事業会社、金融機関への業務改善ならびに事業再構築にかかわるアドバイザリーサービスを提供するEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 EYパルテノン ターンアラウンド・アンド・リストラクチャリング・ストラテジー(以下、TRS)。
今回は、TRSチームの関西拠点における、サービスの強み、関西マーケットにおけるトレンドや特徴的な案件事例、組織のカルチャーなどについて、シニアマネージャーの山本恵美様に伺いました。
業績回復の先にある「自走」まで見据えた再生支援が求められる
佐々木
山本様のこれまでのご経歴をお伺いします。
山本様
私は前職で、中小企業向けの経営コンサルタントとして、経営支援や人事評価制度の導入、社員教育や幹部教育などを行っていました。
佐々木
そこからなぜ、現職に就こうと思われたのでしょうか。
山本様
前職にて業績が厳しい企業のご支援をした際に、自分自身のスキルアップの必要性を強く認識したことがきっかけで、今から10年以上前にEY新日本有限責任監査法人に転職しました。その後、EY内の組織再編により、EYストラテジー・アンド・コンサルティングに籍を移しております。
佐々木
TRSチームの役割やミッションについて教えてください。
山本様
私たちTRSは東京と大阪に拠点を構えており、主に3つの業務を行っています。
1つ目は、リストラクチャリング業務です。いわゆる再生支援業務であり、主に業績不振に陥った企業の再生支援をしています。
2つ目は、日系企業の海外事業や拠点、子会社の撤退支援業務です。加えて、外資系企業の日本からの撤退支援業務も行っています。
3つ目が、バリュークリエーションです。成長企業であってもコスト削減のニーズがあり、技術的なナレッジの提供や分析、実行支援をしています。
私が所属しているTRSの大阪拠点においては、1つ目のリストラクチャリング業務が中心です。
佐々木
再生支援ですが、業務の流れやポイントについて教えてください。
山本様
企業の現状把握と分析、経営課題の抽出、改善計画の策定、そしてモニタリング実行支援の4つのステップでご支援しています。
具体的には、マーケットや競合他社の動向、財務状況などを踏まえた定量的な観点だけでなく、経営側と現場両方のヒアリングによる定性的な観点も合わせ、事実に基づく分析の徹底を大切にしています。分析によって課題をしっかりと明確にしたうえで、課題解決のための最適なアプローチについてお客様と何度も協議を重ねて、納得感のある実行可能な改善策を提案・策定します。改善施策の各種計画落とし込みから利害関係者の協力要請まで、一貫してご支援しています。
私はお客様の改善施策の実行だけでなく、業績回復や目標達成、さらにその先の自走を見据えて必要なポイントを押さえて徹底的にご支援することが重要だと考えています。
EY内の連携を活かし、「ワンストップ」でサービスを提供出来る
佐々木
チームの特徴について教えていただけますか。
山本様
EYには、監査法人、税理士法人があることに加えて、私たちのようなコンサルティングの事業部もあります。そのため、EYの中で幅広いサービスをワンストップで提供できると考えています。
そしてTRS大阪チームには、監査法人から移籍してきた財務面にも強いメンバーが揃っています。これまで数多くの事業再生案件に携わっており、再生における知見が豊富で、利害関係者との調整力にも長けています。
また、大阪にはTRSチームに加えてM&Aの財務デューデリジェンス業務を行うTransaction Diligence(TD)や、価値算定業務を行うValuation,Modeling and Economics(VME)、インフラストラクチャーの分野におけるアドバイザリー業務を行うInfrastructure Advisory(IA)も設置されています。
各チームが自らの専門領域を担当しながらも、チーム間の壁は低く、相互に協力関係があります。業務の性質を考慮し、本人の希望を聞きながら案件にアサインすることも可能です。その結果として、個人の能力向上や経験したい業務へのチャレンジが可能になっています。
佐々木
国内の企業、事業再生に加えてクロスボーダー、アウトバウンド、インバウンド、バリュークリエーションの領域にも携われると認識しておりますが、いかがでしょうか。
山本様
