財務モデリングを独学で習得するための方法と注意点【初心者向け】

今回は、投資銀行(IBD)でよく作成される財務モデルについて解説します。特に財務モデリング経験がほとんどない方向けに、財務モデルを作れるようになるまでのステップをお伝えします。おすすめの参考書や、フェーズごとに躓きやすいポイント、そこからどうやって脱却するかなどを見ていきましょう。

【目次】

    1. 初心者はどのように財務モデリングを学習すべきか
    2. 初心者が間違いやすい点
    3. そもそも「財務モデル」とは
    4. ステップ1:過去の財務数値分析&Projection検証
    5. ステップ2:変数・ドライバーを決定
    6. ステップ3:Projection期間におけるFSの変化をチェック
    7. 【損益計算書:Income Statement】の注意点
    8. 【貸借対照表:Balance Sheet】の注意点
    9. 【キャッシュフロー計算書:Cash Flow Statement, CFS】の注意点

初心者はどのように財務モデリングを学習すべきか

誰しもが最初からすぐにモデルが作成できるわけではありません。「公認会計士に合格し、財務諸表に関する知識は一般的な投資銀行のバンカーと同等かそれ以上にある」と自負される方も、やはり「最初から作ることは難しい」と言うものです。

理由は、ペーパーで勉強する内容と、エクセルなどを使って実際にどのようにシミュレーションしているかがリンクしないと意味をなさないため。

投資銀行の研修でよく使用されている教材や、実際に所属するファームの研修を受けて、モデルの作り方のステップや、エクセルでのモデリングのルールを徹底的に頭に叩き込み覚えていくということが重要です。

よく使用されるのがTraining The StreetやWall Street Prepといった米国の教材です。これらの教材は実際に投資銀行に所属しているプロフェッショナルが監修しているため信頼性が高く、大手やブティックの外資系投資銀行でもジュニアバンカー向けの教材として使用されています。

財務諸表を理解するには朝日新書「財務3表一体理解法」という書籍が良質です。後は書籍を読み込むよりも実際にエクセルで手を動かすことをおすすめします。

Breaking Into Wall Streetというサイトでは無料で財務モデルのテンプレートを取得することができ、個人での学習が可能です。

https://breakingintowallstreet.com/

最近ではYouTubeコンテンツでも財務モデリングを解説しているところもあるため、ぜひ見てみてください。スピード感やエクセルの使い方がわかると思います(英語が多いです)。

初心者が間違いやすい点

初心者がモデルを作成すると、エラーが生じる場合が多いです。

よくあるエラーの原因は以下のようなものだと考えられます。

  • 減価償却・CapExの±、運転資本の増減などが逆になっている
  • 借入金の返済スケジュールがキャッシュフロー計算に反映されていない
  • 増資などの計画期間中のイベントを反映できていない
  • その他流動資産、流動負債をBS上で変化させているのに、CF計算書でその影響を反映できていない
  • 追加した行の足し忘れ

上記の点でつまずきやすい人は初歩的な簿記の知識の確認や、財務モデルのテンプレートを見て学習することをおすすめします。

そもそも「財務モデル」とは

IBDのM&Aアドバイザリー業務において、バリュエーションや買収価格を決める際に使用されるものが財務モデルです。

財務モデルを作成するのは一般的に投資銀行のや商社の投資担当者です。ただ最近では業界を問わず、新卒の就活生や新入社員なども、財務モデル作成のスキルを求められる場合があります。

基本的な財務3表(PL・BS・CS)のモデルでは事業計画や一定の仮定を基礎に財務3表を作成し、主要な財務指標の分析をできるようにすることがメインです。

ここでは一般的な財務モデルの作り方について書いていきます。また財務モデリングの初心者の方に、財務モデルの一般的な作成ステップや勉強方法がわかるよう、注意点も解説していきます。

