怖がりなのです。だからいつも慎重に、きちんと準備してきた。その繰り返しでした。
(荒木田誠)

アクシスコンサルティングに転職し、人材紹介業に飛び込んだ荒木田誠。それから10年以上が経ち、今や日本を代表するキャリアコンサルタントに成長を遂げた。彼はアクシスで何を学び、どのようなことに取り組んできたのだろうか。

荒木田誠

コンサルタントからアクシスへ

-金融系システムインテグレーターから、米系コンサルティングファーム。そしてアクシスへ、というキャリアですね。

当時キャリアコンサルタントも兼任していた代表の山尾に転職の相談をしているうちに、心惹かれてアクシスに入社した、という流れです。

実家が家業をしていたのですが、大学のときに父親が他界。なんとか乗り切らなければと、一時的に社長業を務めたことがありました。そのときに採用の難しさを痛感したのです。本当に人が必要なところに人がいかない。それがずっと心に残っていました。

-それにしても大きなキャリアチェンジです。

悩みました。ベンチャーへの転職で、子どもは0歳。住宅ローンは35年残っていました。ただ、まだ29歳だったし、二年間やって駄目だったら元の仕事に戻ろうと思っていました。

-仕事にはすぐ慣れましたか。

前職のコンサルティングファームでは、マネージャー二年目。コンサルタントという仕事をとても気に入っていましたし充実した日々でした。正直、転職する前は、コンサルティングの対象が、企業相手から求職者という個人相手に変わるくらいだろうと思っていました。単純明快・シンプルな仕事がしたいと考えていたので、人の悩みを聞いて相談に乗る、簡単な仕事かな、と。

でも、とんでもない勘違いだった。立ち上げ直後のベンチャーですから、何もない。まずはご紹介する企業を開拓。朝から晩まで電話。最初の二週間は、毎日毎日、前職に戻ろうと思っていました。でも、人間って適応能力があるのですよ。一か月後にはそれが普通の生活になりました。

-荒木田さんとともに、アクシス初期から会社を支えてきた山尾さんは、荒木田さんはなかなか家に帰ろうとしなかった、とおっしゃっていました。

確かに当時は朝から夜中まで仕事していました。みんなそうでしたけど。絶対に成功したかったので、キャリアコンサルタントとして当時は質で劣る分、圧倒的な仕事量でカバーしていました。

-そのモチベーションはどこから来たのでしょう。

誰かに言われたわけではなく、きちんとお客様によいサービスをしようと考えていたら、そうなっただけです。私、結構怖がりなのです。だからお客様に悪く思われたくなくて。クレームを頂かないために、きちんとやっていたのかもしれません。

例えば今でも、週末に仕事のメールを見てしまうと、すぐに返事をしないのは気が済まないのです。見てしまったメールを週末に放っておくことができない。ただ週末、きっちり休まないとよい仕事ができないのも事実。最近は意識的に週末に仕事のメールを見ないようにしています。

対価には成果で返す

-子どもの頃からそうだったのですか。

勉強はあまりしませんでしたが、アルバイトなど対価をもらうものは、昔から一生懸命やっていました。対価には成果で必ずお返ししたい、という気持ちは強かったです。

-どんなアルバイトをしていたのですか。

高校時代は家庭教師。小学生を教えていました。時給は5000円!授業の後にはおいしい夕飯とケーキ付き。郵便配達もしました。普通の人は朝から夕方までかかるものを、自分で導線を最適化して二時間で終わらせたり。

あとは宅配ピザ。ちょうど店舗の立ち上げにオープニングスタッフとして採用されました。店舗のリーダーになって、30分以内に四軒の配達をしよう、ピザを作るときにはトッピングの一掴み30gが分かるようにしよう、などとあれこれ挑戦していました。

-業務効率を上げることが好きなのですね。

ルーチンワークが好きなのです。単純明快・シンプルな仕事が好き。枠が決まっている中で細かくアレンジしたり、クリティカルプロセスをどう変更するのか考えたり。自分のキャパシティを広げ、突き詰めるが好きなのかもしれません。

-荒木田さんは趣味も多いですよね。

趣味はまったく突き詰めません。自分の中にある満足の沸点がとても低くて、クリアしたらすぐ次へ。去年から今年にかけても、フルマラソンをめざし、コントラバスを習い、囲碁にはまり。ここ最近はプールで週末2kmずつ泳いでいます。

