アセットマネジメントで特に必要なエクセル(Excel)スキル、使用頻度の高いエクセル機能とは

アセットマネジメント業界では金融市場の動向分析や、運用商品のパフォーマンス計算などで頻繁にエクセルを使用します。

今回は投資銀行やコンサルと比較した上で、資産運用会社でのエクセルの使われ方や、求められるエクセルスキル、使用頻度の多いエクセル機能などをお伝えします。

【目次】

  1. アセットマネジメントにおけるエクセルの使用方法
  2. 求められるスキルは投資銀行・コンサルよりやや高い程度か
  3. 使用頻度の高いエクセル関数・機能①基本的な計算関数はいうまでもなくマスト
  4. 使用頻度の高いエクセル関数・機能②論理関数・論理構造を絡めた計算関数も必須
  5. 使用頻度の高いエクセル関数・機能③データ抽出・文字抽出や文字列結合などの関数も必要
  6. 使用頻度の高いエクセル関数・機能④金融特有の関数や計算手法
  7. 使用頻度の高いエクセル関数・機能⑤関数を組み合わせて自分が求めるデータを作成する能力
  8. 使用頻度の高いエクセル関数・機能⑥関数以外ではPIVOTツールを重宝
  9. 使用頻度の高いエクセル関数・機能⑦マクロ・VBAは個社状況・部署によっては必須な場合も

アセットマネジメントにおけるエクセルの使用方法

資産運用会社でのエクセルの使用頻度は非常に高いといえます。個々人が携わったディール、プロジェクトにもよりますが、実際にコンサルや投資銀行から同業界に転職された方々にお聞きしても、両者よりも「更に高い頻度で使用する」といった声が多い印象です。

コンサルの場合、経済分析関連などの特定のプロジェクトを除けば、金融市場の分析を行う頻度は少ないでしょうか。プロジェクトにより特定のデータ分析を行うこともありますが、コンサル全体として多いエクセルの活用例は、課題整理やプロジェクト進捗管理ツールとして使用する、もしくはクライアント向けのマトリクス系の成果物を作成する際などが挙げられます。エクセルの「計算」機能より「表」としての機能を活用することが多い印象です。

投資銀行では、エクセルは提案資料などを作成する際の土台となるシミュレーションやデータ分析に使用されることが最も多いといえます。金融市場の値動きや経済指標などをエクセル上で適切な形に加工したり、適宜シミュレーションや分析を行って、パワーポイントに表・グラフなどを貼り付ける工程が頻繁に発生します。

資産運用会社でもどちらかといえば投資銀行に近い使われ方をします。金融関連のデータを分析・集計して、パワーポイントにまとめるといった作業が多くなります。特に営業職ではパワーポイント資料作成の一環でエクセルを活用することが多いでしょう。

その中で投資銀行との差異を考えてみると、さまざまな資産やファンドのパフォーマンス分析をする頻度が非常に多いです。複数の市場指数(日経平均、ダウなど)やファンドなどを組み合わせてポートフォリオを作成して計算する場合もあるため、投資銀行より計算は複雑化する傾向にあります。

尚、営業職以外の場合は、パワーポイントでの資料作りの頻度は減ります。例えばファンドや運用状況の管理にかかる部署の場合は、エクセルの分析内容をメールやワードにまとめたり、エクセルのまま打ち合わせなどに活用するということが多くなります。

ファンドマネジャーなど運用担当者の場合も、エクセルで出た分析・シミュレーション結果はそのまま運用判断に活用されます。分析ツールや、分析内容と投資先の変更などを統合するシステムを自力で構築する会社もあるので、その場合は特に高いエクセルスキルが必要になります(ただし、エクセルというよりプログラミング能力が必要な場合もあります)。

②求められるスキルは投資銀行・コンサルよりやや高い程度か

一般的に資産運用会社では投資銀行・コンサルより高いエクセルスキルが要求されます。運用担当者以外の場合は「高い」といっても使いこなす関数の種類が多いという程度ですが、運用担当者の場合は、かなり高いエクセルスキルを必要とする場合もあります。

営業職については投資銀行のようにエクセルで金融市場やファンドデータを分析し、表やグラフにまとめてパワーポイントの素材にする、というパターンが多くなってきます。ただし投資銀行と比較して、特にファンドのパフォーマンス計算や、シミュレーションなどの部分で複雑な計算を組む頻度が高くなります。

