SE・PMのキャリア形成に人気の資格とその実情

IT業界には、様々な資格試験が溢れています。一方で、IT資格の有用性や必要性に関しては、昔から様々な意見があります。「客観的にスキルを判断できる」「転職に有利」「給料があがる」などのプラス意見がある一方で、「資格ビジネスの思うつぼ」「業務には何の役も立たない」「お金と時間の無駄」などのマイナスな意見もあります。

そこで、今回の記事では、長年SE(システムエンジニア)やPM(プロジェクトマネージャー)、ITアーキテクトとして活躍されている方々に実際にお聞きした情報に基づき、SE・PMなどエンジニアのキャリア形成に役立つ資格、そこまで役に立たなかった資格とその理由についてお伝えします。

【目次】

  1. プロジェクトマネージャ(SE、PM向け資格)
  2. ITストラテジスト(ITコンサルタント向け資格)
  3. システムアーキテクト(ITアーキテクト向け資格)
  4. 情報処理安全確保支援士(SE向け資格)
  5. オラクルマスター(SE向け資格)

プロジェクトマネージャ(SE、PM向け資格)

プロジェクトマネージャは情報処理技術者試験のひとつで、プロジェクトマネージャ(PM)向けとしては一番有名な資格でしょうか。

資格を持っていればプロジェクトマネジメントができるとは限りませんが、難易度が比較的高い資格として知られており、昨今はIT業界において、プロジェクトマネジメントができる人材は慢性的に不足しているため、周囲のメンバーに対するアピール度合いは高いと言えます。

プロジェクトマネージャ向けの資格として他にもPMPがありますが、プロジェクトマネージャ試験は、PMPと比較すると最新のマネジメント動向が問題に反映されているわけではなく、国際的に認知されているわけでもない、ある意味古典的な資格試験という意見もあります。ただ、受験費用の面では比較的安く済み、受験資格もないためプロジェクトマネジメントの土台を学ぶにはうってつけのようです。
一方で、PMPは受験条件があることや(研修などでポイントを貯めてはじめて受験資格が得られる)、資格の有効期間もあることから、会社の補助なく個人で取得するには少しハードルが高い資格でしょうか。

実際にプロジェクトマネージャを取得された方からは、「実務でプロジェクトを管理する立場となった時に、何を管理していかなければならないのかを、ひとつのパッケージとして体系立てて身につけることができた」「もちろん、実際のプロジェクトでは勉強した通りに物事が進むなどということはあり得ませんが、資格取得で得た知識を使う機会は他の資格試験と比べても比較的多い」という声もお聞きします。

必ずしもSEからPMになるというのが一般的なキャリアパスとは言えませんが、SEが経験を積んでPMになるというケースは多いと思われます。
もし現在SEの立場で、今後PMとしてのキャリアパスを描いているのであれば、プロジェクトマネージャ試験に合格することが、有効なアピールとなることは間違いないでしょうか。

さらに、プロジェクトマネジメントを学ぶ上で、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)と呼ばれる、プロジェクトマネジメント知識体系は避けて通れない要素ですが、何の必要性もなくPMBOKを読解するというのは非常に大変な作業です。しかし、資格試験の勉強の一部として学ぶのであれば、他の参考書などと合わせて理解を深めることができますし、モチベーションを保つこともできたという声もあります。
「実際にプロジェクト管理業務を行うようになると、忙しくてなかなか資格取得の勉強に使える時間がとれなくなる」という声もお聞きします。プロジェクトマネージャ試験合格を目指すのであれば、実務でプロジェクトマネジメントを行う前に取得しておくのが良いでしょうか。

ITストラテジスト(ITコンサルタント向け資格)

ITストラテジストは、プロジェクトマネージャと並び、情報処理技術者試験の中では上位資格として分類されます。経営戦略に基づいて、IT技術を活用したシステムの企画を提案する立場の方をターゲットとしています。資格の難易度もさることながら、ITコンサルタント向けの資格ということで華もあり、人気が高い資格です。

