日本のコンサルティング業界において、外資系ファームが隆盛を極める中で、創業以来一貫して「日本発、アジア発」の視点と独立性を貫く戦略コンサルティングファームがあります。それが、株式会社コーポレイト ディレクション(Corporate Directions, Inc.、以下CDI)です。
CDIは1986年の設立以来、日本企業の経営課題に深く切り込み、単なる「提言」に終わらない「実行支援」に強みを持つことで、数多くの企業の変革を支えてきました。特に、外資系ファームのロジックを日本の経営風土に根付かせようとする「新・和魂洋才」を掲げた同社のコンサルティングスタイルは、日本のビジネス界において特異で重要な存在感を放っています。
今回はCDIの会社概要、ビジネスモデルの独自性、創業からの軌跡、現経営層の知見、具体的なサービス事例、そして市場の評価を示す年収水準に至るまで、その全貌を解説します。
コーポレイト ディレクションの特徴:会社概要~社員数~ビジネスモデル
会社概要と社員数:少数精鋭の独立系ファーム
株式会社コーポレイト ディレクションは、1986年1月に設立されました。略称はCDIで、日本を代表する独立系の戦略コンサルティングファームとして知られ、本社は東京都品川区の天王洲ファーストタワーに所在します。
特筆すべきはその企業規模です。2023年5月時点でのグループ全体の社員数は約80名と、大手総合コンサルティングファームや外資系戦略ファームと比較して、非常に少数精鋭の体制を維持しています。この規模感こそが、CDIの独立性と、コンサルタント一人ひとりの高い専門性を担保する基盤なのでしょう。
ビジネスの特徴:独立性、実行支援、そしてアジア展開
CDIのビジネスモデルと特徴は、主に以下の3点に集約されます。
1. 独立系コンサルティングファームとしての柔軟性と顧客利益の追求
CDIは、外部資本を持たない「独立系」であることを最大の強みとしています。これにより、特定の企業グループや投資家の意向に左右されることなく、クライアントにとって本当に最善の利益となるソリューションを、柔軟かつフラットな視点で提供することが可能です。既存の解決策に依存せず、クライアント企業の固有の状況に基づきカスタマイズされたアプローチが特徴と言えます。
2. 戦略の「創造」と「実行」を両立する地に足のついたコンサルティング
CDIは、戦略提言だけで終わるのではなく、その実行支援に非常に強いコミットメントを持っています。クライアントの現場に深く入り込み、経営改革や新規事業の立ち上げをサポートする「地に足のついた創造的活動」をミッションとしています。創業の理念である「新・和魂洋才」に基づき、欧米思考の論理を日本の経営現場の現実に即して調和させることを目指しているためです。
3. アジア市場における積極的な展開
日本企業のグローバル化支援、特にアジア市場での展開支援に注力しており、上海、ベトナム、タイ、シンガポールなどに拠点を設立しています。この展開は、「日本をベースとしたコンサルティングファーム」から「アジアをベースとしたコンサルティングファーム」への進化を目指すという、同社の長期的な戦略に基づいています。地域密着型のコンサルティングにより、現地のビジネス環境に適応した戦略を提供できる体制を強化している点も大きな強みです。
コーポレイト ディレクションの沿革
CDIの歴史は、日本の戦略コンサルティング業界の夜明けを象徴しています。その設立の背景には、日本の経営進化に対する強い問題意識と志がありました。
1986年:外資系「脱藩組」による創業
CDIは1986年1月、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に所属していたコンサルタント10名がスピンアウトする形で設立されました。
設立当時のスローガンは「新・和魂洋才」です。これは、欧米発祥の科学的な経営アプローチ、すなわちFact & Logic(事実に基づく分析と論理的思考)という革新的な思考様式を認めつつ、日本の経営現場の現実に即して適用し、新しい調和を「創造」することを目指すものでした。
2000年代:専門領域の拡大とグローバル展開の開始
