日系スモールキャップのPEファンドに転職するメリット・デメリット

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日系スモールキャップのプライベートエクイティファンド(PEファンド)に転職するメリット・デメリットについて記載していきます。まずはPEファンドの特徴から見ていきましょう。

【目次】

  1. 日系スモールキャップのPEファンドは「外資よりも報酬水準が比較的低く、泥臭い案件開拓が必要になる」ケースが多い
  2. 日系スモールキャップのPEファンドに転職するメリットは「日本語環境のストレスフリーな職場」等
  3. 日系スモールキャップのPEファンドに転職するデメリットは「年収の低さ」「転職先が限られる」
  4. (参考)PEファンドの仕組み:概要
  5. (参考)PEファンドの投資対象
  6. (参考)日系スモールキャップのPEファンドでの業務内容

日系スモールキャップのPEファンドは「外資よりも報酬水準が比較的低く、泥臭い案件開拓が必要になる」ケースが多い

日系のPEファンドは一般的なPEファンドと同様に、会社を買収してリターンを上げる目的を持つ点で外資系等のファンドと立場は同等です。

しかし報酬水準の点で、外資系より劣るケースがほとんどです。もちろん日系のPEファンドでもアドバンテッジパートナーズ、ユニゾン・キャピタル、ベイン出身者が設立したNIC, JGIA, D-Capitalのような新興のPEファンドは報酬水準が高い傾向にあります。

投資対象の点では、一定規模の日系PEも外資系PEであればそこまで大きな差異はありません。日本の市場で出回るセルサイドの案件は正直言ってPEファンドと事業会社間で取り合いになります。一方でスモールサイズのPEファンドでは、M&A仲介会社を使って新規の案件を仕入れていることも多くなります。
そのため大手のPEファンドとは戦い方が異なります。比較的泥臭い案件開拓が必要でしょう。

日系スモールキャップのPEファンドに転職するメリットは「日本語環境のストレスフリーな職場」等

日系のPEファンドに転職する主なメリットは以下です。

・雇用が安定している
・日本語環境で仕事ができる
・アットホームでストレスの少ない職場で仕事ができる

外資系PEファンドの社内の雰囲気等はGlassdoor等で確認できますが、elbow cultureと揶揄されるほどにアップオアアウトの状況が日常的にあると書かれているレビューもあります。
それに比べると、日系のPEファンドでは、そこまで激しいカルチャーではなくチームプレイを重視し投資先の経営のことを最初に考える人材を好むという特徴があります。特に事業承継等の手触り感のある案件に携わることも十分に可能だと思われます。

日系スモールキャップのPEファンドに転職するデメリットは「年収の低さ」「転職先が限られる」

日系PEファンドに転職するデメリットの一つとして年収の低下が挙げられます。
戦略ファームや、日系ないし外資系の投資銀行のM&Aアドバイザリー業務に従事しているプロフェッショナルの方は、20代後半から30代前半で1,500万円~3,000万円のレンジの年収を稼いでいる人がほとんどです。
そのレンジに達する水準のPEファンドは、給与水準で言えば外資系のPEファンド、ないし日系の大手PEファンドや新興PEファンドでも比較的高い給与水準を提示できるファンド(アドバンテッジパートナーズ、ユニゾンキャピタル、ベイン出身者が設立したNIC, JGIA, D-Capital)くらいしかないでしょうか。

日系のスモールキャップのPEファンドや、証券会社系のPEファンドの中には、結局日系企業程度の給与水準しか提示できないファンドもあります。
(やや厳しい例でいうと、ベースが800万円程度しかない、ボーナスを含めても1,000万円程度の待遇しか得られない等)
PEファンドは日系とはいえ、投資実行中は激務になりますし、投資してもリターンが上げられなければキャリーも大した金額が見込めないため、提示された待遇に見合う忙しさかどうか疑問は残ります。また、スモールサイズで創業パートナーがいるファンドでは、シニアがリターンを総取りしてしまう構図もありますのでメンバーの中での報酬体系は事前に確認した方が良いでしょう。

他にも、転職先のゾーンが限られてしまうというリスクもあります。例えば、日系のスモールサイズのPEファンドに行くと業務での英語の使用機会がほぼなく、相手にするのも国内の中小規模の案件がメインのため、スキルセット的にテクニカルな知識や経験はあまり見込めないでしょう。上場会社の非公開化等の案件もそれなりの規模の日系ファンドでないと対応できないので、その点でも経験できる投資のアングルの面で限界があります。
特に日系のPEファンドから外資系のPEファンドに移りたいと思った際には、それなりのサイズのファンドや有名なファンドにいないと実際にはファンド間転職も難しいのが実情です。これは投資スタイルやアングルが違いすぎ、カルチャー面でもギャップがあるためです。

このように見てみると、日系のPEファンドの中でもスモールキャップのファンドに転職するメリットに、経済面で見合うものがなければやめた方が良いかもしれません。PEファンドでずっと勤務して上に昇進していく覚悟がなければ中々難しいキャリアプランになるというリスクもあるので、自分の能力や経験の範囲内で待遇が良いところに転職するのが基本路線でしょう。
また、将来的な転職面で考えても外資系に移るには日系でも最大手のPEファンドにいないと可能性が薄く、それ以外であれば外資系の投資銀行やコンサルティングファームにいないと難しいので、下手にスモールサイズのPEファンドに入ると将来的なキャリアのアップサイドが限定されるリスクもありそれなりの覚悟が必要です。