はい、そういった業務にも携わることができます。東京チームには数多くのバリュークリエーション業務があり、東京とのコラボレーションを進めることにより、大阪におけるサービス拡充を図っています。
佐々木
東京とのコラボレーションという観点で、関西チームの方でも事業再生だけではなくバリュークリエーションの領域にも携われるということでしょうか。
山本様
はい。現在、東京と大阪でクロスアサインを行っております。大阪所属メンバーも東京案件に関与しており、希望者は積極的にアサインできる環境です。
「ものづくり」「顧客目線」の魂・技術・文化に付加価値をつけて伝承したい
佐々木
市場環境と貴社の役割に関して伺います。現在クライアントからどのような相談を受けることが多いのか教えていただけますか。
山本様
直近、クロスボーダー案件では撤退支援や収益改善の相談が増えています。例えば海外子会社を抱えている企業から、「コロナ期間中に海外で設立した工場の稼働率が低い」「コロナ禍を経て在庫過多になってきている」といったケースです。
また、国内をマーケットにしている企業からも収益改善、ブランド戦略の見直しに関するご相談があります。国内市場はシュリンクしており、さらに原油高や電力費高騰、物流費高騰、賃上げなどコスト面の影響もあり、なおかつ関西のマーケットは関東と比較して人口が少なく規模も小さいゆえに、国内マーケット主体の企業は業績が悪化しやすい環境にあります。
佐々木
収益改善のご相談が多いのですね、具体的な案件事例についても教えていただけますか。
山本様
私が直近で担当させて頂いた案件に、大手企業との取引停止に伴って業績が大幅に悪化した事例があります。相手は大手企業ですので、「取引終了」に関する案内も1年以上前から受け取っており、当然、取引数量低下に伴う財務悪化も社内で認識していました。
しかし、社内では構造改革の検討、実行ができておらず、資金繰りも急激に悪化していました。会社の強み、差別化ポイント等、クライアントと何度も膝をつき合わせて話し合い、工場の集約、物流拠点の統廃合を行うとともに、製造する製品の取捨選択や機械の一部停止を行い、財務体質の改善に取り組みました。
また、コロナ融資の返済が始まっている中、外部環境の急激な悪化に伴い思うように収益が改善していない企業も多くあります。どれだけのスピード感を持って改善施策を実行できるかが勝負です。
一方で、業績が順調な企業からは、「長期経営計画立案」のお話もあります。
建築系の企業ですが、建設業界には「2024年問題」と言われる、残業時間の上限規制問題があります。今までは休日労働や残業をしていたものの、残業時間上限規制が入ると「今まで通りの工期で進められない」「休ませなければならない」「完成工事高・利益が減少するのでは?」という問題もあり、「不透明な状況の中で何をやっていけばいいのか、長期計画を立てたい」というご相談もあります。
佐々木
チームとしてはこの環境下においてどのような役割を担っていきたいとお考えでしょうか。
山本様
経営者様はPL主体の考えになりがちです。しかし私達は、今起こっている事象を「点」ではなく「面」で捉えて、顧客の価値向上に繋がるアドバイスができる存在になりたいと思っています。ポートフォリオマネジメントの観点からROICの検討を促したり、投資の検討、リソースの再配分もクライアントともに考えていきたいです。
また、関西マーケットには、「ものづくりへの魂、技術、情熱」「利用者の目線に立ったサービスを考え抜く真心」があると感じます。
その技術や文化をどのように伝承し、DXなどの生産性向上をどのように取り入れ、付加価値を高めていくか、経営者様と一緒に考えて、課題解決をする役割を担っていきたいです。
一時的なハードワークはあるが、個々の状況によってメリハリを付けた働き方ができる
佐々木
「事業再生=ハードワーク」とイメージされる方も多くいらっしゃる印象ですが、働き方の現状についても教えてください。
山本様
正直、経営改善が急務な企業様もあるので、時間的な余裕のない案件もあります。
一定程度納期を確保できる案件もあれば、短納期でやり遂げないといけない案件もあります。一時的にハードワークになる局面はありますが、落ち着いたら長期休暇を取得し、ワークライフバランスを取れるようにしています。
佐々木
長期休暇は、積極的に取りやすい雰囲気でしょうか。
山本様
