「経営管理・意思決定の高度化に、リスクをどう加味してクライアントのビジネス成功確度を高めるか」をミッションとするPwCコンサルティング合同会社 (以下、PwCコンサルティング)リスクコンサルティング(RC)チームへのインタビュー。
シニアマネージャー 小菅侑子様、マネージャー 濱野真子様に、同チームが提供するサービスや案件の特徴、コラボレーションカルチャーを活かしたコンサルティング、組織のカルチャーなどについてお聞きしました。
RCチーム小菅様、濱野様のご経歴
井内
まずは小菅様から、ご自身のご経歴についてお聞きかせください。
小菅様
私は2008年に新卒で総合コンサルティングファームに入社し、戦略チームでアソシエイトとして仕事をしました。2010年にはIT系大手のグローバルコンサルティングファームに転職し、ITコンサルタントとしてシステム系のコンサルティング事業に従事しました。PwCコンサルティングに移ったのは2016年です。入社後は金融サービスのチームに所属していましたが、2022年秋にRCチームに転籍しました。
井内
RCチーム様へは転籍されたとのことで、ご自身でご希望されたのでしょうか。
小菅様
はい。昨今は金融サービスで取り扱うリスクの種類も多岐にわたり、その流れの中でESGに関するリスクが話題にあがるようになってきました。個人的にも、その辺りのことに非常に興味を持っていました。金融という領域に縛られず、業界横断でリスクサポートができるチームへの移動を希望しました。
現在は、人権リスクと金融領域のデジタルリスクをサポートしています。
井内
ご希望を叶えられた訳ですね、ありがとうございます。続いて濱野様、ご経歴についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
濱野様
私は2012年に新卒で外資系IT企業に入社し、ITコンサルタントの仕事を開始しました。2015年に監査法人のリスクアドバイザリーに転職し、主にシステムや情報セキュリティ監査、システム導入に関わるプロジェクトマネジメントの支援等を行ってきました。仕事をする中で、今までの経験を生かしつつ、もっとコンサルタントとして成長したいと思い、2021年にPwCコンサルティングに入社しました。
井内
成長環境として御社を選ばれたのですね。現在はどのような業務を担っていらっしゃるのでしょうか。
濱野様
私は入社してから現在まで、先程小菅さんが話されていたデジタルリスクを担当してきました。デジタルリスクの根本原因を見つけ、業務継続計画(BCP)の整備や見直し支援等、より精度を高めるために日々検討を重ねています。
デジタルリスクからESG・地政学リスクまで、幅広いテーマに挑む
井内
RCチームの組織体制やサービスについてお聞かせください。
小菅様
RCチームは業界横断でリスクコンサルのサービスを提供しており、メンバーは50人ぐらいです。主なオファリングとしては、
・エンタープライズ・レジリエンス(戦略的ERM・BCP)
・経済安全保障・地政学リスク
・デジタル(データ&システム)リスク
・ESGリスク
・レピュテーションリスク/ソーシャルリスニング
があります。今一番規模が大きいのがデジタル(データ&システム)リスクコンサルティングで、特に社会にとって重要な基幹インフラを担う企業にとっては、ビジネスのステークホルダーにとっての脅威に直結するためニーズも高いです。
井内
昨今のトレンドとなる領域も含め、幅広いサービスを提供されていらっしゃいますね。
チームの特徴や、他社と比較してのお強みもお聞きして宜しいでしょうか。
濱野様
ESGリスクや地政学リスクといった戦略リスクにも取り組んでいることが特徴の1つでしょうか。もちろん、他の大手ファームも取り扱っていると思いますが、当社RCチームは、こうした社会課題に関連するホットなテーマを、経営アジェンダとしてまだ「芽」の段階であっても積極的に扱っていこうという熱いパッションを持っており、幅広くリスク領域に関心のある方が活躍できる体制が整っています。
井内
ESGリスクや地政学リスクはマーケットからのニーズも高まっているご印象ですが、一方でビジネス化するという点では難しい領域なのでしょうか。
濱野様
そう思います。どの企業も関心はあるのですが、はじめから長期的・大規模に取り組むというより、まずは小さく始める、あるいは細く長くコンサルの知見を活用しながら、全社的なトランスフォーメーションのテーマへと移行していく印象です。
RCチームの方針として、メジャーなデジタルリスク支援や、PMO的な支援だけに偏ったリスクコンサルにはしたくないという思いがあるので、デジタルリスクやエッジの効いたリスクテーマと全社的な戦略的ERM、さらには全社的な変革等のレジリエンスサービスにも注力し、全体でバランスよく両輪を回しています。
井内
そうしたサービスを両輪で回すことは組織上難しい点もあるかと思いますが、パートナーをはじめマネジメントに関わる方が、そうしたエッジの効いた案件に注力できる仕組みがあるのでしょうか。
小菅様