複数の資産の最適投資比率の算出や、為替ヘッジの実行、手数料の計算など、さまざまな要素をファンドパフォーマンスに埋め込んでいくと、いつの間にか膨大なデータ量の複雑なエクセルシートを作成していた、というパターンがしばしばあるようです。

具体的な関数の例は後ほどいくつか紹介しますが、使用する関数も投資銀行と比較してやや多くなり、膨大なデータを、エクセル関数を効率よく用いて自分の求める形に加工するのには慣れとセンスが必要でしょうか。証券アナリスト・証券分析の分野などで培った金融知識をスムーズにエクセルに応用するスキルも重要になります。

ファンドや資金の管理部門においては、パワーポイントにデータを起こすという作業は相対的に少なくなりますが、ファンドや資金の動きが正常に行われているか確認する上で、ファンドのパフォーマンス計算などはより厳密に正確な計算能力が求められます。また、必須というほどではありませんが、仕事の領域によっては膨大な事務作業を簡略化するためにマクロなどを自力で組むことができた方が良い場合もあります。

運用担当者の場合は、先にも紹介した通り、社内のツールの整備状況によって要求されるエクセル水準が異なりますが、最低でも先に紹介した運用部門と同じように、ファンドのパフォーマンスを自力で計算・分析する能力が必要です。

また、運用管理自体をエクセルに依存している場合には、自分でプログラムを組んでシミュレーション内容・分析内容などを実際の資産配分に役立てるようなツールを作成したり、必要に応じて調整したりする能力が求められるケースもあります。この場合はVBAによるプログラミングスキルが要求されることになります。

一方、近年では分析・シミュレーションと運用を統合して管理する独自のツールなどが構築されている運用会社も珍しくありません。この場合、エクセルスキルは突出して高い必要はなく、運用担当者以外の資産運用会社の社員と要求水準は同程度でしょう。一方で、自社の独自ツールをメンテナンスする必要がある場合は、プログラミングのスキルが要求される場合もあります。

使用頻度の高いエクセル関数・機能①基本的な計算関数はいうまでもなくマスト

続いては、資産運用会社で使用頻度の高いエクセル機能について、ベーシックなものから順に紹介します。

まず一般的なオフィスでもしばしば使用されるであろう、四則計算(特に合計のsum関数)、平均は常に使います。シニアのマネジメント層にでもならない限り、エクセルを開かない日はあまりないので、基本的な計算は当然できるようにしておきましょう。

使用頻度の高いエクセル関数・機能②論理関数・論理構造を絡めた計算関数も必須

資産運用会社では膨大なデータの中から必要なものだけを抽出して計算するシーンが非常に多いです。例えば、1000銘柄の世界中の有価証券に投資しているファンドのうち日本の資産部分のパフォーマンスだけを抜き出して計算する、といった具合です。

1000個から目視で日本の資産だけ抽出するわけにはいかないので、いわゆる論理関数ifやifと計算が組み合わされたsum if、averageifなどが活躍します。もちろんand、orといった基本的な論理関数も頻繁に使用します。

使用頻度の高いエクセル関数・機能③データ抽出・文字抽出や文字列結合などの関数も必要

金融市場やファンドのデータはそのままでは自分の求める集計や分析に活用できない、もしくはデータをいちいち手で抽出すると非常に手間がかかる場合があります。その中でvlookupやhlookupといったデータ抽出の関数は非常に有効です。これらの関数は工夫次第でそれなりに複雑な条件でデータを抽出することも可能なので重宝します。

そのほか、セルの一部の文字を抽出するmid、文字列結合のconcatenateといった関数もしばしば使われます。例えば日付の表記形式など、データの形式が合わない場合などに、自分でデータベースを作成する際などには、こうした文字抽出や文字列操作の関数を活用してフォーマットを揃えていきます。

この辺りはエクセル関数に慣れているかどうかで個人差が出てくるところです。もし使用したことがない関数がある場合は初級レベルのエクセル参考書などで用途を確認しておいた方が良いでしょう。

