社内SEの「仕事内容」と「上手なキャリアの築き方」

よく、社内SEの方から「IT企業ではなく事業会社で社内SEの仕事をしています」と言うと、「珍しいですね」、「会社では主流になれないのでは」、「仕事内容はITベンダーとどう違うのですか」といった反応をされるようです。確かに、日本では「IT企業以外」に所属しているIT人材の割合は多くないのが実情でしょうか。

そのせいもあって、事業会社の社内SEの仕事内容は外から見てわかりにくいものです。そこで今回は、社内SEの仕事内容を次の4つに分類して、それぞれの仕事内容を具体的に説明するとともに、社内SEのキャリアの上手な築き方をご紹介します。

【目次】

  1. 社内SEの仕事内容(1)既存システムの運用
  2. 社内SEの仕事内容(2)社内ユーザーのサポート
  3. 社内SEの仕事内容(3)経営者のサポート(IT戦略・IT企画の立案)
  4. 社内SEの仕事内容(4)新しいシステムの開発
  5. 社内SEの上手なキャリアの築き方

社内SEの仕事内容(1)既存システムの運用

新設企業でない限り、事業会社には既に使われているシステムがあります。システムは開発・導入されれば勝手に動いてくれるわけではなく、人が運用作業を日々行う必要があります。それを行うのが社内SEです。

運用作業は外注していたとしても、外注先を管理する仕事は社内SEが担います。具体的には、毎日、外注先からシステムの運用状況の報告を受けて、システムが正常に稼働しているかのチェックを行います。システムの運用はマニュアルであらかじめ定めた通りになるとは限らず、イレギュラーな事象がときどき発生しますが、その対応にあたった作業員の行動が適切であったかを判断し、適切でない場合は改善を指導・要請します。また、運用作業の効率化を図っていくのも社内SEの仕事です。

運用体制や外注先の力量によりますが、システムトラブルがあれば社内SEが自ら対応しなければならないこともあります。外注先の担当者から、手に余るのでなんとかしてほしいと泣きつかれるのです。トラブル解決後は、社内SEが原因を究明し再発防止策を作り、当該システムのユーザーに報告します。障害の影響度合いによっては、経営者にも報告します。

オンプレミスでシステムが動いている事業会社では、設備を管理する仕事もあります。ほぼ例外なく、ハードウェアベンダーと保守契約が結ばれていますが、設備の稼働状況のチェックは社内SEの仕事です。更新時期が到来すれば、ベンダーと交渉して、できる限り低コストで最新の設備の導入を図ります。

社内SEの仕事内容で最近、特に重視されるのがセキュリティ管理です。セキュリティインシデントが事業の根幹を揺るがす事案が増えているからです。まず、ウイルス対策ソフトの導入とパタンファイルの更新、不正アクセスの監視です。世の中のセキュリティインシデントの発生状況をウオッチし、ハード、ソフト両面で最新の防御態勢がとられているかを日々確認します。そして、さらに難しい仕事が、システムに関わる人に対するセキュリティ管理です。ユーザーが使うマニュアルや運用担当者が使う手順書にセキュリティ対策を盛り込み、ルール通りに運用されているかを監視します。ルールからの逸脱があれば注意します。うるさがられることがありますが、昨今の情報漏洩は内部からの発生が多いことから、ユーザーにも運用にあたる外注先にも性悪説で接しなければならないのです。

社内SEの仕事内容(2)社内ユーザーのサポート

社内SEには、システムを使っている社内ユーザーから、さまざまな問い合わせ、クレームが寄せられます。「パソコンがフリーズしたので直してほしい」、「LANに接続できなくなった」、「スパムメールが大量に来て困っている」、「業務量が想定外に増えたのでシステムの稼働時間を延長してほしい」など、システムに係るあらゆる問題に対処するヘルプデスク業務です。

社内ユーザーのITリテラシーは素人から専門家レベルまでさまざまです。「そんなことまできかないでほしい」と思うような初歩的な質問を投げかけられることもあれば、自らの業務知識とIT知識を盾に鋭い突っ込みをされることもあります。依頼内容や発生した問題を把握するだけでなく、ユーザーとの会話から、当該ユーザーの性格とITリテラシーのレベルを推し量り、各人に合った説明のしかたを工夫する必要があります。

