進むアメリカ製造業の国内回帰
アメリカ製造業の国内回帰の動きが強まっています。要因としては、新興国リスクの増大や輸出拠点としてのアメリカの優位性上昇のほか、ものづくりにおける技術革命などが挙げられます。
さらに、これを大きく後押しすると考えられているのがシェールガス革命の影響です。低廉で豊富なエネルギー源を獲得したアメリカ産業界は今後躍進すると言われています。
製造業界に劇的な変化をもたらすシェールガス革命とは
今注目を浴びている、シェールガスとは何でしょうか。「シェール」は、日本語では「頁岩」と呼ばれる、岩石の種類です。地下数百~数千メートルの地層に位置するこのシェール層に含まれるガスのことを「シェールガス」と呼びます。シェールガスの主成分はメタンのため、液化天然ガス(LNG)と組成や用途に大きな違いはありませんが、これまでは効率的に取り出す方法が無かったため、エネルギーとしてあまり注目されていませんでした。
しかし、近年の技術革新によりシェールガスの採算性が飛躍的に向上し、注目を集めています。
フリーポートにあがるアメリカ製造業復活ののろし
世界最大の化学メーカー、ダウ・ケミカルが、シェールガス由来のエタンが手に入ることを受けて、2015年にシェールガスの一大産出地帯に隣接するフリーポートにおいて、大型プロピレン工場を稼働させました。2017年には同地で世界最大のエチレン工場を稼働させることを計画しています。
こうした化学メーカーの国内回帰を皮切りに、シェールガスのパイプライン需要で潤う鉄鋼業界や、天然ガス自動車の利用拡大を期待する自動車業界など、多くの業界が拠点をアメリカ国内に回帰する動きが出ています。
シェールガスは、アメリカ経済にとって「エネルギー自給」「経済活性化」「経常赤字縮小」の3つの観点から、長期的にアメリカ経済にプラスの効果をもたらすこととなりそうです。
米国と密接な関係にある日本にとっても大きな影響をもたらす米国企業の国内回帰の動きからは、今後も目が離せません。