ステップ1:過去の財務数値分析&Projection検証

財務モデル作成時には、財務諸表の予想における重要な指標について、過去の水準を理解するようにしましょう。

上場企業であれば過去の監査済財務数値から、事業計画との整合性をチェック可能です。

自社連結財務諸表が公式サイトからダウンロードできる企業もあるため、気になる企業のものを確認するのもおすすめです。

ステップ2:変数・ドライバーを決定

損益計算書や貸借対照表にインパクトを与える項目に関する重要なドライバー・変数を決定します。

売上高成長率や粗利率、営業利益率、当期純利益率などが該当します。

ステップ3:Projection期間におけるFSの変化をチェック

一般的に財務モデルではシナリオを設けて、財務指標を設定し、変化を分析します。

これで企業価値や財務指標の変化まで検討できるはずです。

【損益計算書:Income Statement】の注意点

損益計算書は、売上高の成長率や粗利率などを基礎的なドライバーとして積み上げます。

事業計画期間における情報の粒度次第で、ボトムアップかトップダウンのいずれで計算するか判断します。
(例:販売単価と販売数量を分けてボトムアップに計算する。もしくは市場規模に市場シェアを乗じることでトップダウンに計算する)

初心者が作成する場合には簡易的に過去数年間の指標の推移で決めるのがいいでしょう。

粗利率予測の例

製造業などでは粗利率は各年度で大きく変化しません。

過去10-20年間の推移に大きな変化がなければ、過去の粗利率の平均に設定して問題ないでしょう。

また営業利益率や減価償却費対売上高比率の場合は過去の推移に加えて、類似上場会社の推移も分析するのが理想的です。

売上高と利益率をシナリオ別に設定するなら、差額で売上原価や販管費も計算するため注意しましょう。

【貸借対照表:Balance Sheet】の注意点

ある程度簡易な財務モデルであれば、貸借対照表で重要な項目は「借入金スケジュール」「固定資産」「運転資本」「株主資本」です。初心者はこれらの項目に関する会計処理を理解していれば問題ありません。

借入金スケジュール

会社に計上されている長期借入金や社債などのスケジュールは、短期の資金ニーズに合わせて借入を行うリボルバーローンを設定することもあります。

リボルバーローンはの必要残高の計算式

CF計算書の営業活動CF+投資活動CF+期首現金残高-既存借入の支払-配当支払-必要最低現預金(ミニマムキャッシュ)

上記の数値とリボルバーローンの期首残高を比較して、小さい方をリボルバーローンとします。
借入金のスケジュールが整った後、利息をPLに反映させればOKです。

固定資産

固定資産のスケジュールは重要です。

理想的なのは資産の種類別に減価償却を計算すること。

詳細は有価証券報告書に記されているため必ず読むようにしましょう。

運転資本

該当項目は「売掛金」「棚卸資産」「買掛金」。直接キャッシュフローに影響をもたらす最重要項目です。

売掛金・棚卸資産・買掛金

売上高か売上原価に回転日数を乗じれば、残高を計算できます。

回転日数に変動がないかもしっかりチェックしましょう。

その他流動資産・負債項目

これらの項目はモデル上は簡易的に、BS残高に対する売上高比率を参照して予測計算することが多いです。ただしその他項目でも金額的に重要性が大きい場合は別途計算スケジュールを組むことがありますので注意しましょう(未払い税金など)。

【キャッシュフロー計算書:Cash Flow Statement, CFS】の注意点

キャッシュフロー計算書は会計学のテキストを読むと、色々な項目があり、作るのが難しいという印象がありますが、簡易的な財務モデルでは、税引後当期純利益から間接法により営業キャッシュフローを計算することで、投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローを合算し、当期のキャッシュ変動額を計算できます。

なお、営業活動によるCFと投資活動によるCFの合計はAvailable for debt financingとしてリボルバーローンのスケジュールの計算に使用するという点を理解しておけば、問題ないでしょう。当該変動額に期首現金を加算すれば期末のキャッシュ残高が計算されBSと一致するという流れです。

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>投資銀行へのキャリアに関する記事

コンサルファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank

LBOモデル作成ステップをエクセルで解説【PEファンド/投資銀行への転職希望者向け】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/lbomodel_pefund_howto

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このように財務モデルを学習する際には、いくつかのステップがありますが、まずは今回ご紹介した海外のサイトにアクセスしたり、YouTubeコンテンツやUdemyなどのコンテンツで財務モデリングを説明しているサイトを見たりすることをおすすめします。

座学でも最低限の知識は獲得できますが、実務で耐えうるものは、実際に手を動かさないと難しいため、早くから本物に触れることが重要です。

投資銀行や、M&A領域のキャリアについて興味のある方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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