ブティック型(独立系)投資銀行とは?その特徴と転職後”できること・できないこと”

投資銀行というと外資系の投資銀行や日系の大手投資銀行のイメージが強い方が多いようです。一方、日本には中規模〜小規模の投資銀行も多数存在し、中でも一部の投資銀行ビジネスに特化した投資銀行を「ブティック(独立)型投資銀行」と呼ぶことが多いです。

ブティック型は同じ「投資銀行」でも大手とは異なる特徴を多く持っています。今回はブティック型投資銀行に焦点を当て、ほかの中堅・大手の投資銀行との特徴の違いやできること・できないことを解説します。

【目次】

  1. ブティック型投資銀行とは、「金融機関の傘下ではない」「分野特化型」などが共通点として挙げられる
  2. 特徴①金融機関の傘下ではないためオーダーメイドの特色ある案件が多い
  3. 特徴②特定の投資銀行ビジネスに強みを持ち、私財を投じるため財務改善・事業再生などフレキシブルな動き方ができる
  4. 特徴③組織の規模が小さいため、一人の裁量は広く、様々なビジネスに関わるチャンスがある
  5. ブティック型投資銀行だからこそできること
  6. ブティック型投資銀行ではやりにくいこと
  7. おまけ:主なブティック型投資銀行

ブティック型投資銀行とは、「金融機関の傘下ではない」「分野特化型」などが共通点として挙げられる

まず初めに、ブティック型投資銀行という分類は、オフィシャルに定められたものではないため、どこをブティック型投資銀行と考えるかは人によって異なります。

概ね次のような特徴を持つ投資銀行とブティック型を表すケースが多いです。
  ü 金融機関の傘下ではない(独立系という言い方をする場合も)
  ü 特定の投資銀行ビジネスに特化している
  ü 概ね組織は小さい(10〜数百人程度)

それぞれの特徴について簡単に説明していきます。

特徴①金融機関の傘下ではないためオーダーメイドの特色ある案件が多い

日本においては、メジャーな投資銀行は基本的に金融グループの一角に入っています。日系であれば、証券会社の一部門として存在しているケースが多いです。中には、その証券会社も銀行系のフィナンシャルグループに属している場合もあります。

また、外資系投資銀行についても、日本では多くの場合、外資系証券会社の部門として存在していますし、グローバルに見ると銀行・証券・資産運用などさまざまなサービスを提供する金融グループの一角となっているのが一般的です。(日本では銀行・証券ビジネスを別会社でおこなうというルールがあるため、「外資系証券会社」の部門として進出しているケースが多いのです)

ブティック系はこれらとは異なり、一般的に金融機関の傘下にはなっておらず、そのため「金融機関から独立している」という意味で「独立系」と呼ばれることもあるのです。

金融機関、特に銀行や証券ビジネスを持っていないため、大規模なディールや株・債券などの市場取引など大規模なビジネスは難しい一方で、オーダーメイドの特色ある投資銀行ビジネスに強みを持っている傾向にあります。

特徴②特定の投資銀行ビジネスに強みを持ち、私財を投じるため財務改善・事業再生などフレキシブルな動き方ができる

ブティック系投資銀行のもう一つの特徴が、狭い範囲の投資銀行ビジネスに特化している点。組織が小さく、また機関投資家などとの頻繁な市場取引が困難な分、特定の投資銀行ビジネスに特化している傾向にあります。

一見制約が大きいように見えますが、市場取引のためのシステム投資や人的リソースに大きなコストを割かなくて良い分、大手投資銀行よりスモールなディールにも対応可能です。

なお、数ある投資銀行ビジネスの中で、特に有価証券の売買機能がなくても多くのプロセスについてサポートが可能なM&Aアドバイザリーを主軸とするブティック系投資銀行が、現代では多くなっています。

M&Aに特化することで、売買相手の選定・交渉、企業価値評価、デューデリジェンスや契約書面の締結などM&Aにかかる多岐にわたるプロセスに高い専門性を発揮しているのです。

一方で、私募を中心とした証券発行や、自社もしくはグループで運営しているファンドなどを通じたファイナンスにより、クライアントの資金調達や財務改善・事業再生などのサポートをおこなう投資銀行もあります。

大手投資銀行はビジネスリスクや規制の観点から自身の資産を活用して投資をおこなうビジネスに積極的ではなくなってきているため、こうしたビジネスモデルもブティック系投資銀行の強みになり得るのです。

特徴③組織の規模が小さいため、一人の裁量は広く、様々なビジネスに関わるチャンスがある

組織の規模は基本的には小さく、10人程度から数百名程度にとどまるケースが一般的。平均的にはほかの投資銀行よりも規模が少ない傾向にあると言えるでしょう。

組織の大きさは投資銀行によってさまざまですが、日系大手の場合は、投資銀行部門だけに絞っても千人〜数千人程度、外資系大手の場合は数百人〜千人程度です。

ただし、知名度の高い投資銀行でも、外資系で日本でのビジネス規模においては数百人程度の組織の場合もあるため、規模の大きいブティック型と中堅クラスの外資系投資銀行となると、組織のサイズはさほど変わりません。

それでも、大手投資銀行と比較すると、規模が小さい分部署の区分けもシンプルな傾向にあるため、一人でさまざまなビジネスに携わるチャンスがあるといえるでしょう。

ブティック型投資銀行だからこそできること

続いてはブティック型投資銀行とほかの投資銀行で働く場合を比較した際に、ブティック型投資銀行だからこそできることを2つ紹介します。

小規模のM&Aディール

投資銀行は大規模化すればするほど、取り扱うディールの規模も大きくなる傾向にあります。投資銀行ビジネスの多くは案件規模に応じた手数料が収益源となるため、大きな組織に見合う収益を得るためには、必然的に大型ディールを取り扱う必要があるためです。

