フェルミ推定でお馴染み“電柱の数/マンホールの数/市場規模”の解き方

正確な数値の把握が難しい題材に対して、常識的な統計値と論理的な推測を用いて、概算を割り出す「フェルミ推定」。コンサルの選考試験や、ケース面接などで頻繁に題材にされ、もはやコンサル志望者にとっての常識の1つとなっています。

以前別の記事でフェルミ推定自体の考え方については詳しく説明したので、この記事ではフェルミ推定の中でも特にお馴染みのテーマである次の3つの題材の解き方を紹介します。

・電柱の数
・マンホールの数
・市場規模

これら3つの題材を押さえておけば、ほかのテーマにも応用が効きますので、フェルミ推定の解法を考えるうえでの参考にしてみてください。

【目次】

  1. フェルミ推定とは?
  2. フェルミ推定の解き方①電柱の数
  3. フェルミ推定の解き方②マンホールの数
  4. フェルミ推定の解き方③市場規模
  5. 「制限時間を意識して大胆に単純化する「前提を明示」など一貫して重要なこととは

フェルミ推定とは?

改めてフェルミ推定について簡単におさらいしておきますが、フェルミ推定とは、算出が困難な題材について、物事の構造を捉えて、数式化して概算を出す推定方法のことをさします。

コンサルにおいては、市場規模やプロジェクトのインパクトなど、さまざまな数値を推計して仮説を立てるシーンが数多くありますので、その能力を有しているか確認するために、選考においてしばしば題材にされるのです。

フェルミ推定自体の考え方は、以前紹介したフェルミ推定の記事を参考にしていただければと思いますが、大まかにいうと、次のようなプロセスで、推定を進めます。

①使用する統計値や概算値に見当をつける
②題材を四則演算で表せる数式に置き換えていく
③数式に統計値や概算値を代入して推定値を導出

フェルミ推定をうまく進めるには、日本の人口など代表的な統計値を頭に入れておくことと、さまざまな題材を論理的な数式で表現できるようにしておくことが大切です。

フェルミ推定の解き方①電柱の数

フェルミ推定においては、無数にあって算出が困難なものを推定する問題が出されることが多く、特にこの電柱の数は代表的な問題の1つです。ここでは「日本全国に電柱が何本あるか?」という例題に対する解答方法を紹介します。

先にお伝えしておきますが、フェルミ推定の回答は1つとは限りません。1つの題材に対して複数の回答方法があり、基本的にロジックに筋が通っていて、より高い精度で推定できる考え方が優れていると言えます。ただし、コンサルの選考においては、これに加えて「短時間で解く」ということも重要になってきます。

さて、日本の電柱のケースでは、一定の面積ごとの電柱の本数を基準に考えていくとよさそうです。それであれば、日本の国土面積や、都市部と山間部の面積の比率を活用できるからです。

ちなみに日本の国土面積は約38万平方キロメートル。山間部の比率は、森林面積に置き換えるとして、およそ70%なので、その反対を都市部として、山間部:都市部の比率は7:3とすることができます。

続いて、電柱の本数を論理的な形で数式化するわけですが、ここでは「平均」の感覚をもとに数式化するとうまくいくケースが多いです。今回の題材でいえば「平均して何平方メートルごとに1本電柱があるか」が分かれば、先に示した日本の国土面積などを用いて、電柱の本数を推定することができます。つまり具体的にはこういう式が成り立ちます。

電柱の本数=日本国土の面積÷1本の電柱が平均的にカバーする面積

これだけでも最低限の推定にはなりますが、もう少し精緻にするなら、都市部と山間部で電柱の密度は異なるであろうという推定と、山間部:都市部の面積比=7:3という数値から、次のような式に分解できます。

電柱の本数=
都市部の1平方キロメートルあたりの電柱の本数×日本の国土面積×都市部の面積比+
山間部の1平方キロメートルあたりの電柱の本数×日本の国土面積×山間部の面積比

あとは一体何平方メートルあたりで1本の電柱があるかを考えるわけですが、データがない状態ではここは想像するしかありません(つまりこの数値の正確性はあまり問題となりません)。ここでは感覚的に、都市部は50メートル四方で1本、つまり50×50で2,500平方メートルで1本と考えます。また山間部は200メートル四方で1本、つまり200×200=40,000平方メートルで1本としましょう。

