投資銀行におけるエクセル仕事術【必要なスキルから多用する関数まで】

投資銀行というと「エクセルを多用して膨大な資料作成を行う」というイメージを持たれる方が多い印象です。実際に、コンサルから投資銀行への転職希望者から「エクセルの使用頻度」や「使用する機能などの違い」について質問いただく機会も多いです。

そこで今回は投資銀行でのエクセルの使用頻度や用途、使用する機能、コンサルとの使い方の違いといった点を、実際に投資銀行・コンサルの両方で働いていた方々の話を参考にご紹介いたします。

【目次】

  1. 投資銀行でもエクセルの用途は多岐にわたり、出張しない限りほぼ毎日使用
  2. 使用機能は基本的なものが多く、上級スキルはあると強みになるが必須ではない
  3. 「スキル面での深さはコンサルの方が優位で、素早さは圧倒的に投資銀行の方が優位」

投資銀行でもエクセルの用途は多岐にわたり、出張しない限りほぼ毎日使用

まず、投資銀行におけるエクセルの使用頻度についてですが、実際には「終日外出しない限り毎日」「出張の日以外例外なく毎日」という意見が大半です。また、「特に若手ほど使用頻度が高く、入社数年はむしろ業務のほとんどがエクセルの操作」とのこと。オフィスの中で業務を行う時間帯でいえば、「全く使わないのは会議の時間帯くらい」のようです。

また、投資銀行でエクセルを使用するタスクは大きく分けて以下の4つ。

  • 資料作成
  • 資料のバックデータとなる計算
  • 市場ツールによるデータ取得
  • その他様々なデータ管理

このうち「その他様々なデータ管理」は、チームのパフォーマンスや業績の集計などを意味しており、他のビジネスでも少なからずエクセルを活用するのでここでは割愛します。その他のエクセルを使用する投資銀行特有のタスクについてはこの後詳細を紹介します。

まず、資料作成では提案資料やディールの報告資料、法令手続に関する書類の作成などが主に考えられます。このうち法令書類はワードで作成する場面も多く、提案資料・ディールの報告資料などは最終的なブックとしてはパワーポイントで作成することが多く、意外にも最終形態がエクセルの状態で資料が完成することは必ずしも多くありません。

しかし、パワーポイントに掲載するためのグラフや表はエクセルで作成するのが基本。「パワーポイント上にもグラフ描画機能はあるが、データ量が多いグラフや凝ったグラフの作成には限界がある。パワーポイント上で作成すると間違いなく上司などに怒られる」とのこと。投資銀行の提案資料・報告資料の大半のページにはなんらかのグラフ・表がありますので、それを差し込むために、都度エクセルを使用することになります。

続いて資料のバックデータの計算ですが、投資銀行では資産価値や市場の値動きなどを分析・シミュレーションする場面が多々あります。これらは先に紹介した資料の素材になることもあれば、今後のチームとしての戦略やディール獲得手段を分析するのに使用されることもあります。計算はエクセルとして高度であることは少なく、四則計算と累乗の組み合わせ程度で成り立っているものがほとんどですが、何と言っても計算量が膨大なので、分析・シミュレーションを含む各種データの計算にはエクセルを使用するのが基本です。

最後に市場ツールによるデータ取得ですが、投資銀行ではここまで紹介した様な資料作成やデータ分析の土台として市場関連の数値データを必要とする場面が多々あります。この内一部は社内にデータが蓄積しておりますが、それ以外についてはブルームバーグなどの外部の市場データを取り扱う専門機関からデータをダウンロードすることが一般的のようです。
特にブルームバーグが当てはまるのですが、データをダウンロードするためのツールはエクセルの中のアドインに組み込まれています。つまり、必然的にブルームバーグから市場のデータを得るためには、エクセルを使わなければならないのです。

余談ですが、ブルームバーグは投資銀行マンならほとんどの人が日常的に使用する市場データ機関(投資銀行の中ではベンダーといいます)ですが、ブルームバーグのアカウントにはコストがかかるので、ハウスによってブルームバーグの整備度合いには差があります。

全席に組み込まれている場合、二人で一つ、チームで一つ〜二つなど、ハウスの規模や資金力によって様々です。「ブルームバーグが共有端末の場合、エクセルを共有端末で操作して、データをダウンロード後は保存して自席で操作して・・・と自席と共有端末を何度も行き来しながらエクセルを操作することになるので面倒」というのは地味ですが投資銀行マンではしばしば聞かれる愚痴です。

使用機能は基本的なものが多く、上級スキルはあると強みになるが必須ではない

さて、前章で紹介した様に投資銀行ではきわめて頻繁にエクセルを使用します。いかにも「高いエクセルスキルが要求される」と思ってしまいがちですが、実のところそうでもないようです。

