PEファンドへの投資によるメリット&コンサル転職のメリットとリスク

private equity fund

ポストコンサルの転職選択肢の一つとして、PEファンドの人気が高まっています。スタートアップなど将来性のある企業の成長に関わるとともに、投資家に伝統的な有価証券などとは異なる投資方法を提供するという社会的意義や、給与水準の高さが魅力です。

この記事では、PEファンドの役割や存在意義、求められるスキルや能力、コンサルからPEファンドに転職するメリットやリスクについて詳細を紹介します。

【目次】

  1. ①PEファンドの役割と存在意義
  2. ②PEファンドへの転職で求められる人材とは
  3. ③コンサルからPEファンドに転職するメリット
  4. ④コンサルからPEファンドに転職するときの注意点・デメリット
  5. ⑤コンサルで培った専門性を武器にPEファンド転職を

①PEファンドの役割と存在意義

PEとはプライベート・エクイティ、すなわち未公開株のことを指します。PEファンドとは主に未公開株に投資して投資収益の実現を目指す投資ファンドの一種です。まずはPEファンドの役割や存在意義をおさえておきましょう。

PEファンドの役割

PEファンドは、機関投資家や個人(主に富裕層)から集めた資金でファンドを組成して、それを将来有望な未公開株に投資します。

中小企業の多くは上場していない未公開の株式会社ですが、PEファンドのメインターゲットは、その中でもある程度企業の成長が進み、上場が視野に入りつつある企業や、将来M&Aにてバリューが見込める企業です。

オーソドックスなPEファンドの投資プロジェクトでは、投資期間は中期(3〜5年程度)で、一定期間が満了したらIPOやM&Aを通じて株式を売却します。

保有期間中の株式を通じて得られる利益配分や、株式の売却時に得られる売買差益が、ファンドの主な収益になります。ここから運用者の報酬や管理費用などを差し引いて、残りが投資家に還元されます。

まだ上場していない中小企業やスタートアップから見れば、PEファンドは重要な資金調達先の一つです。こうした企業は銀行融資での負債調達がしづらい、コストが高いなどのケースも多いため、PEファンドからの出資資金を活用して、事業の拡大や成長を推進します。

PEファンドの存在意義

PEファンドの存在意義について、企業、投資家、社会の3点から見ていきましょう。

まず企業から見れば、一定の成長フェーズにおける重要な資金調達相手、かつ事業成長を加速させるためのパートナーとなります。

上場に向けて成長過程にある企業は公募増資ができず、一般に融資や社債発行による負債調達にも制限があります。負債調達については法令上禁じられているわけではありませんが、金融機関の審査が厳しく、投資家が限られるため、多額の資金調達が困難です。

一方で事業規模が大きくなり、多額の投資資金が必要となるケースも少なくありません。そんな企業に対して、PEファンドは資金を提供し、必要に応じて事業成長や上場に向けたコンサルティングを行なって、企業の成長を後押しする役割があるのです。

続いて投資家の視点で見れば、PEファンドは投資機会を提供してくれる相手となります。未公開株は、一投資家が個別の銘柄を購入するにはリスクが高く、取り組むのが難しい投資先です。

PEファンドが未公開株に専門的に取り組んで、複数の株に投資するポートフォリオを構築することで、リスク管理とリスク分散が図られ、投資家がチャレンジしやすい投資先となるのです。

最後に社会全体で見た時には、新興企業の成長が加速することで産業発展が促進・未公開株の投資市場の発展・伝統的資産にとどまらないオルタナティブ投資の普及などを、後押しする役割を担っています。

また、投資資金を過度に上場企業に偏重させず、将来性のある優良な中小企業に正常に投資資金を供給する役割も担っています。いずれも日本の経済発展の加速につながる重要な役割といえるでしょう。

②PEファンドへの転職で求められる人材とは

PEファンドの運用は専門性が高く、まずは即戦力となる専門スキルを持つ人が明らかに選好されます。一方で、20代の若手であればポテンシャルを買われて、転職を実現するケースも少なくありません。

投資案件のソーシングから実行に役立つスキル

PEファンドのメインのファンクションの一つとしては投資案件の探索、スキームやファイナンスのアレンジ、実行があります。この辺りに精通した人がまず転職候補として優遇されます。

具体的には、金融機関などで、PEに限らずファンド運営やファンド設定を行なっていた人、投資銀行やFASなどで財務モデルの構築やバリュエーションなどを行なっていた人などが有利です。金融関連の案件を豊富に扱っている法律事務所、監査法人出身者も評価されやすいでしょう。

投資先のバリューアップ〜EXITに役立つスキル

短中期の経営戦略や、業務の効率化、財務再構築などさまざまな手段を通じて、投資先の業績向上や財務改善を実現し、価値向上に繋げます。戦略コンサルファームや事業再生コンサルなどの経験があると特に強みを発揮できる領域です。

