【CFO向け】ベンチャー資金調達のコツ<方法~スケジュールまで>

資金調達は、企業の経営戦略を支えるCFO(最高財務責任者)にとって最もコミットしなければならないハードな業務です。現在ではエクイティとデットに加え、補助金・クラウドファンディングなども活用でき、企業の戦略や方針により選択肢も広がっています。

特にエクイティは、個人投資家を呼び込むことができる手段もあり、多様化しているといっていいでしょう。

今回は調達手段の中でも、創業からの期間が短いベンチャー・スタートアップの企業にとって一般的なエクイティとデット調達のコツについて触れていきます。

【目次】

  1. エクイティとデット調達のポイント
  2. 調達方法の工夫
  3. 調達金額とスケジュール、体制などのポイント

エクイティとデット調達のポイント

企業が行う資金調達には、おもに出資と借入があります。

出資はエクイティ(株式)、借入はデット(負債)と言われることが多いです。未上場のベンチャー企業にとっては、エクイティが比較的多いのではないでしょうか。

ここから、エクイティ、デット双方について確認していきます。

エクイティ調達のポイント

企業やベンチャーキャピタル(VC)から出資を受ける手法で、未上場、とりわけ赤字のベンチャー企業にとっては最も検討されます。

大企業や上場企業においても使用される場合がありますが、上場企業の場合は、株主の意向をさほど気にせず、資本市場から速やかに調達できるのも特徴的でしょう。

しかしながら、未上場ベンチャーにとっては、一定のハードルがあり、出資先により制約を受けることもあります。

例えば、VCからの出資を受ける場合は取締役の派遣を受け入れることや、株式上場、M&Aなどのエグジットに関する努力義務、さらに残余財産分配の取り決めなどを行う必要があります。

ベンチャー企業にとって選択の余地がある場合には、自社の条件にあったVCを見極めることも可能です。ただ着金を急ぐなど、やむを得ない事情で受け入れなければならない場合も出てきます。

そのような場合においては、CFOが仮説を持ってCEOや他のCXOをはじめとした役員に説明しながら合意を取り付けていくことが重要です。

デット調達のポイント

エクイティと違い、株主のことを気にせずに検討できるのがデットによる調達です。

しかし返済義務があるため、赤字の会社に銀行からのプロパー融資は難しいものです。ただ、制度融資や保証協会の保証付き融資により、赤字企業でも調達が可能な場合もあります。

今後どのように企業を成長させていくかや、黒字化に向けての具体的な施策などを、金融機関とともに検討しながら融資を獲得していくことになるでしょう。

エクイティは赤字でもいいので、成長の絵を描きバリュエーションを向上させていくことが重要である反面、デットは黒字化に至る成長戦略や事業計画が重要です。

エクイティとデット同時調達のポイント

エクイティと協調したデット調達を可能とする考え方もあります。

ベンチャー企業ではエクイティ調達が比較的多いですが、同時に双方で調達するという点も、調達金額にボリュームを持たせたい場合やダイリューション(株式の希薄化)を考える点では有効でしょう。

デットの調達は、とりわけ赤字企業の場合はエクイティ調達が前提であり、エクイティ調達における着金をもって、デットが実行されるというパターンが一般的です。そのため同時ではなく、時期的にずれることはありますが、同シリーズ内での調達としては相乗効果を発揮する手段となるでしょう。

金融機関側からすると、企業がエクイティ調達することで、現預金が潤沢になることによるリスクヘッジとして捉えることもできるため、双方にとって有効な手段です。

調達方法の工夫

資金調達の際には、どのような工夫を行えばより調達の可能性が高まるのでしょうか。ベンチャー企業にとって一般的な調達方法であるエクイティをベースに確認します。

既存投資家からの追加出資

一番おすすめなのは、既存投資家らからの追加出資を募ること。出資後の追加であるため、投資家は自社の強みや弱み、今後の成長可能性を理解してくれており、デューデリジェンスや契約に要する期間も比較的短いのが特徴です。

さらに追加出資により他の新規投資家候補に対しても、既存投資家が出資するという点では、成長の裏付けとしての安心感が生まれるでしょう。

一方で、既存投資家から多くの出資を受けている場合は、持ち分比率の関係から、追加出資を受けられない場合もあります。

また、他の投資家候補に最初から当たるよりも出資の可能性は高いですが、必ずしも既存投資家から出資を受けられるものではありません。そのため、難しいと判断した場合はスムーズに対象を切り替えていくことが大切です。

リード投資家候補との交渉

ベンチャー企業に対して最大の出資を行い、企業に対するアドバイスや他の投資家の呼び水となるのが、リード投資家の存在です。

リード投資家が決まれば、そうでない場合に比べて今後の資金調達活動がスムーズに進むでしょう。

新たなリード投資家候補は、既存投資家経由で紹介してもらったり、知り合い経由で紹介してもらったりする方が、検討に入る確率も上がるようです。

一方フォロー投資家は、リード投資家が決定しないと出資を行わないことがあります。フォロー投資家に当たっても、「リード投資家が決定してから再度検討します」と言われてしまうこともあるでしょう。

