「クライアント期待値」コントロールのコツ【コンサルマネージャー向け】

コンサルタントがプロジェクトをデリバリーするにあたり、とても大切なのは「クライアントの期待値コントロール」です。プロジェクトのミッションを達成することが大切なのは言うまでもないのですが、実際にコンサルタントの頑張りやアウトプットを評価するのはカウンターとなるクライアントです。クライアントの期待を超えることで、プロジェクトの満足度は高まりますし、次の契約にも繋がります。
では、期待値コントロールを行うためには、どのようなことを意識すべきなのか。今回の記事では、期待値コントロールの主なポイントをご紹介します。

【目次】

  1. 期待値設定に向けた準備
  2. 期待値の設定
  3. 期待値の調整
  4. +α 社内の期待値コントロール

期待値設定に向けた準備

まずはクライアントがどのような課題に直面していて、その課題を解決した結果としてどのような方向に持っていきたいのかを明確に把握します
上記を把握するためには、クライアントからヒアリングをすることが欠かせないのですが、単に「どのような課題がありますか?」とフラットに聞くだけでは、クライアントは残念に思ってしまうケースが多いです。

クライアントはコンサルタントに対して、大きな期待を持っています。高い金額を払うことになるのだから、「相応のスキル・知見を持った人が対応してくれるのだろう」と期待します。プロジェクトの成果に対する期待というよりも、コンサルタントを雇うことに対する期待という意味合いが大きいです。

このディスカッションにまず応えるために、十分な仮説構築を行ってからプロジェクトに臨む必要があります。クライアントは、どのような業界の、どの位置付けにある企業なのか、その企業の中のどこの部門の、どの役職の人とディスカッションをするのか、その人を取り巻く状況はどうなっているか、企業の方針とその人が持っているであろうミッションを照らし合わせると具体的にはどのような課題感を持っていそうなのか等、様々な情報を掛け合わせて、ディスカッションのネタを用意します。
そうすることでクライアントが抱えている課題について最初から深いディスカッションを通して理解し、寄り添うことができるようになります。

このプロセスを通して、課題を明確かつ具体的に理解することが期待値を設定する上での第一歩となります。

期待値の設定

課題とクライアントが持っていきたい大枠の方向性を理解したら、プロジェクトのゴールとアプローチ、計画に落とし込んでいきます。どのくらいの期間で、何をアウトプットするのか、何をインプットし、どのようなプロセスで検討・行動してアウトプットに結び付けていくのか等を検討します。

検討した後はクライアントの合意を取りに行きますが、ここでポイントとなるのが、最初から「我々の案はこれです」と決め打ちで臨まないことです
いくら事前に方向性の議論をしたところで、足元の具体的なアクションに落とし込んだときにはイメージが異なることが往々にしてあります。決め打ちしてしまうと、「イメージと違う、本当に大丈夫なのか」と心配されてしまい、プロジェクトのデリバリーが非常にやりにくくなります。

そうなることを避けるために、ドラフト案として資料を作成し、クライアントが気にしそうな論点をいくつか用意しておき、論点について議論をしながら、クライアントと一緒にプロジェクトのゴールとデリバリーイメージをすり合わせていくことをおすすめします。
期待値設定ができたと思っても、その認識がずれていたのでは期待値を下回ってしまう可能性が高くなるものです。お互いが意見を出し、口頭だけでなくドキュメントベースですり合わせをしていくことで正確な期待値設定を行うことができます

このとき、1つ気を付けるべきことは、その場で「クライアントによく思われたい」と考え、クライアントの意見に迎合してしまうことです
「短い期間や少ない工数でできます」と言ってしまったり、「とても難易度が高いことや夢物語に聞こえるようなこともできます」と言ってしまったりすると、クライアントの期待値は一気に高まってしまいます。一度期待値が上がってしまったら、そこから更に上をいくことは非常に厳しく、仮に一生懸命やってやり遂げられたとしても“期待通り”の成果となってしまいます。

大切なことは、“期待以上”の成果を挙げることです。そのため、自分や自社で対応が難しいことは素直に難しいと伝えることがお互いのためですし、更に言ってしまうと、無理なくできそうな範囲でも少し厳しいくらいな反応で返すことが期待値コントロールに繋がります。その状態から、プロジェクトのゴールを達成すると「よくやってくれた」と期待値を超えたことに対する高い評価を得られます。