使用頻度の高いエクセル関数・機能④金融特有の関数や計算手法

ファンドや特定の指数などのパフォーマンスを評価するときは、リターン・標準偏差、特定の資産との相関係数などを計算します。また、複数の資産を組み合わせたポートフォリオの標準偏差の計算には共分散が必要になります。エクセル関数の知識だけでなく統計や金融の予備知識が必要なので、合わせて学習しておくと良いでしょう。

標準偏差はStdev関数、相関係数はCorrel関数、共分散はCovariance関数です。これらは知っていさえすれば活用は容易ですが、金融分野でなければあまり使用しない関数でもあるので、使い方を一通り覚えておくと良いでしょう。

使用頻度の高いエクセル関数・機能⑤関数を組み合わせて自分が求めるデータを作成する能力

ここまで紹介してきた代表的な関数について、ただ知っているだけでは充分ではありません。資産運用会社のシミュレーション・分析はしばしば複雑な計算や、さまざまなデータの抽出が必要となりますので、ここまで紹介した関数の一つや二つ使うだけでは求めているデータ作成ができないこともしばしばあります。

そのため、ここまで紹介したような基本的な関数を組み合わせて、自分が求めている計算を組み上げる応用力が重要です。一見不可能に見える複雑な計算が、実は基本的な関数をいくつか組み合わせることでできるということがしばしばあります。

使用頻度の高いエクセル関数・機能⑥関数以外ではPIVOTツールを重宝

関数以外で重宝するのがPIVOTツールというベーシックな集計機能です。一般的なオフィスでも使用頻度は少なくないと思いますが、資産運用会社では、例えばポートフォリオの組み入れ資産の集計などにおいて、膨大な銘柄から特定銘柄を抽出したり、あるいは集計したりする際などに使用します。

関数を無理して組むよりもPIVOTシート作成して集計させた方が楽なことが多々あります。入社すると既にPIVOTが構築されたファイルを操作しなければならないことも多いので、PIVOTも覚えておく必要があるツールの一つといえます。

使用頻度の高いエクセル関数・機能⑦マクロ・VBAは個社状況・部署によっては必須な場合も

マクロやVBAでツールなどを自ら構築するの能力は、営業職の場合は「あったら便利」な程度で、なくても仕事を行うことは可能です。

管理部門の場合も多くの場合はなくても転職可能ではありますが、時折管理用の簡易ツールなどをVBAで構築して使用していることがあります。その場合はツールを修正したり、自力で更新する能力が必要です。

運用担当者の場合は、運用手法にもよってくるのですが、自分が考える運用資産の分析手法や分析手法をもとにした資産配分などを効率化するために、自らエクセルで運用ツールを組み上げている場合があります。その場合は、実質的に自分でVBAを操作してツールを構築する能力が必須です。

ただ、pythonなど別のプログラミング言語を使用して構築することも多いようで、エクセルのVBAを使いこなす必要があるかどうかは、個社の状況により異なるというのが実情です。

=================

>資産運用会社へのキャリアに関する記事

投資銀行(IBD)と資産運用会社(アセットマネジメント)の違い【両セクターの経験者に訊く】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankassetmanagement

コンサルファームから資産運用会社(アセットマネジメント)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consultanttoassetmanagementfirm

=================

今回ご紹介したように、資産運用会社は投資銀行やコンサルと比較してエクセルの使用頻度が高いといえます。より多くの関数を知っておく必要があるだけでなく、知っている関数を柔軟に応用して計算する能力が求められます。

経験がものをいう部分も大きいため、未経験者で資産運用会社への転職を検討している方は、まずは今回ご紹介したようなエクセル関数や機能について一通り把握しておき、残りは転職後にキャッチアップしていくのが良いでしょうか。

アセットマネジメント業界の求人をご希望の方、キャリアを考えている方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。

各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。

新規会員登録はこちら(無料)

カテゴリー、タグで似た記事を探す

こちらの記事も合わせてご覧下さい

アクシスコンサルティングは、
プライバシーマーク使用許諾事業者として認定されています。


SSL/TLSとは?

※非公開求人は約77%。求人のご紹介、キャリアのご相談、
企業の独自情報等をご希望の方はぜひご登録ください。

新規会員登録(無料)

※フリーランスのコンサルタント向けキャリア支援・
案件紹介サービス

フリーコンサルの方/目指す方。
×