FAS M&Aアドバイザリーと経営企画のM&A業務でできることの違い

ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス、いわゆるFASと呼ばれるM&A専門の組織でM&Aに携わる場合と、事業会社の経営企画でM&Aに携わる場合では、同じM&Aの領域でも得られる知識や経験が異なります。

FASではクライアントから依頼で案件を進めることになりますが、事業会社では実際に自分たちが中心となって案件を進めることになります。FASはクライアントから依頼を受けて業務を行うため、より専門性の高い業務を行う必要があります。今回は、FASのM&A業務において身につけることができること、身につけられないことそれぞれについて紹介していきます。

【目次】

  1. できること(身に付けられること)①:M&A取引における専門知識や経験
  2. できること(身に付けられること)②:M&Aスキームの知識や経験
  3. できること(身に付けられること)③:会計コンサルとしての資料作成スキル
  4. できないこと(身に付けられないこと)①:業界・会社特有の知識
  5. できないこと(身に付けられないこと)②:M&Aの元となる戦略・事業計画策定
  6. できないこと(身に付けられないこと)③:PMIの経験やスキル

できること(身に付けられること)①:M&A取引における専門知識や経験

FASにおいて身に付けられる経験や知識として、M&A取引に関わる専門知識や経験があげられます。具体的にはM&A取引の流れやポイント、デューデリジェンスやバリュエーション、契約書などの専門知識や経験を得ることができます。
M&A取引を頻繁に行っている事業会社であれば基本的な知識は得ることができるかもしれませんが、これらのM&Aに関わる専門的な内容については事業会社ではなかなか身につけることはできません。

部門にもよりますが、デューデリジェンスやバリュエーションといった専門的な知識はM&Aを専門にしている会社で、かつ、その専門ラインに入らなければ身につけることができません。教科書的な内容は事業会社でも得ることができますが、実務に落とし込んだ内容やトレンドとなると本などだけでは難しく、実務での多数の経験が重要となってきます。

また、契約書の内容などは事業会社でも目にしますが、より詳細な内容や希望する条件を契約書に落とし込むなどは専門家が行なっており、事業会社で法律の専門的な知識を身に付けるのはなかなか難しいと言えます。事業会社では案件を進めるにあたって盛り込みたい情報を専門家に伝えることで契約書に折り込んでもらいます。法律的な考え方は専門家の分野となるため、FASなど専門機関で身に付けることができる内容となります。

そのほか、M&Aにおいては初期的な分析を行いますが、これも事業会社ではなかなか得られない知識です。数多くの案件にあたり、数多くの会社の分析などをすることでM&Aにおける初期的な分析能力を身に付けることができます。そのため、M&Aに関連する初期的分析能力はFASでの特有のスキルと言えるでしょう。

できること(身に付けられること)②:M&Aスキームの知識や経験

FASにおいて身に付けられる経験や知識として、M&Aスキームの知識や経験があげられます。M&Aのスキームには、株式譲渡、事業譲渡、合併、株式交換、株式移転などさまざまな方法があります。
これらの方法にはそれぞれメリット、デメリット、必要な手続きがあります。それぞれの取引に応じて最適なスキームを選択していくことになります。スキームについては税務面や法務面、会計面などそれぞれの分野に影響するため、各専門分野の専門家が見ていきます。専門家の見地から検討されることが多い内容であるので、事業会社ではなかなか身に付けることができません。

株式譲渡がオーソドックスなやり方でよく用いられる方法となります。しかし、大企業同士の経営統合の場合や簿外債務が懸念される場合、連結納税を導入している場合などそれぞれの状況で最適なスキームは異なります。ケースによって採用できるあるいは最適なスキームが異なります。さまざまなスキームの中で、どれが採用できるあるいは最適かなのかは実務の中で数多くの経験の中で身に付くものになります。これらはFASだからこそ身に付けることができる知識や経験となります。
なお、スキームの中でもさらに専門性を磨きたいと考える場合には各分野の専門家のファームの方が優れています。

M&Aを数多く実施している事業会社でも案件数は多くあるかもしれませんが、同じような条件の案件が多くなるため、用いるスキームは限られます。そういった観点からも経営企画よりもFASの方がさまざまなスキームにあたることができ、スキルを身に付けることができます。

できること(身に付けられること)③:会計コンサルとしての資料作成スキル

FASにおいて身に付けられる経験や知識として、資料作成スキルがあげられます。
FASでは専門家としてクライアントからのニーズを満たした資料を作成する必要があります。また、M&Aにおいてはスケジュールが短いことが一般的になります。ここで、ポイントが2つあります。それはニーズを満たした資料の作成と短期間の資料作成となります。

まず、ニーズを満たした資料の作成についてみていきます。
クライアントのニーズを読み取り、クライアントの悩みを解決した成果物を提出することになります。クライアントに提出する成果物は当然ながら綺麗に作成したもので読みやすさや見やすさ、理解しやすさを考えられたものとなります。
そのためには資料の構造、精度、さらには色使いや表の一覧性などあらゆる面で気を使い、正確でわかりやすい資料にしていきます。これらはお客様がいるからこそ考えて作成されるものであり、FASなどの専門家だからこそ身につけることができる知識や経験となります。

