コンサルティングファームと投資銀行(IBD)の違い【両者の経験者に訊く】

コンサルティングファームと投資銀行(IBD)はプロジェクトベースのビジネスフローや、クライアント企業の根幹である財務や経営戦略に関われる、と言った類似点から、似たようなビジネスを行なっているというイメージを持たれる方も多くいらっしゃいます。

コンサル、IBDのいずれにも関わりがない方からすれば「同じような仕事をしている」、と考えている方も多いですし、いずれかの業務経験があった方ですら、「異なるであろうことはわかるが、どのように異なるのか具体的には説明できない」という方も少なからずいます。

そこで今回は、コンサル・IBD双方で働いた経験を持つ方々のお話を参考に、「コンサルでできてIBDでできないこと」と、逆に「IBDでできてコンサルでできないこと」をビジネス領域の観点から分けることで、両者の違いについて簡潔に説明します。基本的な箇所も多いですが、ぜひご参考ください。

【目次】

  1. コンサルでできて、IBDでできないこと①:IT関連のプロジェクト
  2. コンサルでできて、IBDでできないこと②:企業内部の「細かい」プロジェクト
  3. コンサルでできて、IBDでできないこと③:「お金」が動かないプロジェクト
  4. IBDでできて、コンサルでできないこと①:大型のM&Aディール執行
  5. IBDでできて、コンサルでできないこと②:会社の併合・分割を伴う組織変更の完遂
  6. IBDでできて、コンサルでできないこと③:財務戦略の実行

コンサルでできて、IBDでできないこと①:IT関連のプロジェクト

IBDからコンサルティングファームへ転職されると「ITを取扱うプロジェクトが想像以上に多い」ことに驚かれる方が多い印象です。「IBDでは取り扱わないIT領域の知見のなさに苦労した」という声もよくお聞きします。

コンサルティングファームでは、IT系を強みとしているファームはもとより、戦略系ファーム・組織を含め、現在では多くのプロジェクトにおいてITが絡みます。IT導入を主要課題としているプロジェクトはいうまでもありませんが、プロジェクトの目的が直接的には「IT導入」でない場合も、業務効率化、企業の次世代戦略の策定、組織改革、いずれにおいても様々な局面でITのノウハウが必要になることが往々にしてあります。

ITの力が必要となる場合、社内の専門家やIT部隊を頼る、もしくは時には外部のSIerをプロジェクトに組み入れるなどして課題の解決に取り組みますが、あらゆるコンサルタントに一定のIT知見が求められるのが実情です。

一方、IBDでは「ITツールの導入といったITプロジェクトを行うことはありえない」ようです。「そもそもSIerとディールの中で関わることなんて皆無」という声もお聞きします。

コンサルでできて、IBDでできないこと②:企業内部の「細かい」プロジェクト

IBDが収益をあげるには、何らかの形でまとまった資金、もしくは株、債券などの有価証券を動かす必要があります。コンサルティングファームと異なり、ディール完遂時の手数料が収益となるビジネスのため、自然とワンショットで大きな規模のビジネスを行うことが重視されます。

そのため社内の変化だけにとどまる組織変更、業務効率化、コスト削減戦略などといった「規模は大きくなりにくいがクライアントにとっては重要」なプロジェクトは専らコンサルの領域になりがちです。「この中でIBDが入れる余地があるとすれば、親子会社関係やグループ企業関係の変化を伴う組織変更くらい」とのことです。

IBDからコンサルティングファームへ転職された方からは、「IBDはビジネスの規模を大事にせざるをえないので、コンサルで地道ながらクライアントに喜ばれる中小規模のプロジェクトを長期間行うのは苦手だった」という声をお聞きすることも多い印象です。コンサルは使用したコンサルの人数×期間で収益が決まるため、期間さえ長ければ、IBDと比べると規模の大きさはあまり問題にならないケースもあります。

「いざコンサルファームに入ってみると、こうした企業内の「小さな変革」をもたらすプロジェクトが驚くほど多かった」という声もよくお聞きします。また、パイプの強いクライアントになると、同時にいくつもの細かいプロジェクトが走っていることも珍しくありません。

コンサルでできて、IBDでできないこと③:「お金」が動かないプロジェクト

それでは規模が大きければいいのか?というと、企業の命運を握るような大きなプロジェクトだからといってすぐにIBDの領域になるわけではありません。IBDで重要なのはあくまで「お金がどれだけ動くか」ですので、たとえクライアント企業にとって社運をかけるような重大なものでも、あくまで「資金が動く」もしくは「企業体が変わる(ことによって株や債券が動く)」ことがなければ、IBDが手を出す余地はほとんどありません。

そういった点で特にコンサルの専売特許となるのは「企業の中期経営計画の策定」など全社的な経営戦略を引くプロジェクトです。こうしたプロジェクトは企業にとっては重要かつ大規模なものとなりますが、経営計画を建てたからといって即座に資金調達が発生したり、企業を買収したりいったイベントが起こることは基本的にありません。M&AにおけるPMIなどはまさにコンサルティングファームの領域となります。

