「経理職から監査法人(公認会計士)へ転職して驚いたこと」とその違い【実話】

監査法人は監査を行うための法人であり、そこで働いている多くの人が公認会計士です。公認会計士が多く集まる監査法人には、監査法人ならではの文化や働き方があります。それは一体どのようなものなのでしょうか。

今回は、経理職から監査法人へ転職して驚いたことや一般企業と監査法人の違いについて、実際に経理職から大手監査法人へ転職された方の声をご紹介します。

【目次】

  1. チームごとに仕事の仕方や文化に大きな違いがある
  2. 年齢はほぼ考慮されない
  3. 監査法人では学歴・前職は様々
  4. 実務補修機関にて実務補修を受けることを、公認会計士業界では、「補修所がある」と言う
  5. 公認会計士登録の有無は、実務上は、あまり考慮されない(出世には関係あり)
  6. 正式な公認会計士登録はまだでも、クライアントから「先生」と呼ばれる(特にご年配のクライアントから)
  7. 決まった席がない
  8. 事務所は21時頃が一番混んでいる
  9. 監査法人では「社員」はパートナーのこと
  10. 食事について

チームごとに仕事の仕方や文化に大きな違いがある

監査法人ではクライアントやプロジェクトごとにチームを組んで仕事にあたります。
一方、会計監査については、監査基準や監査基準委員会報告書とよばれる規定などによってかなりのことが明文化されています。そのため、監査法人に入る前は、チームごとに仕事の進め方などが違ったとしても、一般企業での上司による違い程度のことだろうと考えていました。
しかし、実際はチームごとに別の監査法人なのではないかと感じるぐらい、チームによって仕事の進め方や文化などが異なります。この理由は、会計監査は職業専門家である公認会計士の専門的判断に基づいておこなわれる部分が多いためでしょう。

あるチームでは好意を持って受け止められる行動であったはずが、別のチームで同じ行動をとると上司や先輩から叱責されてしまうという場面も少なくありません。そのため、チームごとに仕事の仕方や文化にかなりの違いがあるという事実を楽しめる人や、そういった環境を勉強になると感じられる人が監査法人で働くことに向いています。
たとえそうとは思えなくとも、チームごとに仕事の進め方や文化が違うという現実には、最低限、慣れる必要があります。欲を言えば、やはり、チームの他のメンバーを観察し、特に上司がどういった考えや価値観でチームを運営しているのかを読み取れると良いでしょうか。

年齢はほぼ考慮されない

監査法人だけに限らず、公認会計士の世界は、一年でも公認会計士試験に早く受かった人が先輩です。年齢はほぼ関係ありません。そして、監査法人は、公認会計士試験に受かった年次もほとんど関係なく、一年でも早く監査法人に入ったら先輩(上司)です。

そのため、20代前半の女性が30代中盤過ぎの男性に「~君、前も言ったけどここはこうしなきゃダメだってば!」と、明らかに目下の人に使うような言葉で叱りつけるのは日常茶飯事です。これにも驚きました。そのため、年齢による上下関係を強く意識する方は、結構苦労することになるでしょう。

この文化は恐らく早く監査法人に就職できた人こそを大事にしたいという考えから出て来ているものだと推察されます。年齢による上下関係があまりに強いと、公認会計士試験に学生中に受かって卒業後すぐに監査法人に就職した人より、何年も浪人して受かった人が優遇されることになり、それは非合理だからです。一方、監査法人に至るまでの職歴や経験をもっと考慮すべきだとの意見もないわけではないのですが、現状、年齢はほぼ考慮されません。

監査法人では学歴・前職は様々

監査法人では、学歴はまちまちです。大卒の人が比較的多いですが、高卒の人は少なくありませんし、中卒の人もまれにいます。もちろん大学院卒の人も少なくありません。

前職も、国家公務員・大手企業のサラリーマン・金融機関・広告代理店などからプロボクサー、トラックの運転手、工場の警備員、無職、など多種多様です。

前職や学歴のことは、よほどのことがない限り、あまり考慮されません。学歴が高くないことや監査法人で働くまで無職だったから差別を受ける、というような話も聞いたことがありません。とにかく今の仕事さえできれば問題ありません。

実務補修機関にて実務補修を受けることを、公認会計士業界では、「補修所がある」と言う

公認会計士試験に受かると、正式に公認会計士登録を行う前に、実務補修機関にて実務補修を受ける必要があります。一般企業で働いていた時に、私が「今日、仕事の後に補修所があります。」と上司にいうと、「補修所はいつも同じ場所にあるに決まっている。それを言うなら、『補修を受ける』とか『補習授業がある』が正確な言い方だ」、と注意されました。

確かにこの上司のご指摘はごもっともなのですが、公認会計士業界では、そのような言い方はしません。細かいことですが、独特の文化です。

公認会計士登録の有無は、実務上は、あまり考慮されない(出世には関係あり)

