事業会社の新規事業企画とコンサルティングファームでの新規事業コンサルの違い

コンサルティングの手法は書籍や人、サービスを通じて広まっており、手法が一般化されつつあります。市場調査、競合分析、VRIO、持続可能な競争優位の確立、コアコンピタンス/事業構造分析などは、「事業会社の新規事業企画」と「コンサルティング会社の新規事業コンサル」の、いずれの立場でも共通して実施されることの多いフレームワークです。

上記のように共通点はありますが、事業会社とコンサルティングファームで新規事業への関わり方は異なります。
今回は事業会社における新規事業企画と、コンサルティングファームの新規事業コンサルの違いについて、実例を交えてご紹介します。

【目次】

  1. 違い①新規事業を企画・検討するきっかけ
  2. 違い②新規事業を検討する際のプロセスと制約
  3. 違い③新規事業を企画したあとの関わり方

違い①新規事業を企画・検討するきっかけ

事業会社で新規事業を企画・検討する「きっかけ」に着目します。
大企業とベンチャー・スタートアップでもその「きっかけ」は異なりますが、大きく分けて、2つあります。
1つめは事業を大きく成長させたい、既存事業だけでは成長を見込めない(既存事業以外の収益の柱を作りたい)など、達成したい事業計画を元に検討されるケースです。こちらは大企業では多く、事業開発室やイノベーション推進部等の部署名で、社としてミッションを明確化して活動します。大企業の場合には、選択できるビジネスの規模も相応のものを求められます。そのため、トライできるビジネスの選択肢は、意外と少ないです。

他方は、ベンチャーやスタートアップに多く、ビジネスサイドでよく耳にするような、ある特定の課題を踏まえ、ビジネスシーンに適用出来そうなサービスを検討するケースです。大企業の場合には、こちらの活動は、既存サービスのPDCAに組み込まれてしまうケースがほとんどです。ベンチャーやスタートアップでは、既存サービスで充足していない課題の解決策として、サービス提供を行うことも多いです。大企業の一部サービスが競合になるケースもあります。後者のケースでは、エンジニアとオーナーの2者で設立することも多いように感じます。医療領域においては、医師や看護師、AI開発の教授が、ファウンダーになることもあります。その場合、実体験をもとに、サービスが具現化されているケースも多く、必ずしも大きな市場規模を見込んで、事業を組んでいないケースもあります。

コンサルティングファームでは、クライアントからの依頼を受けて企画・検討することが多いですが、営業活動の一環として、独自の市場調査レポートを作成し、市場規模データの販売にかこつけて、クライアントに新規事業の価値を知ってもらう、検討するきっかけにしてもらうような、導線の貼り方もあり、一概に、すべての活動がクライアント発の案件でないこともあります。

また、新規事業を依頼する企業の多くは大企業です。事業開発室やイノベーション推進部等の部署からは、市場調査や事業構造分析など、現状分析と課題特定を依頼されることが多いです。
商社における新規ビジネスへのマーケットインや、テクノロジー企業が開発した技術を元に、どのような業界で、どのようにビジネスをくみ上げられるか、ブレストがメインになることもあります。大企業の多くは、市場規模の予測や有識者インタビューなどに頼り、ビジネスの選択肢を洗い出しており、そもそも、取れる情報に偏りがあるように思えます。

違い②新規事業のプロセスと制約

事業会社の新規事業を企画・検討するプロセスは、大企業とベンチャー・スタートアップで大きく異なります。
大企業の場合、自社で投資対効果を得るために充分な市場規模がある、その投資を行うための人的リソースとキャッシュがある、既存のビジネスへのクロスセルを見込める(オペレーションの流れに乗せやすい)、既存の管理者で管理しやすい、などが論点になりやすいです。既存のserviceのブランドイメージなども考慮され、新規サービスの開始時点から、しっかりとしたサービスで、市場にローンチされることが多いです。その分、新規事業として走り出すまでには、時間的なゆとりも大きいように見えます。

