公認会計士から戦略コンサルファームへの転職事情、成功事例やメリット・デメリット、成功のポイントを紹介

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戦略コンサルにおいて、会計・監査の知識は必要とされる多様なナレッジの一領域にすぎないため、会計士から戦略コンサルへの転職は、必ずしも容易ではありません。一方で、会計関連の知識プラスアルファのスキルや経験があれば充分に可能性があります。

今回の記事では、会計士から戦略コンサルへの転職事情や成功させるポイントを、事例と共に紹介します。戦略コンサルへの転職を検討する公認会計士の方は、ぜひ参考にしてください。

【目次】

  1. 会計士から戦略コンサルファームへの転職の現状
  2. 会計士から戦略コンサルファームへの転職の成功事例
  3. 会計士から戦略コンサルへのキャリアのメリット/デメリット
  4. 会計士から戦略コンサルへ転職するときの対策や求められるスキル
  5. 会計士から戦略コンサルへの転職は意欲とスキルが共に備わっていることが大切

会計士から戦略コンサルファームへの転職の現状

純粋な会計・監査の経験だけでは、戦略コンサルファームに転職するのはややハードルが高く、総合系やFASを経由するのが有効な選択肢となります。一方で、若手かつ戦略コンサル向きの思考能力の持ち主であれば、転職の余地は充分にあります。
また中堅クラスの方は、M&Aや海外法人が絡む会計・監査の知見があれば、選考を通過するための強みとなるでしょう。

単純な会計・監査の知識だけでは優位には立てない可能性

公認会計士として、シンプルに会計・監査を行ってきただけでは、少なくとも戦略コンサルへの転職で優位に立つのは難しいといえます。

会計・監査とは帳簿や決算が「正しく」「適切」であることをチェックするのが主要なミッションです。一方で、戦略コンサルは企業の課題を踏まえて、売上の拡大・コスト削減などを通じて企業の付加価値を積極的に高める必要があります。

会計・監査の知見が必要とされるコンサル案件もありますが、あくまでコンサルに必要なナレッジの一領域にすぎません。コンサルとして活躍するためには多様な領域のナレッジを持っている必要があり、会計・監査の知識だけでは強みにはなりにくいと言えます。

もちろん専門性が「何もない」よりは良いですが、戦略コンサルに転職でチャレンジする方は、多くの方が何らかの専門領域、強みを持っています。そのため、会計知識や経験があるだけで、他の候補者より優位に立てるとは限りません。

若手は論理的思考力や問題解決能力、英語力などのスキルが強みに

若手の場合は、会計士の資格取得や業務遂行に求められる論理的思考力が強みとなります。与えられた課題を解決する問題解決能力も備わっていれば、戦略コンサルファームの転職において優位に働きます。

公認会計士としてのキャリアを順調に歩んできたなら、これらのベーシックスキルが高い方が多いと想定されるため、結果的に選考を優位に進められるでしょう。

また、もし海外企業・海外法人をクライアントに抱えていて、英語を頻繁に使ってきた方であれば、英語力も重要なスキルとなります。外資系だからと言って、全員が英語をネイティブのように扱えるわけではありません。若手なら、高い英語力はそれだけで付加価値の一つとなります。

このように若手であれば、公認会計士としての業務で培われたスキル・経験が、戦略コンサルファームにチャレンジする上でも有効です。

中堅~はM&Aや国際会計の実務経験など「プラスアルファ」を求められる

30代以降の中堅となると、単なる会計士プラスアルファの知識・経験が求められます。M&Aや国際会計の実務経験などは、戦略コンサルで役立ち、かつ公認会計士が身につけやすい「プラスアルファ」のスキルといえるでしょう。

戦略コンサルにおいて、企業の市場価値を高めるために「M&A」という手段をしばしば選択します。M&Aにおいては、バリュエーションやデューデリジェンスの段階で会計知識が求められます。

戦略コンサルファームとして最適なソリューションを提示するうえで、会計領域からM&Aに関する知見があるメンバーの需要は高いのです。

また、海外市場への進出や海外企業との提携も、戦略コンサルファームにおけるソリューションとなります。海外法人が絡む会計・監査に携わった経験があり、なおかつ深い知見を持つ公認会計士は、こうした海外戦略のソリューションを考える上で役立つでしょう。