RCチーム単独で活動するのではなく、パートナーを中心にして、昨年秋に立ち上がったPwC Intelligenceをはじめとした他の部門とのコラボレーションに注力しています。クライアントのリスクテーマを捉え、さらに全社的なトランスフォーメーションまでサポートをしようとすると、マクロ・インテリジェンスとクライアントが属する業界への示唆を持つチームとの連携やサプライチェーンの変革を支援するチームとの連携が欠かせません。また、このような連携によるインパクトへの貢献を評価する仕組みも重要で、売り上げなどの通常のBusiness Metricsのみで評価すべきでない人についてはその人独自の評価基準を設定し、期待役割に沿った評価をするという仕組みがあります。
グローバルの知見を武器に、「有識者」としてクライアントの信頼を獲得する
井内
直近で、クライアントからよくいただくお悩みやご相談についてはいかがでしょうか。
小菅様
ESGリスクでは、経済産業省から2022年以降、人権尊重のためのガイドラインや実務参照資料*1が出ていることもあり、人権リスクに関するご相談は増えました。ウェビナーを開催した際は何百人もの方が参加してくださって、興味関心が高まっていると感じています。
井内
人権リスクの案件では、カウンターパートはどういった方々になるのでしょうか。
小菅様
お客様によっても違いますが、サプライチェーン上の話であれば調達部門、自社内の人権に関することであれば人事部や総務部が担当されることが多いです。他にも、サステナビリティ推進部のような組織を持つお客様もいますね。
井内
ありがとうございます。案件が発生するご相談の経緯としてはどのようなイメージでしょうか。
小菅様
経営層から「こういうことをやりたい」と要望を受けた担当の方が相談にいらっしゃるという感じですね。取締役会などで取締役から「我が社の人権は大丈夫なのか」と問われ、人事部の方が相談に来るようなケースです。
サプライチェーンの案件ですと、例えば法務上の問題で企業の輸出に際して制約がかかる可能性が出たことを受けて、調達部門からご相談を受けたりしています。
井内
人権リスク領域ですと、最終的なアウトプット、案件の終わりはどのような形になるのでしょうか。
小菅様
持続的な取り組みがほとんどですので、「これをやったら終わり」というものはありません。最初の仕組みを一緒につくらせていただいてしばらく伴走支援をし、最終的にお客様が自走できるところまでサポートするという形で進めることが多いです。
井内
人権リスクという領域でRCチームが選ばれている理由についてどう考えているかお聞かせください。
小菅様
BIG4に限らず競合は多いです。特にテーマに特化したバリューは、老舗のコンサルティングファームでなくても、専門家個人や専門ファームでも出しやすいと感じています。新しい形態のコンサルティングファームがかなり低額で提案して市場価格を下げることも多くなりました。
競合は増えてきていますが、そんな中で私たちは信頼や実績、組織の力で勝負するようにしています。PwCコンサルティングは世界152カ国に及ぶPwCのグローバルネットワークを活用できますので、例えば、EUの先行事例から学んだ知見を活かすことも容易にできます。また、PwCコンサルティングには、さまざまなバックグラウンドを持つ職員がそろっていますので、こうした専門家・有識者という観点で、多くのクライアントに選んでいただけているのだと思っています。
PwC弁護士法人からグローバル拠点まで、コラボレーションを重視したコンサルティング
井内
PwC Japanはコラボレーションカルチャーが特徴的かと思いますが、他のチームとコラボレーションした事例があれば教えてください。
小菅様
ESGリスクの領域では、PwCサステナビリティ合同会社の専門性を借りたり、コネクションをつないでもらったりすることもあります。
濱野様
同じクライアントで当チームがシステム部門を支援し、サイバーセキュリティ部門など他部門をDigital Trustチームが支援しているということがあり、そのような時は定期的にミーティングを行い、情報管理には留意しながら最適なサービス提供に向けて意見交換をしています。
小菅様
人権がテーマの案件だと法律に関わる相談も出てくるため、PwC弁護士法人とコラボレーションして対応することも多いです。
サプライチェーンに関する案件では、海外のPwCメンバーファームの方に現地調査をお願いすることもありますし、サステナビリティに関する案件では、プロジェクト支援実績が豊富なPwCドイツのチームにコラボレーションをお願いしたこともあります。
井内
グローバルの連携も積極的なのですね。ちなみに、海外のチームには気軽にコラボレーションを依頼できるものなのでしょうか。
小菅様
そうですね。私はいつも英語ができるコンサルタントに助けてもらいながら、チャットやメールでやり取りしてウェブ会議を設定し、そこで情報を収集するなどしています。そうした会議を通したコラボレーションは、特に決まった手続きなく気軽にできます。
案件勉強会やバディ制度で未知の領域へのチャレンジを後押し
井内
チームの雰囲気はいかがでしょうか。
