株式会社日立コンサルティングは、2002年に日立製作所100%出資によって設立されたビジネスコンサルティングファームです。日立グループ約900社のパイプやリソースを活用したコンサルティングを行っています。今回は、外資系ファームより同社に転職されたマネージャー菅沼直人様へのインタビュー。インダストリーを変えての転職におけるキャッチアップの仕組み、同社のセリング・デリバリーの優位性、グローバルビジネスコンサルティング事業部の概要や現在の職務などについてお聞きしました。
SEから外資系ファームに転職しマネージャーへ昇格。その後インダストリーを変えて日立コンサルティングに転職
江口
はじめに、菅沼様のご経歴についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
菅沼様
1社目は電機メーカーで、そこで営業職を2年、SE職を9年半経験しました。SE職ではプリセールスから運用保守まで、一通りの工程を担当し、最終的にはプロジェクトマネージャーとして業務に従事していました。
SE職は、システムの構成もそうですが、クライアントの課題感や対策の方針がある程度固まった中で提案をしなければなりません。「そもそもどういった課題があるのか」「それをどのように解決するのか」というフェーズから、クライアントの課題改善に貢献したいという強い思いがあり、外資系ファームへ転職しました。
外資系ファームでは公共部門にコンサルタントとして、主に大規模システムの刷新プロジェクトに携わっていました。2年後にマネージャーになり、プロジェクトリーダーや社内の管理業務を経験しました。
その後、SDGs、環境問題などの”グローバル目線での公共”という観点から社会課題を解決したいという思いから、エネルギー業界など当該の領域に強みを持つ日立コンサルティングへインダストリーを変えて転職しました。
インダストリーを跨いだマネージャーでの転職も、豊富なユースケースによりすぐにキャッチアップできた
江口
他ファームよりマネージャーで転職されて不安なども大きかったのではないでしょうか。
菅沼様
私のように公共部門からインフラ部門と異なる領域へ転職する場合には、インダストリーの知識が異なるため、ある意味0からのキャッチアップになります。ただ、プロジェクトやチームマネジメントかつセリングの責務も負うため、正直なところキャッチアップに使える時間は限られています。その為、ナレッジやユースケースが少ない企業ではいきなり自走することが求められます。
その点で言えば、私が所属しているグローバルビジネスコンサルティング事業部は、主に電力・ガスなどのインフラ系企業がクライアントになりますが、グループ全体でインフラ企業を相手にしてきた実績・人脈が豊富にあるため、ナレッジを含めたリソースを活用できる点が非常に役立ちました。
江口
ナレッジを共有する仕組みなどもあるのでしょうか。
菅沼様
私は最初に新規事業企画のプロジェクトに入りましたが、他のマネージャーやシニアマネージャーに他案件のノウハウを共有していただきました。それだけでなく、日立グループの情報基盤であるLumadaからユースケース等を見て、インプットしながら過去に新規事業企画をどう推進していくのか見立てを立てて進めることができました。
江口
その他にマネージャーとしてキャッチアップする上で手助けとなったことはございますか。
菅沼様
特殊な事例かもしれませんが日立コンサルティングの場合、日立製作所や日立システムソリューションズが同じグループ内にあることから、実行フェーズまで踏み込んだコンサルティングを行う際に協力しやすいのが特徴です。グループ会社だからこそ、プロジェクト内でも業界特有の課題や、ソリューションについて聞きやすい関係性が初めからあり、この点も非常に助かりました。
PoCで終わらないソリューション提供が求められる環境のため、ユースケースの水準が高い
江口
ソリューションの提案・導入において不安などはありませんでしたか。
菅沼様
同じグループにベンダーがあるため、ソリューション導入のフェーズにおいても綿密なやり取りが可能であり、協力する体制も整っていたため提案時における不安はありませんでした。基本的にコンサルティングファームでは、システム提案の際にはパートナー企業と手を組みます。ただ、正直なところパートナー企業との関係性によって提案の質も変わってしまいます。特に、新しいパートナーやソリューションではお互いにユースケースがないことも多く、実行面で不安が残る状態での提案になりがちです。そのため、PoCに終わるようなケースも少なくないです。
また、我々のグループ内で先行的に用いたソリューションも多いです。その為、すでに実績がある状態で提案できます。
同時に、案件獲得のファーストステップは基本的にグループ会社の営業が行います。ソリューションが実現することによってクライアントから利益やその後の関係性が発生するため、グループ会社にとっても我々にとっても提案やPoCだけで終わらせたくないという思いが強いです。そういった背景もあり、豊富なユースケースが次々と生まれるのです。
江口
逆に自社ベンダーのソリューションに限定された提案しかできないという不自由さは感じられませんでしたか。
菅沼様
クライアントの課題を解決する際には自社のソリューションに限られるわけではなく、柔軟に外部のソリューションも使います。そのため、正直なところソリューションが限られるという不自由さを感じる機会はなかったですね。
「導入実績のエビデンスが明確」かつ「営業パイプも豊富」なため、転職後のセリング責務もすぐに乗り越えられた
江口
日立グループ以外のクライアントは何を求めて御社にコンサルティングを依頼するのでしょうか。
菅沼様
