“VPoE”とは何か【役割・年収・CTO/VPoT/VPoPとの違い】

今では、CTOの役割も複雑化して一人で賄えないボリュームになってきているため、新しいポジションを設けて分担するように変化してきております。今回はこういった流れの中で、各企業が新しく設けるようになったVPoE(Vice President of Engineer)の役割や、求められるスキル、年収を中心にご説明します。また、CTOやVPoT/VPoPとの違いについても触れていきます。

【目次】

  1. VPoEの役割
  2. VPoEが生まれた背景と、CTOとの違い
  3. VPoEの採用において求められるスキル・マインド
  4. VPoEの年収
  5. VPoTの役割・求められるスキル
  6. VPoPの役割・求められるスキル
  7. (参考)エンジニア系ポジションの沿革

VPoEの役割

VPoEとは、一般的に企業の技術部門をマネジメントする役職を意味します。VPoEはエンジニアの採用や評価などに関する責任を負い、エンジニアが最大限にスキルを発揮できる環境を整備し、より効率的で質の高い開発をするための体制を整える役割を持ちます。

VPoEの仕事内容は企業によって異なりますが、エンジニア組織のチームビルディングや教育・サポート体制の構築、他部署のリーダーとの連携、採用や育成における方針決定、評価制度の策定などを行います。

求められる能力としては、

・ エンジニア組織のチームビルディング
・ エンジニアの採用、育成
・ エンジニアチームの課題抽出とその解決
・ CTOを初めとした、社内上層メンバーとの連携

となります。

VP(Vice President)はもともとは部長、課長、次長職をさしており、上級管理職をサポートする役割のことです。VPoEの役割として「他のマネージャーと協力してスコープ(業務範囲)と品質を合わせることでエンジニアプロジェクトを監督すること」とも言えそうです

VPoEが生まれた背景と、CTOとの違い

近年、IT企業ではリモートワークの導入をはじめとするエンジニアの働き方の多様化や、ニアショア開発・オフショア開発の活用など開発体制の変化が見られるようになり、従来のエンジニアマネジメント手法でエンジニア組織を管理することは難しいケースもあります。そうした状況も背景としながら、エンジニア組織のマネジメントに特化したVPoEというポジションが普及してきたのはここ3、4年の話となります。

メガベンチャーでVPoEを努めたこともある方にVPという立場についてご説明いただきました。

「もともと西海岸ではエンジニア文化が成熟していて、仕事の分け方もEMやSVP(SeniorVicePresident)など色々と分かれていてスマートになっています。ここから日本のいくつかの企業では文化を取り入れているものの、各企業で職務の解釈がバラけているのが実態です。

とのことです。

また、CTOとVPoEの違いについてもお聞きしたところ、

「海外のエンジニアの役職の考え方というのはCTOが方向性の決定権者でVPはエグゼキューション(実行担当者)という風になっています。大きい会社では部署ごとにVPが何人もいるのが普通だったりします。ちなみに自分の周りではVPoEとVPoPはいるけどVPoTはあまり見かけません。」

とのことです。日本では2017年からメルカリで導入されたことを皮切りに、大きい組織でVPoE職は導入されてきており、今ではサイバーエージェント、ヤフー、スマートニュース、LIVESENSEなどでも採用されています。

しかし、まだCTOとの役割の違いについては各社で個別の解釈があるのと、ライン上ではCTOと並列というケースが大半のようです。

VPoEの採用において求められるスキル・マインド

また、海外では、VPoE候補の要件として、関連する学位を取得すること(コンピューターサイエンスやMBAなど)と記載されているケースも多いです。これに加えて10年や20年以上のキャリアを求められるケースも多いです。最低限がこれなので狭き門であることは確かです。

加えて、

・MBAを取得すること
・プロダクト開発、マーケティング、コンサルティングの深い経験
・問題解決能力
・ソフトウェア開発経験やファイナンシャル・プランニングの経験

といった能力・経験が採用時に求められるケースも多いでしょうか。VPがつく職種は非常に多岐にわたっているものの共通して、高い学位と経験が求められています。

例えばAmazonにおけるVP, Digital Marketing & Infrastructureといった職種でも、上記のような高いスキルセットとバックグラウンドが求められておりほぼ例外はなさそうです。

また、日系ベンチャーにおける採用要件では、上記のスキル面に加え、

・1to1でのコーチングに対する何らかの意思もしくは経験
・1to1でのメンタリングに対する何らかの意思もしくは経験
・カウンセリングアウトの様なシビアな判断を伴う人事上の経験
・チーム内でのハレーション/コンフリクトからのリビルド経験

その他、採用活動経験やフロントとのやり取りといったソフトスキル面も共通で求められており、メンバー個々人の想いに寄り添う姿勢と、最適なプロダクト開発体制構築のバランスをとれるハード・ソフト両面の能力が求められるケースが多い印象です。

VPoEの年収

また、採用要件が厳しいだけあって、VPoEという職につくという見かけ以上にすごいのが報酬です。外資系企業のVPoEにお聞きしたところ、1時間あたり$75(約8300円)ほど稼いでいるとの声もありました。