期待値のバランスを見極め、クライアントと上手くコミュニケーションを取ることがマネージャークラスの腕の見せ所です。相手の気持ちをいかに察することができるかが勝負。察するために身振り手振りや表情まで観察し、気持ちに寄り添った鋭い質問を投げかけます。期待値設定がうまいマネージャーと一緒に仕事をするメンバーは非常に楽になります。
どんどん昇格していくコンサルタントは上記が非常に巧みであるものです。

期待値の調整

初期設定した期待値もプロジェクトが進み、状況が変わるにつれて、ブレてくることが多いです。そのため、最初に明確にすり合わせをしたからといって安心してはいけません。むしろ、プロジェクトのデリバリーが進めば進むほど、クライアントと相対することが増えて、より深く広い情報が得られるようになり、期待値をコントロールするための良質なインプットに繋げられます

単に求めるアウトプットを作り切るだけではなく、クライアントの企業内で誰との合意まで取り付ける必要があるのか、合意を取り付けるまでにどのようなコミュニケーションであればクライアントは気持ちよく受け入れてくれるのか等、人ベースの期待値を持っていることにも気づけます。もしくは、「予算はこれだけある」と言いつつも実際はそれよりも増減があったり、これくらいまでにアウトプットが欲しいと言われた期間よりも長短があったりします。
日々のプロジェクトデリバリーの中でそれらの情報も取りに行くと、より深くクライアントのことを理解でき、仕事がしやすくなります。そして、クライアントも信頼してくれるようになるのです。

また情報を取るためには会議の中で話すだけではなく、足繁くクライアントのデスクに行って話しに行ったり、少し古いやり方と思われるかもしれませんが、たばこに付き合ったり、夜の飲み会にも参加したりすることが有効な方法となり得ます。
仕事だけの関係者とはいえお互い人間であるため、人としての付き合いが深まれば自然と相手の心も開くものです。こちらも打算的な考えばかりでなく、その人自身に向き合う姿勢で臨むことで信頼関係を築けるため、相手は本音で話してくれるようになります。
泥臭い方法と思われるかもしれませんが、このような方法もクライアント次第ではあるものの有効です。そこで得られた関係性や情報はプロジェクトにもとても価値のあるものになります。

+α 社内の期待値コントロール

ここまではクライアントの期待値コントロールについてお話ししました。上記ができることで、クライアントから評価されるのはもちろんですが、社内からも評価されます。

また新たなプロジェクトを始める際には、社内の期待値コントロールも重要となります。メンバー構成はどうするのか(どのようなスキル・知見、役職の人が必要なのか)、どれほどの工数が必要となるのか、すべてを含めてクライアントへ提示する金額はいくらか等、社内リソースの調整が必要です。こちらも先ほどと同様、ギリギリのラインで社内申請を挙げるのは、自分で自分の首を絞めてしまうようなものです。

少し余裕のある範囲で、ギリギリのラインであることを伝えて、調整することをおすすめします。そうでないと、実際にプロジェクトが燃えてしまったときに、できると言っていたのにできなかった場合と、厳しい状況の中で燃えてしまった場合とでは、社内での見られ方も異なります。無理のない範囲で、自分とメンバーが有利に働く方向で調整していくことが後々の自分を助けてくれるはずです。

また、プロジェクトをデリバリーすることに加えて、会社が示す大義もくみ取ることで、期待値を超えることができます。例えば、入社したばかりの若手コンサルタントの育成も兼ねたプロジェクトデリバリーを行うことや、会社がこれから注力していきたい領域のプロジェクトテーマに合わせてプロジェクトを設計していくこと(例:単なるシステム刷新プロジェクトではなく、デジタルトランスフォーメーションの要素も含めたプロジェクトのゴール設計とすること)等、プロジェクト設計段階で会社が追い求めていることを実現するような建付けとすることで、単にデリバリーするよりも、会社から喜ばれ、応援を受けやすくなります。

このように一工夫することで、自分は同じように頑張るだけでも、周りからの評価を得られやすくなります。

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期待値コントロールはコンサルタントがプロジェクトを設計・デリバリーする上で非常に大切な要素です。期待値設定をうまく行うことで、同じ頑張りでも評価が高くなったり、低くなったりします。クライアントの期待値コントロールを行うこと、そして、信頼関係を構築し本音ベースでそれを行うことが自分とメンバーを助けてくれます。そして、社内に対してもうまく期待値をコントロールすることで更に評価を高めることができます。
今回の記事が、今後の皆様のキャリアに役立つのであれば大変幸いです。また、キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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