IBDでもM&Aに入る社員などの中には企業戦略に関わることを期待してしまう方も稀にいらっしゃいますが、M&Aはあくまで経営戦略を実現するために取られる『戦術』にあたるものであって、経営戦略とは別物でしょうか。

ここまでをまとめてみると、コンサルの方がビジネスで関わることのできる領域は明らかに広く、クライアント企業の内部に関わる余地も大きいと言えます。それもそのはずで、IBDはあくまで金融機関ですので、企業のファイナンスが関わる分野でなければビジネスができる余地は限られてしまいます。

しかしながら、逆にファイナンスが関わる場合は、投資銀行によるディール執行が欠かせません。大きな規模の資金を動かす必要がある課題になると、今度はIBDの本領発揮となります。

IBDでできて、コンサルでできないこと①:大型のM&Aディール執行

コンサルもIBDも、M&Aのプロジェクトは多数持っています。M&A専属の部署やチームが会社内にあることも珍しくありません。

しかしながら、M&Aプロジェクトの中で、実際に買収を実行する部分はIBDでなければできません。ご存じの通り、M&Aは双方の株式交換を行なうか、一方が他方の株式を買い付けることで成り立つものですが、このビジネス自体は金融業、実質的には投資銀行+銀行の組み合わせがなければできないためです。

一般的に、コンサルティングファームがM&A関連のアドバイザリーを行なう場合、「M&Aを行なう」ことを経営戦略に組み込む、買収先を選ぶ、買収先の価値を評価する、といったところまではできますが、実際の売買執行を行なうには金融関連の免許が必要となり、コンサルファームは通常その免許を持ってない一方で、実はコンサルが担う一連のM&Aアドバイザリーは投資銀行も行なうことができます。

コンサルからIBDに転職された方の中には、「M&Aを一から十まで知りたいならばIBDの方がいい」と仰る方も一定数います。ただし、あくまでも「大型の」と訳注を付けている理由は、M&Aは労力も大きいことから、ディール完遂時の手数料収入がメインとなるIBDでは中小型の案件にはフォーカスしにくいという背景があります。

IBDでできて、コンサルでできないこと②:会社の併合・分割を伴う組織変更の完遂

先ほど「コンサルができること」の中で社内での規模の小さい組織変更はコンサルの専売特許と書きましたが、逆に会社の分割や併合を伴うような組織変更は「IBDが入らなければ完遂は難しい」という意見も多いです。

現在は、一定の規模以上の企業になると、多数の子会社が数珠つなぎのように集まって1つの企業を成していることが珍しくありません。組織変更がある程度大きい規模になると、1つの企業グループ内の子会社同士の分割や併合を伴う場合があります。

恐らく外から見れば、これは企業内の組織変更に見えるのですが、会社が跨っている場合には基本的にそれぞれが株式を発行して運営されているので、実際にはM&A同様に、証券の売買、金銭の移動が発生します。

この場合も、コンサルは組織の変更案を策定することはできますが、最終的な組織変更の執行フェーズで、株式の移転や分割・交換などが発生する場合はIBDが絡む必要があります。

組織変更に伴う会社の売買はいずれも1つの企業グループの中で起こるため、いわゆる典型的な企業買収より簡単に済むケースが多いようです。従って「IBDの営業部隊にあたる事業法人部やコーポレートファイナンスといった部署は、意外にこうした会社の売買を伴う組織変更のディール提案には長けている」ため、大規模な組織再編となると、実はIBDが得意な領域となります。

IBDでできて、コンサルでできないこと③:財務戦略の実行

IBDというのは良くも悪くも究極的には会社の有価証券の売買を取扱うビジネスです。とくに企業の財務戦略が形をなす上で欠かせない株、債券などの有価証券の発行は「IBDの本分であり専売特許」となります。

IBDが株式発行のためのディールを行うことは想像に難くありませんが、コンサルからIBDに転職された方から、「IBDで働いた時に意外だったのは、社債調達が想像以上に頻繁に行われていること」という声もお聞きします。一般的な傾向として大企業になればなるほど社債調達の頻度は高く規模は大きくなります。中には1年間で5回以上も債券を発行するような企業もあります。

こうした資金調達について、財務状況やビジネス環境、金融市場の環境全てを加味して企業に財務戦略の提案を行い、かつそれを実際にディールとして実行することは、IBDだけが可能です。「コンサルでも財務戦略を策定するプロジェクトはもちろんあるが、結局は最適な自己資本比率や、それを達成するために必要な資金調達金額を策定するところで終わってしまう」とのことです。また、コンサルでも可能なこの領域の提案はIBDでも可能です。

さらに、IBDであれば、大枠の戦略を立てた後に、具体的にいつ、どのような有価証券で資金調達を行うかを提案することができ、またIBD自身で実際にクライアント企業の資金調達を完結させるところまでコミットできます。

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<投資銀行のキャリアに関する記事>

投資銀行(IBD)と資産運用会社(アセマネ)の違い【両セクターの経験者に訊く】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankassetmanagement

コンサルティングファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank

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今回は、コンサルティングファームと投資銀行(IBD)のビジネス領域に焦点を当て、両者の違いについて簡潔にご説明しました。

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