大手企業とベンチャーでの「経営企画」の違い<業務・スキル>

経営企画の業務では、企業の戦略方針や、規模感、業界、トップの考え方などにおいて様々な特徴が見られます。

トップマネジメントに近い業務として大企業やベンチャーを問わず企業難易度が高く、似たような傾向にあると思われがちですが、役割や動き方、求められるアウトプットなどを含めて全く異なる場合もあります。

さらに、経営企画業務に携わるためには、コンサルティング会社出身、もしくはMBA卒のバックボーンが必要であると思われがちですが、そのような経験は絶対に必要なものではありません。代わりにセールスやマーケティングなどの事業会社における現場経験や、ビジネスに必要不可欠なコミュニケーション能力が非常に重要です。

大手企業は経営企画という部門が本部化されており、本部内の各セクションでそれぞれ細かな機能に分かれているケースもあります。

一方ベンチャー企業においては、人材が限られることもあり、最低限のリソースが割り当てられる編成や、中にはメンバーが兼務になっている組織も見られます。

それぞれの企業のタイプに求められる業務について、想定されるメリットやデメリットも交えながら紹介します。

【目次】

  1. 大手企業の主な経営企画業務
  2. ベンチャー企業の経営企画業務
  3. 双方に共通する業務

大手企業の主な経営企画業務

大手企業においては、組織の構成として、部署や連結子会社も事業が多岐にわたるため、それらを管理、統制するための業務も多くなります。

また、人材リソースも比較的豊富であることから、特定の分野に専門特化した人材を配置することもできます。

会社としてどのような役割・業務遂行力が求められるかというと、おおむね次のようなタイプに分けることが可能です。

ゼネラルスタッフとしての業務

事業部門や管理部門の組織全体の課題を把握し、経営者や経営陣の参謀役として動くことが期待されます。

従って、取締役会やその他設置される役員会(常務会など)に近く、それぞれの課題に対して即動けるような配置や指示命令系統となっています。

戦略スタッフとして理想的な位置づけで、経営戦略的な課題の解決ができる反面、トップダウン思考であるため現場で起きている課題を見失いがちになることもあります。

また具体的な業務として、全社課題抽出や解決・管理、場合によっては次に記載する管理スタッフとしての業務や私的スタッフとしての業務を求められることもあるでしょう。

管理スタッフとしての業務

取締役会の運営スタッフとして、または管理本部内における経営スタッフとして、経営の進捗管理に重きを置く位置づけです。

中期経営計画の策定を行う場合もありますが、作成は外部のコンサルタントに移譲し、でき上がった後の中期経営計画の進捗管理が中心となる場合もあります。
また年間予算策定と、予算実績管理業務が中心となっているケースが多くなりやすいです。

取締役会のスタッフ業務に重きを置く場合は資料のとりまとめや各取締役と関係各所に対する共有事項など、事務局としての調整、確認業務が多くなります。

予算管理が中心となる場合は、予算案の吸い上げや修正案の提示依頼、集計作業など、中央官庁的な動きが求められます。

事務局としての動きや中央官庁的な動き双方においても、連結子会社を含めた全社の取りまとめが業務の中心となります。ただし、コミュニケーション能力には長けている人も、ゼネラルスタッフのような全社視点における課題解決に向けての動きが乏しくなる傾向があるのが特徴です。

私的スタッフとしての業務

会長や社長などの要請に応じて動く特務機関としてのスタッフであり、主な業務は特命事項が多いですが、社長室や、会長・社長秘書の動きとも重なるのが実態です。

具体的には、会長や社長と対外的な顧客における協議事項の調整や、伝達事項の吸い上げと申し送りなど、会長、社長と、他の取締役や部門長とのハブ的な存在になることもあります。

会長や社長の考えを把握し柔軟かつ迅速に動けるスタッフが多い反面、イエスマンとなり建設的な意見を言うことができない、あるいは逆に他部門の関係者に対しては会長や社長の意向として厳しく反対意見を述べるタイプが多くなりがちです。

さらに、会長や社長のサポートを長年経験することから、彼らの取引先やスタッフとのパイプができることもあります。反面、指示待ち傾向が強いため、新しい発想に乏しくなり、会長や社長が退任した後の社内での立ち位置を見つけることが難しく、後任の会長や社長との相性が合わなかった場合は、異動を余儀なくされるケースもあります。

ベンチャー企業の経営企画には該当し大企業には該当しない可能性がある業務

内部監査業務やIR業務に携わるチームは、大手企業の場合、経営企画に属さない独立した部門や管理部門内に設置されることがあります。

内部監査は、社長直轄組織として設置されることが一般的で、レポートラインも社長となります。

IR部門については、管理部門にあったり、財務経理部に近い所にあったり、場合によっては広報IRとして、対外的な窓口として扱われることもあったりと企業の戦略・方針により考えられるパターンが様々です。

