CFOの「シード期」「ミドル期」「レイター期」での役割の違い

CFOはベンチャー企業の各フェーズにおいて、それぞれ重視される役割が成長段階に応じて変化します。

立ち上げのシード・アーリー期においては、まずは事業をしっかりと立ち上げるための資金調達が必要です。ミドル期は追加投資を行いながら、さらなる成長を志向。レイター期においては黒字化を目指しつつ、エグジットを考えていかなければなりません。

CFOは各期において常にお金のことを考えておけばいいと思われがちですが、実際は管理部門担当役員の側面として、全社の組織作りや社員が働きやすいカルチャー作り、事業戦略構築にも積極的に参加していく必要があります。

今回は各成長段階において、CFOに期待される役割について、確認していきます。

【目次】

  1. シード期のCFOの役割
  2. ミドル期のCFOの役割
  3. レイター期のCFOの役割

シード期のCFOの役割

まずはシード期のCFOの役割ですが、この時期においては、リソースがない中で、何も整っていない状態を整えていく役割全般が期待されていくこととなります。

資金調達は勿論のこと、事業を共に作りつつ、ビジョンやミッションを確立するなど、CEOやCOOと共に外部の専門家を含めて壁打ちをしながら、会社全体を磨いていくことが求められます。

CEOやCOOの右腕として

何よりもCFOの役割として大切なのは、CEOやCOOの右腕として機能することです。

この段階では具体的な役割というよりも「CEOやCOO、さらには他の社員が困っていることなど、あらゆることに対応し周囲を支える」ことが望まれています。

CEOやCOOは事業の立ち上げに注力しなければならない時期ですが、CFOは事業を無事立ち上げ、さらに伸ばしていく際に必要な、ヒトやカネといったリソースを調達してくることになります。

シード期の資金調達の実施

この時期はまだ組織が少数で、事業も完全に立ち上がっていないため、億単位の調達が必要というわけではありません。ただ数百万〜数千万の調達により、事業を確実に立ち上げていくことに充当することになります。

調達の方法論としては、創業者による出資が想定されます。また投資家に依頼する場合、シード期を専門としたVC、会社のビジョンや事業に共感したエンジェル投資家など、リスクを最大限許容できる投資家に限られます。

日本政策金融公庫による創業融資や、信用保証協会の信用保証付きの創業支援融資など、まだ事業が完全に立ち上がっていない段階ならではの融資も選択肢としてあります。

事業部門組織の構築

このタイミングでは、まだ管理部門をしっかりと作っていくフェーズではなく、まずは事業を立ち上げ、伸ばしていくための開発やセールスの組織作りから入っていくことになります。

事業を構築するために、CEOまたはCOOが直接開発やセールスを見ていかなければなりません。

時にはCEOやCOOが自らセールスや開発を行うこともあるでしょう。

またこのタイミングでCFOが入る場合は、管理部門はCFOが1人で全てのことを回して行かなければならないことが一般的です。

CFOを内部で抱えられない場合もある

よく創業期から、CEO、COO、CFOが揃っていると考えられがちですが、実際はCEOが自ら立ち上げた会社を、そのままコストを抑えながら全ての業務をこなしていくことが多いです。

事業がまだしっかりと立ち上がっていない創業初期の段階で、COOやCFOを採用するのは資金的に至難の業とも言えます。

そのため、シードやアーリー期で専門的なスキルやノウハウが必要で高額になりがちなCFOを配置できない場合、スポット的にCFOに入って貰って、シード・アーリー期を乗り切っていくという考え方もあります。

ミドル期のCFOの役割

事業もなんとか立ち上がり、今後はさらなる成長を目指して行かなければならないタイミングがミドル期です。

CFOはそのようなフェーズにおいて、次のような役割が期待されます。

ミドル期の資金調達の実施

このタイミングでは成長をさらにドライブさせるべく、補給を行っていくための資金が必要となります。

シリーズAやシリーズBといった資金調達で、シリーズの調達額が数千万〜数億になると想定されます。

また、この段階では初期の投資家の顔ぶれとは変わり、ミドル期をターゲットとしているVCや、事業面でのシナジーを検討できるCVCが入ってくるものです。

シード・アーリーの「事業をなんとか立ち上げていく」という目的から、「事業を伸ばしていく、さらにシナジーを検討していく」目的にシフトしてきます。

投資家候補に対して自社の事業戦略を伝えつつ、特にCVCとはその関連する事業会社や事業部門とどのような新サービスを立ち上げていくことができるか、具体的に議論をしながら資本業務提携という形を取らなければなりません。

この段階では赤字フェーズであることが一般的なため、銀行融資では保証協会付き融資は可能ですが、自身が責任を負う必要のあるプロパー融資は難しいでしょう。

監査法人の選定

とりわけ上場を考えている場合においては、監査法人をどこにするかという課題が出てきます。

このタイミングは上場準備におけるN-4期〜N-2期に該当しますが、監査法人のショートレビューを入れる必要があり、CFOが対応していくこととなります。

一般的にはまだ完成途上である内部統制や、決算、管理体制の状況ではありますが、この段階でどのような課題があるのかを洗い出すことによって、解消を図っていくことが非常に重要です。