会計士から戦略コンサルファームへの転職の成功事例

会計士から戦略コンサルファームへの転職事例は多数あります。ここでは、成功事例を3つ紹介した上で、事例から見える共通点をもとにコンサルファームへの転職を成功させるためのポイントをまとめました。

1人目|監査法人中のコンサルとの協働経験が強みに

1人目の事例の方は、新卒で大手監査法人に入社し、会計監査や内部統制のアドバイザリーなどを経験。グループであったコンサルファームとの共同プロジェクトを経験する中で、経営コンサルファームに興味を持ちました。

内部統制アドバイザリーや共同プロジェクトにて課題解決型の業務経験があったことや、元々持っていた高い知能やコミュニケーション能力を評価されて、外資系の戦略コンサルファームからの内定獲得に至りました。

2人目|よりクライアントに大きな貢献を果たしたいとの思いから戦略ファームへ

2人目の方は、大手監査法人に入社して、上場企業の監査を担当していました。 

監査法人での評価は高かったものの、よりクライアントの課題解決に貢献したいとの思いから転職活動を開始。転職エージェントに相談して、さまざまな企業を見ましたが、最終的に会計知識を武器にしつつも、さまざまな領域からクライアントに貢献できる戦略系コンサルティングファームへ転職しました。

年齢が20歳代後半と若かったことに加えて、コンサルに必要なベーシックスキルが評価されたため、優位に選考を進められたと思われます。加えて本人がもとから監査法人と戦略コンサルの仕事の違いを理解したうえで面接に臨んだことが、入社後のミスマッチを防ぎ、転職先に満足できた要因です。

3人目|柔軟な発想で課題解決を目指す戦略コンサルに魅力を感じた

3人目も、大手監査法人から外資系戦略コンサルファームへ転職した事例です。この方は会計事務所の時代は会計監査・リスク管理アドバイザリーなどを手がけていました。

しかし、よりクライアントに様々な形で貢献できる仕事をしたいと考えて、戦略コンサルファームのアソシエイトクラスへ転職したとのこと。経営全般から入り込み、自分なりにソリューションを柔軟に考えて課題解決に導くという仕事スタイルがこの転職者の意向に合っていました。

かつ能力・スキルも申し分なかったので、転職活動はスムーズに進んだようです。

事例における戦略コンサル転職の3つの成功要因

以上の3つの事例を踏まえると、次の3つの要因が戦略コンサルへの転職を成功させる要因となっています。

1:年齢が比較的若いこと
2:戦略コンサルと監査法人の仕事スタイルの違いを理解していること
3:コンサルに必要なベーシックスキルを認められていること

上記の事例において、1人目と2人目は20歳代の後半です。3例目については年齢が明かされていないものの、転職先のポジションがコンサルのアソシエイトであるため、やはり20歳代後半か高くても30歳程度と推測されます。

若手の方がポテンシャルベースでの採用の余地が大きいため、公認会計士からの転職においても多くの成功事例が見られます。

戦略コンサルと監査法人の仕事スタイルの違いを理解し、そのうえで「自分が戦略コンサルの方が向いている」と考えている点も共通しています。

戦略コンサルは「付加価値を高める」仕事であり、監査法人は「正確性を担保する」仕事です。

違いを理解した上で、
「戦略コンサルの方が向いている」
「戦略コンサルの方が、自分が求める働き方が実現できる」
と考えた方が選考をスムーズに進めています。

違いを理解したうえで、戦略コンサルファームを希望すれば、面接において説得力のある受け答えができて、評価が向上します。

コンサルに必要な課題解決力や論理的思考力が備わっていることも重要です。若手であると同時に、コンサルに求められるベーシックスキルにおいて高評価を得たことが、内定獲得につながりました。1人目の例のように、コンサルプロジェクトへの従事経験があれば、よりプラスに働きます。

以上の3つの要因を充足していたからこそ、今回紹介した事例の方は転職活動をスムーズに進められたと考えられます。

会計士から戦略コンサルへのキャリアのメリット/デメリット

続いては、戦略コンサルへ転職することのメリット・デメリットを紹介します。双方を比較したうえで、自分にとって戦略コンサルへの転職が適しているかを検討してみてください。