1平方キロメートル=100万平方メートルなので、都市部は1平方キロメートルに400本、山間部は25本となります。(小学校の算数ではありますが、1キロメートル=1000メートルである一方1平方キロメートル=1000m×1000m=100万平方メートルである点に注意です)

したがって、次のようになります。
電柱の本数=
400本×38万×0.3+25本×38万×0.7=4,560万+665万本
=5,225万本

ちなみに実際には3,500万本だそうです。だいぶ乖離してしまいますが選考でその場で答えるなら、この程度の精度で充分です。(乖離の背景は、完全な山中には電柱がほとんどないことを踏まえると、山間部の1平方キロメートルあたりの本数はもっと少ない、ということなどが考えられます)

フェルミ推定の解き方②マンホールの数

電柱同様に、日本全国に無数に存在するマンホール。こちらを題材としたフェルミ推定の問題も非常にオーソドックスな例題の1つといえるでしょう。続いては「東京都内マンホールは何個あるか?」というフェルミ推定の問題の解法を紹介していきます。

マンホールについても先ほどの電柱と同様に面積に着目したアプローチも考えられますが、今回は人口や世帯数から割り出してみましょう。マンホールは基本的に水道のキャパシティに応じて設置されるはず。一般的に一区画に1つの水道管が敷かれていると仮定すれば、世帯数にマンホールの数はある程度比例しそうです。

東京の人口は約1300万人。一世帯あたりの人数を約2人として、世帯数は650万世帯になります。そこでマンホールの数は次のような数式を立てることができます。

マンホールの数=世帯数÷(マンホール1つあたりの世帯数)

人口に着目することで、先ほどより単純な推定になります。マンホール1あたりの世帯数については、通常仮置きするしかありませんので、ここでは10世帯でマンホール1つが平均的に設置されると仮定します。

するとマンホールの数は次の通りとなります。
マンホールの数=650万÷10世帯=65万個

ちなみに、実際の都内マンホールの数は2013年時点で48万個強だそうです。こちらは比較的近い数値になりました。

フェルミ推定の解き方③市場規模

より実践的で、ケース面接の途中にも応用可能なのが、市場規模の算出です。マスターしておけば、ケース面接にもスムーズに対応できるようになるので見つけておきましょう。

市場規模の推定はこれまでの題材より難しく、一方で応用性も高いため、これまでより少し詳しく紹介していきます。

市場の特徴をイメージする

これまでのフェルミ推定と異なるポイントとして、市場規模のフェルミ推定では後続のアプローチを進めるうえで、市場の特徴を考えることが大切になります。

実際のプロジェクトで市場規模を推定する際には、まず市場の特徴を捉えるための情報収集をしますが、選考においてそのような段取りはとられないことの方が多いです。(ただし、ケース面接において市場に関する資料を与えられて、それをもとに市場の特徴を捉えたうえで規模を推定する課題が与えられる例もあります)

したがって一般的なイメージや常識の範囲で特徴をイメージしなければなりません。イメージはその後の数式による要因分解につながるように行う必要があります。
ü 交通サービス:(日本もしくは)運行する地域の人口と利用率や運賃
ü 飲料:日本の人口と一人当たりの消費量と価格
ü 学習塾:学生数と利用率
ü ペット保険:ペット飼育数と加入率
ü 自動車の年間販売台数:日本の自動車の数とそのうち買い換えられる数
など

フェルミ推定に集中する場合はこのように、後々数式分解できるような形で市場をイメージすることが大切です。

ここからはしばしば出される飲料の市場規模の中から「日本のビールの市場規模」の解き方を紹介していきます。

導入できる統計値や常識的な数値を考える

日本の缶ビールの市場規模を考える時には、次の市場の形をイメージしたうえで、活用できそうな数値を考えます。

飲料:日本の人口と一人当たりの消費量と価格

例えば次の数値を用いるように数式分解していくと、うまく進められそうです。
・日本の人口:1.2億人
・缶ビールを飲む年齢層:20歳以上〜
・缶ビールの平均価格:200円程度

ビールの価格は、実際にはサイズや大手ビールかクラフトビールかなどによって変わってきますが、時間が限られている面接の段階では無理に分解せずに平均価格の想定をおくのが無難だと思います。