ショートレビューを経て、監査法人を決定する際、ショートレビューでも数百万の投資が必要であるため、上場計画と合わせて目算していきます。

主幹事証券の選定

丁度ミドル期と重なるN-3期〜N-2期になると、自社の上場を支えてくれる主幹事証券を決めていかなければならないタイミングです。

主幹事証券の決定は、引受審査部のコンサルティングとの相性がよいか、事業戦略に好影響を与える証券会社であるか、グループ会社の金融機関があれば融資は望めるか、また逆にメインバンク系の証券会社であるか、その他トップとの人的関係が良好であるかなど、様々な要素を考慮して行います。

そもそも、こちらが希望しても、主幹事証券は上場可能な会社かどうか見ているため、引き受けてくれるかどうかは証券会社次第でもあります。

事業面でどのような成長を図っていくのか、またガバナンスや管理体制が十分に整っているか、整えていく必要があるか、さらに経営者のビジョンが明確かなども大切な要素です。

管理部門組織の構築

前述のとおり、この段階で上場準備をすることになった場合には、管理部門の組織強化が必要になります。

管理部門はCFOやそのスタッフだけでは不十分な場合が多く、管理部門担当役員としてのCFOに加え、管理部門をまとめる管理部長や、財務経理、労務スタッフの配置、さらには、社長直轄の独立組織である経営企画部門を配置していくことも考えられます。

さらには、取締役をチェックする役割である、監査役も常勤と非常勤を配置していくことになります。

また、しっかりとした内部管理体制を敷くには、それなりのコストが必要なため、CFOはそこも漏れなく見ていく必要があります。

上場準備に踏み切る場合は、監査法人への監査費用や、主幹事証券に対するコンサルティング費用、管理部門構築のための採用費や人件費、稟議などのシステム費用が掛かってくることを忘れないようにしましょう。

レイター期のCFOの役割

立ち上げ期であるシード・アーリー期を経て、新たな成長のために投資が必要なミドル期を越え、レイター期にくると、これまでリスクのある中でも投資してくれた投資家に対する配慮も考えていかなければなりません。

エグジット(出口戦略)の検討はCFOがステージの中で最も中心的役割を担う段階です。

上場準備や場合によってはM&Aという選択も考えられるため、制約があるステークホルダーと調整を行いながら、取るべき選択に向けて進んでいく必要があります。

上場準備も佳境へ

この段階までくれば、上場準備もN-1かN期に差し掛かっている頃でしょう。

上場準備がミドル期に比べさらに進み、証券審査を経て、証券取引所への申請と審査に入ってくる段階で、管理部門が創業来最も忙しい時期に差し掛かります。

証券会社や取引所からの繰り返される質問に対して、スピード感を持ってタイムリーに回答することが求められ、そのマネジメントはCFOにとって非常に重要な業務です。

上場前の資金調達の実施

上場前にさらに成長を志向すべく、シリーズCやシリーズDという段階を経ることも考えられます。

この段階では投資家の顔ぶれが変わってきて、シード・アーリーや、ミドルほどリスクが取れないものの、ある程度リスクを取りながら事業連携をしていくCVCや、上場益を得るためにある程度のバリュエーションでも出資したいVCが入って来ることもあります。

シリーズを通じて、様々な株主が揃う段階がこの上場前の段階であり、各株主とその間における利害調整をしながら、上場に向けて準備を進めていくことが求められます。

一方で、黒字化の段階であれば、銀行からのプロパー融資も可能です。資金調達において株主の利害を考える必要はなく、また借入利息は株主資本コストよりも安いことから、有効な選択肢の1つとして考えられます。

M&Aという選択肢の検討

株式上場以外に考えられる選択肢として、上場準備と上場後の膨大なコストを抑えるという点ではM&Aもあり得ます。

それを買い手側と連携して主導していくのもCFOの重要な役割です。

M&Aの段階としては、ミドル期においても考えられますが、事業として確立するこのレイター期において、既に株主である事業会社(CVC)とより事業連携が強化できることから全株を買い取ってしまうことも考えられます。

また、株主ではないものの大企業の傘下に入ることで、リソースが確保できることからより事業が成長できる場合において、十分考えられる選択肢です。

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>コンサルタントへのキャリアに関する記事

ベンチャー・スタートアップのCFOに期待される役割
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/startup_roleofcfo

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シード期、ミドル期、レイター期のそれぞれにおけるCFOの重要な役割について確認しました。

CFOはお金に関すること全てにおいて得意であると思われがちですが、実際には上場準備や管理体制強化が得意なタイプ、資金調達を得意とするタイプ、さらにはM&Aの経験が豊富なタイプなど多種多様であり、実際に本人に強みや得意分野があるのが一般的です。

またどのステージにおいてもCFOの役割は重要である中、責任感も問われる分、着実にキャリアを築ける非常にやりがいがある役割と言えます。

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