会計士から戦略コンサルへのキャリアのメリット

公認会計士から戦略コンサルに転職するメリットは次の3点です。
・年収アップが見込める
・クライアントに大きく貢献してやりがいを感じられる
・将来のキャリアが広がる

年収アップが見込める

戦略コンサルは、外資系を中心に年収水準が高いのが特徴です。公認会計士も、世間一般に言えば高収入な職業の部類ではあります。しかし、戦略コンサルへの転職により年収アップを実現する方は少なくありません。

転職した時点で年収アップを実現できるほか、成果を出せばスピーディに出世してさらに高収入を狙えるのが戦略コンサルファームの魅力です。ディレクター~パートナークラスまで昇進すれば、数千万円以上の年収を狙えます。公認会計士のキャリアで同程度の年収を実現するのは、相対的にハードルが高いでしょう。

クライアントに大きく貢献してやりがいを感じられる

戦略コンサルの方がクライアントに大きく貢献できる、やりがいを感じるという方は少なくありません。監査法人の基本的な仕事は帳簿や決算の正当性のチェック・アドバイスが中心です。これも大事な仕事ではありますが、クライアントの企業成長に果たす役割という観点では限定的です。

その点、戦略コンサルファームならクライアントの課題や目標と現状をふまえて、柔軟にソリューションを提案して課題解決を実現できます。クライアントの成長に果たす役割も大きく、それだけ大きなやりがいを感じる方が多いのです。

将来のキャリアが広がる

戦略コンサルの方が、将来のキャリアの広がりが期待できます。監査法人に長く従事するほど、経理や会計周りの職種以外の仕事にチャレンジするハードルが高くなる傾向があります。

戦略コンサルへ転職しておけば、経理・会計はもとより、戦略コンサルで扱うテーマによって多様な専門性を培うことができます。プロジェクトを通じて培った経験・スキルを活かせば、会計士よりも柔軟に将来のキャリアをデザインできるようになるでしょう。

会計士から戦略コンサルへのキャリアのデメリット

公認会計士から戦略コンサルに転職するデメリットは次の点です。

・戦略コンサルは会計士よりもスケジュールが不安定になりやすい
・会計知識が公認会計士ほどは強みにならない

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

戦略コンサルは会計士よりもスケジュールが不安定になりやすい

戦略コンサルは、公認会計士と比べるとスケジュールが不安定なのが特徴です。年間の労働量で言えば、公認会計士も監査法人やクライアントによって戦略コンサルにひけを取らないほど激務になる場合も少なくありません。

ただし、公認会計士は決算前など、繁忙期の傾向が比較的明確です。対して、戦略コンサルはプロジェクトの進捗状況やゴールのハードルの高さなど、さまざまな要因によって急激に仕事が忙しくなります。反面、プロジェクトの合間には研修くらいしかやることがない、という状態を一時的に経験する場合もあるでしょう。このように繁忙期・閑散期の落差が大きいのが特徴です。

会計知識が公認会計士ほどは強みにならない

戦略コンサルファームでは、会計知識は専門スキルの「一つ」に過ぎないため、公認会計士ほどは役に立ちません。会計士は、公認会計士の国家資格を持つ方だけが携われる専門職で、会計知識の深さや監査経験は重要な差別化要因となります。

戦略コンサルでは、さまざまな分野の専門性が求められます。会計・監査に関する知識は、その中の一つに過ぎません。他にも様々な専門知識・スキルが必要となりますし、案件によっては会計知識がほとんど活かせない可能性もあります。

会計知識だけでは付加価値を出すのが難しいことから、戦略コンサルに転職したあとは、貪欲に新しい分野の知識やスキルを吸収することが重要です。

会計士から戦略コンサルへ転職するときの対策や求められるスキル

会計士から戦略コンサルへの転職を成功させるための対策や、求められるスキルをまとめました。以下の内容を踏まえて「戦略コンサルの方が自分に合っている」と感じる方は、ぜひ参考になさってください。