ベンチャー・スタートアップでは、芳醇な投資余力(ヒトもお金も)がない場合も多く、ビジネスサイドに存在する課題を、クイックにサービス化する例が多いです。また、「こういう課題を聞くことが多くなってきた」「法規制が変わりそうだ」「これはお金になりそうだ」という確信が社内で合意を得られたものは、すぐにサービス化することもあります。そのため、コンセプトメイキングは、既存取引先や新規取引先へのヒアリングで、日々変わっていくこともあります。アジャイルな進め方も多く、スピード感も大企業の場合と比べても大きく異なります。重要な意思決定が日次で軌道修正されることもあります。取り組む組織自体が、大企業の体制と異なり、小規模でもあります。組織と言っても数名から10名以下ですので、その分、ひとりひとりの裁量も責任も大きいです。

コンサルティングファームでは、例えば、3ヵ月程度の期間を設けて、現状分析、課題特定、課題解決策の提示へと、隔週の打ち合わせ、月次報告などで、一つずつ意思決定が進んでいきます。大企業へのプレゼンや相談が多いため、月次間隔くらいで、物事が進むように感じます。そのための意思決定材料を集めていく業務がメインとなります。

日々の業務は、プロジェクト提案~キックオフ時に見込んだスケジュールとマイルストンに従い、成果物として報告を行います。高額なFeeを貰い、収めるものになるため、情報量も膨大になります。そのときに確認できる情報および過去の情報を含め、クライアントの必要な情報に絞られ、成果物が作られます。

膨大な情報から、コンサルティング会社がクライアントに必要だと思う情報を、整理して伝えるため、ビジネスストーリーも描きやすく、大企業でも部署内での報告も進めやすい形で納品されることが一般的です。コンサルティングファームの新規事業の企画・検討のプロセスとしては、ここまでを提供する場合と、その後の実行支援までをフォローするケースもあります。ただ、実行支援まで行われる場合、既存事業のPDCAの一環となることも多いです。

違い③新規事業を企画したあとの関わり方

事業会社の新規事業の企画・検討には、その後のビジネス展開・PJマネジメントまでをスコープに含めていることも多く、「検討したので、あとはよろしく」とならないことが多いです。大企業でも、ベンチャー・スタートアップでも、こちらは共通しています。

新規事業やサービスを作り上げた後は、新規事業をしっかりとスタートさせる(売りを作る)プロセスに移行し、その後は、その新規事業を想定・計画通りに進めていくために必要な数多の努力を行います。そのかじ取りを担うのは、新規事業を企画・検討した担当者であることが一般的です。

大企業では、時間をかけて新規事業をスタートさせることも多く、例えば、4月のサービス開始となる場合には、4月からサービスの利用を開始する予定の企業が複数いることもあります。そのため、スタート時点では、事業計画上の数値と乖離が少ない傾向にあります(一概には言えないが、ベンチャー・スタートアップに比べて)。無事に新規事業が開始された後は、中・長期的な売上の創出が課題となり、次の検討課題として、新たに調査や仮説検証を行います。

ベンチャー・スタートアップの場合、サービス開始から数週間も何か月も売りにつながらないサービスも数多くあります。無事にうまく軌道に乗った後は、①IPOを目指す(より大きな会社を目指す)、②ビジネスを安定軌道に乗せるための地固めを行う、③事業を軌道に乗せExitを目指す、など、ファウンダーの意向や方針に依って様々です。次のプロセスに応じて、ステークホルダも取引先も変わります。また、数年単位~で、ベンチャー・スタートアップとしての成否が結果として見えることも多いです。コンサルティングファームで勤めている方からすれば、長期的なプロジェクトにアサインされた場合と感覚は近いかもしれません。

コンサルティングファームでは、新規事業を企画・検討したあと、その検討まででクライアントからの依頼が終わるか、その後のPJマネジメントまでハンズオンで進めるか、二手に分かれます。新規事業のコンサルを依頼されたときには、定義されていないことも多いです。クライアントで新規事業を走り始める際に、自社内のリソースで管理や推進、事業計画への落とし込みに不安がある場合には、コンサルティングファームも同伴しているように思えます。

また、最近では、コンサルティングファームとクライアント起業でジョイントベンチャーを設立して進めることもあり、コンサルティングファームの支援の幅も、時代に合わせて変わってきているように思えます。その場合でも、設立した会社のトップはクライアント企業から排出されますが、新会社からの新規のコンサルティング案件として、その後の活動を進めていくこともあります。

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今回は、事業会社の新規事業企画とコンサルティングファームでの新規事業コンサルの違いについてお伝えしました。

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