CDIは、戦略策定支援を主軸としながらも、時代と共にコンサルティング領域を拡張していきます。
- 2005年: 医療経営コンサルティングを手がけるCDIメディカルを設立し、専門領域を拡大。
- 2006年: システム・ITコンサルティングを提供するCDIソリューションズ(現アクティベーションストラテジー)を設立し、実行支援体制を強化。
- 2008年以降: グローバル展開を本格化し、CDI-China(上海)、CDI-Vietnam(ホーチミン)、CDI-Thailand(バンコク)、CDI Asia-Pacific(シンガポール)などを相次いで設立。特にアジア市場において、日本企業だけでなく現地企業の支援にも乗り出し、コンサルティングファームとしての進化を遂げてきました。
2010年代以降:事業創造を軸としたアライアンス戦略
近年、CDIは事業会社との合弁会社設立や共同出資を通じて、戦略の提言だけでなく「事業創造」そのものを共同で推進するモデルを確立しています。
- 2019年: オークネットと共同出資で戦略系コンサルティングファーム「ストラテジックインサイト」を設立。
- 2021年: あかつき本社と合弁会社「Licht(リヒト)」において事業創造の共同推進を開始。
- 2022年: 千趣会と合弁会社「Senshukai Make Co-」を設立し、千趣会グループの変革を推進。
これらの動きは、CDIが従来のコンサルティングの枠を超え、クライアントとリスク・リターンを共有しながら、事業の立ち上げから成長までを担う「真のパートナー」へと進化していることを示しています。
コーポレイト ディレクションの創立者・現CEOの経歴
CDIは創業メンバーから現経営層に至るまで、実務経験と高い知見を併せ持つプロフェッショナルで構成されています。
ファウンダー(創立者):冨山 和彦氏とその他のメンバー
CDIの設立には、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身のコンサルタント10名が参画しました。特に著名なのは、後に代表取締役社長を務め、日本の産業再生に大きな足跡を残した冨山 和彦氏です。
冨山氏は東京大学法学部を卒業後、司法試験に合格し、スタンフォード大学でMBAを取得。BCGを経て1986年のCDI設立に参画し、18年間在籍しました。その後、2003年に株式会社産業再生機構の代表取締役専務 業務執行最高責任者(COO)に就任し、数多くの企業の再建を主導しました。2007年には株式会社経営共創基盤(IGPI)を設立し、代表取締役に就任しています。
現代表取締役:小川 達大氏の経歴
現職の代表取締役は小川 達大氏です。小川氏は東京大学法学部を卒業し、現在は代表取締役 Group Board Memberであるとともに、CDI Asia Business Unit Directorを兼任しています。
同氏は、日本の経営戦略だけでなく、特にCDIの重要な特徴である「アジア展開」を牽引する立場にあります。大学院大学至善館の特任准教授や、経済同友会アジア委員会副委員長も務めるなど、アカデミアや経済界においてもその知見を広く活用中です。
まさにCDIが強みとする「グローバルかつ実行支援型のプロジェクト」に深く関与し、リードできる人材でしょう。
コーポレイト ディレクションのサービス事例
CDIのサービスは、特定の産業やテーマに偏ることなく、クライアントのニーズに応じた「創造的な解決策」を提供することに特徴があります。その案件は、企業の成長から再生、新規事業の立ち上げ、そしてグローバル化支援まで多岐にわたるのが強みです。
1. 成長戦略・新規事業の立案と実行支援
戦略コンサルティングの王道ともいえる分野において、CDIは単なるレポート作成ではなく、事業の立ち上げそのものを支援しています。
- サービス事例:
- 大手外食チェーンの再成長戦略の策定、商品開発、出店戦略、業態開発の実行支援、店舗オペレーション改革の推進
- アミューズメント施設やリゾート施設事業者などの事業可能性の調査と事業企画の立案
- 教育企業の営業戦略立案と実行支援
