異業種からアセットマネジメント業界に転職して驚いたこと【実話】

アセットマネジメント業界は全体として社員が少ないことから、金融業界で働いている方でも働き方のイメージがあまり浮かばず、いざ転職してみると独特の文化に驚く方も多いようです。

そこで今回の記事では、コンサルティングファームや、投資銀行からアセットマネジメント(資産運用会社)の業界へ転職して驚いたことについて、実際にアセットマネジメント業界に転職された方の生の声などを参考にご紹介します。

【目次】

  1. 残業時間は改善も、海外時間に合わせた働き方に
  2. ビジネスはゆっくり進むが、正確性にはシビア
  3. 金融機関の出身者でも驚くマーケット感覚の鋭さ
  4. 実際に運用をする人はアセットマネジメント業界内でも少数
  5. 「市場の動きとキャリアが連動するのかと思っていたが、想像以上にサラリーマン的」
  6. 同じアセマネ内でもビジネス内容は多種多様

残業時間は改善も、海外時間に合わせた働き方に

一般的にアセットマネジメント業界は金融業界の中では残業が少なくワークライフバランスがとりやすい傾向にあります。これは「業界全体としては真実」のようです。

特にコンサルや投資銀行から転職した方はポジティブな意味で驚くことが多いようです。「個社にもよるのかもしれないが、特に休みの取りやすさには驚いた。若手でも基本的に休暇を希望通り取らせることを重視しているので、希望している年休を拒まれたことはほとんどない。業務都合上どうしても取れなくなった場合は確実に別日に取れる」といった声もよくお聞きします。ワークライフバランス面も重視されている方にとっては安心材料でしょうか。

一方で、外資系のアセットマネジメントでは、「業界特性上、顧客と運用者で会議を行い、会社の能力をアピールする機会などがある」ものの、実際の運用はほとんど海外の本社で行っているため、現地時間に合わせる必要があり、必然的に日本時間の夜中や未明に仕事をするケースも多いようです。

「マーケットが絡むのでどうしても現地時間に合わせることになる。暇なのにほとんど朝に近いような時間帯の深夜残業が発生して大変だったこともある」といった苦労話をお聞きすることもあります。実は、日系のアセットマネジメントでも例外ではなく「米国拠点との打ち合わせが深夜に及ぶことがあった」とのことで、資産運用会社に限りませんが世界中のマーケットを相手にしているビジネス特有の事情でしょうか。

ビジネスはゆっくり進むが、正確性にはシビア

また、コンサル経験者からは「営業活動が非常にゆっくり進むことに驚いた」という声もお聞きしました。「ファンド導入の営業をクライアントにかけることになったのだが、始めに提案するファンドを決めてから実際に訪問するまで1ヶ月かけたりする」とのこと。さらに実際にファンドを導入してもらうまでのプロセスとなると半年程度からそれ以上かかることも珍しくないそうです。

「コンサルだと、クライアントからその日のうちに資料作成を依頼されて送付、なんてことも日常だったので、このゆっくりとした時間感覚には当初驚かされた」とのことです。

ただ、実際には、ゆっくりだから楽というわけでは全くなく、「特に資料については隅々までこだわる営業員が多い。ページの順序や見せるグラフ、文章一つ一つまで細かく調整した上で持参する。もちろん使用しているマーケットデータも細かくチェックが入る」「自身のファンドを、正確性を保ちつつ如何に優れているように見せるか細部まで気をつかって営業活動を行っている」とのことでした。

金融機関の出身者でも驚くマーケット感覚の鋭さ

証券会社からアセットマネジメントへ転職された方からは、「アセットマネジメントの運用や営業に関わっている者は、金融機関出身の目で見ても、市場の値動きに関する記憶が非常に鋭い。米国株式や、米国債券、日本ならば日経平均など、自身が関わるマーケットの過去の値動きと、その背景をよく覚えている」という話もよくお聞きします。

金融機関の人間でも、マーケットデータはレポートを参照したり、ブルームバーグやロイターのデータを見たりしながらクライアントと会話するのが一般的であるものの、アセットマネジメント業界ではリーマンショックやコロナショックはもちろん、ITバブルや米中貿易摩擦などよりインパクトの小さい市場変動でも「この資産は〇〇%くらい下がって、また○年かけて回復した」という数字が細かく頭に入っている方が多いようです。入社して日の浅い方ですと、こうした感覚はあまり備わっていないため、部内での会話などに苦労することもあるそうです。

転職前に準備をするのは大変な部分ではありますが、内部で働かれている方にお聞きしたところ、「アセットマネジメントの社員も、転職者がそうしたセンスを身につけて入ってくることはさすがに要求しない。せめて日本のバブル以降くらいで代表的な経済変動イベントの発生時期を覚えておけばだいぶ違うだろう。あとは働きながら身につけていくしかない」とのことでした。

実際に運用をする人はアセットマネジメント業界内でも少数

非金融の方はもちろん、金融業界内の方でも漠然とアセットマネジメント=運用担当(もしくはファンドマネジャーなど)のイメージを持たれる方が多い印象です。「バイサイド(アセットマネジメントなど資産運用を行う会社)に転職するならファンドマネジャーがいい」と希望を持つ方は金融経験者でも珍しくありません。

しかし実際には「アセットマネジメントの会社にいても、実際に運用に携わる人は少数」でしょうか。アセットマネジメントより狭い「投資顧問業」の話にはなりますが、一般社団法人日本投資顧問協会の投資顧問要覧(平成29年3月末)によると、ファンドマネジャーは2000人あまり。業界全体の人口が約13,000人のため、だいたい15%くらいの割合になります。

