投資銀行を目指すコンサルタントからよくある質問と回答例【年収面から採用まで】

ポストコンサルタントのキャリアとして投資銀行を選択肢の1つに入れている方は多いです。プロジェクトベースの働き方というコンサルと投資銀行の共通する特徴や、投資銀行の高い報酬水準に魅力を感じやすいことが背景にあります。

一方で、共通点があるといっても異業種なため、投資銀行に対する疑問点や心配な点が少なからずあるようで、当社にも様々な相談が寄せられます。今回は、投資銀行への転職を目指すコンサルタントからしばしば寄せられる質問と回答例をご紹介します。

【目次】

  1. 「将来的には海外展開支援に関わりたい」「欧米出張など、欧米とのコミュニケーションがある業務に携わりたい」
  2. 「今自身が担っている役割に対して、給与が低く不満」
  3. 「裁量権を持ち、より経営に関わるチャンスが欲しい」
  4. 「金融工学の知見を生かしたい」
  5. 「スタートアップの成長に関わりたい」
  6. 「長期プロジェクトにアサインされて経験の幅が広がらないため、実績をPRしづらい」
  7. 「インダストリー一本で案件も単発長期なので経験が薄い点がネック」

「将来的には海外展開支援に関わりたい」「欧米出張など、欧米とのコミュニケーションがある業務に携わりたい」

投資銀行はグローバルにビジネスを行なっているイメージが強いため、海外志向が強い方が投資銀行への転職を希望する例も多いですが、これについてはいくつか留意する必要があります。

まず、「海外展開支援に関わりたい」が本心の場合は、外資系投資銀行は基本的に選択肢から外れます。なぜなら、外資系の金融機関の日本オフィスには海外展開を行う機能を期待されないことが殆どだからです。外資系金融機関の日本法人は、あくまで「本国の方針のもと日本でのビジネスで収益を稼ぐ」ことを期待されており、日本オフィスのメンバーが海外展開に関わることも極めて稀です。

従って、そもそも「海外展開支援をしたい」志望者を雇おうとは考えてないことが多いです。むしろ「海外展開支援」を志望理由にした時点でビジネス構造を理解していないと受け取られる可能性がありますし、うまく入社できたとしても、海外展開支援に携わることはまずないと思っておいた方が良さそうです。

逆に国内系大手の証券会社にある投資銀行部門であれば、海外にオフィスを有する企業も多く、実際にこの志望を実現できる可能性が高まります。実際にクロスボーダーのM&A案件や、外国市場での証券発行など多数のディールがあります。従って海外出張・駐在や、海外オフィスとコミュニケーションをとるようなディールも多数あります。海外関連のディールは特定のチームが行なっていることも多く、あらかじめ志望を伝えることで、そうしたチームに参画できる可能性も高くなるでしょう。

ただし、この際にも気を付けたい点が2点あります。まずは、投資銀行の海外部門の英語力の高さです。投資銀行の海外部門メンバーの英語力は、日本国内で「英語を必要とする」ビジネスを行なっている方々の中でみてもかなり高いです。海外ディールを行うとなると専門用語を交えた会話を、欧米のネイティブの方々と出来なければならないため、日本人側にも高い英語力が要求されます。

もちろん実際には投資銀行のオフィスにもよりますが「チーム全員が帰国子女か海外留学経験者で、ほぼネイティブだった」という事例もよくお聞きします。これに比肩できる英語力を有しているかどうかは事前に判断してこの志望を伝えることをおすすめします。

もう一点は、日本の投資銀行にとって海外展開はメインビジネスとは限らないという点です。外向けにはグローバルさを全面に出してアピールしているものの、実際には収益基盤はあくまで日本企業による日本市場でのディールにあることが多いです。

従って海外志向が強過ぎるということは、転職先の実収益にはあまり貢献できない人材と見なされてしまうリスクがあります。この点は、転職志望先の精査と面接での説明で解決できます。まず、転職先は海外展開人材を強く求めている投資銀行を厳選しましょう。また、面接ではあくまで投資銀行の収益に貢献するスタンスを全面に出し、海外業務を通じてどのように収益貢献する考えかを、的確に伝えていくことが大切です。