一方で、ファンドの投資先のモニタリング、資金の動向やファンドオペレーションなどを行うため、やはりこの段階でもファンド運営の経験があると有利です。金融機関出身者の中でもファンドのオペレーション経験がある人材は少ないため、モニタリングやオペレーションの専門性がある人は特に重宝されます。

最後にEXITの際にはIPOやM&Aによる事業売却など、収益を最大化するためのアクションを進めることになります。ここでもFASや投資銀行の IPOもしくはM&A部門、戦略コンサルやM&A関連ビジネスの経験がある人が有利です。

20代なら特定の専門性がなくとも転職のチャンスはある

PEファンドは他の業種と比べても専門性を重視する傾向がありますが、20代であれば未経験でも基本的なスキルが高ければ転職できるチャンスはあります。例えば次のような点で高い能力があれば、転職を有利に進められるでしょう。

  • エクセルでのデータ分析スキル
  • コミュニケーションスキル
  • 英語力

PEファンドの投資先の選定や分析、モニタリングなど、あらゆる場面でエクセルを活用します。財務モデルの作成やバリュエーション、投資シミュレーションなどさまざまな用途でエクセルが欠かせません。そのため、エクセルを活用したデータ分析スキルは、若手の転職において高く評価されます。

続いてコミュニケーションスキルも役立ちます。PEファンドでは資金を集めるために、さまざまな投資家と面談を行って、ファンド投資を誘致します。また、ファンドの運用中は対象企業の経営者や事務方と折衝しながらバリューアップを図らなければなりません。実は人との交渉や連携の多い仕事なので、コミュニケーション能力はやはり重要なのです。

英語力は、外資系では必須、日系でもあった方が優位に立てます。海外投資家からの資金集めを行う、もしくは海外の未公開株に投資をするといったケースがしばしばあるため、投資家や投資先企業との折衝を英語で行う場合があります。

海外PEでは多くのプロジェクトで外国人とのコミュニケーションが発生しますし、日系PEでも特に海外投資家の誘致は積極的に行なっています。

③コンサルからPEファンドに転職するメリット

コンサルからのPEファンド転職は、スキルセットのマッチングや待遇面などからメリットが多いと言えます。ここから紹介するメリットに魅力を感じる人は、PEファンドへの転職を検討してみましょう。

年収面では待遇の改善が期待できる

外資系のPEファンドに転職できれば、コンサルファームよりも待遇が改善する可能性が高いと言えます。PEファンドは外資系金融機関でも給与水準が高く、外資系同士の転職でも投資銀行を除くと年収アップが期待できる可能性が高いです。

具体的な水準はファンドにもよりますが、転職時の提示ベースで30代前半でも2,000万円以上は充分狙えます。40代のシニア層転職になると3,000万〜4,000万円といったオファー水準の転職案件も少なくありません。

さらに、PEファンドは「キャリー」と呼ばれる業績連動型の報酬が手に入ります。これは主に投資先から得る利益の分配によるものです。不調なファンドでない限り、発生するケースは多いのですが、不確実性を伴うため転職時のオファーではこの金額は加味されません。

すなわち、PEファンドはオファー年収よりも実際の年収が上振れるケースも少なくないのです。シニアクラスになるとキャリーも大きくなり、相場環境次第では1億円クラスの年収を手にする人もいます。

ちなみに、年収水準については、若手の方が上がるチャンスが一般的に大きいと言えます。キャリーも含めると2,000万円までは若手のうちに超えられる可能性が高いからです。

逆にコンサルファームでパートナーまで上り詰めると、コンサルも業績によって賞与などが青天井になりうるため、PEファンドでも転職先を厳選しなければ年収アップに繋がらないリスクがあります。

スキル面の親和性が高い

PEファンドでは専門性が求められると紹介しましたが、コンサル出身者は、その専門スキルを持ち合わせているケースが多く、選考を有利に進めやすいと考えられます。

例えば、総合コンサルファームにおける業務の効率化や組織変革、マーケティング戦略などさまざまなプロジェクト経験は、PEファンドの投資先に対するバリューアップに役立ちます。また、FASや財務案件の経験があれば、投資先選定やEXITなどにおけるバリュエーションや財務モデルの構築に有効です。

もちろん、戦略コンサルファームでの顧客の企業価値向上や成長を目指すプロジェクト経験もバリューアップに役立ちますし、M&A におけるコンサル支援経験は投資中にM&Aを活用したバリューアップとEXITの双方において重宝されます。

実は、コンサルはPEファンドと相性の良い業種の一つで、多くの人にとって苦戦の原因となる専門性において有利に転職を進めやすいと言えます。

企業の成長により直接関われることをメリットと感じる人も

PEファンドでは一つの企業を数年にわたり、IPOやM&Aを実現するまでバリューアップさせることを目指します。バリューアップとはすなわちその企業が成長することを意味するため、PEファンドでは将来有望な企業の成長に直接関わることができます。

