戦略コンサル・投資銀行・PEファンドの「資料作成」における違い・特徴

今回はコンサルティングファーム、投資銀行(IBD)、プライベートエクイティファンドそれぞれが作る資料・スライドの観点からどのような違いがあるのか、共通している点も含めてお伝えします。

【目次】

  1. コンサルティングファーム・投資銀行(IBD)、プライベートエクイティファンドにおける資料作成の共通点
  2. 投資銀行における資料作成の特徴や観点
  3. 戦略コンサルティングファームにおける資料作成の特徴や観点
  4. プライベートエクイティファンドにおける資料作成の特徴や観点

コンサルティングファーム・投資銀行(IBD)、プライベートエクイティファンドにおける資料作成の共通点

コンサルティングファーム、投資銀行(IBD)、プライベートエクイティファンドにおける資料作成における共通点は、いずれもファームで指定されたフォーマットを使用していること、パワーポイントにより個別の企業の分析、インサイトを提供し、クライアントに対するアドバイザリー業務、プライベートエクイティファンドにおいては投資検討する際の企業がどれほど投資に値するかという点を明確に記載している点です。

すなわち、プライベートエクイティファンドでも投資銀行ないしは戦略コンサルティングファームのプロフェッショナルファーム出身者がほとんどなので、作成される資料のフォーマットやアウトラインも多少の差異はあれど、似てくるという特徴があります。

投資銀行における資料作成の特徴や観点

投資銀行においては、まずは対象会社の財務分析やバリュエーションを行い、財務モデルの作成等を行うことが多いですのでパワポによる資料作成に加えてエクセルによる資料作成を行うことが圧倒的に多いです。

財務分析に関しては、デスクトップDDのようなものを行い会計・財務的に対象会社にどのような特性があるかということを検討し、収益性、財政状態、キャッシュフローはどの程度出ているのかということを中心に分析しバリュエーションに役立てます。
バリュエーションの資料作成においても、対象会社の財務分析や成長性等を踏まえて、一定の仮定とDCF法や類似上場会社比較法、LBO分析等のメソッドを通じてバリュエーションを行うことが投資銀行におけるM&Aアドバイザリー業務では一般的です。

このように投資銀行における資料作成においては、エクセルを中心に対象会社のファクトおよび財務数値、分析をもとに対象会社の分析を行い、クライアントに出す資料においてパワーポイント形式にしてサマリーとして提示することが多くなります。

資本市場関連では、上場会社に関しては、重要な少数株主はいないか、アクティビストファンドやエンゲージメントファンドなどの株主の有無、浮動株はどの程度あるか、株価推移は直近1-3年でどのような変化があるかという点を中心に事実をテーブルやチャートを用いてグラフィカルに分析結果を表示していきます。

投資銀行でプライベートエクイティファンド向けにアドバイザリー業務を提供するチームや、買収案件でクライアントからLBOモデルの作成を依頼された場合には、レバレッジドバイアウトモデル(LBOモデル)を作成します。
投資銀行におけるLBOモデルの作成は、基本的なインプット(LBOローン、プロジェクション内容などの諸条件など)があって、それらをもとにLBOにより対象会社を買収した場合におけるリターンの分析や、プライベートエクイティファンドがどの程度の金額を出して買収提案する可能性があるのかということを分析しますので、その場合はより応用的な内容のエクセルスキルが必要になります。

コンサルティングファームと類似している資料作成といえば、企業の売却案件において使用されるインフォメーション・メモランダムがあります。この資料では対象会社の投資ハイライト、概要、市場でのポジショニング、競争優位、財務概要等を総括的に記載し買い手候補に対象会社の魅力を伝えることに主眼が置かれ、コンサルティングファームの資料並みにグラフィック重視になることが多いです。

戦略コンサルティングファームにおける資料作成の特徴や観点

戦略コンサルティングファームでは、プロジェクトの内容やクライアントが期待する内容に応じて、スライドのメッセージや分析、リサーチの粒度も異なります。

M&A関連でいえば、戦略コンサルティングファーム(マッキンゼー、ベイン、ボストンコンサルティングやローランドベルガー、アーサー・D・リトル、ATカーニー等)や、そのほかの日系コンサルティングファームではM&Aの際にビジネスデューデリジェンスを主に行うことがあります。
これは買収もしくは売却を検討している事業の成長性・競合環境・事業計画分析(主に損益計算書を中心にトップラインを検討)・市場でのポジショニング等をゼロベースで案件に応じて仮説を作成し、綿密なリサーチと分析を経てレポートを作成するものであり、ビジネス面に加えて簡単な収益性分析も行います。その意味では、投資銀行が作成するセルサイド案件の時のインフォメーション・メモランダムに類似しているものとも言えます。