しかし、「SE、PMのキャリア形成という面から見た場合、実はあまり役に立たなかった」という声もお聞きするのが実情です。背景として、ITストラテジストは、業務を含めて改善できるシステムを企画・提案する仕事であり、提案するのは基本的には新規システムになることが挙げられるようです。

もちろん、老朽化したシステムを刷新する際、保守開発を担当しているSlerが新システムについて企画・提案するというケースはあり、元のシステムをよく分かっているという理由から、保守を担当しているPMやSEがITストラテジストとして新規システムを提案する、というのは決して珍しい話ではありません。
ただ、それは既存システムのリプレースのタイミングがほとんどのため、チャンスが巡ってくるのは5年から7年程度に1回ということも多く、資格が役立つタイミングが少なすぎるという声もお聞きします。

一方で、システム開発を請け負うSEやPMの立場ではなく、日常的にシステムの企画や提案を行うITコンサルティングの方が生かせる資格とも言えます。または、営業社員に同行し、システムを提案するセールスエンジニアの方にも有益に働くようです。

普段は開発業務を行なっているSEやPGが、同じ業務でのキャリア形成を考えた際にはあまり有用に働かない可能性もありますが、SEやPMが見聞、人脈を広げるという目的で取得するには十分意味があると言えそうです。

ちなみに、ITストラテジスト試験に合格すると、日本ITストラテジスト協会(JISTA)というコミュニティに正会員として入会する資格が得られます。「年2,000円程度の年会費はかかるものの、外部エンジニアや知識者との交流ができることも魅力」という声もありました。

システムアーキテクト(ITアーキテクト向け資格)

システムアーキテクトも、プロジェクトマネージャ、ITストラテジストと同様、情報処理技術者試験の資格の一つです。

プロジェクトマネージャやITストラテジストと比べると少し地味な印象を持たれる方も多いですが、実際には「開発業務に携わるSEとしては、一番役に立った」という声を多くお聞きします。

業務系システム、制御系システム、クラウドシステムなど様々なジャンルを題材に出題されますが、どれも一般的なシステム構成が題材とされているため、様々なシステムのアーキテクチャを勉強するのにうってつけのようです。

プログラミング言語やアルゴリズム云々というよりも、システム全体のアーキテクチャに対して検討を行うため、要件定義や基本設計レベルなど、上流工程の知識を学ぶ必要があります。流行り廃りのあるプログラミング言語などと比較して、陳腐化しにくい知識を得ることができるという意見もよく見られます。

また、システムアーキテクトはマークシートや記述式問題のように明確な正解があるわけではなく、自分の知識や経験から、正解と思われる考えを他人が読んでわかるように表現する能力が身につくため、「システムアーキテクト試験に合格後、実際の開発業務においても、システムの特徴や効果、構成などを人にわかりやすく説明する能力が伸びていることに気づいた」という声もお聞きしました。

取得することで業務での能力アップを実感する可能性が高い資格であると言えるでしょう。SEとしての地力をアップするための資格として非常におすすめできる資格です。

情報処理安全確保支援士(SE向け資格)

情報処理安全確保支援士もまた、情報処理技術者試験のうちのひとつです。元々、情報セキュリティスペシャリストと呼ばれる試験区分でしたが、2016年より情報処理安全確保支援士に変更となりました。

情報処理技術者試験では初めて士業として登録制となった資格です。合格後、申請手続きを行うことで、登録セキスペとして登録証が発行され、IPAの検索データベースに登録されます。データベースに登録されることで、技術者はセキュリティ技術があることをアピールでき、会社はセキュリティ人材の所属人数を外部にアピールできる、という目論見があったようです。

技術力を証明したいという目的であれば、合格するだけでも十分実力の証明になりますし、資格取得の意味はあると言えます。また、フリーランスのSEなどで、営業活動の一貫としてセキュリティ技術をアピールしたい場合には登録までするのも有効な手段でしょうか。

ただ、セキュリティ面での技術力の証にはなるため、試験の合格については推奨している会社も少なくはないのですが、「業務独占資格ではなく、登録したことによるメリットがほとんどなかった」という声もお聞きします。