特に注目すべきは、戦略の立案だけでなく「実行支援」「オペレーション改革の推進」といった、現場に深くコミットする事例が多く見られる点です。これはCDIの「実行力」へのこだわりを如実に示しています。
2. グローバル戦略・海外展開支援
アジアを主軸としたグローバル戦略支援は、CDIの重要な柱の一つです。日本企業のアジア進出を、戦略立案からM&A後のPMI(Post Merger Integration:買収後統合)まで一気通貫でサポートしています。
- サービス事例(アジア展開):
- マレーシア、インドネシア、タイの輸送機器メーカーの新規事業開発支援。
- 飲料メーカーの現地企業買収後のPMI支援。
- 高級消費財メーカーのタイの現地法人ターンアラウンド支援。
- ベトナムにおける物流業者の国営企業との提携支援。
現地での複雑なJV交渉(ジョイントベンチャー)や提携、買収後の統合プロセスにおいて、CDIのアジアでの知見とネットワークが最大限に活用されています。
コーポレイト ディレクションの年収
コーポレイト ディレクションの年収は、900万~1,000万円と高水準です。CDIは外資系ファームや一部の日系ファームと比較して、平均提示年収は控えめに見える可能性があります。しかし、CDIの特徴はインセンティブや評価制度にあると考えられます。独立系・少数精鋭のCDIでは、個々のコンサルタントのパフォーマンスとクライアントへの貢献度がダイレクトに評価に繋がりやすく、実力と経験に応じた評価が期待できるでしょう。
参考:OpenWork
まとめ考察:コーポレイト ディレクションが提供する「本質的な創造的価値」
CDIは、日系戦略コンサルティングファームのパイオニアとして、その独立性と実行力によって、日本企業の変革を支え続けてきました。
1. 「新・和魂洋才」と「実行」への強いコミットメント
CDIの最大の特徴は、創業以来の理念である「新・和魂洋才」に集約できます。外資系戦略ファームが持ち込んだ論理的で科学的な経営アプローチを、日本固有の経営風土や現場のリアリティに適用し、新しい調和を生み出すこと。
この理念は、「提言」だけで終わらず、クライアントの現場に入り込み、戦略の「実行」と「実現」まで深くコミットするというビジネスモデルに結実しています。単なる課題解決ではなく、クライアントと共に事業を創造し、変革を成し遂げるという「創造的活動」こそが、CDIが市場で評価される本質的な価値なのです。
2. アジアを舞台にした日系戦略ファームの進化形
早くからアジア市場に目を向け、現地拠点を設立してきたことも、CDIの戦略的先見性を示しています。日本企業がアジアで戦うための戦略策定はもちろん、現地企業との提携や事業再編にまで深く関わることで、CDIは真の意味で「アジアをベースとしたコンサルティングファーム」へと進化しつつあります。グローバルな知見とローカルな実行力を兼ね備えたその特徴は、今後の日本企業のアジア戦略において、ますます重要な役割を果たすでしょう。
3. キャリアパスとしての魅力:少数精鋭の「工房」
社員数約80名の少数精鋭体制は、CDIを「個の力が試される工房」にしています。一人ひとりのコンサルタントが担う責任と裁量が大きく、大規模ファームでは経験できない、経営の最前線での濃密な実務経験を積むことが可能です。
年収水準は外資系トップファームの最高水準には及ばないかもしれませんが、それはCDIが上場を目指さず、資本の論理に縛られない独立性を重んじていることの裏返しとも言えます。真にクライアントの課題解決に集中し、知的な探究と創造的な活動に価値を見出すプロフェッショナルにとって、CDIは非常に魅力的なキャリアパスを提供していると言えるでしょう。
CDIは、これからも日系コンサルティングファームの雄として、日本の、そしてアジアのビジネス界における「創造的破壊」と「経営進化」を牽引していくに違いありません。
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今回は、コーポレイト ディレクションの特徴について解説しました。
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