「ITコンサルから監査法人アドバイザリー」というキャリアパスとその際の注意点

【目次】

  1. 監査法人でも案件の約90%にIT・システムが絡み、ITスキルを持つ人材のニーズが高まる
  2. 直近のニーズの高まりにより、年収+100万アップのオファー事例が増加
  3. 監査法人はワークライフバランスも確保しやすいケースが多い
  4. 経営層へのアドバイザリー経験を積み、CxOへとキャリアアップする事例も
  5. 注意点①コンサルとアドバイザリーでは対クライアントへのコミュニケーションスタンスが異なる
  6. 注意点②ITスキルに加えて経営戦略レベルのスコープが必要
  7. 注意点③コンサルと会計士では考え方や仕事の進め方も異なる

監査法人でも案件の約90%にIT・システムが絡み、ITスキルを持つ人材のニーズが高まる

先日Big4の監査法人アドバイザリー部門のパートナーとお話した際に 「会計領域の規制対応といった、レギュレーションのプロセスにおいてもデジタルの話が必ずでてくる」「会計の専門家だとしても、デジタルのことを知らないとマーケットからは相手にされない時代」という話題になりました。

直近では、

  • テクノロジー(RPA、AIなど)の導入に伴う、未知のリスクへの対応
  • テクノロジー、アナリティクスを活用した内部監査の高度化
  • 企業経営のDX(デジタルトランスフォーメーション)化への対応を支援


などがメインテーマになっており、

別の大手監査法人のパートナー曰く「案件の40%がIT・システム監査、残りの60%のアドバイザリー業務の内、80%がITシステム絡み」と話しており、実質的には約80~90%でIT・システムが絡むようになりつつあるようです。

上記のようにテクノロジーを知らないとバリューを出せない案件が増えていることから、監査法人でもテクノロジーの領域に強みを持つITコンサルやエンジニアのニーズが高まっています。

直近のニーズの高まりにより、年収+100万アップのオファー事例が増加

同じBig4の監査法人とコンサルティングファームの同タイトルでの年収を比較すると、ファームの方が約100万ほど平均的年収が高いイメージでしょうか。

  • SM 監査法人アドバイザリー:1100万円~1500万円 /ファーム:1300万円~1800万円
  • M 監査法人アドバイザリー:950万円~1100万円 /ファーム:1000万円~1300万円
  • SC 監査法人アドバイザリー:700万円~ 950万円 /ファーム:750万円~1000万円

ただし、上記でお伝えしたようなニーズの高まりにより、2018年以降では、IT領域で高い実績を残してきたコンサルタントには数百万アップというオファー実績が増えてきました。

(例1)
大手日系ファーム シニアコンサルタント 年収650万円 CRM領域の構造策定、PMO、システム導入から
→年収900万円でオファー(250万円アップ)

(例2)
外資系ファーム 年収700万円 ITガバナンス、IT戦略企画部門支援、フィンテック関連の技術分析から
→年収800万円でオファー(100万アップ)

(例3)
外資系ファーム 年収600万円 SAPの導入、ITコンサルから
→年収800万円でオファー(200万円アップ)

監査法人はワークライフバランスも確保しやすいケースが多い

監査法人を目指す方にその転職動機を尋ねると、「ワークライフバランスが良い」とよく耳にします。

実際に、コンサル出身のBig4の監査法人アドバイザリーの方に「監査法人とコンサルの残業時間の違いや、その背景」についてお聞きしたところ、 「アドバイザリーは法律やガバナバンスコードなどの後ろ盾を持ち、その範囲内における深いナレッジを提供するナレッジビジネスである。そのため、クライアントの要望そのものがサービス内容となるコンサルと比べて働き方は緩やかになりやすく、常駐案件も少ない傾向にある」との回答をいただきました。

企業やチームにもよりますが、月平均残業時間が20~40hに収まるケースが多いようです。
(参考)【独自取材】EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングの働き方

経営層へのアドバイザリー経験を積み、CxOへとキャリアアップする事例も

ご存知の通り、監査法人は技術的なアドバイザリーは一部のみで、クライアントのシステム体制の現状評価、態勢作り、リスク分析といった上流でのアドバイザリー業務がメインになります。 実際のシステム導入、構築フェーズになるとコンサルティングのTech部門や、ベンダーに繋げることが一般的ですので、コンサルティングファームのデリバリーと評価されるポイントがやや異なります。

クライアントの懐に入っていけるか、経営陣に対してためらわずアドバイザリーをすることで、リスクを排除し、長期的な信頼を築けるかといった要素がより重要になってきます。