マラソンなら東京マラソンを走れたからもういいや、と。昔、中国語を勉強していたときは、毎週末三時間ぐらいマンツーマンで指導してもらっていました。でも、中華料理屋で片言の会話ができれば、それで満足してしまう。ただ、FC東京の応援だけは、通奏低音のようにずっと続けていますが。

-仕事と真逆ですね。

仕事は朝から晩までやるもの。人生で一番関わるものです。だから、何かに特化するなら仕事に対して投資することが一番リターンも大きいと思うのです。

キャリアコンサルタントという仕事

-アクシスでも最初から突き詰めていた?結果はすぐに出ましたか。

アクシスに入社して、最初の5か月でお客様のレジュメを100枚作るという指示がありました。決まったからにはやり遂げるタイプなので、きちんとやる。先ほども言いましたが、自分の場合は慎重に、失敗しないように、怒られないようにすると結果がついてくる(笑)。

-トップキャリアコンサルタントとは思えない発言ですが。

他人の仕事ぶりを見て、みんなもっと努力しているのではないか、周りはもっと違う角度で取り組んでいるのではないか。いつもそんなふうに考えるのです。

新卒で入ったシステムインテグレーターから、コンサルティング会社に転職するときも、みんなすごい人ではないかと思って、かなり準備して入社した。ただ、入ってみるとそうでもなかった。そんな自分の慎重なところが仕事に役立っていると思います。

-キャリアコンサルタントという仕事についてはいかがですか。

お客様に、「あそこに行くと転職の話ばかりだからな…」と思われたら負けだと考えています。転職関連の知識をつけることは大切ですが、それだけを武器に相談に乗るのでは相手を疲れさせてしまう。

求職者や企業との関係づくりの中で、堅い話だけではなく、男ですけれど母性を大切にしています。何かを教えるのではなく、本当に悩んでいることを受け止めて聞いてあげるだけで、楽になることもある。転職活動の面接では前向きな理由ばかりを求められますが、実際は今いる環境に何かしらマイナスを感じるからこそ転職したいと思うわけですよね。

誠実ということ

-相手の立場に立って、悩んでいる部分をきちんと聞き出してあげるということですね。

あとは、「きちんとやる」ということ。たとえば一月に面談したお客様が、四月ごろに転職活動を本格的に始めるつもりだと言ったら、きちんと四月に連絡をする。今、アクティブにお付き合いしているお客様が200人くらいいますが、皆様がおっしゃったことはすべて記憶してその通りに連絡しています。

-言うは易し、行うは難きですね。

自分用に手書きリストを用意していて、その200人を一覧で見られるようにしています。アクシスは社内の情報共有がしっかりしていますから、他のメンバーからいい求人情報が出てきたら、そのリストを見る。一日最低一回、多い時は十回くらい見ます。

そこまでやれば頭の中に叩き込まれるので、何かあったときに即座に反応できる。システムに頼るとそこが弱くなると思います。

-お客様のことを考え、最適な求人を紹介するための工夫なのですね。

「無理に」という言葉が入ってきたら、それは誰のためにもなりません。毎年、その前の一年で自分がお手伝いした方の転職先企業名を一覧にして眺めるのです。業界、職種が偏っていないと感じた年はとても満足します。どこかの会社に一極集中しているような状況であれば、私が幅広く皆様に情報を提供できていないと考えます。

-アクシスという会社については。

家、寝床とあまり変わらないというか、自分と不可分のものになっていますね。

-どんな人と働きたいですか。

仕事に誠実な人、嘘をつかないこと。やっていないことをやっていると言わない人がいいですね。小さな話だと、朝遅刻をしたときにつまらない嘘を言わない。体調不良で午前中病院に行ってきます、とか。寝坊したなら正直にそう言ってくれたほうが、人間味があって素敵です。

この仕事は、言ってみれば伝言ゲーム。求職者の魅力と企業の魅力を、我々キャリアコンサルタントがきちんと伝えられるかどうかです。100の魅力を60しか伝えられていないのではないか。逆に120にしてしまっていないか。

誠実かどうか。嘘をつかないかどうか。キャリアコンサルタントの姿勢はこういうところに出てくると思います。

荒木田誠

二十年近いFC東京ファンの荒木田。「もう時効だと思うので…」と。横浜で大きな試合があり、しかし定時に出ては間に合わない。悩んだ末、架空の面談を入れて退社。「嘘をつかない人がいいと言ったばかりじゃないですか」と指摘すると、「大人の嘘はいいのですよ」。さらりとかわされた。

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