「情シス無能…」と思われない為の最良のスキルが【予算確保】という話と、確保できなかった場合のシナリオ

事業会社の情報システム部に転職された方、特にマネージャーに昇格されたばかりの方からよくいただく悩みとして、「予算問題」が挙げられます。

非IT企業においては、商品原価として計上される原材料や工賃 、製造加工の外注委託費などを含めた商品に関わるコスト全体としての投資や、工場や店舗といった設備投資が大きいですが、それらに次いでIT部門の予算はかなりの投資額やランニングコストを計上しています。そのため、何かにつけ「情シス部門は金を使いすぎる」「予算が巨大だ」と言われることも多いようです。

そこで今回は、「予算問題」に関する情シスの”あるある”と、その解決策についてお伝えします。

【目次】

  1. ITの予算は情シス部門以外には全く理解されにくい特殊なもの
  2. 事前の予算確保かキモ、計画外の投資はタブー
  3. 予算のない情シス部門は死に体に等しい
  4. 残念な情シス部門のマネジャー、情シス部門長のせいで予算確保が出来ない
  5. 情シス部門、 情シス部門の部門長の頭上を飛び越えてシステム投資が進んでいく
  6. 部門最適化されたシステムがはびこる危険な状態
  7. 情報インフラやシステム基盤の統制がなくて高まる老朽化リスク
  8. 適正な予算確保に対して情シス部門のあるべき姿とは

ITの予算は情シス部門以外には全く理解されにくい特殊なもの

販売して売上を作るための商品仕入原価や工場や店舗などの設備投資は目に見える現物ということでとっても実感が持てます。しかしながら、日々みんなシステムを使っているにも関わらず、何か実態をつかみにくい実感のない見えないものとしてITにかかるコストは認知が非常に薄いです。

加えて事業会社では、その会社を特徴づける主力商品についてはその詳細な部分まで各部門各メンバーが接することが多く、社内に広くその原価構造も理解されているという側面がある一方、 情シス部門しか関わることがないシステムに掛かるコストや予算はまずもって接する機会がありません。

普通の人が接するITシステムのコストといえば、ハードウェアで言えばスマホや PC、ソフトウェアで言えばアプリやゲームソフト、PC用のソフトぐらいではないでしょうか。世界中の人が使用する前提のハードやソフトの値段は当然ながら企業で使用するスクラッチ開発のシステムのコストとは全く前提が違います。

IT業界の予備知識やシステム投資の経験がなければ、企業の情シス予算について全くもってその理解を期待することはできません。

また大手企業で巨大な IT予算が話題となるようなニュース記事の多くはIT関係者専用、部外者お断りという雰囲気を醸し出していますし、最近では、IT関連のニュースが一般ニュースの中にも増えてきたとはいえ、それほど多いとまでは言えません。
しかもその記事の中のIT投資の数字の規模感を意識して見ているのもIT関係者のみでしょうか。
これでは一般の方々に理解が進むことを期待するのもなかなか難しいというものです。

事前の予算確保がキモ、計画外の投資はタブー

情シス部門に関わらず、来年度予算の確保は部門長やマネージャーにとってある意味、死活問題です。昨今の企業活動において、社長以外で計画外の投資の裁量がある人は稀有でしょう。高々いち部長やマネージャーレベルではまず難しいでしょう。

それなりに裁量のある社長といえども計画外の予算については、取締役会や各種のステークホルダーの手前もある上に、ブツブツ言う財務経理部門など事業計画の管掌部門も抑えこまねばなりません。

上場企業であれば、なおさらです。四半期ごとの実績と今期の業績着地予想の開示を市場から求められることで、現場にも常にその波が押し寄せます。事業計画を立てたと思ったら、もう直ぐに今期の着地予想の提出司令がやってくるような状況において、システム投資のような大きな規模の計画外投資はタブーです。

