「1億円の連帯保証」で180度変わったコンサルのマインド。自己勘定投資会社を設立して、圧倒的”当事者”になるまで/NYC株式会社 中塚庸仁氏【PHILOSOPHY】

「1億円を背負った瞬間、景色が変わった。」
コンサルタントとして戦略を描く立場から、自ら資金を借り、会社を譲り受け、結果を最後まで引き受ける立場へ。NYC株式会社 代表取締役の中塚庸仁氏は、ソフトバンク、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー、PEファンドを経て、自己勘定投資会社 NYC株式会社を創業しました。
最初の投資では、金融機関から約1億円を借り入れ、個人で連帯保証にも入ったと語ります。Excelの数字、パワーポイントの意味、現場の見え方は、そのときどう変わったのか。
事業会社、コンサル、PEファンド、そして自己勘定投資へ。異なる組織の「型」を学びながら、圧倒的な当事者として経営に向き合う中塚氏のキャリアと哲学に迫ります。
Index
異なる組織の「型」を学び、信頼を土台に自己勘定投資へ
アクシス
まず中塚さんの経歴について深掘りしたいのですが、ソフトバンクからデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーへ転職されていますよね。コンサルタントになった背景について教えてください。
中塚様
ソフトバンクにいた頃、コンサルタントの方とやりとりする機会がありました。当時は私たちがクライアント側でしたが、アウトプットを見て、「すごいな」と思ったんです。自分も、もう少し体系的に物事を考え、問題を解く力を身につけたい。そう思ったことが、デロイトへ転職したきっかけでした。
ソフトバンクでは、経営企画やベンチャー投資、子会社管理などに関わっていました。ただ、大企業では、どうしても組織のなかの一人です。社内政治もありますし、意思決定にはさまざまなプロセスがある。自分では良いと思う提案でも、必ずしも通るわけではありません。だからこそ、目の前の課題をどう整理し、何を優先し、どう動かしていくのか。その力を身につけたいと思いました。
デロイトでは、M&A戦略やビジネスデューデリジェンス、PMIなどに携わりました。お客様から「新規事業をやりたい」「成長戦略を考えたい」と相談を受けたとき、何を確認すべきか。どのように論点を整理し、何を優先し、どう実行に落としていくか。その型を身につけられたことは大きかったと思います。
アクシス
その後、PEファンドへ進み、最終的には自己勘定投資でNYCを創業されます。なぜ、自ら資本を投じる道を選んだのでしょうか。
中塚様
デロイトで、抽象的な課題を構造化し、具体的なアクションに落とす力は身につきました。一方で、戦略を描き、提案するだけでなく、その先で事業がどう変わるのか、成果が出るところまで向き合いたいという思いも強くなっていきました。そこでPEファンドに移り、中小企業を譲り受け、投資後の経営支援に入る仕事を経験しました。会社の経営により深く関わり、現場で起きていることを見ながら、成果が出るところまで向き合う。その面白さを知ったのは大きかったですね。
一方で、ファンドは投資家から預かった資金を運用する仕事です。投資判断に関わり、投資先の経営に入っていても、最後は自分のお金ではない。自分で意思決定をし、その結果を最後まで引き受ける働き方をしたい。その思いは、キャリアを重ねるなかで強くなっていきました。
もう一つ、原点としてあるのが父の姿です。父も中小企業で働いた後に起業し、生活が変わっていく様子を見てきました。大変そうでもありましたが、いいなと思ったんです。自分で事業をつくり、自分で決めていく生き方への憧れは、そこから生まれていたのかもしれません。だからこそ、自分たちのお金で投資をし、自分たちで意思決定し、その結果に最後まで向き合う仕事をしたいと思いました。自己勘定投資という形が、自分には一番しっくりきたんです。
アクシス
振り返ると、事業会社、プロフェッショナルファーム、PEファンドという異なる環境を経験したことは、独立後にどのように生きていますか。
中塚様
それぞれに意味があったと思います。大企業、プロフェッショナルファーム、少数精鋭のファンドでは、組織の形も、意思決定のあり方も違います。どれが良い悪いではなく、それぞれの型を見られたことは、独立後に自分たちがどういう組織をつくり、どのように意思決定していくかを考えるうえで役立ちました。
ソフトバンクでは大きな組織のなかで事業や投資に向き合う経験をし、デロイトでは課題を構造化して実行へつなげる力を学んだ。PEファンドでは、中小企業の経営に入り、投資後に何が起きるのかを現場で見ることができた。今の仕事では、そのすべてがつながっています。また、独立した直後は、「誰なのか」が問われます。そのときに、ソフトバンク、デロイト、PEファンドで経験を積んできたことは、最初に話を聞いてもらうための信頼の土台にもなったと思います。

連帯保証で変わった、「当事者」としての仕事
アクシス
最初の投資では、金融機関から約1億円を借り、個人で連帯保証にも入られたそうですね。当事者になることで、仕事の見え方はどのように変わりましたか。
中塚様
Excelをつくる時点で、全然違います。同じように経営支援やバリューアップに関わるとしても、コンサルタントとして入るのと、自分が1億円の連帯保証に入っているのとでは、見えているものが違うんです。
コンサルタントの頃は、どうすれば資料をわかりやすくできるか、どうすれば戦略をきれいに整理できるかを考えることもあります。でも、自分が借入の責任を負っていると、「この数字は本当に地に足がついているのか」「そもそも、このExcelは何のためにあるんだっけ」と考えるようになります。つまり、「きれいなExcelをつくろう」とはならないんですよ。ダメだったらどうするんだ、という話なので。
パワーポイントをつくることも必要です。でも、結局は売上をつくることでしょ、となる。「このパワーポイントは、いくらになるの?」という感覚です。それは現場を見る目にも表れます。1億円の連帯保証に入って買った会社ですから、目の前にある機械が5,000万円、6,000万円するかもしれないと思うと、「これ、あと何年使えるんですか」「壊れたらどうするんですか」と気になってしまう。数字を整えるだけではなく、その数字の背景にある現場の実態を知りたくなる。そこが、当事者になって一番変わったことだと思います。
アクシス
当事者性とは、どのような状態だと考えていますか。
中塚様
最後に責任や結果を持つことだと思います。たとえば、社長と一緒に営業へ行っても、受注が取れずに数字が上がらなかったとき、その結果を最後まで引き受けるのは経営者や株主です。我々で言えば、会社を譲り受け、その会社の業績を伸ばし、リターンを出すところまで責任を負います。途中まで関わるのではなく、最後まで結果を持つ。その感覚が、当事者性なのだと思います。
ただ、コンサルタントだから当事者性を持てない、ということではありません。営業戦略を考えるときにも、「提案書を出せば終わり」ではなく、「本当に売上10億円をつくるには何が必要か」と考え抜くことはできる。どの立場であっても、結果にどこまでコミットするかで、仕事の質は変わると思います。
50行に断られても、一行ずつ金融機関にあたる
アクシス
創業期には、50行以上の金融機関に融資を断られたそうですね。どのように乗り越えたのでしょうか。
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