社内SEの説明を素直に聞いてくれるユーザーもいれば、きついクレームを言ってくる高圧的なユーザーもいます。システム部門が傍流視されている事業会社では、上から目線で見下してくるユーザーもいます。イライラすることもありますが、すべてのユーザーに対して丁寧に対応しなければなりません。忍耐が必要です。

問い合わせを受ける社内SEが少ない、もしくは、一人しかいない場合は、すべて自分で問題解決に当たらなければなりません。自分で解決できない場合は、機器やソフトを納品した外部ITベンダーに尋ねることになりますが、対応できる担当者とすぐに連絡がつかないこともあります。その間、ユーザーを待たせることになり、問い合わせ内容が業務上急を要する場合はユーザーから怒りをぶつけられることもあります。「私のせいではないのです」と言いたくなるのをグッと我慢して、ユーザーをなだめなければなりません。

社内のユーザーとの人間関係は長期に及びます。ITベンダーのSEであれば、顧客の中に苦手な人がいても、プロジェクトが終われば縁は切れますが、ユーザー部門のシステム担当者が変わることは少なく、人事異動があるまでは、特定のユーザーとつきあうことになります。アフターファイブも含めた濃密な人間関係が業務遂行の前提になっている会社もあります。高い技術力がありながら、この人間関係でつまずく社内SEが多いのも実情です。

社内SEの仕事内容(3)経営者のサポート(IT戦略・IT企画の立案)

マネーシャー以上が担うことが多いですが、経営計画で決められた方針に沿って、IT戦略やIT企画の立案を行う仕事もあります。事業会社の社内SEにとっては花形の仕事です。

日本の事業会社では長らく「ITは専門家に任せておけばよい」と思われており、経営者が自社のIT活用に直接関与することは稀でした。しかし、事業の業績を決める要因としてITの重要性が高まっている現在、業種を問わず、ITは企業の経営管理の重要事項のひとつであるという認識が定着しました。経営層のITへの直接関与が当然視されるようになったのです。

一方、事業会社の経営層に登り詰めるのは、その会社のメイン業務で顕著な業績を挙げた人が多く、IT業務の経験があることは稀です。そのような経営者は、「自社に最適なITはどうあるべきか」、「どれくらいのコストがかかり、どれくらいの効果が得られるか」といったIT戦略を自ら立案することは困難です。そうした場合、欧米で多く見られるように、外部のITコンサルタントを雇うこともありますが、まず頼りにされるのは社内SEです。

社内SEは、自社の経営戦略や事業戦略をふまえて、業績アップや業務プロセス改善、コスト削減などに最適なITシステムの導入を検討し、経営者に提案します。また、自社の業務の中に、ITを活用して、付加価値を向上させたり、コストを削減したりする機会を見つけるのも重要な仕事です。新しいITの導入にあたっては、導入によって削減できる業務量と、生み出される付加価値を金額換算し、コスト対効果を評価します。経営者が最終判断するのですが、判断材料を集め、整理するのは社内SEの仕事です。

社内SEの仕事内容(4)新しいシステムの開発

新システムの開発にはさまざまなレベルがあります。

ビジネス環境や法制度、事業会社の戦略、業務手順などの変更に伴って、ITシステムを部分的にバージョンアップする場合の案件のひとつひとつは小さいことが多く、社内SEが中心となって、要件を固めて開発業者に委託する、もしくは、事業会社の社内リソースだけを使って行います。ウォーターフォール型ではなくアジャイルで開発を進める事業会社では、社内SEが、ユーザーから完成系のイメージをききだしながら、設計から実装までを自ら行うことになります。

既存のシステムのリプレースや新たなシステムの導入といった大規模な案件となると、事業会社のシステム部門のありかたや開発の方法によって、社内SEの仕事内容は若干異なります。

大規模な事業会社でSIerに開発作業を委託する場合、社内SEの仕事はほぼプロジェクト管理だけになります。マネジャー以上の社内SEがプロジェクト全体の責任者に立つことが多く、SIerの開発進捗状況を定期的にモニターするとともに、社内のユーザーとの調整を行います。

この場合、特に難しいのが、社内ユーザーを適切にプロジェクトに巻き込むことです。要件定義フェーズでは、ユーザー部門でシステム化対象業務に最も詳しいユーザーをプロジェクトメンバーに加え、そのユーザーに気持ちよく要件を話してもらえるように気を配ります。ユーザーによるテストフェーズでは、テスト環境を構築、管理するとともに、スケジュール通りにユーザーにテストを行ってもらわなければなりません。よほどの大規模なプロジェクトでない限り、ユーザーは通常業務と兼務しており、通常業務が忙しい時には開発プロジェクトに期待したほどの時間を割いてもらえないことがあります。

