DX人材を社内育成する際の”必要条件”や”手順”を解説

DX推進のために必須となるのが人材ですが、DX人材の確保は難しく、希少なものとなっている現状があります。このような背景のもと、多くの企業では、DX人材の確保策として教育・研修などによる人材育成策を進めていますが、DX人材を育成するためにはどのような条件が必要なのでしょうか。

今回の記事では、DX人材を育成するために必要となる条件や、育成のためのステップについて、具体例などを交えつつ解説します。

【目次】

  1. DX人材の重要性とは
  2. DX人材を確保するための2つの手段
  3. DX人材を育成するために
  4. DX人材の育成ステップ

DX人材の重要性とは

DX人材の重要性が叫ばれる昨今ですが、DX人材はなぜ重要と言われているのでしょうか。ここでは、そもそものDX人材の定義とDX人材の希少性について解説します。

DX人材の定義

DX人材の定義に一義的なものはありませんが、DX推進の旗手となっている経済産業省では、2018年に発表した「DXガイドライン」※1において、DX推進のために以下のようなDX人材が必要であると定義しています。

・DX推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
・各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取組をリードする人材、その実行を担っていく人材

ポイントとしては、大きくITサイドに位置するDX推進部門にてDXを担っていく人材と、ビジネスサイドに位置する事業部門にてDXを担っていく人材の2種類の人材が必要であるということです。DX推進においてはIT・ビジネスの両方の視点から取り組みが必要であるため、人材面においてもIT・ビジネス両方のポジションにてDXを推進する能力を持った人材が求められます。

DX人材の希少性

経済産業省は、DXに関する各種レポートでたびたびDX人材確保の重要性に触れている一方で、同時に確保の難しさも指摘しています。例えば、2020年に公表された「DXレポート2」※2では、以下のようにDX人材の必要性と希少性に触れています。

DXを進めるためには、各企業において社内のDX活動をけん引するDX人材の存在が不可欠である。
~~中略~~
こうした人材についてITスキルの点から見ると、我が国においては人材の流動性が低い上に、IT人材がIT企業に偏在しているため、現時点において、ユーザー企業がDXを実行するために必要な人材を自らの組織内に十分に確保できる状況にはなっていない。

DX推進においては各企業内にDX人材を確保する必要がありますが、上記引用でも示されているとおり長年日本企業ではITシステムを外注してきた経緯があり、IT分野の人材がユーザー企業に不足している現状があります。DX人材としてのベーススキルを持った人材がおらず、これが企業におけるDX推進の妨げとなっているのです。

※1経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html
※2経済産業省「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』」
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html

DX人材を確保するための2つの手段

このような状況を踏まえ、各企業ではDX人材の確保に躍起となっています。それでは、DX人材を確保する方法にはどのような手段があるのでしょうか。

外部から採用する

短期的にDX人材を確保する方法は、外部からの中途採用です。ITベンダーやIT系コンサルファームなどに所属している人材から採用する方法が考えられます。

外部からの採用は、育成コストが不要であり、即戦力として即座に活躍してもらえる可能性がありますが、一方でDX人材の希少性からそもそもの確保が難しいという問題もあります。DX人材を確保するためには、社内の給与規程の見直しも含めた待遇の確保や、ジョブ型の労働契約、もしくは副業人材なども含めた多様な手段・取り組みが必要となります。

内部で育成する

外部からの採用が限られたパイである以上、DX人材確保策の本筋は社内の人材を育成することとなります。内部での人材育成は即効薬としての効果は期待できませんが、長期的にみると自社への帰属意識の高いDX人材として活躍が期待できます。

DX推進のためには、スキル面だけではなく学び続けるマインドセットや周囲を巻き込んで企画を進めていくパワーが求められます。たとえ現時点でITやデジタルに関する知識が備わっていなかったとしても、ポテンシャルを持っている候補者を教育し、DX人材に育て上げていくことには十分な可能性があるといえるでしょう。

DX人材を育成するために

それでは、DX人材を社内で育成していくためにはどのような点がポイントとなるのでしょうか。以下では、候補者に求められる資質や人材育成のゴール、人材育成に必要となる環境について解説します。

育成候補者に求められる資質

DX人材として育成する候補者には、どのような資質が求められるのでしょうか。以下では3点の資質について紹介します。

意識の高さ:

