FASからPEファンドに転職して活かせるスキル・キャッチアップが必要なスキルとは

今回はFASからプライベートエクイティファンド(PE)に転職した際に活かせるスキルや、実際に入社後にキャッチアップが必要なことについてご紹介します。

Big4 FASでは部門がデューデリジェンス、バリュエーション、M&Aアドバイザリーチームで分かれていることが多く、それぞれプライベートエクイティファンドで働くことになった際に、活かせるスキルとキャッチアップが必要な点についても実例を含めてご説明します。

【目次】

  1. 活かせるスキルその①:財務分析・会計知識・税務ストラクチャーの知識
  2. 活かせるスキルその②:バリュエーション・財務モデリングスキル
  3. キャッチアップが必要なこと①:英語力
  4. キャッチアップが必要なこと②:バリュエーションや財務モデリングのスキル
  5. キャッチアップが必要なこと③:バリューアップ支援の実務

活かせるスキルその①:財務分析・会計知識・税務ストラクチャーの知識

FASからプライベートエクイティファンドに転職した際に活かせる基礎的なスキルとして、財務分析と会計知識および税務ストラクチャーの知識があります。FASでの業務に財務デューデリジェンスがありますが、財務デューデリジェンスでは、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフローなど財務3表に関してM&Aで論点になる正常収益力やネットデット、運転資本等の項目を詳細に分析することになり、総合的な会計の知識を活かすことが多いです。

プライベートエクイティファンドが実際にディールを実行する際は買収時にデューデリジェンスを外部のファームに頼む前に初期的な検討・分析を行うことが多く、その際にFASのデューデリジェンスチームでの財務分析や税務ストラクチャーの検討経験が活きます。

特にM&Aのディールで論点になる財務諸表や会計上の項目(EBITDAの調整項目やネットデットをどの範囲まで見込むか)でディール実行時の財務上のリスクを勘案することができ、提案資料や実際のディールで投資委員会向けの資料を作成する際にバリューを発揮することができます。

実際の財務分析では対象会社の財務諸表を取得した際に過去数年間にわたる損益計算書の売上高成長率、利益率をサマリーとして作成し、貸借対照表項目に関してもネットデットや運転資本などの項目を分析することが多くなります。

プライベートエクイティファンドでもピッチブックなどの提案資料を作成しますが、そのような時においても、財務分析と後ほど説明するバリュエーション・財務モデリングは必ず必要になります。財務デューデリジェンスもしくはバリュエーション・財務モデリング経験がある人であれば、FASからプライベートエクイティファンド入社後にすぐにバリューを発揮できる部分でしょうか。

税務ストラクチャーについては、ファンドが買収する際に税金によるキャッシュアウトを避けるために税制適格のストラクチャーを検討する必要がありますが、会社法や法人税法の細かい知識や組織再編税制に詳しいFAS出身者は投資銀行のみならずプライベートエクイティファンドにおいても活躍できる可能性が高いです。

活かせるスキルその②:バリュエーション・財務モデリングスキル

FASのバリュエーションチームにいる方であれば、類似上場会社比較法、類似取引比較法、DCF法、市場株価法、人によってはLBOモデル等プライベートエクイティファンドの実務で使用するバリュエーション・財務モデリングのスキルや経験も一通り備えているでしょうか。

プライベートエクイティファンドではバリュエーションや財務モデリングの業務遂行において類似上場会社のマルチプルを計算したり、基礎的な財務モデルの作成・LBOモデル作成することが非常に多いため、FASで基礎及び応用のスキルセットを備えている方は重宝されます。なお、プライベートエクイティファンドではDCF法でバリュエーションを行うことは非常に少ないのでその点は留意する必要があるでしょうか。

FASのバリュエーション・財務モデリングチーム、もしくはM&Aアドバイザリーチームに所属している方であれば財務3表モデリングやLBOモデリングのスキルは備えている方が多いと思われ、特に財務モデリングはプライベートエクイティファンドでは対象会社の財務諸表を財務3表モデルで事業計画の期間でシミュレーション・リターン計算する際に必須のスキルです。

実際にプライベートエクイティファンドがディールを検討する中で社内のシニアマネジメントや、投資委員会向けに投資提案内容を提示してディスカッションをすることも多くなります。

ゆえに財務モデルを作成するだけでなくディスカッションマテリアルなどの資料作成の経験があるFAS出身者であれば、スキルセットとしては投資銀行出身の方とそん色ないと思われることもあります。

なおFASでは財務モデル専属チームを備えているファームもあり、そのようなチームに所属している方であれば、財務モデリングやLBOモデル作成のスキルは高いと判断されプライベートエクイティファンドでの採用可能性・入社後も様々なプロジェクトで財務モデルを作成するなどの活躍が期待されます。

なお、FASで財務デューデリジェンスの経験しかない人であれば、バリュエーションのスキル同様に、財務モデル作成スキルについても入社後にキャッチアップすることが大事になりますので、その点は留意が必要です。