逆に計画外投資を通せる力量のあるデキる部門長やマネージャーであれば、前もって潤沢な予算確保が出来ているでしょうか。

事業計画の立案プロセスや中期経営計画の策定において、情シス部門の部門長やマネージャーは、何としてでも十分なシステム投資予算を確保しなければなりません。何かにつけITは金がかかる、という理解不足の中で、下手すると社内では一人ぼっちの戦いを強いられる可能性のある予算確保の戦いに勝たねばなりません。

PLやPMから次のステップとして予算に権限を持てる管理職層にキャリアアップはしたものの、この予算に関するマネジメントスキルを身に付けることができるか否かが、その先の管理職としての成否を左右するまずもっての必要要件です 。社内政治は苦手だなんていうことを言っている暇はないです。

予算のない情シス部門は死に体に等しい

潤沢に予算確保が出来ない残念な情シス部門長は、どんどん自らを窮地に追いやります。まず情シス部門のデキるメンバーやリーダーがどんどん立ち去っていくことでしょう。情シス部門として人材面での崩壊により死に体と化します。

どんなに忙しくても多くの情シス部門のスタッフは、システム開発が出来さえすればモチベーション高く仕事を進めてくれます。しかしながら、シケた予算のなかで古びた保守切れのシステムのお守りだけなんて仕事の状態ではまず持ちません。転職に向けた段取りを粛々と水面下で進めています。

IT投資が進まない社内の現場からは、古いシステム、使いにくいシステムを前にして、こちらの苦労や事情も知らず言いたい放題です。「よその会社のシステムはイケてるのに、うちのはダメだ」と社内外でネタと化しています。当然ながら、「ウチの情シスは何もしないどうしようもない奴らだ」とのレッテルもセットで拡散して行きます。
これがまた、情シス部門のスタッフを転職へさらに追い立てます。予算があれば、なんとか出来るのに、こんなこと言われることもないのに、予算を取れないアイツのせいだ、と現場に行ってネガティブさを増幅させて帰ってきます。

彼らは、自身の待遇や処遇と言った側面もある事にはありますが、まず何よりもシステム開発がしたい、新しいIT技術に携わりたい、という彼らの根本的な欲求が情シスの仕事の中で満たされる必要があります。大前提です。

潤沢とまでいかなくても、それなりに新規開発投資を行う情シス部門であることがマストです。世の中でDX(デジタルトランスフォーメーション)が方々で叫ばれる中、彼らの活躍場面は予算の乏しい情シス部門の外に溢れています。新システム開発が出来ない情シス部門に留まる理由は何もありません。

予算確保が出来ない情シス部門は、金の切れ目が縁の切れ目を地で行くことでしょう。

残念な情シス部門のマネジャー、情シス部門長のせいで予算確保が出来ない

システム投資の予算確保のデキなさ加減が半端ない場合、企業の業績要因がよほどの危機的状況でない場合は、すべて残念な情シス部門のマネジャー、情シス部門長のせい、と言い切ってしまって良いでしょう。

予算確保が出来ない情シス部門のマネージャーや情シスの部門長には、大きく欠けているものが二つあります。ひとつは経営トップとのコミュニケーションの量と質の不足、 もう一つは中期のシステム構築のビジョンが描けていないということに尽きます。

せめても経営トップとのコミュニケーションの頻度があれば、少々の構想力不足でも優秀な部下のリーダー層やメンバーの力を借りればなんとかなる場合も多いでしょう。 しかしながら、そもそも情シスの部門長が経営と会話や相談ができない、コミュニケーション不全に陥っていると言うような場合は本当に致命傷です。

情シス部門、 情シス部門の部門長の頭上を飛び越えてシステム投資が進んでいく

実際に上質の部門長と経営トップがうまくコミュニケーションが取れていない場合はどういうことが起きているでしょうか。往々にしてあり得るのは、ある一部の特定の事業部門やバックオフィスの特定の部門がそれぞれ自部門最適にシステムを我がもの顔で開発を進めてしまっている場合などです。

なぜそんなことが起きるかと言うと、それぞれの事業部門の部門長がそれぞれ経営トップとやりたいことをどんどん握っていくからです。情シスの部門長よりもコミュニケーション力が高く経営トップとコミットできる状態にあって独自のシステム投資を独自に進めていく状態になってしまっています。