上述のとおり、DX人材となるためにはスキル面だけではなく学習をし続けるマインドセットや障壁をものともせず行動できる意識面の観点も重要です。このようないわゆる「気質」の面は育成で成長させることが難しいため、DX人材の育成候補者を選出する際にはこれらの気質を持った人材を優先すべきといえるでしょう。

デジタル技術への興味関心:

また、たとえITやデジタル技術に関して現時点でスキルを持っていなかったとしても、興味関心を持っていることが大切です。自身の興味のない分野の学習は苦痛となり、学習効率も悪いものとなりますので、デジタル技術に興味関心がない人材を無理にDX人材に育て上げることは避けるべきといえるでしょう。

多様性:

DX人材として成長できる可能性の高いIT部門の人員のみを育成対象にすることも、案としてはあるかもしれません。しかしながら、後述するとおりDX推進のためにはビジネス・ITを問わず社内の関係部署と連携し、物事を進めていく必要があります。この際に大切なのが人材の多様性です。様々な部署や業界、関係者とつながりのある人材を集めることで、DX推進における可能性と選択肢を広げることができるため、育成候補者は多様性を確保できるように選定するとよいでしょう。

これら3点を考慮すると、DX人材の育成候補者選定においては、「公募制などによって希望者を優先する」ことや、「全社的に募集をかける」ことが有効であることが分かります。反対に、上長の推薦等による指名制や、限定的な範囲での募集は望ましくないといえるでしょう。

DX人材育成の段階別ゴール設定

DX人材育成のゴールはどこに設定するべきなのでしょうか。後述する通り、DX人材育成には段階が存在し、さらにビジネスサイド・ITサイドによっても必要なスキルは異なります。そこで、大きくは以下の通り段階別・分野別にゴール設定を行うとよいでしょう。

ベーススキル・マインドセットの習得段階:

すべてのDX人材に必要となるデジタル技術の概要や活用法、DX推進に必要となるマインドセットなどの基礎的な分野の学習と習得を行う。

IT・デジタルに関する専門的なスキルの習得段階:

AIやデータマネジメントなどのデータサイエンティスト向けスキルやDX推進に必要となるUI・UXデザイン、スクラムをはじめとしたプロジェクトマネジメントスキルなど、DX人材の素養と専門性に応じて分野別にデジタル技術に関する研修を実施する。

OJTによる実践力強化段階:

研修で習得したスキルを元に、実践でスキルの活用力や実行力を強化する。OJTを通じて関係者とのネットワーク構築も目指す。

人材を育成するために必要な環境

人材を育成するためには、当然ながら育成のための制度や研修などの環境整備が必要となります。ここでは、具体的に必要となる環境について紹介します。

タレントマネジメントの実施:

各人材が現在どのステップに到達しているか、また各人材がどのような専門性を身につけているかを把握するために、タレントマネジメントなども含めた管理が重要となります。
基礎的なスキルが身についていない人材に高度な研修を実施しても効果は低いため、過去の研修履歴や職歴などを元に、研修の受講可否を判断するような取り組みも必要となります。

e-ラーニング環境の整備:

コロナ禍を背景に、集合研修の実施は難しくなりました。その代替策として、e-ラーニング環境を整備することにより研修を実施する必要があります。
特に、基礎的な内容の座学などはたくさんの方に受講してもらうためにも、録画ファイルなどを利用した非同期でのオンライン研修が有効となります。

評価制度の整備:

適切な取り組みには適切な評価を与えることが重要です。いくらDX人材に自発的な取り組みが求められるといっても、人間のモチベーションには限界があります。
よって、スキル獲得や研修の受講に対して、年次評価において加点を与えるなどの評価制度の整備が必要となります。特に高度なスキルを身につけた場合には、報奨金を設定するなどの取り組みも有効です。

DX人材の育成ステップ

前述した段階別のゴールに到達するために、どのような育成を行っていけばよいのでしょうか。以下では、育成のステップごとに取り組むべき内容をご紹介します。

デジタル活用に関する基礎研修

DXの考え方や、アジャイル開発やデザイン思考などのDXに関連するスキル、またデジタル技術の動向など、DX人材として活躍する上でどのようなポジションであっても必要となるスキル・考え方については、全体を対象にした基礎研修で学習するべきものとなります。

このような研修については、上述の通り録画ファイルなどを活用した非同期でのe-ラーニングが適しています。近年では様々なオンライン研修サービスが登場しているため、それらのサービスからDXに関するコースを選別して希望者に学習させるといった方法も有効です。

