監査法人の仕事内容<監査業務編>

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監査法人は、公認会計士が監査業務を組織的に行うために設立された法人を指します。多くの公認会計士が監査法人に所属して業務に携わっています。

監査法人における公認会計士の独占業務が「監査業務」です。ほとんどの場合、公認会計士試験の合格者は監査法人に入社し、公認会計士として最初に監査業務に従事します。

今回は大手監査法人でマネージャーとして活躍され、事業会社に転職後は監査法人の監査を受ける立場に転身された公認会計士の方に、監査法人の監査業務についてお話をうかがいました。

本記事では、うかがった内容を基に、監査法人の仕事のうち、特に監査業務について解説します。

【目次】

  1. 監査業務の概要
  2. 監査業務の必要性
  3. 監査業務の3フェーズ
  4. 最後に

監査業務の概要

そもそも公認会計士は、監査法人でどのような業務に携わっているのでしょうか。

公認会計士が行う業務には以下の3つがあります。

・監査業務
・コンサルティング業務
・税務業務

中でもメイン業務とされるのが「監査業務」。

公認会計士法で「公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。」と最初の業務として規定されているとおり、公認会計士の仕事と言えば「監査業務」です。

ただ一口に「監査業務」と言っても、さまざまな種類があります。

株式会社だけではなく、合同会社・合資会社・合名会社・労働組合、さらに学校法人・公益法人・財団法人等の法人も含む、あらゆる組織が監査の対象です。

公認会計士は監査業務を行う専門家として、監査対象となる組織について、独立した立場で監査を実施します。さらに監査意見を表明することで、その組織の財務諸表等の信頼性を担保するのです。これが監査業務です。

監査業務の必要性

そもそも監査業務にはどのような意義があり、社会にどう必要とされているのでしょうか。

監査の対象として最も一般的な「会社」を例に解説します。

会社には複数の利害関係者が存在しています。会社へ出資している株主、会社への投資を検討している投資家、会社に融資している金融機関等の債権者、会社と取引を行っている取引先等です。

多様な利害関係者がその会社に関して何か行動を起こす際、財務諸表を判断材料とします。
損益計算書から会社の収益性や成長性を判断する、貸借対照表から会社の安全性や健全性を検討する、キャッシュ・フロー計算書から資金繰り状況やキャッシュ残高を把握する等の使い方があります。
その検討の結果として、会社へ投資するか否か、会社に融資するか否か、会社と取引するか否かといった方針を決定するのです。

仮に財務諸表が正しくなかった場合、どのような事態が起こってしまうでしょうか。
想像に難くないと思いますが、誤った財務諸表を判断根拠とするため、利害関係者は誤った決定をして、不利益を被る危険性が生じます。
そのため、会社から独立した立場の公認会計士が監査業務を行うことにより、財務諸表の適正性を保証する必要性が出てくるのです。監査業務のおかげで、利害関係者は安心して行動方針を決定することが可能となります。

監査業務の3フェーズ

監査業務では段階を踏んで、各業務を実施していきます。一般的に、監査業務は以下3つのフェーズに分けることが可能です。

(1) 監査計画の策定
(2) 監査業務の実施
(3) 監査意見の表明

まずは監査計画の策定を行います。何かプロジェクトや事業等を始めるときは、事前に計画を立てることで、その後スムーズに進行していくメリットがあります。監査業務でもまずは監査業務全体の計画を策定し、計画に従って、その後の監査業務を遂行していく流れが一般的です。
監査計画の策定後は、監査業務の実施、監査意見の表明へと進んでいきますが、その過程では当初策定した監査計画を見直して、最終的に監査意見を表明することで一連の監査業務が終了します。
以下では、監査業務の各フェーズについて詳しく説明します。

(1) 監査計画の策定

会社の会計期間は通常1年間です。日本の会社で一般的な3月決算の会社を例にとると、4月1日~3月31日までの1年間が会計期間に該当します。監査業務はこの会計期間に対応して進めていきますが、会社の会計期間が終了した後の期末決算の監査で1年間の監査業務が終了します。
3月決算会社の場合には、4月以降に3月期の決算作業を実施して決算数値を確定。4月下旬から5月上旬にかけては決算発表を行い、6月に株主総会を開催します。
3月期末決算の監査は4月~6月に実施して、最終的には6月に会社が提出する有価証券報告書の監査を行い一段落となります。そのため、監査業務の期間としては、会社の会計期間から3か月ほど期間がスライドしており、通常7月~6月の1年間で1サイクルです。
6月に3月期末決算監査が終了し、その後7月になると新たなサイクルがスタートします。まずは翌会計期間における1年間の監査業務の計画を策定します。前年度の実績を踏まえて、当年度における変更点や新たに取り組む必要のある事項の有無を確認しながら、1年間の監査業務の範囲や詳細な手続を立案します。