ベンチャー企業の経営企画業務

企業それぞれの考え方にもよりますが、ベンチャー企業の経営企画業務は、組織がコンパクトであることから、経営に関するあらゆる業務を実行することが求められます。

またベンチャー企業の経営企画は先程の大手企業の区分で見ると、ほぼゼネラルスタッフ型が多いとも言えます。

逆にこのタイプでないと、ベンチャーで必要とされるマルチタスクが回せないためです。

ただし、ベンチャー企業でも上場、未上場で異なる点も見られるため、以下からはその点について分けてみます。

上場ベンチャー企業の業務

既に上場しているベンチャー企業の場合は、業務が比較的多岐にわたる傾向があります。大企業に求められるような業務とともに、未上場ベンチャー企業として必要であった業務も引き続き求められるためです。

また上場企業といっても、ベンチャーの場合は組織が少数精鋭体制であるため、大企業では分かれている予算実績管理のような計数管理業務や、経理で決算数値が閉まったあとの決算開示業務や投資家対応、更には取締役会や全社会議体の運営、事業進捗管理、社内制度設計なども求められる場合があります。

あらゆる経営課題に対応する経営スタッフの育成ができる反面、スタッフの専門性や強みが構築できない可能性、またスタッフの高負荷によってマネージャーによるリソース管理がより重要となる側面があります。

未上場ベンチャー企業の業務

未上場ベンチャー企業の場合、経営企画部門に求められる役割は、とりわけ将来的な上場を検討している会社においては、上場準備に関する業務が大半を占めます。

具体的には、主幹事証券や証券取引所審査の窓口や、そこから寄せられる質疑応答の対応、さらには社内の内部管理体制整備として、規程類や受発注書類などの各種ドキュメントの整備や運用が求められます。

また経営企画部門に置く場合として考えられるのが、内部監査や内部統制といった、全社的なチェック機能を果たす部門です。これはとりわけ上場準備の段階で重要な役割を果たします。

特に経営企画部門で上場準備に携わり、晴れて上場が達成できた場合には、その準備経験や達成経験は自分自身のキャリアの中でも誇れる、非常に充実したものとなります。

上場準備業務を通じて、期日を守る事務管理能力や難易度の高い質疑に応答する問題解決能力が高くなります。ただし上場準備に関する専門分野の知識・スキルが身に付く結果、上場達成後のキャリアの一段落とともに離職者が出やすい点に注意しましょう。

一方、上場を考えていないベンチャー企業においては、上場準備の概念が発生しないパターンもあるため、新規事業の開発や社内制度の設計、全社課題の対応など、会社の成長に必要な業務が中心となります。

双方に共通する業務

大企業とベンチャー企業の経営企画業務について、それぞれ見てきましたが、二つの企業特性において共通する業務も多くあります。

共通する業務として、中期経営計画と特命事項に関する業務を紹介します。

中期経営計画の立案業務

将来的な成長のためには中期経営計画の立案が重要です。大企業や上場ベンチャー企業は投資家に対して、今後どのように成長していくのかを示していく必要があるため、この作業は非常に重要な位置づけとなります。

中期経営計画を作成して、IRとして株主に開示して終了ではなく、全社員に示したうえで、社員に中期経営計画達成のためのビジョンを浸透させ、目標に向かって一丸となって取り組んでいく一体感の醸成も求められます。

また大企業になればなるほど、トップ層から末端の若手社員層までの人数とともに階層も多くなりますが、これらの層に浸透させていく手段を検討することも、経営企画として重要な業務です。

経営トップの特命事項対応業務

特命事項対応も経営企画ならではの業務です。

特命事項のM&Aや事業譲渡、リストラクチャリングの計画や実行は、表立ってできるものではありません。日頃実行する定常業務ではなく、トップから直接指示が出て対応するものとなります。

場合によっては、社長と経営企画の管轄役員、更に一部の社員のみが知る特命プロジェクトといえるものも存在します。

大企業になればなるほどその規模も大きく、また自社や業界に与えるインパクトも非常に大きい点から、一部の関係者以外には知らせず秘密裏に進めていく必要があります。

このような業務は、経営と直結する経営企画の醍醐味でもあり、非常に難易度が高いものもありますが、やり切った後は充実感があり、成功した場合の評価も高くなります。そして、自分自身のキャリアにとって非常に大きな経験となるのです。

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>経営企画へのキャリアに関する記事

【実話】経営企画に転職した元戦略コンサルにありがちな失敗とその対策
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/stconsulk

なぜベンチャーの経営層にはコンサル出身者がいることが多いのか?
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/venturefromfirm

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大手企業とベンチャー企業における経営企画業務の違いを、それぞれの企業の特性も含めて見てきました。

大手企業は専門特化されている役割を果たす必要がある一方で、ベンチャー企業は経営スタッフとしてあらゆる経営課題に柔軟に対応することが求められます。

将来的なキャリアを描くうえで、経営企画業務一つ取っても大手企業とベンチャー企業では大きく方向性が変わってきます。

自分自身のスキルを磨きつつキャリアプランを明確化しながら、どれが自分の適性に合っているかを、十分検討することが大切です。
経営企画の転職についてお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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