PEファンドを辞めることが失敗とは限らない【自分なりのキャリアビジョン確立が成功のカギ】

private equity fund career change

PEファンドは、コンサルや投資銀行ほどではないにせよ、比較的短期間で辞めていく方も少なくない業種です。

解雇や仕事が立ちゆかなくなるなどネガティブな理由で辞めて行く人もいますが、別のPEファンドへの転職やCxO職への転職などポジティブな転職を実現する人も多いです。「何をキャリアの成功とする」かは、その人のキャリアプランによって変わってくるもので、ひとつのPEファンドを辞めたことがただちにキャリアの失敗となるとは限りません。

今回の記事では、PEファンドを辞める理由とその原因、そしてPEファンドでのキャリア成功のポイントについて紹介していきます。

【目次】

  1. PEファンドは必ずしも離職の多い業界ではない
  2. PEファンドを「辞める」主な理由
  3. PEファンドのキャリアを成功させるポイント
  4. PEファンドを辞めることは必ずしも失敗ではない

PEファンドは必ずしも離職の多い業界ではない

どこを比較対象にするかにも寄りますが、PEファンドに入社するような人材の多くはPEファンドを「辞める人の多い企業」とは考えていません。

PEファンドに入りうる人の多くは、コンサルや投資銀行および一般的な外資系企業などを比較対象とします。いずれも優秀であるが故に自ら転職していく人が多い業界でもあるため、離職率が高い企業群です。これらと比較するとPEファンドは「長い目で人を育てる」カルチャーがあるケースが多くなっています。

PEファンドでは、一つの案件に対して短くとも数年以上かけてバリューアップを図ります。投資の検討・準備の段階も含めると、プロジェクトのサイクルはさらに長くなります。プロジェクトの途中で人が頻繁に入れ替わるのは非効率なので、基本的にそれぞれのスタッフが長く携わることを期待するのです。

投資の世界=大きな損失を出すとクビ、という固定概念を持つ方もなかにはいますが、そもそもPEファンドの損益は短期間ではっきり出るものではないので、よほど人材に問題がない限り短期の成績で強制的に解雇されることはありません。

入社したスタッフも、PEファンドの投資サイクルの長さを理解した上で入社しているため、短期で辞めていくケースはコンサルや投資銀行と比べて少ないといえます。

PEファンドを「辞める」主な理由

後半でそれぞれのポイントについて詳しく紹介するとして、PEファンドを辞める理由は主に次のパターンに分けられます。

  • 解雇される
  • 仕事が肌に合わなくて辞める
  • 上が詰まっていて出世できずに辞める
  • 同業他社からの勧誘を受けて辞める
  • 異業種やCxOの魅力的な案件を受けて辞める

それぞれのパターンについて、原因と共に詳しく紹介していきます。

PEファンドを解雇される

外資系投資銀行のように極端な人員整理がなされるケースはまれですが、PEファンドも解雇のリスクはもちろんあります。

まず、ヘッドカウントの削減により解雇となる可能性はゼロではありません。ただし、PEファンドは組織があまり大きくない企業が多いため、すでにヘッドカウントを減らす余地がないケースもみられます。

そのため、小規模な外資系ファンドの場合は日本オフィスがまるごとなくなるリスクの方が高いかもしれません。日系のPEファンドは、通常の日系企業とあまりかわらず、よほど苦境に立たされない限り解雇になるケースは少ないです。

外資系の小さいファンドほど、解雇のリスクが高いとはいえ、コンサル・投資銀行など他業種と比べるとリスクは小さいでしょう。それでも、解雇のリスクをできるだけ避けたいなら、規模が大きく日本での投資実績が安定しているファンドや日系ファンドを選んでください。

PEファンドの仕事が肌に合わなくて辞める

短期で辞める場合のほとんどは、解雇ではなく「仕事が肌に合わなくて辞める」ケースです。時期によって波があるものの、PEファンドの仕事はほかの業種と比べて極端に激務というわけではありません。

投資先の価値評価などを行うチームの場合、投資が軌道に乗り始めると、モデル通り投資先の事業が拡大するため、暇になってしまうと言う方も少なくありません。そのため「激務が耐えられない」のではなく「仕事が肌に合わない」と考える方がしばしばでてきます。

たとえば、投資先の選別や価値算出をするためのモデル構築でひたすらエクセルをたたいたり、ファンドに関するドキュメントを延々と作ったりといった地味な作業が、PEファンドに当初描いていたイメージとミスマッチを引き起こす場合です。

逆に、モデリングや投資判断に関するプロセスに対する理解があった人が、投資家とのコミュニケーションを取るサイドの仕事に就いて、想定以上に泥臭い営業活動の部分が多いがために仕事が嫌になるというケースもあります。

PEファンドといえど投資資金を集める活動は「営業」そのものなのですが、入社前ではそのイメージが希薄な方も少なくありません。特にPEファンドに初めて入社する方は、転職前に仕事に対するミスマッチを消しておきましょう。