キャリアアップとしてはコンサルティングファーム同様に、デリバリーやクライアントとのリレーションが評価されるとマネージャーへ昇格し、それ以降はセリングにおける実績が評価に繋がります。 ただし、コンサルティングファームと比較するとセリングへのプレッシャーがそこまで大きくないという声もあります。少なくとも監査法人収入の40~50%以上が監査報酬で、年度初めにはある程度予見できることが一因でしょうか。

また、カウンターパートが基本的に部長以上または経営層で、CEOへの報告が年に数回あることもあり、経営目線でのアドバイザリー経験も積みやすい環境です。 ITコンサル出身の場合にはCTO,CIOといったキャリアパスを歩んだり、米国の監査法人アドバイザリーチームからはCROやCISOとして金融機関に直接入るケースもあるようです。

注意点①コンサルとアドバイザリーでは対クライアントへのコミュニケーションスタンスが異なる

ワークライフバランスを保ちながらも高い年収オファーが出ることから、弊社実績でもITコンサルが監査法人へ入社するケースが増えています。 しかし、すべての方がすぐにキャッチアップできるわけではありません

パートナー曰く「ITコンサルの中でも、クライアントの手元コンサル(作業代替に近い動き)をしてきた方だとキャッチアップに苦労している」とのことでした。

ポイントはクライアントとのコミュニケーションスタンスでしょうか。 監査法人は、コンサルのように「クライアントの代わりに課題を解決する」のではなく、あくまでもクライアントが抱えるリスクを排除し、クライアントの成功を一緒に導く役割を担っています。 そのため、「クライアントとそのニーズを満たすコンサル」とうスタンスではなく、「アドバイザリーとクライアント」というスタンスを作ることが必要になります。

時には、

  • 役員に辞めてもらう
  • 組織を抜本的に変える
  • 弁護士と一緒になって不正の主犯に辞めてもらい損害賠償を行う

といった対処も必要であり、指導する立場として「アドバイザリーとしてのトークができるかどうか」が問われます。

注意点②ITスキルに加えて経営戦略レベルのスコープが必要

上記でもお伝えしたように、監査法人の主な業務である内部統制では、「リスクに対してどのようにして統制を行うか、不正に情報を持ち出されないための対策・コンセプトづくり」など、CxOに対する経営レベルでのアドバイザリーが求められます。

特に、昨今の監査法人アドバイザリーでは、IT・会計といった個別の事象、一事業部の事業戦略案件ではなく、スケールの大きな企業体全体の戦略といった、経営戦略の立案から携わる案件も増加しています。

パートナー曰く「クライアントがリスクに恒久的に対応できるようになるための組織どうするのか?その為の人材確保をどうするのかと言ったNonIT案件へと広がるケースも多く、ITだけでなく法制度や業界動向等、より広範囲で深いスコープが必要になる」とのことでした。

ITコンサルやエンジニア出身の場合、「最後の最後で良いシステムが残れば良い」という感覚が抜けにくいケースもあり、上記のキャッチアップに苦労する方もいらっしゃるようです。
(参考)「戦略ファームの役員になれる」ITコンサル、「システム屋で終わる」ITコンサル

注意点③コンサルと会計士では考え方や仕事の進め方も異なる

監査法人アドバイザリーの部門長にお聞きしたところ、「コンサル出身のメンバーが会計士出身のマネージャーの下に就く時には会計士出身とコンサル出身の考え方の違いを事前に抑えておくことが大切」と回答いただきました。

コンサルティングファームでは、あらかじめ答えやソリューションが決まっていないことから、「現状がこうで、To beはこう。ただTo beを実現するためにどんな方法があるのか。良し悪しはなんなんだろうか」という考え方を訓練されるケースが多いかと思いますが、 会計士の場合は「監査六法という基準に照らし合わせて正しいかどうか」という仕事や思考をするシーンも多いため、どちらかと言えば、指示に対して実直に実行するメンバーが好まれる傾向にあるようです。

実際に、会計士のマネージャーに対して、コンサル出身のメンバーが「これはこれこれこうだから、やはりこういう考え方が良いと思います」と意見をぶつけ続けているうちに、人間関係がうまくいかなくなってしまった…というケースもあるようです。

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今回の記事では、監査法人でも案件の約90%にIT・システムが絡み、ITスキルを持つ人材のニーズが高まる現状と監査法人へ転職した際の注意点についてお伝えしました。

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