一方で、中小企業でも豊富なM&Aのニーズがあります。こうした小規模のM&Aは多くのブティック型投資銀行にとってメインビジネスとなります。

少数の組織で案件に対応するため、大企業でM&Aをおこなうよりも多くのプロセスを経験することになります。大変ではありますが、その分やりがいを得やすく、自身のM&Aに関する専門性を深めることも可能です。

自己の資本も活用した中小企業のファイナンスディール

リーマンショック以降、大手の投資銀行は自身の資産を投じた投資銀行ビジネスを積極的に行わない傾向にあります。

米国では自らの資金を投じたファイナンスは、ディールの形態によってはボルカールールなどの規制に抵触する恐れがあります。日系の投資銀行についても、米国でもビジネス展開をしていれば、この規制は他人事ではありません。

また米国でのビジネス展開をしていなくとも、このような規制の流れを背景に、自己の資産を投じたファイナンスによる投資銀行ビジネスは、リスクが高いものとして敬遠されるようになってきています。

一方で、ブティック型投資銀行では、現在でもオーダーメイドの私募債発行やファンド投資により自身の資金と投資家の資金を合わせてクライアントにファイナンスする手法をとっている企業もあります。

このような手法も交えながら、公募でのファイナンスをおこなうことができない中小企業などに対して、それぞれのクライアントの状況に即した柔軟なディールの実行が可能です。

ブティック型投資銀行ではやりにくいこと

ブティック型投資銀行の規模の小ささや、さまざまなリソース面の制約から、逆にほかの投資銀行のようには取り扱えないビジネスもあります。

機関投資家向けのトレーディングビジネス

機関投資家向けのトレーディングビジネスは数ある投資銀行がおこなうビジネスの中でも特にブティック型投資銀行と親和性が低いビジネスと言えます。

以下の3点がそのように考えられる理由です。
①高速売買やリアルタイムのプライシングのために多額なシステム投資が必要
②各投資家に対応するためのセールス人員が必要(規模を縮小すれば人員も少なく済むが、取引量が勝負になるビジネスなので、収益性を高めるためには、人員が必要)
③多額の有価証券を頻繁に売買するための顧客基盤が必要

いずれも少人数・小規模の組織であるブティック型投資銀行には不向きな要素です。実際にブティック型で市場トレーディングを収益源としている企業はあまりありません。

例えば、有価証券のトレーダー・ディーラー・セールスといった仕事を目指すなら、ブティック型投資銀行は不向きと言えるでしょうか。

大手企業などの公募ファイナンスビジネス

大手企業になると、ファイナンスの主軸は銀行融資と公募の債券や株式など有価証券が中心になります。特に資金規模が大きくなる公募債券発行の場合は総額数百億円〜兆円単位の規模のディールになることも珍しくありません。

こうしたディールで有価証券を引き受けるためには、証券をスムーズに投資家に販売しなければならないため、大きな顧客基盤が必要です。ブティック型投資銀行では、そのような幅広い顧客基盤を維持することは困難でしょうか。

有名企業のファイナンスディールに携わりたい場合にも、やはり大手の投資銀行を目指した方がいいと考えられます。

おまけ:主なブティック型投資銀行

ブティック型投資銀行としてしばしば例示されるのは次のような企業です。

  ü GCAサヴィアン
  ü レコフ
  ü 日本M&Aセンター
  ü リサパートナーズ
  ü フロンティアマネジメント*
  ü 経営供創基盤*
  ü KPMG FAS *

以上は実際に「ブティック型投資銀行」としてよくカテゴライズされる企業ですが、最後の3社(*がついている企業)はどちらかというとコンサルティングファームに分類される企業であるため、コンサルティングファームについて詳しい方の中には違和感を覚える方も多いでしょうか。

実は、これらの3社のビジネスのうち、財務関連・M&A関連のプロジェクトに関しては、ブティック系投資銀行がおこなうビジネスに近いことから、ブティック系投資銀行の一種とみなされるケースがあります。

以上のように、M&Aアドバイザーに強みを持つハンズオン型コンサルファームや、FAS系コンサルファームと、ブティック型投資銀行の垣根が曖昧になっているのが実情です。

また、上記に挙げたブティック型投資銀行の内、リサ・パートナーズ以外はM&Aをメインビジネスとしています。このように、ブティック型投資銀行には、M&Aアドバイザリーに特化している企業が多く存在します。

どの企業がブティック型投資銀行に含まれるかを精査することはあまり重要ではなく、M&Aアドバイザリービジネスについてはブティック型投資銀行・一部のコンサルファームのどちらでも携わる機会があると認識しておくと良いでしょうか。

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「投資銀行」とは何か?わかりやすく解説【種類から存在意義まで】
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投資銀行における部門毎の違い【業務内容~スキル~働き方まで】
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LBOモデル作成ステップをエクセルで解説【PEファンド/投資銀行への転職希望者向け】
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ブティック型投資銀行は、今回紹介したように小規模の組織でM&Aを中心に特定の投資銀行ビジネスに特化したビジネスをおこなっていることが大半です。

小規模である分、少ない人員でディール運営をしていく必要があるため、細かく組織の機能が分かれている大手投資銀行よりも多くの役割を担うことになります。そのため特定のビジネス領域においては深い専門性を身につけるチャンスもあります。

M&Aアドバイザリーなどを中心に、投資銀行でおこないたいビジネスが明確で、その領域での専門性を徹底的に磨きたい場合には、ブティック系投資銀行への転職にチャレンジすることをおすすめします。


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