また、システム開発プロジェクトへの参画意識が低いユーザーをモチベートしていくためには、社内SEの技術力だけではなく、人間力も問われます。逆に、ITに詳しいユーザーが社内SEの頭越しにSIerとコンタクトを取って、自部門に有利なようにプロジェクトを動かしていこうとすることもあります。このような仕切屋ユーザーを抑えていくのも細心の注意を要する仕事です。

SIerに開発作業を委託せずに、事業会社のシステム部門がSI機能を担う場合は、上記に加えて、ITベンダーを管理する仕事やPMOの仕事が増えます。より細かな作業項目レベルでの管理が求められることになります。各ITベンダーは自らの役割を果たすことに視野が限られていることが多く、彼らの作業の調整を入念に行う必要があります。働き方改革が喧伝される昨今では、直接の管理責任はなくとも、ITベンダーの要員の作業時間が過多にならないように気を使わなければなりません。

社内SEの上手なキャリアの築き方

社内SEのキャリアプランは、所属する事業会社の人事制度によって大きく異なります。

今のところ日本の企業では少ないですが、IT人材が専門職として認められており、事業部門の社員とは別のキャリアパスが確立している事業会社においては、SIerやITベンダーのSEと同様に考えることができます。

所属する事業会社において生涯SEとして働くことになりますから、技術力を磨いていくことが、キャリア構築の肝となります。業務知識や新たに登場するテクノロジーを学び続けて、SEとしての仕事のレベルを上げていくということです。所属する会社では、仕事が既存システムの保守に限られるなどで、技術的な探求心、向上意欲が満たせない場合は、転職を考えることになるのもSIerやITベンダーのSEと同様です。転職先候補はSIer、ITベンダーだけでなく同業または類似業種の事業会社もあります。技術的な知識だけでなく、業務知識も活かせるからです。

一方、システム以外の部門との人事ローテーションが行われる事業会社にあっては、社内SEは、多くの場合、その企業または企業グループに閉じたキャリアパスを歩むことが多くなります。社内SEはITの知識、経験があるだけでなく、限られた業務しか行っていない事業部門の社員以上に業務の流れを俯瞰して見ることができるので、事業部門で重宝されます。システム部門から事業部門に異動すると、ITの知識が買われて、異動した部門のIT担当者に指名されることも多くあります。ユーザー代表として、自部門のIT活用についてシステム部門に対峙するということです。こうしてシステム部門と事業部門を行き来する社内SEの究極のキャリアゴールはCIO(最高情報責任者)となって企業経営の一翼を担うことです。

但し、このようなキャリアパスでは、その企業でしか働けなくなるリスクは念頭に置いておかなければなりません。事業会社のシステム部門と事業部門を行き来して年齢を重ねたSEは、人材市場でもはやIT専門家とはみなされなくなる可能性もあるからです。IT専門家としてのキャリアプランを描いているSEは、事業部門で働く経験がSEとしての視野を広げることでキャリアにプラスになりますが、長居は禁物です。

社内SEはビジネスの現場に近いところで、業務とシステムの架け橋を担う醍醐味を味わうことができます。ITベンダーのSEより一人の担当する仕事内容が多岐に渡るので、マンネリに陥ることなく、自身の仕事の結果がすぐ目に見え、日々達成感もあります。この記事を読まれる皆さんが、社内SEの仕事内容をよく理解して、満足度の高いキャリアを築かれることを願ってやみません。

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<社内SEのキャリアに関する記事>

“SIerのSE”と”Web系事業会社の社内SE”の違いと共通点
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/systemengineerthedifference

【社内SEからの転職事例】コンサルへのキャリアパスを叶えるために気を付けたこととは?
https://www.axc.ne.jp/column-career-change-case/2013/1203/523.html

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社内SEはビジネスの現場に近いところで、業務とシステムの架け橋を担う醍醐味を味わうことができます。ITベンダーのSEより一人の担当する仕事内容が多岐に渡るので、マンネリに陥ることなく、自身の仕事の結果がすぐ目に見え、日々達成感もあります。

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