日立製作所は日本の会社でありながらグローバル企業です。どのようにグローバル展開をしていったのかを日本企業は知りたく、我々はそのノウハウを提供しているのだと思います。日立ではグループ内でグローバル展開に成功した事例があるため、実際に成功したノウハウを武器に現実的なグローバル支援という名目で案件を獲得することが可能になります。
江口
日立グループの事例が、提案の際のエビデンスになっているということですね。
菅沼様
そうです。実際に成功した事例がはっきりと社内に存在する点が違います。
グローバル進出だけでなく、リーマンショックの時に7000億の赤字に転落したところから回復した過去の実績などの影響力も強いです。特にメーカーからは「日立製作所の事例ならやりたい」とおっしゃっていただくケースが多いです。
プロジェクトのお客様とお話させていただくことがありますが、そのお客様から、「現実的な提案が多くていつも助かっています」といったお声をいただくケースが多いですね。
江口
マネージャーでの転職、さらにインダストリーを変えて転職する際にはセリングがより高いハードルになるケースをよくお聞きします。
菅沼様
今は再生可能エネルギーを活用した新規事業企画のプロジェクトに関わっていますが、最終的なアウトプットは事業企画書です。それをもとにクライアントに事業化への可能性の有無をご判断いただきます。その際も、日立製作所の成功事例がエビデンスとして導入につながったこともあり、バックの強さを感じましたね。
また、営業窓口はグループ会社の営業が担うケースもあり、セリングやリレーションよりもデリバリー、つまり課題を解決するところに注力できる点も魅力かと思います。
現在は再生可能エネルギーを活用した新規事業の企画支援に従事
江口
あらためて菅沼様が所属されているグローバルビジネスコンサルティング事業部について教えていただけますか。
菅沼様
製造や流通、サービスやエネルギー、通信など、幅広い産業分野を対象にコンサルティングサービスを提供しています。金融と公共に特化したもの以外は当事業部のターゲットです。
プロジェクトとしては、日本企業のグローバル展開、製造業のデジタル化推進、エネルギー業界のビジネス改革、環境・サステナビリティに関する企業改革などに対して支援を行っています。
江口
菅沼様はその中でもどの領域を担当されているのでしょうか。
菅沼様
グローバルビジネスコンサルティング事業部の中でも、私はエネルギーソリューションコンサルティング本部に所属しております。多くの場合は、エネルギー業界を中心に、大手電力会社やガス会社が支援対象となります。
ただ、最近は、小売や金融、通信関係の会社も電気の小売りに参入されていますよね。ですので、支援対象となるクライアントはエネルギー会社や電力会社、ガス会社に限らなくなっています。
江口
現在関わられているプロジェクトについて教えていただけますか。
菅沼様
現在は、再生可能エネルギーを活用した新規事業の企画支援にプロジェクトマネージャーとして携わっています。
電気を消費者にどのような形で提供していけばいいのか、マーケティング調査をして、必要に応じてターゲットにヒアリングを実施します。そういった活動を通して、最終的にはクライアントに対して事業性の有無をレポートします。
江口
世の中では、SDGsへのニーズが高まっているという観点から見ても、そのようなプロジェクトは今後も多くなっていくのではないでしょうか。
菅沼様
はい、そうですね。こういった環境問題に対する取り組みは海外の方が先行していますが、今後は日本においてもさらに広まっていくでしょうし、その重要性もますます高まっていくことでしょう。というのも、こういった取り組みが企業の財務に影響するような状況になっているのです。環境問題に対する取り組みが企業の格付けにおけるひとつの観点になっており、そこでの評価があまり思わしくないと投資家から避けられてしまいます。
また、投資家だけでなく、若い世代の消費活動にも影響してきます。そのため、企業にとって重要なのは地球環境保護への真摯な姿勢と、低炭素時代においても順調に成長していけることを示すことだと思います。
設備導入からデジタル化まで、国内、海外で多数のエネルギーコンサルティングを手がけた日立コンサルティングだからこそできる、低炭素・脱炭素のソリューションがより求められるでしょう。
今後はエネルギー業界を軸に、電気自動車やMaaSなど領域を超えた案件にもチャレンジしていきたい
江口
今後のキャリアでチャレンジしたいことはありますでしょうか。
菅沼様
まずは日立グループのバックボーンを活かして、現在取り組んでいる環境エネルギー関連の業務に関わっていきたいと考えています。
また業界の垣根を超えたコンサルティングにも携わりたいと思っています。今後はそのような案件も増えてくるでしょう。例えばエネルギー業界でしたら、電気自動車や自動運転、MaaSなどといったところと密接に関わってきますから「この業界しかわからない」というのでは難しいのではないかと考えています。
現在は事業企画のプロジェクトに携わっていますが、業務改革の案件にもチャレンジしていきたいと思います。日立グループとパートナーシップを結んでいるクライアントと連携して、日系企業の海外展開の支援なども行っていますので、そういったグローバルプロジェクトにもさらに積極的に関わっていきたいです。
江口
ありがとうございます。最後に、御社を目指されている方へメッセージをいただけますでしょうか。
菅沼様
コンサルティングはとてもやりがいのある仕事だと思います。クライアントの高い期待値に応えるための努力は必要になりますが、プロジェクトを通じてクライアントに貢献できたと実感した時、自分の関わったプロジェクトが社会貢献につながったと実感した時の喜びはひとしおです。そのような経験を一緒にできる方に、ぜひ応募していただきたいと思っています。