フォロー投資家に対しては、パイプは持っておくものの、リード投資家が決定した後に金額面で追加が必要な場合や将来的な事業連携の可能性も考えられる場合に、改めて声掛けをすることになります。

リード投資家は独立系VCに多く見られ、フォロー投資家は銀行系VCやCVCに多い傾向が見られます。そのため、まずはリード投資家候補に当たりを付けて、出資相手を探していくことが最重要事項です。

CVCとの資本業務提携の可能性

事業上のシナジーが見込めるのであれば、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)との資本業務提携の可能性を模索することも重要です。

ただし、お互いにどのような事業連携ができるか、すぐに結論を出せるものではないため、議論には時間が掛かることを想定しておかなければなりません。

そのため、可能性を模索するためには、シリーズAやBなどのラウンド活動以外の時期に、日頃から業務提携の可能性と、来るべきタイミングが来た段階で出資してほしい旨を交渉しておくことも必要です。

ベンチャー企業はスピード感を重視するため、ここまでで紹介した3つの項目を並列的に検討することが求められます。既存投資家からの出資を検討しながら、リード投資家を探しつつCVCによる資本業務提携を模索していくのです。

調達金額とスケジュール、体制などのポイント

最後に、資金調達において検討すべき主要なものとして、金額、スケジュールと調達体制について確認します。

調達金額とバリュエーション

エクイティ調達については、調達金額とバリュエーションを検討していく必要があります。リード投資家が決まれば、意向により調達額とバリュエーションや株価が設定されることが多いでしょう。

今回のプレバリューを算定するにあたり、前回のポストバリューと、今後どのような成長を遂げていくのかを検討しながら、リード投資家サイドでデューデリジェンスにより適正額を算出します。

バリュエーションが決まれば、リード投資家からいくら調達するのか、出資比率でどのぐらいを想定するのかの軸で決めていきます。

調達額=株価×発行株式数で決まるため、これらのパラメータで検討することとなります。

ランウェイを加味した調達スケジュール

ベンチャー企業は、調達を行わずに現在の状況で事業を進めた場合にショートする期間であるランウェイを加味して調達を考えていく必要があります。

当然ショートしてからの調達では遅いため、その地点から逆算して適正な調達時期を検討していかなければなりません。具体的に逆算する必要はありますが、半年〜1年程度は調達に要する期間を見込み、投資家候補と面談をしていく必要があるでしょう。

資金調達環境によっては、VCが出資を縮小、もしくは選別するという、ベンチャーにとっては冬の時代も考えられます。厳しい時期も想定して、ランウェイとともに調達スケジュールを検討していく必要があります。

資金調達に臨む体制

資金調達において主体となるのはCFOですが、出資先候補や事業提携の内容により、CEOとともに進めることが望まれます。

CFOは、CEOや他のCXOの協力を得ながら、交渉を進めていく必要がありますし、CEOはCFOに任せっきりにせずに、主体的に関与していくことが求められます。CFOがプレゼンから交渉、クロージングに至るまで全て行えればベストです。

しかし出資する側からすると、CEOのビジョンやミッション、今後の成長や市場の見通しなど、直接聞いて判断したいと考えるのが一般的ですし、CEOから説明をした方が説得力を生むことは明らかです。

CFOはCEOを積極的に引っ張ってきて、交渉の場に立ってもらい、事業や成長についてはCEOの方から具体的に説明することとなります。一方のファイナンス面は調達額やバリュエーション、調達時期、想定している投資家など、CFOが詳細を説明する、そのような体制を組める方がいいでしょう。

リード投資家候補に対しては勿論ですが、フォロー投資家対応でもCEOが極力説明することが望まれます。

投資家からのデューデリジェンス対応

フロントとしてCFOが立って対応すべき重要事項である「デューデリジェンスにおける投資家からの質問事項に対する回答」は、速やかに行う必要があります。

投資家候補からはほとんどの場合は期日を決められた形で質問が届きます。一般的な質問として、ピッチ資料、事業計画や登記簿謄本の写し、決算書3年分の提出、これまでの投資契約書などが提示されます。

デューデリジェンスを受ける側としては、極力期限通りに提出するとともに、分からない点は早めに質問しましょう。

複数のデューデリジェンスを実施する場合は、こちらからデューデリパッケージとして、上記の書類を予め一式準備し、提出すればいいようにしておくと、デューデリジェンス対応の効率化や迅速化に役立ちます。

初期的なデューデリジェンスの場合は、VC側では手間が掛かるとのことで、NDAなしでの実施も一般的です。その場合は、機密事項に該当するものについては提出せずに開示可能なものだけを提出し、具体的に提出を要請された場合にはNDA締結前提で進めるのがいいでしょう。

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ベンチャーの資金調達のコツとして、対応しておきたい主要なポイントを中心に紹介しました。

調達においては、計画的に調達するタイミングを考えながら、VCをはじめとした投資家候補と折衝していくというタフな展開となります。

調達活動中は、CFOの持つリソースの大半をここに割くこととなるので、CEOやCXO、さらには財務経理担当者など、周りの協力を得つつ、先を見越しながら全体を管理し進めていくことが重要です。

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