「今自身が担っている役割に対して、給与が低く不満」

世間的にはコンサルは給与水準が高いイメージがありますが、実際に働いているコンサルタントからは、業務量や、役割レベルに対して給与が低いという不満をしばしば耳にします。それだけ激務でハイレベルなビジネスを行なっているという自覚があるのでしょう。

まず、この不満を投資銀行への転職で解決する余地は充分にあります。個社により、そして部門やチームにより給与水準はさまざまですので、完全な統計を示すことは難しいですが、投資銀行業の給与水準は日本のサラリーマンという括りではおそらく最高水準です。
外資系企業であれば30代から数千万円が視野に入ってきますし、日系でも30歳フラットで1000万円は珍しくなく、大手なら30代のうちに2000万円前後を狙う余地もあります。

コンサルからの異業種転職であることにより、少々職位が下がる等のハンデがあると考慮しても、外資系投資銀行ならかなり高確率で年収は上がります。外資系コンサル→日系投資の転職でも若手などを中心に「年収が上がった」というお話は珍しくありません。

尚、いうまでもありませんが、給与面の不満を転職先の面接等の場で話す、もしくは給与の良さを転職理由とすることはおすすめしません。投資銀行の年収水準が高いからといって、投資銀行業がそういった不満や志望をイノセントに語る方を採用したいわけではありません。あくまで志望理由を話す際には「きちんと投資銀行業で何をやって、どうやって収益貢献していくつもりか」を整理してお話しするようにしましょう。

「裁量権を持ち、より経営に関わるチャンスが欲しい」

投資銀行ビジネスを通じて企業経営に関わりたいという意向を持っている方もしばしばおりますが、現職がコンサルであることを前提とすると、この志望理由を背景とした投資銀行業への転職はあまりおすすめしません。

投資銀行業は、あくまでファイナンスを行うことがビジネスの根幹なので、クライアント企業に対する裁量を持つ、もしくは経営に関わるということはあまりありません。あくまで財務戦略等に関する提案ができるというだけでしょうか。
強いて言えば、IPOが一番企業に深く関われますが、あくまで経営するのはクライアントであり、投資銀行は「上場する上で必要なアドバイス」を行うにすぎません。

それでも、他のビジネスと比較すれば、クライアントの経営に近いところに関われるということは確かにあります。全くの専門外の方からすればファイナンスも間接的に「経営に関わる」ことと思えないこともありません。

しかし、ご存じの通り、コンサルタントは企業変革や企業戦略、業務効率化などさまざまなプロジェクトを通じて、クライアントの経営に関わる余地があります。プロジェクトにはよりますが、投資銀行よりもコンサルの方がよっぽど「裁量権、経営に関わるチャンス」に近い仕事ができる余地があります。

「ほとんどのコンサルプロジェクトは企業の一部部門などに関わっているに過ぎず、企業全体の経営を担うことなんてできない」と考えている方もいるかもしれませんが、その不満を投資銀行業に転職することでは解決できないのが実情です。コンサルである現状より高いレベルで裁量権を持ち、経営に関わりたいという志望があるのならば、PEファンドなどハンズオン型の投資を行う投資会社に転職するか、もしくは自分で起業するというのが有力な選択肢となります。

「金融工学の知見を生かしたい」

リーマン・ショックのイメージから想起されるのか、投資銀行はハイレベルな金融工学を活用しているというイメージがありますが、ここで「投資銀行」の区分けについて注意しておくことがあります。実はどこまでを投資銀行とするかはやや曖昧なところがあり、これといった正解がありません。

狭義に投資銀行というと、クライアント企業の資本政策(これはM&Aも含みます)やファイナンスを実行する部隊のことを指します。つまりM&Aやキャピタルマーケット、IPOといったプロダクト部門のことをいいます。

その次に広い投資銀行として、上記の部門にクライアントに対する営業活動を行うRMや、各投資銀行プロダクトを横断的に分析し、各クライアントに最適な財務戦略を提案するコーポレートファイナンスが含まれます。日系などを中心に、ここまでを投資銀行とする傾向が相対的に強い印象です。

