1で向き合ったときのアートの定義は、まったく違っていていいと思うのです。
では、何が素晴らしいアートなのか。1つの共通理解があるとすれば、それは「多くの問いや思い、あるいは議論を生み出すもの」であるということ。「これは芸術ではない」と批判された作品が、時を経て時代を変えるアートとして評価される例は、歴史の中にいくらでもあります。だからこそ、アートは最終的に表に現れた“器”そのものではなく、その器を通じて何が起こるかに本質があるのです。
私は、アートの本質とは作品という仮初めの器と、鑑賞者一人ひとりとのあいだに潜んでいるものだと思っています。もしかすると、アートは鑑賞者の内側にすでに存在していて、作品はそれを引き出すための“触媒”なのかもしれません。つまり、アートは誰かの外側にあるものではなく、私たち一人ひとりの中に眠っている「創造の回路」を呼び覚ます存在なのでは?
そして、その変化が最も力を発揮するのは、事業そのものよりも「それをつくる人」の側です。経営者でも、現場のスタッフでもいい。アートが人の中に眠る創造の回路に火をつけ、その連鎖が組織を動かし、やがて社会を動かしていく。
ですから私は、アートを経営の装飾や一事業の要素としてではなく、“創造を生み出すための武器”として捉えています。アートは経営のアクセサリーではなく、人を変え、組織を動かすためのエンジンであってほしい。それが、私が信じているアートの力です。
「まちづくりは100年後に評価される」──アートの時間軸
アクシス
今のお話、とても腑に落ちます。しかし、経営・事業の現場ではさまざまな形でアートを取り入れようとしたときに、往々にして「どうアートの効果を計るのか」「何をKPIとすべきなのか」といった問いが立ちはだかります。
深井様
まさに、いちばんの課題ですね。私自身、企業や自治体向けにコンサルティングをしていて最も苦労する部分でもあります。最近は「アート×ビジネス」という文脈で“アート思考”という言葉が広く使われていますが、それが短期的な経済的利益でしか評価されないようでは、もはや“アート”である意味はないですよね。もっと簡単に、すぐに”儲かる”ものはいくらでもある。
アートを経営に取り入れる最大の効果は、組織や人の“思想”そのものを変えることにあります。経営層の意思決定が変わり、社員の意識が変わり、結果として事業の精度が上がり、新しい事業が生まれていく。その連鎖が起きたとき、アートは初めて企業の中で「機能」するようになります。
けれど、いくら投資をすればいくら回収できるという因果関係では説明しづらいのも事実です。だからこそ重要なのは、まず経営層が「なぜアートに取り組むのか」「それによってどんな価値を生み出したいのか」を理解し、腹落ちすること。アートは経営改革や組織変革の“触媒”であり、数字にすぐ表れるものではないからです。
あるデベロッパーのクライアントの言葉が印象的でした。「まちづくりは、ビルを建てただけでは完成しない。街の新陳代謝や人の流れも含めて、50年後、100年後に“いい街だね”と思ってもらえるかどうかで結果が出る。だからアートで短期的な成果に走らなくて大丈夫だよ」と。
歴史を振り返っても、真に価値のあるものは往々にして後世になって評価されてきました。アートそのものが直接お金を生む事業になるというよりも、アートに取り組むことで“大きな事業を生み出す人”を育てることができる。そこから新しいビジネスシーズが生まれていくと、私はそう考えています。
アクシス
とはいえ、それだけでは納得してもらえない場面も多いのではと思ってしまいます。
深井様
そうですね。実際には長期と短期の合わせ技で戦略設計することが多いです。本質的には企業の構造改革や思想転換を目指しつつ、同時に短期的な成果も見せる。たとえば、その年に実施したアートプロジェクトが、同年度内で投資回収できるようなスキームを組むこともあります。あるいはCSR、人材育成、ブランディング、社内環境整備の体をとることも。
実はアート事業は、一般的な広告代理店や制作会社に発注するよりも概ねコストが低く、始めやすいものです。それでいながら、そのインパクトは大きい。さらにアーティストが後に世界で評価されれば、その作品やプロジェクトの価値も上がっていく。つまり、短期的にも長期的にもリターンが期待できる投資と言えます。
アクシス