上が詰まっていて出世できずに辞める

ファンドビジネス全般的にしばしば言われることですが、年齢の高い上層部がいつまでも居座ってプロモーションに支障をきたしているケースがあります。PEファンドは全体として給与が高い業種ではありますが、上下の格差が大きいケースも少なくありません。組織が小さいファンドが多い故に、上下格差をより強く感じやすいともいえます。

一方で、冒頭紹介の通り短期間で成果が出にくいビジネスであるため、上司が解雇になって席が空く、という事態が起こりにくい傾向があるのです。むしろ、大口投資家からの資金が、そのPEファンドの上層部のリレーションによって提供されている場合も少なくありません。

上層部が辞めてしまうと、その投資家の資金が流出してしまいかねないため、会社は世代交代よりも上層部を長く留まらせることを優先します。こうしたケースは少数精鋭のPEファンドではしばしば見られます。どのファンドも若手を育成する重要性をわかってはいても、なかなか世代交代を進められない事情があるのです。

さて、こうした上層部が出て行かない組織では、若手はアソシエイトクラスのまま長期間働くことになります。若手もよほどのことがない限り解雇のリスクは低いものの、特段のネガティブな要素がないにもかかわらずプロモーションできない状況に、フラストレーションを感じる方は多いです。

実は、PEファンドのアソシエイトレベルの給与水準は、外資系企業を狙えるようなハイクラス人材にとっては突出したものではありません。投資銀行や戦略コンサルで早期に出世した方が高収入を期待できます。最近は日系企業で賃上げが進んでいるので、総合商社や一部の大手金融も、借り上げ社宅制度などによる実質的な家賃補助などを加味すれば張り合う可能性があります。

プロモーションに時間がかかる、若手の待遇はハイクラス人材を引き留めるほど魅力的ではないということで、数年の内に辞めていく若手のPEファンド経験者は少なくないのです。

同業他社からの勧誘を受けて辞める

PEファンド側に特段の問題がなくとも辞めるケースがあるとすれば、外にさらに魅力的な転職先があった場合です。

まずは同業他社からの勧誘を受けるケースです。PEファンドは中~小規模のファンドが多数活動していて、それぞれが投資状況などに応じて適宜人材を採用しています。狭い業界なので、業界内イベントやプライベートな交流などを通じて、さまざまな人材や採用の情報が飛び交っています。

求める人材にマッチする同業他社のスタッフがいれば、引き抜きのために声をかけられるケースは少なくありません。たとえば、前職や現職の以前の上司が別のPEファンドで仕事をしていて、転職を持ちかけるケースなどがよくあります。形式上はHRなどの面談を実施するものの、通常の転職活動よりはるかに簡単に転職が決まってしまうでしょう。

転職先の仕事内容や待遇、ポジションが魅力的なのであれば、同業他社からの誘いで辞めるのを躊躇する必要は全くありません。ただし、組織が変わると働きづらさ、人間関係の変化などがストレスになる場合もあるため、転職先が自分にとって魅力的な環境なのかは冷静に判断する必要があります。

異業種やCxOの魅力的な案件を受けて辞める

PEファンドでの経験によっては、異業種から魅力的な転職案件が寄せられる場合もあります。特にバリューアップの目的で投資先企業のコンサルティングや経営に関わる、M&Aや事業再生などの作業を行っているとPEファンド以外でも役立つスキルや経験が身につきます。

戦略や事業再生などのコンサルに転職するチャンスや、事業会社の経営・財務部門などに就く機会が得られるでしょう。また、財務戦略に関する知見をもとにスタートアップなどのCFOに転職するケースも少なくありません。

年収面では必ずしもPEファンドを上回るとは限りませんが、やりがい、ポジションなどに魅力を感じて、PEファンドを飛び出して行く方は少なからずいます。PEファンドで長期的なキャリアを築くことに強いこだわりがないのならば、この辞め方もポジティブな辞め方といえます。

起業もしくはサイドFIREしてしまう

ある程度出世した場合、そうでなくともPEファンドのキャリアが長い場合には、起業やサイドFIREという形で辞める人もいます。外資系のPEファンドであれば、キャリアを継続するうちにそれなりの資産を形成できます。

そこで、早めに仕事を辞めて、中には起業して経営者としてのセカンドキャリアをスタートする場合があります。ダイレクトにファンドビジネスを行うのは取り決めなどにより難しくても、金融・経済もしくは企業経営に関する知識などを武器に起業する方が時折います。また、蓄えに余裕があるからといって全く関係のない仕事にチャレンジする方も少なくありません。

起業せずにサイドFIREのような状態で辞める人もいます。フリーランスや個人事業を少しだけやるという生活スタイルを取る方法です。

「サイドFIRE」といってもフリーコンサルや金融に関する執筆業を行ったり、資産運用などのスキルを活かして、短時間ながら高単価な仕事を請け負ったりするチャンスが豊富なので、生活に困るリスクは低いでしょう。