一方でこの統計を認識していたアセットマネジメント業界の方によると「数人〜10人程度の中小の投資顧問会社でも数人は運用担当が必要で、そうした会社が業界全体の比率を押し上げているのでは。大手や外資ではもっと稀な職種のイメージ」との見解もありました。運用担当の求人がなく、やむなくファンドの法制度などの管理を行う部署に転職したところ、「一般的にいわゆるファンドマネジャーと呼ぶような仕事をしている人は、社内に数人しかいなかった」とのことです。

従って、意外にもアセットマネジメント業界に転職しても「顧客に説明できるように運用手法は理解しているものの、ファンドマネジャーが普段どのように仕事を進めているのか、いまいち実感がない」という声もありました。

「市場の動きとキャリアが連動するのかと思っていたが、想像以上にサラリーマン的」

資産運用は業績が成績を左右する印象を持たれがちですが、実際には「こと日系においては運用成績と業績、ましてや個人の評価への影響は意外に小さい」とのことです。

日本のアセットマネジメント業界では投資信託や投資顧問ビジネスが主になりますが、これらは一般的に運用している資産残高に一定比率をかけて手数料が計算されます。ヘッジファンドのように「リターン○%を達成したら、その分○%収益が増える」といった仕組みはあまり一般的ではありません。つまり、「極論、損をしてもクライアントが資金を引き上げたり、個人投資家が投信の売却を進めたりしなければ、自社へのダメージは意外に少ない」ようです。

もちろん損が大きいことで売却が進められるリスクはありますが、内部で働かれている方にお聞きしたところ、「個人的な感想ではあるが、ドラスティックに売却が進むことは想像より少ない」とのことです。

従って市場変動とアセットマネジメント企業自体の損益が直結しないことから、個人成績が運用成績で決まるということも、必ずしもないようです。実際に「当社では非運用担当者はもちろんのこと、運用担当者でも、自身で管理しているファンドのパフォーマンスが個人成績へ与える影響は小さい」という意見がありました。

アセットマネジメント業界である以前に日本のサラリーマンであることから、まずは「ルールをしっかり遵守して運用を行う」ことが重視されるため、ルールを守った上で市場変動により発生した損失の責任を個人に課す度合いはあまり大きくないようです。証券会社出身の方からは「個社にもよるだろうが、証券会社と比較すると個人間の業績・昇進の格差は小さい印象」という見方もありました。

同じアセマネ内でもビジネス内容は多種多様

先に紹介した通り、小さい組織が多いこともあり、外から見れば「アセットマネジメント業界」で一つのビジネスというイメージがありますが、実際には複数のメインビジネスがあり、その間で差が大きい点にも多くの方が驚かれます。

代表的なところでご説明すると、アセットマネジメントのビジネスは投資信託と投資顧問に大きく分かれます。この二つのビジネスは異なる特徴を持っているため、アセットマネジメント業界の中で働いている方でも「自分が関わっていない他方のビジネスの実態がよくわからない」という方も多いようです。

投資信託は証券会社など金融機関が販売しているものですが、こちらの実際の運用はアセットマネジメントが行うのが一般的です。厳密にはヘッジファンドなどが出している富裕層向け・プロ向けのファンドも『私募投資信託』といいますが、より一般的な公募投資信託の場合は、最終的に購入するのはほとんど個人投資家です。

投資信託ビジネスのクライアントは販売する金融機関になりますが、営業時点から個人投資家にいかにたくさん投資してもらうかが重要なトピックになります。投資信託が新たに設定される際も、個人投資家向けに多数のセミナー・勉強会や販促資料などを作成・準備するのが重要なタスクとなり、高い運用能力を発揮することが重要である一方、運用内容をわかりやすく、またイメージ良く伝えることにも工夫が施されるため、リテールに目を向けたビジネスがメインです。

一方、投資顧問については、富裕層の個人向けビジネスを強みとしている運用会社もありますが、「大抵の場合会社にとって重要性が高いのは、機関投資家から委託を受けた運用や年金運用。資金が巨額なので、アセットマネジメントのビジネス規模の指標である資産運用残高へのインパクトが大きい」とのことです。

投資顧問ビジネスはメインの顧客がプロの機関投資家であることから、「かなり高度な運用手法の話題が中心になる。相手も金融機関という意味では充分プロだが、こちらは投資のプロとして、さらに高い専門性を発揮していかなければならない」ということで、ストレートにアセットマネジメントの運用能力がカギになるビジネスと言えるでしょうか。

このように双方のビジネスの進め方は大きく異なるため、同じアセットマネジメント業界でもお互いの事情のことをよく知らない方も多いようです。いうまでもなく、これから転職を検討する方の場合は、自分が投資信託ビジネスを目指すべきか、投資顧問ビジネスを目指すべきか、よく考えておくことが大切になります。

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>資産運用会社へのキャリアに関する記事

投資銀行(IBD)と資産運用会社(アセットマネジメント)の違い【両セクターの経験者に訊く】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankassetmanagement

コンサルファームから資産運用会社(アセットマネジメント)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consultanttoassetmanagementfirm

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今回の記事では、コンサルティングファームや、投資銀行からアセットマネジメント(資産運用会社)の業界へ転職して驚いたことについて、実際にアセットマネジメント業界に転職された方の生の声などを参考にご紹介しました。

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