投資銀行(IBD)とFASの違い【IBDへの転職前後に必要なスキル】

2デロイト、KPMG、EY、PWCといったBig4の中で財務アドバイザリー業務を行うFASに在籍されている方から、給与面やディールのクロスボーダー案件が多いことから、投資銀行(IBD)への転職に関するご相談をいただく機会が多いです。

そこで今回は、IBDに入りたいFAS在籍者向けに、IBDとFASで用いるスキル・ビジネス的観点の違いや、タイトルが横移動ができるか、IBDに転職するために在籍時に鍛えておくべきスキルについてお伝えします。

【目次】

  1. IBDとFASで用いるスキル・ビジネス的観点の違い
  2. FASと投資銀行のM&Aアドバイザリー部門との比較、激務さについて
  3. タイトル・ランク横移動の可否
  4. IBDに転職するには
  5. まとめ

IBDとFASで用いるスキル・ビジネス的観点の違い

IBDとFASでビジネス内容に関しては大きな違いはないですが一部あります。
たとえばFASのM&Aアドバイザリーチームは、IBDのM&Aアドバイザリーチームと業務内容はそこまで大きく変わりませんが、FASはキャピタルマーケット業務を行わないのでIPOや新株発行、引き受け業務を行うことができないという違いがあります。
ほかにもFASにあるようなDDチームやバリュエーションチームが一体となってワンストップのサービスが提供できるという強みはIBDは有していません。あくまでアドバイザリー業務を提供する主体がIBDで会計や税務の細かい話は会計事務所系が強みを有するというすみわけがなされています。

スキル面に関しては、やはりIBDのほうがハードスキルにうるさい、鍛えられるという特徴があると思います。特に外資系投資銀行でよくあるようにフォーマットに異様なほどうるさい、海外のチームからのインプット等が必要になる、ということはFASでは中々無いと思われます。
FASでは、投資銀行のように同時に複数の案件にアサインされ、パラレルにたくさんの仕事を処理していく能力はつきにくい可能性があります。また、カルチャー的にも投資銀行ほどアグレッシブな人の多さや、パワポ資料のビジュアルに対するこだわりの強さはマシな傾向があります。
上記のように、ビジネス面でそこまで大きく差異がない(とくにM&Aアドバイザリー)ものの、社風やカルチャーの違いから、FAS出身の人のスキルが足りないとすれば、エクセルのショートカットやパワポの資料作成のスキル、ビジネスれベルの英語力が足りないケースがあると思います(特にジュニアのアナリストの方)。そのような場合はまずはFAS在籍時からハードスキルを鍛えることが重要です。FASでは社内の研修できっちりとバリュエーションや財務モデリング、M&Aのプロセスなどを行うところもありますが、加えて、自助努力で学習することがポイントです。

例えば、エクセルでバリュエーションを行う際にもバリュエーションのメソッドを良く知らないと作業が遅れてしまい、どうしても激務、遅くまでの作業になってしまいます。クライアントへのプレゼンテーション資料を作成する際にはパワポのフォーマットや、上司やチームでディスカッションした内容を上手く織り込めていないとレビューが何度も発生して遅くまで業務をすることになってしまいます。

外資系のように少数精鋭でチーム編成を行いディールを年間数件行うことはFASではあまりなく、海外オフィスと連携してエグゼキューションを行うことも中々ないというのもFASのM&Aアドバイザリーチームの特徴です。

FASでは投資銀行のように延々とエグゼキューションとピッチが交互に続くという環境はあまりないので、エグゼキューションが佳境でない限り毎日深夜まで働くことは少ないと思われます。また、投資銀行とは異なり、FASではデューデリジェンス、税務ストラクチャー策定等のサービスを総合的に提案できるのが特徴であり、提案書の作成の際もそのようなサービスライン(トランザクションアドバイザリーや税理士法人)と連携しながら進めていきますので、社内関係者との調整が多くなる点に注意が必要です。

FASと投資銀行のM&Aアドバイザリー部門との比較、激務さについて

投資銀行のM&Aアドバイザリーチームでは日系、外資系問わず、大手であればカバレッジチームとプロダクトチームを分けているところもあります。一方で一部の外資系投資銀行では収益性を意識してプロダクトをM&Aとデットに絞り、比較的M&Aをプロダクトとして注力しているチームもあり、カバレッジもエグゼキューションも境目なく行う投資銀行もあります。証券会社系の外資系投資銀行でこのようなチーム体制であるファームはブティック系外資投資銀行と同様にM&Aのプロダクトを中心に行っていることが多いです。
いずれにせよ、コロナ禍でM&Aの案件が増えていることもあり投資銀行によっては収益性の高い案件に注力する所も多いですし、ディールフローの多い投資銀行であればジュニア、シニア問わず、新規案件の仕込みで行うピッチが続いたり、エグゼキューションを行っている案件が佳境になっていれば相当タフな業務量になることもあります。