はい。休暇が必要なメンバーにはアサインを一定期間緩めて、休める環境を整えています。
佐々木
子育てなどライフイベントとの両立についてはいかがでしょうか。
山本様
大阪事務所所属の女性マネージャーに小さいお子さんがいる方がいますが、M&A業務を中心に、再生案件にも従事しています。
再生案件も案件毎にフェーズがあり、モニタリング期間ですと比較的時間の融通も利きますし、マネージャーを二人配置することにより、お互いに助け合いながら業務を遂行することができています。
また、男性社員の中にも保育園の送り迎えをしながら子育てと仕事を両立されている方もいます。
子育てや介護など、家庭の事情に応じて、キャリアを諦めなくても良いよう、相談できる環境があります。
佐々木
社内の雰囲気はいかがでしょうか。
山本様
非常にアットホームで、面倒見のいい仲間ばかりです。上下もなく気楽に相談できるメンバーが揃っている点も、EYの強みだと思っています。雰囲気が良く、誰かが困っていたら声をかける組織風土があります。
もちろん仕事ではお互いに厳しく、しっかり成果を上げることを考えていますし、お互いに意見交換ができる風通しの良いチームだと思います。
「Building a better working world」に共感し、「経営者に寄り添える」方を歓迎
佐々木
チームが求める人材についてお聞きします。まず現在チームにはどのようなバックグラウンドの方がご在籍されているのか教えてください。
山本様
TRSチームには東京と大阪合わせて50名程度のメンバーが在籍しています。
大阪メンバーの多くは監査法人からの転籍者ですが、最近では金融機関出身者やコンサルティングファーム出身者がジョインしており、多種多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されています。
佐々木
では今後どのような方に入社してほしいか教えてください。
山本様
EYとしては、「Building a better working world」、より良い社会の構築を目指す姿勢に賛同してくださることは、外せない要素だと思います。
その中でコンサルタントとしては、評論家ではなく経営者と同じ目線に立つ姿勢が大切です。会社への思いを共有して常に疑問を持ち続け、客観的な立場から会社が再成長するために行動を起こせる人に入ってほしいと思っています。
また、クライアントには耳障りなことも言わないといけない局面が多々あります。客観的な意見や経営判断の材料を提示して、背中を押してあげられる「経営者さんの真の理解者」として、責任感をもって経営判断に寄り添える方に入社して頂きたいと思います。
佐々木
スキル面として、山本様が考える「最低限あった方がいいスキル」があれば教えてください。
山本様
論理的思考、問題解決能力、財務会計知識、コミュニケーション能力等、コンサルタントに求められるスキルは多いと思いますが、 基礎的なExcelやPowerPoint等の資料作成スキルに加え、厳しい局面や、タイトなスケジュールの時もありますので、心身の健康を保つタフさを持ち合わせていた方が良いと考えています。
そして、EYにおいては英語力です。英語ができれば、幅広い業務に関与できる可能性が高まります。
佐々木
チームには金融機関からジョインされる方も増えてきたようですが、ExcelとPowerPointは金融機関では使う機会がそこまで多くないとお聞きします。金融機関から未経験でチャレンジしてもキャッチアップできるものなのでしょうか。
山本様
ExcelやPowerPointのスキルは研修もありますし、努力や経験でいくらでもキャッチアップできると思います。
金融機関ご出身者の方々の強みの一つは、様々な業種業態の企業様を金融機関の立場から見ており、違う角度から企業様を見ることの重要性に気づかせてもらいます。
それぞれに強みがあり、お互いに引き出すことができれば、より強い組織になると思います。
私は弱みではなく強みに目を向け伸ばし続けてくれたEYの環境を継承していきたいと思っています。
佐々木
最後に、今後チームをどのように成長させたいか教えてください。
山本様
再生支援、バリュークリエーション、海外企業の撤退業務を大阪チームで提供し、「Building a better working world」の構築を実現していきたいと思います。