最も広義な投資銀行として、これに機関投資家向け証券セールスや、ディーラー・トレーダー・金融商品開発などの市場本部部門を含む場合があります。外資系証券会社に転職するとすなわち「投資銀行に転職した」という場合が少なからずありますが、大手の外資系証券会社ならば市場部門を持っております。この場合、投資銀行というのは広義の投資銀行を意味していることになります。

日本企業でも、かつて部門別採用の一カテゴリを「投資銀行部門」として新卒や中途を採用した後、市場部門と(より狭義の)投資銀行部門に部署配属を行う、といった事例もありました。

さて、なぜ投資銀行の分類が曖昧であることを最初に紹介したかと言いますと、実は金融工学を多用するビジネスは「狭義の投資銀行」にはあまりありません。狭義の投資銀行で必要とされるのはどちらかというと証券分析や企業価値評価の知見で、いわゆるITを多用する金融工学とは異なります。

逆に金融工学の知見が最も付加価値となるのは「市場部門」です。つまり最も広義の場合に投資銀行であれば含まれうる領域です。あくまで「最も広義の投資銀行として含まれる場合もある」というだけなので、市場部門の採用は投資銀行の外で行なっていることも多いです。採用の形式や部署の構造は企業によって異なるので注意が必要です。

金融工学の知見を生かすという観点から転職先を検討する場合は、投資銀行に含まれているかどうかに囚われず、市場部門の業務を行なっている部門を志望することをおすすめします。

「スタートアップの成長に関わりたい」

実際にマッチしたビジネスがあるかどうかはタイミング次第ですが、東証マザーズやJASDAQなどの新興企業向けのIPOを検討している企業のディールに関わるようにすると良いでしょう。

ただ、投資銀行業に入ることによって「ビジネスへの投資に関われる」という考えを持っている方が時々おりますが、この志望理由で投資銀行業に転職するのは注意が必要です。

まず投資銀行業は、クライアントのファイナンスを行うことがメインビジネスであり、基本的に「ビジネスへの投資」は行いません。クライアントの経営や財務戦略のアドバイザリーをおこなっているイメージを持たれがちですが、あくまで「ファイナンスを行うために提案をしている」のであって、投資銀行の本分はクライアントのファイナンスをサポートすることにあります。

ビジネス・企業自体に投資を行うビジネスは投資銀行ではなく、ベンチャーキャピタルやPEファンドの領域になります。「スタートアップに投資したい」「スタートアップの成長に関わりたい」という志望を真に叶えるならば、転職業種を再検討した方がよいでしょう。

少し志望を言い換えて「企業の成長に貢献したい」ということであれば、近しいビジネスとしてはIPOがあります。IPOとは企業の株式を証券取引所に上場させるためのアドバイザリーや上場した株式の販売を行うビジネスです。投資銀行の中では最もプロジェクトが長くなりがちなビジネスで、証券取引所の上場審査に通ることや上場後の株の値動きを安定させることをゴールに、企業の内部構造やビジネス構造のコンサルティングを行います。その点では上場を達成させることを通じて、企業の成長に貢献しているといえます。

ただし、上場を検討している時点で「スタートアップ」というには大きい企業も多く、特に東証一部上場のIPOプロジェクトなどですと、すでにクライアントは大企業と呼ぶ規模に成長してしまっていることが多いです。従って、いざ働いてみるとイメージと違ったという場合も多い点には注意が必要です。

「長期プロジェクトにアサインされて経験の幅が広がらないため、実績をPRしづらい」

転職する際には、今働いている仕事の実績をアピールする必要が出てきます。このプロセスはほとんどの転職活動において避けて通れないものです。

一方で、コンサルとして参画しているプロジェクトが数年に渡る長期プロジェクトの場合、プロジェクトが完了する前に転職活動をすることになる場合も多いので、自分が達成した実績をアピールしづらいという悩みを抱えているコンサルタントは少なからずいます。