ビジネス中心の観点から資料を作成することが多い戦略コンサルティングファームでも、ある程度の会計的な素養は必須であり、収益性や簡単な財務分析は必要になります。

コンサルティングファームが作成する資料はクライアントに対して、どのようなアクションをとることを提案するか、どのようなインパクトのあるメッセージをスライドに入れることが大事か、が最重要になりスライドそのものが成果物になります。
その点では、スライドの構成に対するこだわりやロジックの検討は投資銀行以上に求められることがあります

ただし、コンサルティングファームでもフィナンシャルアドバイザリーサービス(FAS)出身の方であればバリュエーションやM&A案件の経験を生かして財務3表モデルの作成、財務分析を行うことが多くスライドの作成スタイルという点でいえば投資銀行寄りと言えましょう。すなわちビジネスに関する分析をたくさん行うよりも財務分析やバリュエーション分析によりどのような結果が出てきたか、ディールを行う上での問題点や戦略をテーブル形式でまとめたものを作成することが多いと思われます。

プライベートエクイティファンドにおける資料作成の特徴や観点

プライベートエクイティファンドでは初期的な投資検討も行いますが、投資員会向けの資料以外は社外に見せる資料は多くないという特徴があります。ここではプライベートエクイティファンドにおける資料作成のうち一番重要なものである、投資仮説の作成と投資委員会向けの資料作成という点にフォーカスしたいと思います。

投資検討時の仕事:投資仮説の資料作成

投資仮説の作成は各プライベートエクイティファンドにおいて社内のシニアを説得する際に作成されるものと理解されますが、基本的にファームのフォーマットにのっとって作成され、あとは戦略コンサルティングファーム流のビジネス分析、投資銀行におけるLBO分析や財務分析でよく見られるスライド、株主構成の分析等が記載されることが多いです。

従い資料の内容的には戦略コンサルティングファームや投資銀行などのプロフェッショナルファームで作成される資料と体裁はそこまでかわらず、作成者の出身ファームの癖が出てくることになるでしょう。

投資検討時の仕事:投資委員会用資料作成

もう一つ、プライベートエクイティファンドにあってコンサルティングファームや投資銀行にない業務の一つとして、投資委員会向けの資料作成があります。投資委員会はファンド内のメンバーで投資実行を検討している案件について投資実行の承認を得るために行われるために、事業分析、LBO分析などによる投資の採算性も含めてパワーポイントにまとめていくことになります。

コンサルティングファームでよく使用するようなビジネスDDのレポートや、経営戦略に関するプロジェクトで作成するようなビジュアルに分かりやすいスライドも作成しますが、実際に投資対象となる企業が、なぜ投資に値するのか、LBOモデル分析やバリュエーション分析によりファンドにとってのリターンはどの程度出そうなのかを検証・プレゼンテーション資料にまとめていくことが重要になります。
実際に投資委員会向けの資料作成は相当なページ数(100ページ前後)になることがあり、業務の中でも内部資料とは言えそれなりに負担になるものと思われます。一人で作成することもあれば、複数人のアソシエイト以上の職階で作成することもありますが、社内のシニアをはじめ、投資委員会のプロフェッショナルを説得するに足る内容であることが求められますので、検討している案件尾スケジュールによっては非常にタイトな時間軸で作成することがあります。

ファンドによっては投資委員会が日本ではなく香港の場合もありますので、英語で投資委員会向けの資料作成を行うことが多くなりますので外資系ファンドでは英語力も重要になることに留意が必要です。その点でいえば外資系の投資銀行や戦略コンサルティングファームがクライアント向けに作成する資料や、投資銀行のセルサイド案件で作成されるFireside chat資料、マネジメント・プレゼンテーション資料、インフォメーション・メモランダムに似た雰囲気の資料になり、対象会社の魅力をプロフェッショナルが分析した資料になるものと理解すれば問題ないでしょう。

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投資銀行出身者、戦略コンサルティングファーム出身者、プライベートエクイティファンド出身者それぞれのファームにおいても出自は結局はプロフェッショナルファームになりますので作成する資料の雰囲気や体裁についてはそこまで大きく差がつきませんが、自身が所属していたファームのくせがつきやすい点は理解しておきましょう。

財務やコーポレートファイナンスに関するところは投資銀行出身者が頭一つ抜けて資料作成の方法やエクセルにおける分析スキルは優れておりますが、ビジネス面の分析やスライドのロジックや構成などは戦略コンサルティングファームの出身者のほうがこだわりもあり分析資料の作成においてエッジのきいたものが出てくることが多いと思います。

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