ここまでのお話を聞くと、アートと経営の関係は、短期的な利益ではなく「文化資本」として企業の長期的価値を育てるものだと感じます。
※参考:経済産業省「アートと経済社会について考える研究会 報告書」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/art_economic/pdf/20230704_1.pdf
(本リポートの中で、経済産業省は、アートが企業の競争力や創造性、人材価値、組織文化、社会とのつながりを強化する“戦略資産”になりうると明言している)
セゾン文化からメセナ、CSRへ――日本企業が受け継いできた文化投資の精神
アクシス
昨今のアートと企業の関係性についても伺いたいのですが、日本では2025年から経済産業省・Forbes JAPAN主催で「ART & BUSINESS AWARD」がスタートしました。深井さんも様々なかたちでこの事業立ち上げに関わっていると聞いています。世界的に見ても、アートとビジネスの関係は深まっているのでしょうか。それとも日本特有の現象なのでしょうか。
深井様
私が知る限り、「アート×ビジネス」という動きがここまで広がっているのは、日本特有の現象だと思います。グローバルに見れば、文化と社会の関係には大きく3つの型があります。
まずヨーロッパ型。ここでは文化は“公共の財”とされ、政府や自治体が国民の生活のために文化を支えることが当然とされています。アーティストへの助成金は当たり前の仕組みで、たとえばアイルランドでは、アーティスト向けのベーシックインカム制度も始まりました。つまり「芸術のための芸術」ではなく、文化を社会・教育・経済の基盤として位置づけ、そこに公共投資しているのです。
一方、アメリカは「個人(フィランソロピー)型」。富裕層や投資家がアートに多額の資金を投じ、それが美術館やコレクションを支えています。節税や資産運用の仕組みとも結びついていて、個人の資本が文化を循環させる構造です。
アクシス
それに対して日本は、どちらの型にも当てはまらない?
深井様
そうなのです。日本は「企業が文化を支えてきた国」です。戦前には旦那衆や財閥が芸術家を支援し、戦後の高度経済成長期にはその役割を企業が引き継ぎました。
「セゾン文化」に象徴されるように、多くの企業がアートへの投資を通じて社会の豊かさを育んでいた時代があります。やがてその流れは「メセナ活動」へと発展し、「企業は利益を社会へ還元するもの」という考え方が根づいていきました。2000年代には「CSR(企業の社会的責任)」として形を変えつつも、文化支援の精神は連綿と受け継がれています。
アクシス
確かに、日本には企業名を冠した美術館が多いですね。
深井様
はい。資生堂、ポーラ、メナード、サントリー、ブリヂストン(現:アーティゾン)、アサヒ……。これほど企業が自らの名を冠して美術館を持つ国は、世界的にも珍しい。Amazon美術館やApple美術館は存在しませんよね。これは、日本企業が長年「文化に投資すること=社会的誇り」として受け継いできた証拠なのです。
ただ、近年は文化投資が縮小傾向にあり、どうしても「経済的回収」に重きが置かれるようになってきています。でも本来の理想は、企業が長期的な視点で文化に投資し、そのことが結果的に企業価値を高めていくという循環をつくること。日本企業はもともと文化を育ててきた土壌があるからこそ、アートを経営に実装していく親和性が高いと考えています。
※参考:ART & BUSINESS AWARD2025
https://forbesjapan.com/feat/art-business-award2025/
資本主義的消費財への矮小化を回避する──芸術の社会経済的機能の再定義
アクシス
文化投資が縮小し、アートが経済的回収の文脈で扱われやすくなっているというお話がありました。深井様が2024年にAEDITを立ち上げられたのも、このような社会的情勢に基づいているのでしょうか。
深井様
理由はいくつかありますが、いちばん大きいのは「アート×ビジネス」という潮流が、一過性のブームで終わってしまうのではないか、という危機感でした。
ここ数年、企業がアートやアーティストに注目する機会は増えています。ただ、それが短期的なマーケティングやイベント的な盛り上がりにとどまり、持続的な価値創造には至っていない。私は、アートがもっと社会や経済と深く結びつくことで、社会経済が活性化され、アートがより豊かになると信じています。