また、一流大学卒でエンジニアとしての10年以上のキャリアやステークホルダーとの調整交渉経験などが厳格に記載されているなど、基準の高さもあって、平均年収は16万〜22万ドル(日本円にして1800万円〜2500万円)というところが大半です。

日本ではITエンジニアの平均年収が400万円〜500万円に対して、CTOは1000万以上で1200万程度のところ(シリーズA以降の企業)、VPoE,VPoPそしてVPoTあたりだと800万円程度が中央値でしょうか。

ただし、社員数1000人規模のメガベンチャークラスでは、下限1,000万円~上限1,500万円といったケースも中にはあります。

VPoTの役割・求められるスキル

VPoT(VicePresident of Technology)は、自らが率先してプロダクト開発・運用を実践し、コードレビュー、アーキテクチャ選定、DevOpsのやり方の方針を示す役割となります。

会社によってはアーキテクトと言ったり、テックリードと言ったりもします。技術面に関する造詣が深く、メンテナンス性に優れたシステム構造や運用フローまで取り仕切ることが出来ます。

求められる能力としては

・ 多部署や、非エンジニア組織への説明能力
・ 多部署からの要望や問い合わせに対して的確な回答ができる(時にはNoと言える勇気)
・コードレビューと、自チームへのフィードバック能力
・チーム内、他部署において絶対的な信頼感
・技術的知見や経験が豊富である

などが挙げられます。

VPoPの役割・求められるスキル

VPoP(Vice President of Product)とは、企業のメインとなるプロダクトの責任者のことです。企業によってはPO(ProductOwner)やProductManagerと言うこともあります。

ユーザヒアリングしながら、MVPを決め、最適なタイミングでプロダクトをレベルアップさせる担当者になります。プロダクト品質の責任者でもあります。

求められるスキルはプロダクトに左右されることが多いですが、共通して

・プロダクト関連領域でのProductManager(WebDirector)の経験
・企画立案〜サービスリリースまでのマネジメント経験
・顧客を深く理解し、それらからプロダクトへの要求をまとめられる
・仮説を立て、検証することにより複雑な問題を解決できる(PDCA)
・周りの人を巻き込めるリーダーシップ、コミュニケーションスキル
・データを用いた意思決定を行うこと

といったスキル・経験が求められるケースが多いです。

元Microsoft/Googleの及川卓也氏はMicrosoftではWindowsNT、GoogleではChromeのプロダクトマネージャーをしていたことで有名です。

(参考)エンジニア系ポジションの沿革

エンジニアの役職といえば一昔前は部長、課長、主任や技官、技師みたいな硬い印象の管理職の呼称に加えて、プログラマー(PG)、システムエンジニア(SE)、プロジェクトリーダー(PL)、プロジェクトマネージャー(PM)のような職能に応じたものが一般的でした。建築現場のなごりかと思われますが、キャリアはプログラマーが最下位に位置して製造を学ぶことで、システムエンジニアに昇格し、設計ができることとエンジニアの管理ができるようになるとプロジェクトリーダーやマネージャーに昇格するというステップのパターンが一般的でした。

ITが普及し開発対象がWEBサイトやネイティブアプリなど複雑化してくるとこのようなヒエラルキーは逆転し、開発製作にあたって必要なスキルセットが一変してしまいました。WEBデザインという分野が紙媒体からネットにシフトするにつれて大きなカテゴリとなってきました。WEBの開発においては関数型からオブジェクト指向が主流となり、更に派生してMVC(ModelViewController)というソフトウェアアーキテクチャの考え方がより一般的になってきました。これは製造するものをデータそのもの(Model)、振る舞い(Controller)、見え方(View)で分割して相互に連携して機能させるという思想です。

この考え方で作られたフレームワークは多く存在し、JAVAのStrutsやSpring、PHPのSymphonyやLalavel、RubyOnRailsなどはこの前提で作られています。詳細は省きますが、Controller、Modelをサーバサイドエンジニア、Viewをフロントエンドエンジニアという職能で分担することも一般的になってきました。

IT全盛の中で手を動かして開発できる人のステータスは上がり、優秀なプログラマであればフリーランスで年収1000万を超える人も普通に出る時代になりました。逆にプロジェクトマネージャーはプロジェクトの進行管理に特化すれば必ずしもエンジニアキャリアは必要でなく、開発担当のエンジニアと給与水準が変わらないところもあります。

また、スキル面で突出した人材はアーキテクトやテックリード、エンジニアマネージャー(EM)といった肩書も出てきており、CTOに次ぐ役割を担うようになってきております。

このようにしてエンジニアのスキルセットによる分類と職能による分類で肩書と役割は大きく以前と変わってまいりました。

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>エンジニアのキャリアに関する記事

スタートアップCTOの「やるべきことリスト」
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/startup_cto

“スタートアップCTO”の「よくある苦労」と「乗り越え方」
https://www.axc.ne.jp/column/axis-column/se_cous/02.html

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今回はVPoEの役割、年収、類似ポジションとの違いなどについてご説明しました。

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