戦略コンサルの仕事スタイルに「魅力を感じる」ことが第一

第一に、クライアントの経営課題を解決して、企業成長を実現するという働き方を理解し、それに魅力を感じることが重要です。公認会計士と戦略コンサルは、思考のプロセスや求められる成果が全く異なります。

事例にも見られるように、転職に成功する方の多くは両者の違いを理解していて、さらに戦略コンサルの方が「自分に合っている」と考えて転職活動に踏み出しています。戦略コンサルの仕事に魅力を感じた上で、その魅力やキャリアビジョンを面接で適切に説明できる方が、選考をスムーズに通過できるでしょう。

コンサルに求められるベーシックスキルは必須

公認に関する専門性は、それだけで戦略コンサルの選考を突破できるものではありません。コンサルで必要な、ベーシックスキルが高いレベルで備わっていることが選考通過の条件となります。

具体的には以下5つのスキルです。

①論理的思考力
②課題解決能力
③顧客とのコミュニケーションスキル
④プレゼンテーションスキル
⑤英語力

以上の全てにおいて、並外れた能力が求められるのが戦略コンサルです。監査法人で働く中でも、これらの要素を鍛える機会があれば、積極的に活用しましょう。

プラスアルファのスキル・経験は「どう活かすか」ビジョンを持つことが大切

M&Aや国際会計など戦略コンサルで役立つスキル・経験を強みとして選考を進める場合は「どのようにコンサルビジネスで活かすか」具体的なビジョンを持つことが大切です。30歳代となると、転職者でも即戦力となることが求められます。

コンサル未経験者が転職して即戦力となるためには「すぐに使える能力」を持った状態で「能力が発揮できるプロジェクトにアサイン」されなければなりません。

コンサルでは、選考段階で最初にアサインするプロジェクトの方向性がある程度絞られるケースも多いです。自分が付加価値をすぐに発揮できるプロジェクトに就くためには、専門性をどう活かして成果を出すのか具体化しておかなければなりません。そのうえで、自分が即戦力として役立つ理由を、面談の場でアピールする必要があります。

FASや総合コンサルファームを挟むのも1つの戦略

現時点で戦略コンサルの選考突破が難しいと感じる方は、一度FASや総合コンサルを経験するのも1つの戦略です。これらのコンサルファームは戦略コンサルとくらべて会計・監査の知識や経験がよりダイレクトに活かせます。選考も優位に進められるでしょう。

FASであれば、M&Aにおける資産価値算定やデューデリジェンスに関わるため、M&A領域の専門性を培えます。総合コンサルファームなら、会計・監査の知見を活かしながらコンサルとしての課題解決のための思考のプロセスの会得も可能です。

数年がかりの視点で戦略コンサルに転職しても問題ないという方は、FASや総合コンサルファームへの転職も併せて検討してみてください。

会計士から戦略コンサルへの転職は意欲とスキルが共に備わっていることが大切

会計士と戦略コンサルはいずれもハイレベルな職業ですが、仕事のスタイルが大きく異なります。そのため、会計士経験・知識が、戦略コンサルへの転職において大きなプラスとなるとは限りません。

監査法人と戦略コンサルの仕事のスタイルの違いを理解した上で、戦略コンサルの仕事ぶりに魅力を感じるかが重要です。若手の方であれば、コンサルに役立つベーシックなスキルや英語力があれば、強みとしてアピールできます。中堅の場合は、戦略コンサルですぐに役立つプラスアルファの専門性が求められるでしょう。

スキル・専門性に自信がない方は、FASや総合コンサルなどの会計士資格や経験が優位に働くファームを経験するのも一案です。今回の記事をふまえて、戦略コンサルへの転職に魅力を感じる方は、ぜひ転職に向けて自分なりに準備を進めましょう。

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>戦略コンサルタントや会計士のキャリアに関する記事

戦略コンサルと経営コンサルの違い【仕事内容や目的、求められるスキル、年収など】
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会計士からM&Aコンサル(アドバイザリー)へのキャリアパス(採用ニーズ~業務内容の違い~転職年収事例~選考対策~入社後の注意点まで)
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【事例】「会計系コンサルタント」特有の悩みとキャリアパス
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今回は、会計士から戦略コンサルファームへのキャリアについてお伝えしました。

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