今はまさに、その「分岐点」にある。これを一時の流行で終わらせるのか、それとも新しい歴史のうねりにしていけるのか。AEDITは、その可能性をさらに加速させたいと考えて立ち上げました。
アクシス
深井様のインタビューを拝見すると、よく「芸術の生態系」という言葉が使われています。会社のミッションも「戦略的・創造的編集による芸術の生態系のアップグレード」を掲げられていますよね。これはどのような考え方ですか。
深井様
2つの層があります。1つは、芸術そのものの生態系を描くこと。ビジネスの世界には明確なエコシステムやバリューチェーンがありますが、アートの世界にはそれが十分に可視化されていません。たとえば、今は当たり前のように存在する「キュレーター」という職能も、30年前は日本では一般的ではなかった。
でも、その役割を明確に定義し、社会的に位置づける人が現れたことで、新しい仕事や視点が生まれ、芸術そのものの発展につながったのです。つまり、アートの世界にもまだ見えていない構造がたくさんある。それを整理して、支援や投資の流れをつくりたいというのが1つの狙いです。
もう1つの層は、芸術の生態系を社会経済の生態系の中に位置づけるということ。これまでアートはどうしても閉じた世界で、評論家・作家・ギャラリーの内部で完結してきた。でも、アートが社会や経済の中でどんな機能や効果を持つのかを、もっと具体的に描く必要があると思っています。アートが社会にどんな変化をもたらし、どう経済活動に影響を与えるのか。その「接点」を丁寧に編み込んでいくことがAEDITの使命です。
アクシス
なるほど。アートを社会の中で“再定義”しようとしているのですね。
深井様
そうですね。「社会経済のために芸術を使うなんて、道具主義的だ」という批判もありますが、私はむしろ、芸術の価値を多面的に説明することこそが、芸術の地位を高めることにつながると思っています。
社会や経済における芸術の価値は、どうしても「お金を生む芸術がよい芸術」といった理解にとどまりがちです。けれど、それで本当にいいのだろうか、という問題意識があります。たとえば、売れっ子作家が生まれると、その人だけが突出して評価される一方で、他の価値や多様な表現は置き去りになってしまう。そうした構造では、アートは資本主義の中で“消費されるグッズ”の1つに過ぎなくなってしまいます。
しかし本来、アートにしか果たせない役割や効用があります。アートを温室に閉じ込めるでも、社会経済から距離を置くのでもなく、その価値を、社会経済とアートという2つの世界の間で共通理解にしていくことができれば、社会の見方そのものが変わっていくと考えています。
MEET YOUR ART、YAU──文化資本経営の具体的実装事例
アクシス
アートを社会経済に実装していくという構想は、具体的にどのような形で実践されているのでしょうか。
深井様
avexでは、長年にわたって音楽業界で培ってきたアーティストマネジメントや発信のノウハウを、美術の領域にも広げる取り組みとして「MEET YOUR ART」を展開しています。音楽・ファッション・アートといったカルチャーを横断的につなぎ、新しいオーディエンスや市場を開拓していくことで、日本のアートシーンに新しい循環を生み出そうとしているプロジェクトです。

※「MEET YOUR ART」は、YouTubeメディア、フェスティバル、アートスペース、コラボレーションなどを展開し、アートとの新たな出会いと創造を生み出すことを目指すアートプロジェクトである。詳細はこちら。
日本のアート市場は年間約1,000億円規模とまだ小さく、単体では成長に限界があります。だからこそ、音楽やファッションといった周辺産業と行き来できるようになることで、創造性も市場も相互に広がっていく可能性があります。avexは、そうした視点からアートを新しい経済圏の一部として捉え、挑戦を続けています。
プロジェクトはYouTube番組としてスタートし、EC事業、そしてリアルイベント「MEET YOUR ART FESTIVAL」へと発展してきました。特にフェスティバルでは、avexが音楽フェスで培ってきた企画・運営のノウハウを生かし、音楽とアートを組み合わせた一つの新しい体験として提示しています。ART & BUSINESS AWARD2025ではニューアートビジネス(New Business with Art)部門でも受賞しました。