本来であれば情シス部門が横串をさす、もしくは全体最適を考えた上で牽制を行ったり整合性を取る状態が理想型ですが、経営トップとコミュニケーションの薄い情シス部門長の情シスは、ないがしろにされるか、よくても後付で事後に知らされるのがオチです。

部門最適化されたシステムがはびこる危険な状態

我がもの顔でシステム投資を独自に行う部門には、それぞれの支援チームや管理セクションの中に情シスメンバーライクなシステムを牛耳るスタッフがいます。やりたい放題の状態になっていてシステム全体、全社での整合性というのはもう取れていません。

全社共通マスタのはずがローカルに最適化されたコード運用が常態化していたり、しかもそのシステム運用ルールはそのメンバー限定の暗黙知で他の誰にも分からない状態になっています。独自進化を遂げるシステムを牛耳るスタッフの王国が築かれています。

企業活動でシステムを利用するメリットの一つに、部門間での工程ロスをなくす、と言った生産性向上のカギがあります。ところが部門に最適化されたタテのシステム進化では決して BPR(Business Process Re-engineering: ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)はなされることはありません。

現場業務に最適化されたユーザビリティのみ追求されたシステムに仕上がってしまっています。本来は情報システムで工程間を直結し、省人化を進めたり、不要な組織や部門の改廃を進めるというのが常套手段ではありますが、まずもって自分たちをリストラする仕組みを導入するはずがありません。

情報インフラやシステム基盤の統制がなくて高まる老朽化リスク

そういった生産性改善のある意味前向きな面が達成されないというジレンマとは別に、システムの老朽化に対応するといったシステムの全体を俯瞰して進めるべきシステムの刷新が進みません。システムの老朽化対応ができない場合には、事業継続にもリスクが高まります。いつ止まるか分からないシステムが事業運営を高いリスクに晒します。

例えばブラウザのInternet Explorerが終了してしまうだとか、アプリケーションを配置しているサーバー自体が保守切れでクラウド化を余儀なくされているとか、AWS の事情によりデータベースのバージョン上げざるを得ない対応が必要だとか、インフラの事情に対応せざるを得ないことが常にバラバラとおきます。

情報インフラ絡み、システム基盤絡みのものを特定の事業部門で進めるのはナンセンスですし、現実的ではありません。独自の状態でそのようなことが進んでしまえば運用や保守というところで余計なコストが嵩むだけでなく、システムの安定稼働や障害対応の面からもインフラや基盤全体の統制が取れていない場合に不要なリスクを取ることになります。

またバラバラな独自運用の乱立を許したばかりに、いざシステム改修や新規構築となっても大変な手間と労力がかかる場合が発生します。旧態依然の部門独自運用が続くシステムに外部連携した新しいシステムが突然エラーを起こすことがあります。

老朽化が要因かと思い、調査対応してみると実際は老朽化ではなく、単に独自運用に慣れた特定部門からの人的連携モレ、影響範囲を確認しなかったなどの連携連絡モレであることも多発します。特定部門でマスタが告知なく変更追加されたことで、連携した新システムが予期せずその影響を受けてしまう、といったことです。

システム自体ではなく、運用ルールそのものが老朽化したまま最新化されていません。

適正な予算確保に対して情シス部門のあるべき姿とは

まさに教科書的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進体制そのものです。経営トップと事業戦略に即したシステム刷新の中期構想がコミットされていて、事業現場のキーマンと共にDXを実現していく、量と質の伴ったコミュニケーションを情シス部門のマネージャーや部門長が自ら先頭に立ち推進していく状態が理想系ではないでしょうか。

そのような事業戦略とIT刷新の構想が一致している状態であれば、適正な予算確保がなされていることでしょう。

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【実話】SIerのSE・PMから情シスやDX推進部への「転職後のよくある落とし穴」と「対策」
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今回は、「予算問題」に関する情シスの”あるある”と、その解決策についてお伝えしました。キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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