具体的に基礎研修で学習すべき内容としては、以下のような分野が挙げられます。もちろん、自社の業界や分野などに応じて適宜学習範囲の見直しが必要です。

・DXに関する基礎的な知識(DXレポートの概要、DXの考え方、DXのゴールなど)
・デジタル技術の概要(クラウド、IoT、AI、XR、5G、BIツール、RPA、DMPなどの技術動向)
・新しいビジネスモデルの知識(サブスクリプション、オープンイノベーション、シェアリングエコノミーなど)

専門分野に関する研修 ①データサイエンティスト向け

特にデータ分析のスペシャリストとして自社内にデータサイエンティストを育成する場合は、データサイエンティスト向けの研修を用意すべきです。

データサイエンティスト向け研修において学習すべき分野としては、以下が挙げられます。

・数学(線形代数、微分・積分、確率、統計など)
・プログラミング(Pythonをはじめとした一般的なプログラミングスキル)
・機械学習(教師あり学習、教師なし学習、性能評価手法、ディープラーニングなど)
・開発環境(データレイクやデータウェアハウスの利用法、ライブラリの活用法、分散処理など)

注意点として、データサイエンティストを目指すためには数学的な素養やプログラミングをはじめとした多くの理工学的なスキルが必要となります。これらの取得状況は人材によって異なるため、研修内容は一律とせず、個別に分野を選択できるように設定することをおすすめします。

専門分野に関する研修 ②UI・UXデザイナー向け

DXにより自社のビジネスをデジタル化するにあたっては、UI・UXデザインが重要となります。現代においてはプロダクトの価値はどれだけ機能があるかよりも、どのような体験ができるか、もしくはストレスを感じずに利用ができるかといった、顧客の感性への訴求が重要となっています。UI・UXデザインは社外に外注することもできますが、特にB to Cを中心とする企業などにおいてはUI・UXデザインをビジネスコアと認識し、自社内に人材を確保・育成していく取り組みも重要です。

UI・UXデザインに関して研修で取り組むべき内容は以下が挙げられます。

・デザイン思考に関する知識(ビジネスモデルキャンバス、ペルソナ、カスタマージャーニー、プロトタイピングなど)
・ウェブデザイン(ウェブ標準、アクセシビリティ、CSS・HTMLなど)
・デザイン設計(画面設計、画面遷移、デザインコンセプト、インタラクション設計など)

専門分野に関する研修 ③プロジェクトマネジャー向け

DX推進プロジェクトを進めていくためには、プロジェクトマネジメントスキルを備えた人材が必要となります。DX案件においてはいわゆるウォーターフォール型のプロジェクトはまれであり、アジャイル型でスモールスタートを行うケースが多く、アジャイル型のプロジェクトマネジメントスキルが必要となります。

プロジェクトマネジメントに関して研修で取り組むべき内容は以下が挙げられます。

・アジャイル開発に関する知識(スクラム、スプリント、スプリントバックログ、DevOpsなど)
・PMBOKを中心としたプロジェクトマネジメントスキル

OJT型での実地トレーニング

デジタル人材育成のためには座学だけではなくOJT型での実地トレーニングを合わせて行うべきです。座学で学習した内容を実際に活用することで、初めて実用的なスキルとして定着させることが可能です。

特に経験が浅い人材の場合には、小規模なプロジェクトや社内向けのプロジェクトなど、失敗時の影響度が低いものを中心に参加させることを検討します。失敗を恐れずに、かつ自身の裁量を持って仕事に取り組めるようにするためにも、OJTを行う際にアサインするプロジェクトは重要です。

OJT型での実地トレーニングを行う際には、必ず結果をフィードバックすることが大切です。上長やメンターがOJTの実施結果を評価し、優れていた点や改善点をミーティングなどを通じて伝達することで、OJTの効果を向上させることができます。

OJTを実施するもう一つのメリットに、社内外のネットワーク強化が挙げられます。DXの推進には社内・社外との連携が必要となりますが、OJTによりネットワークの構築につなげることもできます。

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>DXに関する記事

コンサルティングファームの”DX成功事例”と”現状の課題”
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/dxconsultantcase

“DXコンサル”とは何か?仕事内容~必要なスキル・経験~案件事例まで解説【保存版】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/dxconsultant

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今回の記事では、DX人材を育成するために必要となる条件や、育成のためのステップについて、具体例などを交えつつお伝えしました。

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