※画像は、「MEET YOUR ART FESTIVAL」の様子。「MEET YOUR ART」の取り組みは、YouTubeメディアにとどまらず、リアルイベントへと展開し、アートとの出会いをひらいている。詳細はこちら。
私はプロジェクトがスタートして少しした頃に参画させていただくようになり、アート業界で培ってきたノウハウやネットワークを提供するとともに、行政との官民連携スキームの設計から、事業の継続性担保と民間企業の機動力の公益還元の両立をはかりながら、アートと社会の接点をさらに広げています。
アクシス
コンサルティングファームと共同で取り組まれているプロジェクトもあるとのことですが、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
深井様
有楽町エリアで進めているアートアーバニズムの取り組み「YAU(YURAKUCHO ART URBANISM)」は、デベロッパーを中軸とした複数企業によるエリアマネジメントの団体が旗を振って、アートの力を経済街の進化に活かそうというものです。私はこの構想の初期段階から関わり、仕組みづくりの設計にも携わってきました。

※画像は、YAUの活動拠点の様子。YAU(YURAKUCHO ART URBANISM)は、有楽町を拠点に、アーティストの活動がまちの中にあることで生まれる出会いや変化を探る実証的な取り組みである。詳細はこちら。
この枠組みの中で、いくつかの大手コンサルティングファームが“アートを起点とした企業共創”に強い関心を寄せてくださっています。現在は、YAUをハブとして企業とアーティスト、そして都市がどう共存・共創していけるかという新しい協働モデルを一緒に模索しているところです。
その1つの試みが、「アート思考を持つコンサルタント」を育成するための研修プログラムです。外部のアーティストや演出家の方々にも加わっていただき、思考の柔軟性や創造的な発想を鍛えるワークショップを半年ほどかけて試験的に実施しました。受講者は企業のビジネスパーソンとコンサルティング会社の社員が混在しており、まさに“越境”を前提にした学びの場になっています。

※画像は、劇作家の松井周さんと実施した、社会人向け講義「標本転生」の様子。
また、別のコンサルティングファームとは、企業の経営層に向けたプログラムの企画も進めています。こちらはまだ構想段階ですが、企業理念や経営思想をアーティストとの対話を通して再解釈し、“企業が本来持っている価値”を掘り起こしていくような内容を考えています。最終的には、その対話のプロセス自体をアーティストが作品化する構想もあり、思想と表現が往復しながら新しい価値観を生み出していくという、これまでにない試みになると感じています。
※参考:経済産業省「ART & BUSINESS AWARD 2025」受賞企業
https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251127005/20251127005.html
※参考:MEET YOUR ART
https://meetyourart.jp/
※参考:YAU|有楽町アートアーバニズム
https://arturbanism.jp/

1985年生まれ。英国立レディング大学で西洋美術史・建築史を学び、帰国後は美術専門誌『月刊ギャラリー』、『美術手帖』編集部を経て、公益財団法人 現代芸術振興財団(前澤友作氏設立)で展覧会企画などを担当。その後、株式会社井上ビジネスコンサルタンツでアート関連のコンサルティングに従事しながら、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパンにも参画し、産官学と文化芸術の共創に取り組む。
2024年2月、株式会社エディットを設立。「戦略的・創造的編集による芸術の生態系のアップグレード」をミッションに掲げ、企業・自治体・芸術団体向けの戦略コンサルティングおよび活動支援を展開。エイベックスの「MEET YOUR ART」や三菱地所との有楽町エリアマネジメント「YAU」など、アートを起点とした新しい価値創造に取り組んでいる。
会社ホームページ:https://www.aedit.co.jp/