(2) 監査業務の実施

1年間の監査計画が策定された後は、実行フェーズに移行します。上場会社の監査を行う場合には、7月に監査計画を策定した直後に第1四半期決算が到来するため、会社の第1四半期決算に関する四半期レビュー業務を7月~8月に実施します。
その後、8月~9月においては主に会社の内部統制に関する監査を実施し、内部統制が適切に整備され、運用されているか否か確認を行います。
10月に入ると、第2四半期決算(中間決算)があり、そのレビューもしくは監査業務を実施します。上場会社については、12月が第3四半期決算となるため、年が明けた翌1月には、第3四半期決算のレビュー業務があります。
各決算の監査・レビュー業務の合間に、継続して内部統制の監査業務も行いながら、最終的に3月期末の監査業務を迎えます。
期末監査においては、重要な監査手続である、
①実査
②立会
③確認
を実施。
なお、監査業務を行う公認会計士のことを「監査人」と呼びます。

①実査
実査とは、監査人が自ら資産の現物について、実地調査を行う監査手続です。現金、受取手形、有価証券、固定資産等、多くの資産が対象となります。対象資産の実在性を確認したり、陳腐化・老朽化を確認したりすることが目的で、公認会計士が直接的に現物を確認することから、強力な監査上の証拠を得ることが可能です。

②立会
立会とは、監査人が棚卸資産の保管場所を訪れて、会社の実地棚卸の方法や、棚卸資産の管理事務等の適正性を確認する監査手続です。現物資産の全てを監査人が実査するのが理想的ですが、現実的ではありません。そのため監査人は自ら実査せずに、会社が実施する棚卸に立ち会い、チェックを行います。

③確認
確認とは、監査人が取引先に書面等を送付して、会社を介さずに直接残高や取引内容を確認する監査手続です。対象は、預金等の銀行取引、売掛金等の売上債権、訴訟等の法律関係等多岐にわたります。監査人が取引先等に直接確認を行うことから、強力な監査上の証拠を得られます。

上記の実査、立会、確認といった監査手続等により、監査証拠を集めて監査意見を表明するための心証を積み上げていくのが、この監査業務の実施フェーズです。
このように見ると「監査法人は1年中忙しい」と思われるかもしれませんが、そうではありません。3月決算会社を担当している場合は、1年の中でも7月~9月は閑散期であるため、長期休暇をとる人たちも多くいます。リフレッシュして、また次年度の監査に進んでいく英気を養うことも重要です。

(3) 監査意見の表明

当初策定した監査計画に従って、監査業務を実施します。監査業務の実施を進めていくと、会社の財務諸表が適正であるか否かについての監査意見を表明するのに必要な心証が徐々に得られていき、意見形成のための最終段階を迎えます。
このフェーズでは、監査業務の実施により積み上げてきた監査証拠をもとに、監査報告書を最終的に提出することで、監査意見を表明します。

監査意見には以下の4種類があります。

①無限定適正意見
監査人は、会社が作成した財務諸表が、会計基準に準拠して会社の財政状態や経営成績、キャッシュ・フローの状況を「全ての重要な点において適正に表示していると認められる」と判断した場合は、この無限定適正意見を表明します。

②限定付適正意見
監査人は、会社の会計方針の選択及びその適用方法、財務諸表の表示方法に関して「不適切なものが一部あるが、財務諸表全体として虚偽表示に該当するほど重要ではない」と判断した場合は、この限定付適正意見を表明します。

③不適正意見
監査人は、会社の会計方針の選択及びその適用方法、財務諸表の表示方法に関して「不適切なものがあり、その影響が財務諸表全体として虚偽表示に該当すると認定するほどに重要である」と判断した場合には、財務諸表が不適正である旨の意見を表明します。

④意見不表明
監査人は、重要な監査手続を実施できず、財務諸表全体への意見表明のための基礎を得られなかった場合は、監査意見と別に区分を設けて、財務諸表に対する意見を表明しない旨及びその理由を監査報告書に記載します。

参照:JICPA-日本公認会計士協会「監査意見の種類」

監査業務の集大成として、上記の監査意見を表明することにより、1年間の監査業務が終了します。
さらに、監査業務を振り返り、改善すべき事項等を整理して、次期の監査計画を策定するという流れが繰り返されていきます。

最後に

本記事では、監査法人の仕事のうち、監査業務について紹介しました。

監査計画の策定から監査業務の実施、監査意見の表明と、そのプロセスは体系化されており、徐々に段階を踏んで進めていきます。監査業務全体としては、大きなPDCAサイクルを回して、それを繰り返していくイメージです。
お話をうかがった公認会計士の方曰く、
「監査業務は、会社を取り巻く利害関係者を保護する役割を果たしています。その社会的意義から、監査業務は非常にやりがいのある仕事です」
とのことでした。

この記事が監査法人へのキャリアを考える方の参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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大手監査法人の「監査業務」「非監査業務」の違い【業務内容・立ち位置】
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監査法人の仕事内容<非監査業務編>
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