数式に分解する

続いて数式に分解していくことになるわけですが、ここでも、論理性と制限時間内に回答できることの両面を意識しましょう。

缶ビールの場合は次のような点に留意しましょう。
・「缶ビール」は飲食店ではあまり提供されないので、個人購入を前提に算出
・ビールを「ビール系飲料」総合しているものという前提を置く

この二つがあることで、導出がかなり単純化できます。回答の際にはしっかりと面接官に前提を伝えることが大切です。フェルミ推定ではどのような前提や仮定をおいているかが非常に重要なので、前提・仮定を伝えないと評価が大きく下がるリスクがあります。

さて、これらの前提により、単純に日本の人口の中から缶ビール(以下はビール系飲料全てを含む表現とします)を飲む人、飲む頻度と価格で分解できます。

日本の缶ビールの市場規模=日本の人口×缶ビールを飲む比率×1人あたりの年間購入本数×価格

ここで「1人あたりの年間本数」について「たくさん飲む人」「たまに飲む人」「ほとんど飲まない人」などに分解する回答例も見られます。時間に余裕があればそのように分解してもよいですが、結局は飲む人・飲まない人の比率や、それぞれの年間消費本数は全て仮定を置くしかありません。

おそらく推定の精度はさほど上がらないと考えられるため、時間が限られている場合には単純化して1人あたりの年間本数を仮定して計算してしまってもよいでしょう。

数値を推定し、代入していく

おそらく一番厄介なのは、1人あたりの年間缶ビールの購入本数です。ここは選考の場では仮定を置くほかありません。

例えば、一人の平均的な酒量を週4日、一日あたり1本としましょう。この前提の置き方は自身の飲酒量などによって異なってくるので、正確性よりも前提をしっかりと伝えることが大切です。また、ロング缶・ショート缶の違いや人それぞれの飲酒量の差については簡単化のため仮定を省略していることも面接官に伝えましょう。

ビール以外を飲む人もいます。特にチューハイやハイボールなども缶で容易に飲むことができるため、これらを選択する場面も多いでしょう。ここでは缶ビールとそれ以外の缶の酒飲料を半々で購入するとします。

そうすると、一人当たりの缶の酒類購入本数は、
365日×4日(1週間あたりの購入本数)÷7日(1週間の日数)=約208本
缶ビールはこの半分なので年間104本という計算になります。

続いて「缶ビールを飲む人の比率」ですが、ここでは大人全員の缶ビールの購入本数を平均すると先ほど推定した一人当たりの購入本数になると仮定します。すると、20歳以上の人が缶ビールを購入するということになります。国民を0〜100歳まで均等に分布すると仮定すると、20〜100歳は国民の80%にあたります。

あとは日本の人口:1.2億人と、缶ビールの平均価格:200円程度を代入すれば、計算が可能になります。

日本の缶ビールの市場規模
=日本の人口×缶ビールを飲む比率×1人あたりの年間購入本数×価格
=1.2億人×80%×104本×200円
=2兆円

飲食店など業務用を含むビール業界の市場規模が2019年で約2.9兆円であることを踏まえると、比較的妥当な数値ではないかと推測されます。
(参考https://gyokai-search.com/3-beer.htm

「制限時間を意識して大胆に単純化する「前提を明示」など一貫して重要なこととは

今回はフェルミ推定のオーソドックスな問題を題材に解法を紹介しましたが、一貫して重要なことは次の3点です。

・制限時間を意識して大胆に単純化する
・前提を置いた箇所について、どのような前提を置いているかも明示する
・質疑応答の対策として、時間があればさらにどのような分解を行いうるか、どのようなデータがあればさらに詳細な分解が可能かもイメージしながら解く

フェルミ推定では回答後に面接官との質疑が行われるケースが多いです。前提データもなく、限られた時間で推定を行うため、面接官も推定の正確性自体はさほど求めていません。むしろ、推定のために設定した前提や、前提データがないことによりどのような点に限界があるか(逆にどのような素材があれば推定を補強できるか)を的確に説明できることも大切なのです。

フェルミ推定の解答作成の練習をする際には、以上のようなポイントにも目を配ることで、より実践的な対策が可能となります。

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今回の記事では、フェルミ推定でお馴染み”電柱の数/マンホールの数/市場規模”の解き方について解説いたしました。ケース面接の対策や、戦略コンサルへの転職をお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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