さらに、受験費用とは別に、登録に2万円ほど、更新維持のために3年間で14万円ほどの研修受講費用がかかります。個人で負担するには少し高い金額でしょうか。

また、会社側としても、社員に情報処理安全確保支援士が増えれば増えるほど、費用負担は重くなります。そのため、受験・合格に関しては推奨し、合格した際は一時金などを支給するものの、登録は推奨せず、自己負担とするという会社もあるようです。ちなみに、IPAの検索データベースに登録することで社員の情報が検索できてしまうことから、会社の技術力をアピールするよりも、他社からの引き抜きにあったり、社員が個人で仕事を請け負ってしまうことを警戒している、という裏事情もあるようです。

オラクルマスター(SE向け資格)

オラクルマスターは、先に紹介した情報処理資格試験ではなく、いわゆるベンダー資格です。DB製品ではシェアNo.1のオラクル社のデータベースに関する資格です。

Bronze・Silver・Gold・Platinumと4つにレベル分けされており、上位に行くほど難易度が高くなります(Platinumが最上位)。
元々、下位の資格を飛ばして上位を受験することはできないステップアップ型の資格でしたが、2020年よりBronzeを取得しなくともSilverを取得できるようになりました。

基本的なSQLにはじまり、バックアップ・リストアやセキュリティ、パフォーマンスチューニングなど、データベースそのものを操作する、どちらかといえば運用担当者寄りの知識が問われます。

データ設計を主とする情報処理資格試験のデータベーススペシャリストと比較すると、データベース製品の特性を含め実務に近い知識を習得できるため、業務でオラクルデータベースを使用しているのであれば、すぐに仕事に役立てることができる内容となっています。

また、データベース系の資格では、真っ先に名前が上がる非常に人気の高い資格です。最上位のPlatinumまで取得していると、現場によっては「データベースの先生」扱いまでされることもあるようです。Platinumまで取得するとなると、DBエキスパートとしてデータベースに特化したコンサルティングを行うなど、業務の内容が変わる可能性もあります。そういったキャリアを考えている方には大きなメリットでしょうか。

かつては最下位のBronzeを取得するには2つの試験に合格しなければならず、Bronzeに合格しなければ次のSilverの受験資格は得られませんでした。さらに、Gold取得にはSilver合格に加えて、1試験合格プラス、オラクル社指定の研修をひとつ受講する必要がありました。
そのため、Goldまで取得するのに総額30万〜40万円近くの費用が必要でした。Platinumに至っては、受験費用だけで20万以上、研修で50万円近くかかります。Blonzeからすべての資格に合格し、必要な研修を受講すると合わせて100万円近くの費用がかかっていました。
しかし、2020年に試験体系が変更され、Blonzeを飛ばしてSilverから受験できるようになった上、Goldでの研修受講が不要になりました。

Platinumについては費用は変わりませんが、技術力を証明するためにSEが取得するのであれば、Goldまで取得すれば十分という声も多いです。また、Silver、Goldの各1試験に合格すれば良いため、以前よりハードルは随分と下がったようです。

ただし、「会社の補助なく、個人で取得するのは費用面でも難しい」という声もあります。さらに、試験体系がベンダーの一存で大きく変わりやすいのが、オラクルマスターに限らずベンダー資格のデメリットであり、注意すべき点かもしれません。

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<エンジニアの資格に関する記事>

システムアーキテクト資格取得の「転職・キャリア」上のメリット&デメリット
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/systemarchitectcertification

AWSソリューションアーキテクト資格を取得したエンジニアのキャリアパス【転職事例含む】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/awscareerpath

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IT系の資格試験にはキャリアにとって多くの有益な種類がある一方で、業務やキャリアに役に立たず、時間と労力の無駄だったというケースもしばしあります。

SE、PMとして開発業務に携わっている人が資格取得の勉強をする場合、今のキャリアを強化したいのか、それとも他の職種に転身するためなのか、といった点はよく考える必要があるでしょうか。エンジニアのキャリアについてお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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