監査法人はとにかく資格が物を言う世界という印象が多くの方にあると思います。たしかに会計監査を行うのは、公認会計士試験に既に受かっている人達です。

しかし、中には、公認会計士になるための実務経験を経た後で受ける最終試験(修了考査と呼ばれている)になかなか受からず、正式な公認会計士登録に必要な実務経験の期間は終わっているのに、公認会計士ではないという人が一定数います。実務が忙しすぎて、試験勉強をする時間がないのでしょう。

そのため、監査法人に入って3年過ぎたあたりで、正式に公認会計士登録をする(できる)人が多いのですが、修了考査に何回か落ちてしまい、監査法人に入ってある程度期間を経ているのに、正式には公認会計士ではないという人も、少数ですが、います。

そして、そういう人でも下の年次の人にとっては上司であり先輩です。実務さえできれば、あまり問題視されません。

公認会計士登録していないからと言って、いきなり公認会計士登録している人に抜かされて、後輩・部下扱いになるわけではありません。そういう意味では、公認会計士試験にさえ受かっていれば、公認会計士登録の有無は、実務上は、あまり考慮されません。

ただし、ある程度出世コースに乗るためには、公認会計士登録は必須であると言えます。

正式な公認会計士登録はまだでも、クライアントから「先生」と呼ばれる(特にご年配のクライアントから)

最近でこそある程度のキャリアを積んだ公認会計士に対してクライアントが「~さん」と呼ぶことが増えてきましたが、昔はほぼ必ずクライアントから「~先生」と呼ばれていたようです。これは正式な公認会計士登録がまだの新人に対してもそうです。

一方、今でも、新人の内から「~先生」と呼んで下さるクライアントも少なくありませんが、多くの場合、年齢をある程度重ねてらっしゃるクライアントが昔の癖・文化でそうして下さることが多いです。

年齢が自分より大分上であるクライアントから先生と呼ばれるのは、最初はなかなか慣れずに、ものすごく恐縮しますし、気恥ずかしい思いにもなります。もちろんしっかりと実務をおこなわなければならないと気合も入ります。

決まった席がない

大手監査法人の東京事務所では、決まった席がなく、座席は自由なのが通常です(地方事務所は決まった席があるそうです)。
そのため、空いている席に自由に座ります。決まった席がいつも用意されているのはパートナーと呼ばれる一番上の役職の方だけです。

事務所は21時頃が一番混んでいる

監査法人の繁忙期はもの凄く忙しいとよく噂を聞かれると思いますが、繁忙期でなくても忙しいと感じている公認会計士が多いのが実感です。一部の公認会計士は「監査法人には繁忙期と超繁忙期しかない」と冗談を言ったりしています。

私がいた事務所はクライアントに行っていた公認会計士が帰ってくる21時頃が一番混んでいて、定時の時間はむしろ比較的透いていました。

監査法人では「社員」はパートナーのこと

監査法人は会社法上の合名会社に準ずる組織形態です。合名会社では、会社法上、出資者のことを社員と呼びます。監査法人では、パートナーになるためには、監査法人に出資を行う必要があります。これは株式会社で例えれば、取締役になるのに株式を取得しなければならないというようなイメージです。株式会社の場合、出資は絶対に必要というわけではありませんが、監査法人では必ず出資する必要があります。

そのため、出資者でもあるパートナーのことを社員と呼びます。それ以外の人のことを呼ぶ決まった言い方はありませんが、従業員と呼ぶケースが多いでしょうか。

食事について

一般企業にいたときは、お昼休憩中は基本的に皆バラバラに行動し、食事も各自で自由に食べるのが基本でした。監査法人でも一部そういうチームもありました。
しかし、監査法人のほとんどのチームで、ほぼ必ずチームのメンバーと昼食を食べにいくことには、正直、「ある程度の年齢の男性同士が必ず一緒にご飯を食べるなんて」と驚きました。そしてなんと、出張にいった時は、朝昼晩と三食とも一緒に食べることになります。これには本当に驚かされました。

監査法人では、一般企業以上にそれぞれの個性が容認される面がある一方で、場面によっては一般企業以上の協調性が求められます。この食事の例は協調性が強く求められている場面であると言えるでしょう。

どういった場面で個性が容認され、どういった場面で個性より協調性が求められるのかは、チームによりけりです。少なくとも確実に言えるのは、どういった場面で個性が容認され、どういった場面で個性より協調性が求められるのかを、チームの他のメンバーを観察して読み取る力が必要であるということです。

その力がないと、監査法人の一員として特に仕事をするというわけでなくただ時間をすごすというだけで、かなりの苦労をすることになります。

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今回の記事では、「経理職から監査法人へ転職して驚いたこと」とその違いついて、実際に経理職から監査法人へ転職し、公認会計士としてご活躍される方の声をご紹介しました。

監査法人へのキャリアについてさらに詳細を知りたい方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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