一方で、FASのM&Aアドバイザリーチームでは、モルガンスタンレーやゴールドマンサックス、UBSのような大手投資銀行が扱うような1000億超の大型案件は扱わず数十億円~100億円程度のスモール~ミッドキャップの案件が中心になることが多いです。また証券会社と異なりファイナンスの機能はないので、バイサイド・セルサイドのM&Aアドバイザリー業務が中心になり、クライアントに対してアドバイザリーサービスを提供することが中心になります。
FASはDDやTax等の投資銀行にはないサービスラインで勝負することができ、監査法人経由で案件の紹介が来ることもあるのでアグレッシブにピッチを行うということはあまりありません。そのため、エグゼキューションが佳境でなければ、外資系投資銀行ほどのハードな労働環境にはなりがたいと言えるでしょう。もっともFASでもクロスボーダー案件を行うチームであれば海外オフィスとの協働やクライアントとのCall設定等で忙殺されることもありますので、多少の覚悟は必要です。

M&Aアドバイザリー業務はディールサイズに関わらずクライアントビジネスであるため、ディールのエグゼキューションがある時には恒常的に忙しいケースが多いですし、ラージキャップと呼ばれる大型案件ではチームの人数が比較的多くなります。スモール〜ミッドキャップ案件では1件あたりのディールチームが数人になりますので業務の負荷は重くなりがちです。そのため、投資銀行のM&Aアドバイザリー部門とそん色ない忙しさになることもあります。これはディールによりますが、デューデリジェンスの時や、セルサイド案件の際にはインフォメーションメモランダム等の作成の際には非常にタフなワークロードになります。

ただし、FASのM&Aアドバイザリーチームでも、外資系投資銀行出身者のシニアが多く揃っているようなチームでは、社風が外資系投資銀行のような環境になる可能性もあります。一方で会計士や銀行出身者が多いようなチームではそこまでハードなカルチャーにならない可能性もあります。ゆえにFASのM&Aアドバイザリーチームでも、所属するチームのシニアオフィサーの出身やキャリアに仕事の進め方が影響されることが多いのでその点は注意した方が良いと思われます。
上記をまとめると、ディールのエグゼキューションが走っている際にはFASもIBDも一様に激務になりがちです。ただしFASでは年柄年中忙しいのではなくIBDのようにピッチヘビーになることがほぼないのでエグゼキューションと並行してピッチを行うことで毎日深夜が続くことはあまり想定しなくても良いと思います。

タイトル・ランク横移動の可否

FASからIBDに移る際に横移動、すなわちタイトルのディスカウントなしで移動できるかというと、それは相当シニアポジションでない限り不可能です。
基本的にはアナリストレベルであれば、IBDに移ってもアナリストですが、FASでシニアアソシエイト、もしくはシニアアナリストでも外資系投資銀行ではアナリストからスタートです。これは日系証券会社に所属している方も同様にディスカウントされます。
なお、FASから日系投資銀行であればディスカウントなしで転職できる可能性もありますので、まずはFASから日系証券IBDに転職して経験を積み外資系投資銀行を狙うという堅実な方法もあります。ただし年齢が上がるのでそれなりの経験値が求められるという点は注意しましょう。

IBDに転職するには

FASのM&Aアドバイザリーチームに所属していれば、スキルが足りないということは少ないと思います。IBDに転職する際には基本的には中途で経験のある方が中心になりますので、あとはFASに在籍している際にどれだけ多くの案件の経験ができるかという点が最重要です。アナリストのポテンシャル採用を狙うのであれば、バリュエーションや財務モデリングのチームに所属して多くの案件を経験する必要があります。
財務DDのみの経験では難しいので、いずれかのタイミングでコーポレートファイナンス関連のキャリアを積む必要があるでしょう。

まとめ

このようにFASのM&Aアドバイザリーチームでも投資銀行と同様にディールのエグゼキューションを行いますので、両者間で求められるスキルセットは投資銀行のM&Aチームとそこまで遜色はないです。具体的には、財務分析やDCF、類似上場会社比較法、類似取引比較法などの会計やファイナンスに関するスキルがポイントになります。

将来的にプライベートエクイティファンドを見据えた転職を行う場合は、FASのみならず外資系証券ないしブティック系のIBDで経験を積む必要があるので、自身のキャリアに応じて戦略的にスキルや経験を積むことがベストです。

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>投資銀行へのキャリアに関する記事

FASから投資銀行M&Aアドバイザリーに転職して活かせるスキル・必要なキャッチアップとは
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/fas_bankmanda

コンサルファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank

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今回は、IBDに入りたいFAS在籍者向けに、IBDとFASで用いるスキル・ビジネス的観点の違いや、タイトルが横移動ができるか、IBDに転職するために在籍時に鍛えておくべきスキルについてお伝えしました。
ポストコンサル転職や、投資銀行への転職をお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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