コンサルもクライアント企業の成長に携わるチャンスは決して少なくありませんが、プロジェクト単位で働くこととなるため、特定の企業の成長をサポートしているという実感は得にくい場合も少なくありません。その点ではPEファンドなら特定の課題解決のみにフォーカスするのではなく、企業の成長に対して徹底的にコミットできます。

コンサルのように特定課題にフォーカスする働き方をよしとする人もいるため、コンサルとPEファンドのどちらが良いかは一概には言えません。しかし、有望企業の成長を徹底支援したいと考えている人は、PEファンドの方が自分に合った働き方ができる可能性が高いでしょう。

④コンサルからPEファンドに転職するときの注意点・デメリット

コンサルからPEファンドに転職するうえで、注意すべき点・デメリットも幾つかあります。特に日系PEに転職した場合などには、年収がかえって下がるリスクもある点などは留意が必要です。

年収が下がるリスクに留意

PEファンドに転職すれば必ず年収が上がるというわけではない点に留意しましょう。特にコンサルで活躍していて、同年代より昇進が早い場合でも、PEファンドに転職すれば未経験者として、年齢相応か、もしくはよりジュニアのポジションがオファーされるため、年収が下がる恐れもあります。

また、外資系PEであれば年収アップの可能性が相対的に高いと言えますが、日系PEの場合は、年収水準は高収入な日系企業の一角にとどまり、30歳前後で1,000万円超というのが一つの目安となります。これでもキャリー次第では年収アップの可能性は残るものの、外資系よりは年収ダウンのリスクも高くなるでしょう。

年収が不安定になるリスクも

PEファンドの賞与の一部は「キャリー」と呼ばれる投資成績などに連動する賞与で成り立っています。このキャリーの有無や、水準感は投資成績によって大きく異なるケースがあり、うまく行けば高収入、失敗すればゼロというリスクも考えられます。

そもそもキャリーの支払いと投資成績の連動性の高さもファンドによって様々ですが、キャリーの変動性の高いファンドに転職すると、必然的に年収が年ごとに大きく変動する恐れがあります。家族持ちなどで家計維持のために一定の年収水準が必要な人は注意しましょう。

新たな課題にトライしたい人には不向きな可能性

プロジェクトごとに様々な領域・業種の課題にトライできる刺激的な環境をファームにおけるやりがいとするコンサルタントもいますが、こうした方にはPEファンドは不向きな可能性があります。

PEファンドは一つの企業のバリューアップに平均3〜5年かけて取り組むため、その間は投資先の企業のことばかりを考えて業務を進めていきます。そこで解決すべき課題の多様性は、多くのクライアントとソリューションを扱うコンサルファームには及ばないでしょう。

逆に「課題の多様性は問わないので、一つの企業の成長にじっくりベットしたい」という考えの人は、コンサルよりPEファンドの方が適していると考えられます。

雇用の安定性は良し悪し

コンサル・PEファンドとも外資系を想定した場合は、雇用の安定性は一長一短です。コンサルファームは、外資系でも大手となれば日本で充分なビジネス基盤が確立されているため、組織ごと撤退するリスクは高くありません。一方で、昇進においては厳しい競争にさらされるケースも多く、落ちこぼれて去っていく人が多いのも事実です。

PEファンドは、組織自体が小さいため、そのような激しい競争は少なく、意外に経験年数に比例してある程度まではプロモーションできるケースも。また、組織が存続している限りにおいては在籍年数も長くなりがちです。

一方で組織が小さく、また投資ビジネスを主体としているがゆえに、マーケットが悪くなると、日本支社ごと撤退というケースが考えられます。組織は安泰だが個々のジョブリスクは高いコンサル、ジョブリスクは低めだが組織の撤退リスクがある外資系PE、どちらが自分に合っているか考えながら転職の是非を検討してみてください。

⑤コンサルで培った専門性を武器にPEファンド転職を

企業の価値評価や価値向上、M&Aなど金融やビジネス、ファイナンスそれぞれに高い知見を必要とするPEファンドへの転職は難易度が高い傾向があります。

しかし、コンサルファーム出身者は幸運にも、PEファンドで求められる専門性のいずれかを、日々のプロジェクト推進の中で培っているケースが多く見られます。そのため、ポストコンサルの転職先として、PEファンドはおすすめの選択肢の一つです。

パートナーなどのシニア層でない限り、外資系PEであれば年収アップもまだまだ期待できます。コンサルも年収レベルの高い仕事ではありますが、さらに上を目指したいという人は、ぜひPEファンドへの転職を検討してみましょう。

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>PEファンドへのキャリア・ポストコンサルに関する記事

日系スモールキャップのPEファンドに転職するメリット・デメリット
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/japanese_smallcap_pefund

PEファンド投資検討時に必要なスキル・経験【コンサルタントの方向け】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consulting_pe_investment

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今回は、PEファンドにコンサルから転職するメリットとリスクなどについてお伝えしました。

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