キャッチアップが必要なこと①:英語力

続いては、FAS出身者でキャッチアップが必要なスキルに関してご説明します。まず英語力が挙げられます。FASの財務デューデリジェンスやバリュエーションチームですと、クロスボーダー専属チームに配属されない限り国内案件が多くなりがちで、なかなか英語を使用する機会もないといった方も多いです。

一方でプライベートエクイティファンドの場合、外資系だけでなく日系プライベートエクイティファンドでもクロスボーダー案件を扱うことが多いです(特に投資先企業が海外展開をする場合、海外企業の買収を検討する場合等)。

もちろん外資系のプライベートエクイティファンドでは更に英語の使用頻度は多く、投資委員会向けの資料作成、海外の同僚とのコミュニケーションなどで英語力が求められます。

他にも、投資先の企業を売却するなどエグジットの局面で、カウンターパートのプライベートエクイティファンドや事業会社が海外にあることも多く、交渉やファイナンシャルアドバイザーとのコミュニケーションにおいて英語の使用頻度は多くなる傾向にあります。

海外の担当者とのメールのやり取りや英語での資料を読解、ディスカッション資料も場合によっては英語で作成する必要があるなどプライベートエクイティファンドでの業務では高い英語力が要求されるケースも多くあります。

また、外資系プライベートエクイティファンドでは、日本国内への投資案件で投資先のマネジメントとのコミュニケーションは日本語になりますが、投資委員会向けの資料作成やコミュニケーションは英語になります。それ以外にも電話会議で英語を使用する機会も多くなり、当然ながら社内で外国人バンカーとコンタクトする場合もあります。
そのため、外資系プライベートエクイティファンドでは面接の際に、日本人の面接官でも英語での問答が行われるケースもあります。

ゆえに入社前に英語のスピーキングスキル等を鍛えておく必要があります。例えば、FAS出身者でも生きた英語力を得るという目的も兼ね、有名海外大学のMBAを取得してからファンドに入社する方も多くいます。

キャッチアップが必要なこと②:バリュエーションや財務モデリングのスキル

先ほど説明したFAS出身者がすぐに活かせるスキルのうち、財務モデル・バリュエーションスキルに関してですが、十分な経験をFAS在籍中に積めなかった場合、仮にプライベートエクイティファンドに転職・入社できたとしても早急なキャッチアップが必要になります。

転職時の面接では、バリュエーションやコーポレートファイナンスに関する基礎的な知識の確認、財務モデル・LBOモデルの作成テストが課されますが、実際に入社後にエクセルワークがしっかりできるかはまた別の問題になります。

このようなハードスキルに関して、プライベートエクイティファンドに入社後、周りが積極的に教えてくれるわけでもなく、コロナ以降のテレワーク主体の環境では、隣にいる先輩などからLBOモデル作成や財務モデリングワークを間近で学ぶ機会も少なくなっており、自主的にスキルを高める挙動が必要です。

最近ではTraining the Street, Wallstreet Prepなど、財務モデリング講座を配信しているウェブサイトも多くあります。特にプライベートエクイティファンドで最も重要なLBOモデルのテンプレートは有料になっており、その多くが比較的高額になるため、スキルに自信がない方はある程度自分で学習するという気持ちが必要です。

キャッチアップが必要なこと③:バリューアップ支援の実務

また、プライベートエクイティファンドによる投資後、投資先に常駐してバリューアップ業務を遂行することも多いです。ここでは投資先企業のモニタリングや、場合によっては戦略コンサルティングファーム出身の上司や同僚と協力して、投資先の企業のバリューアップ戦略策定を行う必要があります。

実際に例を挙げると、人事制度の修正や、KPIの設定等が挙げられます。こちらに関しては単独で行うより外部のコンサルタントや、社内の経営企画の人を交えて業務を進めながら、学び取る必要があります。

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>プライベートエクイティファンドへのキャリアに関する記事

公認会計士からPEファンドへのキャリアパス【入社前後に役立つスキル・経験】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/accountanttope

コンサルから投資ファンドの転職で求められるスキルとは?
https://www.axc.ne.jp/media/column-career-change-case/investmentfund

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投資銀行出身者ほどではないものの、FASからプライベートエクイティファンドに転職される方は一定数おり、入社後もスムーズに活かせるスキルもある一方で、英語やバリューアップの局面において追加的な知識やスキル獲得・キャッチアップが必要なものも多くあります。

特に財務モデリングやバリュエーション、コーポレートファイナンスの知識・経験については外資系投資銀行出身者に劣ってしまう可能性も若干ありますので、常にスキルや経験値のキャッチアップを意識しておく必要があります。

いずれにしてもプライベートエクイティファンドに転職する場合は常に学習・インプットして自分のものにしていく姿勢は極めて重要です。

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