(参考)PEファンドの仕組み:概要

PEファンドとは未上場会社を買収ないし出資を行い、リターンを得ることを目指すファンドです。
PEファンドが買収後に経営改善に乗り出した結果、業績や企業価値が向上するような会社を買収することが重要であり、買収の時点において将来のダイヤの原石ともいえるような会社を割安で買い、高値で売却するという事が最も求められる要素です。
PEファンドで働く人は基本的には戦略コンサルティングファームないしは日系・外資系投資銀行でM&Aアドバイザリー業務を経験している人がほとんどであり、プロフェッショナルな人が多いのが特徴です。
最近は総合商社や事業会社の経営企画の出身の人も増えてきてはいますが、基本的には投資銀行におけるM&Aアドバイザリーの経験と、戦略コンサルティングファームのように事業を理解し、オペレーションの改善や企業経営の重要なポイントを把握できている人が好まれます。

日系のPEファンドであろうが、外資系のPEファンドであろうが採用対象になる人材のレベル感はあまり変わりません。ただ、日系のスモールサイズのファンドになると、外資系や日系の大手のPEファンドが採用対象にするスキルの高い人よりは、熱意や人間性、素直さを求めるファンドもあります。

(参考)PEファンドの投資対象

PEファンドは未上場の中小企業も含めて投資対象にしています。もちろん個人で経営している会社のみならず大企業の一部門も買収の対象になります(一般的にカーブアウトディールと呼ばれるものです)。大企業の一部門の中には、グループ内ではノンコアとして扱われているものの、実際にはポテンシャルがあり、PEファンドが新たに株主になることによって企業価値が大きく向上し、その後上場する等のシナリオも考えられます。例えば、外資系の大手PEファンドが投資しているような日立の一事業部門や子会社等がそれにあたるでしょう。日系のスモールサイズのPEファンドであれば、個人が経営している会社の事業承継や、規模の小さいファンドの投資先の会社の買収等が対象となります。

日本には日系も外資系も多くのPEファンドがありますが、いずれのファンドも投資をしてからオペレーションの改善や、業績の改善をどのようにして実現するかに頭を使い、エグジット時に期待通りのリターンが出せるようにしているものと思われます。そのため各ファンドにおいてはオペレーションに詳しいコンサルティングファーム出身の人が少なからずいますし、逆に言えば投資をして経営課題を解決することによって更なる企業価値向上を目指せるようなポジションの会社が投資対象になると考えることもできます。

一般的にPEファンドが投資企業を検討する際には、ファンドの運用総額の20%ほどをチェックサイズといって1件当たりの出資上限額にすることが多いです。したがって投資対象の企業は大手のPEファンドほど大きく、当然ファンド運用総額が小さいPEファンドほど、中小企業に投資する傾向が強くなります。日本のPEファンドの市場では欧米のように大規模なカーブアウトや買収はそこまで数が多くないため、500億円以上の比較的サイズの大きい買収を行う能力や資金力のあるファンドは限られていますし、中小規模の企業買収を行うファンドの方が投資件数は多いです。必然的に日系のスモールからミッドサイズのPEファンドの方が数は多くなります。

また、注意したい点は、PEファンドはベンチャーキャピタルと異なり、企業のライフサイクルが成熟している企業に投資するという点です。ベンチャーキャピタルが投資するような会社は企業としてまだアーリーステージにありますが、PEファンドが投資の対象にする会社は安定的なキャッシュフローを望むことができ、設備投資がそこまでかからないが、魅力的なプロダクトやサービスがあり市場でのポジショニングがしっかりしている=キャッシュカウのような会社を好む傾向にあります。特に、ミッドサイズやスモールサイズの会社に投資するような日系のスモールサイズのPEファンドでは、投資対象の会社も小さくなるので、このような見極めが難しくなります。

(参考)日系スモールキャップのPEファンドでの業務内容

スモールからミッドのPEファンド(日系)であれば、投資対象は主に事業承継や小さめのカーブアウトになります。地方の中小企業はリソースや経営上ノウハウが不足していることもありますので、事業承継を機会に新たな成長を企図してPEファンドを新たに株主として迎え入れることも多くあります。
事業承継においては、今までの経営者がリタイアするタイミングで、付き合いのある銀行経由でPEファンドに紹介が行くこともありますし、PEファンド自ら買収ターゲットのリストを作成して事業承継ニーズがあるような地方の企業にアプローチすることもあります。

そして投資後は、一般的なPEファンドにおけるバリューアップ経験を積むことができます。
具体的な業務内容を記載していくと、PEファンドが会社買収時に策定する経営改革のための100日プランを策定し、買収後の100日間(約4か月)を策定し買収後に会社の経営改善をドライブするためにバリューアップを行います。

PEファンドのバリューアップ担当のメンバーは100日計画のみならず、中期経営計画を立案して、その後のモニタリング(工程表管理を軸としたもの)を進めていきます。将来的にIPOないしは外部の第三者へのトレードセルを予定しているPEファンドにとっては実行可能性の高い中長期計画を立てて、当初の予想通りに業績が進捗しているかを厳しくモニタリングし、当初意図した通りに業績が進捗していなければ、常に改善策を講じていきます。
バリューアップにおいては固定費の圧縮は余剰な資源や人材のカット、重複している機能を統合させる等のアクションも必要です。バリューアップチームはこれらのような「EBITDAアップ」に貢献できるよう、適切な目標を掲げて施策を行います。

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>PEファンド・投資に関する記事

PEファンドのタイトル毎の年収レンジ【1億円を稼ぐ人の共通点・私生活とは?】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/pefund_salary_range

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今回の記事では、日系スモールキャップのプライベートエクイティファンド(PEファンド)に転職するメリット・デメリットについてお伝えしました。
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