また、M&Aにおいては期間が短く、成果物提出までは短納期になりがちです。
資料作成においてはExcelやPowerPointを使って作成していくことになります。短納期で正確な資料を作るため、特にExcelなどは精度の高いシートを短納期で作成していく必要があります。これらはさまざまな案件や資料を見ていく中で身につけることができるものであり、FASでの特有の知識や経験となります。

できないこと(身に付けられないこと)①:業界・会社特有の知識

ここからはFASにおいて身に付けることができない経験や知識になります。
身に付けることができない知識や経験として、業界や会社特有の知識があります。もちろん専門家としてさまざまな案件や業界にあたるため、得られないことはないものですが、より専門性の高い業界の知識や実務慣行となると、事業会社の方に知見がたまっています。
業界の実務慣行など出回っているものもありますが、全てが全て出回っておらず、外部に出せないものもあります。そのため、このようなものは外部には出ず、会社内にたまっていきます。業界特有の実務慣行などは事業会社の人の方が詳しいということは多くあります。

また、競合他社なども外部の情報から専門家として判断することができますが、実際には事業会社で意識している競合他社が異なることもよくあります。取り扱っている商品や取引先など実務上ではどの市場が被っているなど、さまざまな観点から競合他社を判断しており、意識しているためです。

同じ業界でも会社によって戦略や方針などは異なります。そのため、重視している経営指標などは異なり、着目ポイントなども異なります。会社ごとに異なることで各社の特徴ができ、強みになっています。もちろんこれらも外部に出ることなく、社内で蓄積されるのでFASではなかなか身に付けることはできません。

できないこと(身に付けられないこと)②:M&Aの元となる戦略・事業計画策定

FASにおいて身に付けることができない知識や経験として、M&Aの元となる戦略や事業計画の策定があります。

専門家としてM&A戦略の策定のアドバイスをすることはありますが、会社の戦略というのは会社内にいなければ詳細な内容まで知ることができません。
そのため、FASでクライアントと案件を一緒に進めたとしても会社の内部に入って策定することはなく、どのような目的でどんな過程を経て策定されたかは知ることはできません。ましてや社内にいたとしても戦略の核心部分にあることは伝えられることはなく、経営企画などの社内でも中心となる部署でなければ知ることができません。

もちろん、M&Aを進めるにあたってはM&A戦略は重要な方針となるので経営企画などの中心人物には共有され、案件が進められることになります。自部門でもM&Aに関わっていない人には知らされないほどの内容ですので外部の人に伝わることはありません。

また、M&A戦略に紐づく事業計画の策定についてもなかなか経験することはありません。業界特有の考え方や実務慣行、将来の見通しなどの前提は会社社内で検討され、決められていきます。もちろんその前提から事業計画の策定などはすることはありますが、根底にある考え方などは全てが伝えられるものではなく、一部の情報に限られます。

FASでいくら案件に携わったとしても、会社のM&A戦略やそれに紐づく事業計画に関わることはなかなかできず、身に付けることのできない知識や経験となります。

できないこと(身に付けられないこと)③:PMIの実務経験やスキル

FASの特にアドバイザリーチームにおいて身に付けることができない知識や経験として、買収後の経営統合作業であるPost Merger Integration(PMI)の実務経験やスキルがあります。
M&Aにおいてエグゼキューションは重要ではありますが、それ以上にPMI、経営統合が重要となります。

M&Aが成功するかどうかはPMIの成功にかかっているとも言われています。買収前には薔薇色の事業計画を策定したとしても実際にその効果が出せるかはわからず、買収後にしっかり統合作業をすることによってその効果は確実に出せるようになっていきます。
具体的には統合方針を策定し、ランディングプラン、100日プランを策定した上で、統合作業を進めていきます。
短期的に解決すべき問題、長期的に解決していく問題、会社の方針の統合、業績の進捗状況などやることは多岐にわたります。

また、PMIを進めるにあたっては買収会社に入り込んで作業などをします。買収会社には買収されたことが良いと思っていない人もいます。それらの人もまとめ上げながら、PMIは進めていかなければなりません。ここはPMIの大変な部分でもありますが、買収された会社に協力してもらえなければPMIは成功しません。

こういったPMIの実務は社内に入り込むことで経験できることになります。FASではあくまでもアドバイザーとしてPMIに入るケースはありますが、なかなか中に入り込んで進めることはありません。PMIの実経験・スキルはFASでもなかなか身に付けることができない知識や経験となります。

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>FAS・M&A・経営企画のキャリアに関する記事

会計士からM&Aコンサル(アドバイザリー)へのキャリアパス(採用ニーズ~業務内容の違い~転職年収事例~選考対策~入社後の注意点まで)
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/accountanttoconsultant

経営企画からコンサルタントへのキャリアパス事例【転職成功ポイントは『伝え方』】
https://www.axc.ne.jp/column-career-change-case/2011/0607/433.html

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今回は、FASのM&A業務において身につけることができること、身につけられないことを、経営企画と比較してお伝えしました。

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