濱野様
皆コミュニケーションを取るのがうまく、社交的な方が多いですね。特に若手世代はチャットなどの発信力が高く、チームチャットで積極的に情報共有してくれます。
小菅様
フォロー体制も充実していて、勉強会を企画するチームがRCチームの中にあります。
濱野様
私もそのチームに入っているのですが、案件勉強会というものを毎月企画しています。各プロジェクトのスタッフが今デリバリーしている案件を紹介していくというもので、中途で入った方にもチームのサービスがどのようなものか分かりやすく伝える取り組みです。
あとはバディ制度といって、中途で入った方には必ずコーチとは別に経歴や歳の近い人がバディとしてつくので、コミュニケーションが取りやすい環境になっています。
井内
働き方や労働時間についてはいかがでしょうか。
小菅様
案件によっては100%出社の場合もありますし、逆に100%リモートの場合もあります。勤務時間は大差ないと思います。
濱野様
本当に案件によりますね。ただ、RCチームでは半月に1回、メンバー全員の稼働状況を確認するようにしています。
井内
労働時間はチームでしっかり管理しつつ、働き方は案件によるものなのですね。休暇の取得についてはいかがでしょうか。
小菅様
結構、希望通りに取得できていると思います。早めに分かっていれば、それを前提に業務を調整して2週間などのまとまった休暇を取ることもできます。クライアント業務に支障がでないよう、チームでカバーしあえるため、休暇を取りやすい環境があります。
ぶつかっても前に進む、発想力のある人が活躍できる
井内
チームメンバーのバックグラウンドや女性比率についても教えてください。
濱野様
メンバーのバックグラウンドについては、私たちのようにコンサル出身の方や、事業会社でコンプライアンス領域のお仕事をされていた方、最近だと外資系のロジスティックス企業出身の方もいて、多岐にわたっています。
また、リスクコンサルは女性に人気があると感じています。チームの約40%は女性ですし、それぐらい男女の垣根がなく、女性から関心度の高いテーマだと思います。
井内
女性比率40%は平均的なイメージよりも高い水準ですね。ちなみに、男女関係なく、RCチームではどのような方が活躍されていますか。
小菅様
自分で考え、間違ってもいいので発想力を持って推進できる方ですね。RCチームが扱う領域は、何が正解なのか誰も知らない中で、思いつくものを調べて、仮説を立て、検証しながら「私はこう思う」というのを発信していかないと進まないことが多いのです。ですから、間違いを恐れずに、何かをぶつけ、壁にぶつかったとしても調整をしながら少しずつ上へ進んでいける方が求められていると思います。
濱野様
そうですね。ただ待っているだけではだめなので、とりあえず何かしらぶつけていくような姿勢が大切だと思います。好奇心旺盛であることは大前提に、やはり自分から発信していけるタイプの方が求められています。
井内
スキル面では、リスクやITの経験・知見が必要なのでしょうか。
小菅様
システム監査や内部監査などの経験やスキルが必須というわけではありません。その方のポテンシャルも見つつ、若手であればどちらかというと積極性やビヘイビアの方が重要だと思っています。
井内
最後に、リスクコンサルタントとしてのキャリアの魅力や面白さについてもお聞かせください。
小菅様
ホットなテーマが常に扱われていることでしょうか。今だったらサステナビリティや人権、地政学など、経営アジェンダのトップに来るような仕事がメインですし、気になっているテーマをしっかり勉強できて、それがそのまま仕事に生きてくるのは面白いと思います。
また、私たちのチームにはオープンマインドな方が多く、中途採用で入社している方も多いので、入社形式の違いを感じさせるような文化はほぼありません。コンサルティングについてゼロから勉強できる仕組みもありますから、興味がある方には、ぜひチャレンジしてほしいです。
濱野様
リスクというと守りのイメージがありますが、実は攻めの要素もあって、その時の自分のテンションに応じて、さまざまなコンサルができることがリスクコンサルの楽しさの1つだと思います。
また、50人程度のかなりアットホームな環境で、男女比や新卒と中途で入られた方の比率も非常にバランスが良いチームです。
多種多様な案件を扱っていて、ご自身が心からやってみたいと思える何か1つがあれば、きっと活躍していける場所だと思います。
*1 「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(経済産業省、2022年9月)」
https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220913003/20220913003.html
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料(経済産業省、2023年4月)」
https://www.meti.go.jp/press/2023/04/20230404002/20230404002.html