PEファンドのキャリアを成功させるポイント

PEファンドのキャリアを成功させる上では、まずそもそも自分にとってキャリアビジョンを明確にするのが第一歩です。というのも、解雇のリスクが極端に高いわけではないPEファンドでは、自分なりに満足して転職していく方も少なくないためです。そのほか、長期的な視点をもつことや、最低限事業が安定したファンドに転職すると言ったポイントも重要になります。

キャリアビジョンを明確に持つことから始める

キャリア形成を成功させるためには、そもそも自分にとって何が「成功」なのか明確にしましょう。いまPEファンドにいるからと言って、全ての人にとってPEファンドで出世するのがキャリアの成功ではありません。

いずれかのタイミングで事業会社の経営層になる、起業する、早めにリタイアするなどの選択肢もありえます。PEファンドは投資する金融業の一角でありながら、企業経営やコンサルに近い経験も得られる希有な業種です。そのため、本人がその気になればキャリアの選択肢は豊富に存在します。

もし、自分がPEファンドの経営層になるのが成功なのであれば、確かにPEファンドを辞めるのは「失敗」になるかもしれません。一方でそれ以外のキャリアビジョンが明確なら、転職=失敗と考える必要はありません。

ステップアップに時間がかかることを理解して長期的な視点で働く

PEファンドは、外資系も含めて人材の新陳代謝が遅い企業群の一つです。そのため、優秀でもなかなかプロモーションが進みません。組織が小さいファンドは、シニアメンバーの席も少ないため、より一層顕著です。その代わり一部のコンサルで見られるような「降格」もまず発生しません。

PEファンドでステップアップしていくなら、長い目線でじっくり取り組む必要があります。そのなかで複数の投資案件を経験して、PEファンド運営者としてのスキルを高めていきましょう。

PEファンドの仕事内容を理解して自分に合った職種に就く

外資系PEファンドの場合は異動がないので、入社時点で担当する業務領域は当面固定されます。特に未経験から入社した場合に多いのが、イメージしていた業務とのミスマッチです。

フロントの仕事に限ると、PEファンドには投資先の検討や投資実行・バリューアップなどを目指すチームと、金融機関から投資を募ったり、投資開始後には投資先の状況などについてレポーティングしたりするチームがあります。

未経験のPEファンド志望者は、しばしば前者の投資に直接触れる仕事をPEファンドの仕事としてイメージしがちです。そして、そのような方が金融機関と継続的な接点をもつ後者の仕事に就くとミスマッチを感じてしまいます。

ミスマッチがあっても、外資系の場合は部門間の異動は容易ではありません。PEファンドの組織構造を理解して、自分の意向にあった部署でキャリアをスタートしましょう。

解雇リスクの低い安定したファンドでキャリアを始める

唯一、誰から見ても明確な「失敗」といえる辞め方が、PEファンド側から突然解雇されてしまうことです。当然ながら解雇されにくいPEファンドを選ぶ必要があります。たとえば日本で豊富な実績があり、すでに拠点を複数立ち上げたファンドの方が安心できます。

日系の大手企業のように大きな組織のファンドはないため、どのPEファンドにも一定のリスクはあります。そのなかでも、できるだけ長期のキャリア形成に適したPEファンドを選考の過程で選んでいきましょう。

PEファンドを辞めることは必ずしも失敗ではない

出世半ばでPEファンドを辞める人は大勢いますが、ネガティブな理由で辞めていく方はさほど多くありません。競合他社により魅力的な転職先があったり、CFOなどチャレンジングな職種の転職案件を紹介されたりして、決断するケースが多く見られます。

また起業やサイドFIREなど、全く異なる形でセカンドキャリアをスタートさせる方もいます。自分が将来どのようなキャリアを築いていきたいのかによって、成功・失敗の判断軸は変わるのです。

一方で「PEファンドで長期的なキャリアを築き、出世していくのが自分にとってのキャリア目標」と考えている人もいるでしょう。その場合は、一般的な外資系の印象とくらべて「人材の新陳代謝が遅い」ことを理解して、キャリアの達成に時間がかかることを覚えておいてください。

また、自分がイメージしたとおりの仕事ができるよう、未経験の方は希望に合った部門に応募しましょう。今回の記事を参考にして、自分にとって最善のキャリアを歩んでいってください。

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>PEファンドで求められるスキル・実態に関する記事

PEファンドにおける激務度・残業時間・働き方の実情【コンサル、投資銀行との比較】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/privateequityfundworklifebalance

PEファンドのタイトル毎の年収レンジ【1億円を稼ぐ人の共通点・私生活とは?】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/pefund_salary_range

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今回の記事では、PEファンドを辞める理由とその原因、そしてPEファンドでのキャリア成功のポイントについてお伝えしました。

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