この悩みに対する回答に入る前に、なぜ転職先に今働いている仕事の実績をアピールするのかを考えてみましょう。転職先が、異なる企業であるいまの職場での実績を知りたがる理由はただ1つで、その実績から、転職希望者のスキルセットや「転職先で戦力になるかどうか」を見極めるためです。従って、そもそも今の仕事の実績をアピールする際は何でも闇雲に伝えれば良いわけがなく「転職先で役にたつと思ってもらえるような実績」をアピールする必要があります。

この前提を踏まえて今回の悩みを考えてみますと、投資銀行にとってはコンサルのプロジェクトをクローズさせたかどうかはあまり重要ではありません。大事なのは、コンサルとして働いてきた中で達成したことを「投資銀行で役立つと思われるように」伝えることです。それは別に大きな達成である必要はなく、日常で「プロジェクトの推進に役立った」ことを例示すれば充分にアピール材料になります。

例えば若手コンサルタントの場合は、資料作成スキルは投資銀行にとって重要です。大抵の投資銀行の部署では膨大なパワーポイントやエクセルなどの資料を高速で作成する必要があり、その速度、分量は一般的な人では対応できないハイレベルな水準が要求されます。

しかし、その実態はコンサルでも同じで、コンサルファームの若手の多くがこの能力を半強制的に培っているはずです。1つ1つの資料がプロジェクトのクローズに直結したかどうかは重要ではなく「プロジェクトに関わる資料を高速で正確に作成した」ことを、事例も交えてお話しすれば充分実績のアピール材料となります。

ミドルクラス以上の場合は、プロジェクトの「マネジメント能力」をアピールすると良いでしょう。確かにプロジェクトとしてはクローズする前に転職しようとしているかもしれませんが、転職時点までプロジェクトを、アソシエイト・アナリストを使いながらスムーズに進めてきたのであれば、それも充分な実績です。

投資銀行もまた、コンサルほど長期にわたるプロジェクトは多くないにせよ、やはりプロジェクトベース(投資銀行の場合は「ディール」と言いますが)での働き方となることが多いビジネスです。ミドルクラスであれば、若手をうまく使いながら、スムーズにビジネスを進める能力が求められます。従って、コンサルタントとして培われた「プロジェクトマネジメント能力」があることは、投資銀行への転職を考えたうえで大きなプラス材料です。是非、スムーズなマネジメントがプロジェクト推進に役立った事例などを踏まえながら、転職面接の場では積極的にアピールしていきましょう。

「インダストリー一本で案件も単発長期なので経験が薄い点がネック」

投資銀行の顧客は一般企業や公的企業全般となることから、多様な業種の知識を必要とすると考える方は多いです。一方でコンサルではチームや部門がインダストリードリブンで分かれていることも多く「一つの業種しか経験していないこと」を不安視する方は多いです。

これについては実のところはほとんど心配する必要がありません。投資銀行の社員は特定産業の専門家ではなく「M&Aなどの資本政策も含めたファイナンスの専門家」です。現役の投資銀行の社員も別にあらゆる産業について精通しているわけではなく(そもそもそんなことはほぼ不可能です)ディールに応じて産業の特徴をキャッチアップしながら対応しているにすぎません。従って、幅広い産業の知見を入社時点で求められることはあまりありません。

むしろ「一つでも深い知見を有する産業がある」のであればそれはプラス材料になります。入社後に優先的に自分の関連産業のディールに関わることで、早くから活躍するチャンスにもなります。従って、特定の産業の知見しかないことについては、ネガティブに捉えるのではなく「〇〇業について深い知見を持っています」というように是非面接等の場では、積極的にアピールすることをおすすめします。

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<投資ファンドへの転職に関する記事>

投資銀行(IBD)と資産運用会社(アセマネ)の違い【両セクターの経験者に訊く】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankassetmanagement

コンサルファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank

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今回は投資銀行を目指すコンサルタントがしばしば抱く疑問や不安に関する回答をお伝えしました。コンサルと投資銀行にはある程度共通点もありますが、あくまで異業種ですので、転職を検討するうえで不安や疑問を持っている方が少なからずいます。

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