プロダクトや担当ディールにもよるものの、使用する関数自体はそこまで高度なものは無く、四則演算・累乗に加えて、IF関数、Sum関数、Vlookup関数などベーシックなものが中心です。あとは金融として特徴的なものとして「標準偏差」を出すためのStdev関数といったところくらいまで使用できれば少なくとも大半の業務は対応可能。「そもそも複雑な計算が必要な場合は、社内で独自ツールなどが構築されていることも多いので、普通の投資銀行マンは、さほど高度な関数は使用しない」とのことでした。

この中ではVlookup関数の使用頻度が非常に高い傾向にあります。市場データを落とした後に、自分が求めるデータを抽出してグラフや表を作成する、もしくは何らかの分析・シミュレーションを行う機会が非常に多いのですが、その場合データの抽出にはVlookup関数・もしくは少し応用編のHlookup関数を特に多く使用します。これは別に高度な関数ではなく、おそらくエクセル初心者の本でも掲載されておりますので、もしも知らない人は使いこなせるようになっておくと良いでしょう。

その他で多く使用するのがPivotツール。集計してグラフを描くときに元のデータが大容量の際などには、Pivotツールで簡単に集計してグラフ化します。「投資銀行で必要とされるのは、エクセルの高度なスキルでは無く、速さと最適な計算方法やグラフの描き方などを思いつくセンス」とのことです。

ちなみに必須ではありませんが投資銀行では「極力キーボードで作業を完結させる」能力が重宝します。エクセルをヘビーユーズすると気づくのですが、マウスでの作業というのは大抵キーボードだけで完結させるよりも遅くなってしまうのです。従って、投資銀行マンの多くはエクセルのショートカットを覚えます。ルーキーにエクセルショートカットの早覚えテストを課すハウスもあるそうです。

また、更に短縮するために「リボン」という機能を設定している人も少なからずいます。これはいわゆる短縮キーのようなもので、Alt+様々なキーに自分独自で必要な機能を割り当てることが可能。日常的に使用する機能を割り当てて覚えておけば、ショートカットのない操作もキーボードだけで完結できます。エクセルの知識自体は初心者レベルで充分な代わりに、可能な限り素早く操作することが求められるのが投資銀行でのエクセルの特徴です。

その他では本来パワーポイントで重視されるべき領域なのですが、パワーポイントに盛り込むためのグラフなどの図表をエクセルで作成することがしばしばあります。その結果、エクセル上でも「印象的なデザイン・色使いでわかりやすい図表を作成する能力」が求められます。エクセルで貼った図表をパワーポイントで調整することもできるのですが、基本的にはエクセル上で図表のデザインを完成させられた方が便利ですし、多くの投資銀行マンはそのようにエクセル上で図表を作成します。本来のエクセルスキルではないのですが「見栄えの良い図表を速やかに作成できること」も投資銀行マンの重要なスキルと言えるでしょう。

エクセルの上級者といえばマクロを使いこなせることがあると思われがちです。マクロとはエクセル内に実装されていない複雑な操作を自動もしくはワンタッチで行う様に組むことができるプログラムです。

エクセルを使いこなす投資銀行だからマクロも使いこなせるのが当たり前かと思いきや「あると重宝するのは間違いないが、必須では無く、実際マクロをVBAで一から組める人はどちらかというと少数派」とのこと。マクロによってチーム内・部内で使用する分析ツールを使用したり、多様な市場データパックを作って素早く分析・集計できる様にしたりと、使い道は確かにあります。しかし、投資銀行で行うデータ分析自体は先に記載した基本的な関数で概ね完結できるので、必須スキルというほどではないようです。

「スキル面での深さはコンサルの方が優位で、素早さは圧倒的に投資銀行の方が優位」

続いてコンサルと投資銀行のエクセルスキルの差を比較しますが「コンサル側がプロジェクトによってエクセルスキルに極端に差があるので、一概には比較できない」とのことですが、一方で「無理やり平均するならばエクセルのスキル面での深さはコンサルの方が優位で、素早さは圧倒的に投資銀行の方が優位」とのことでした。

コンサルの方は、そもそもプロジェクトによってエクセルの必要度合いが全く異なります。エクセルを表集計程度にしか使用しない場合もあれば、業務効率化の一環でエクセルのプログラムを構築する必要性があるプロジェクトもあります。従ってコンサル側のエクセルスキルのレベルを一概に比較することは困難なのです。

それでも、②で紹介したような基本的なエクセルスキルはコンサルであれば概ね備わっているのが普通です。そしてその上で「一部にプロジェクトの特性などにより卓越したエクセルスキルを持つ人がいる」ことを踏まえれば、全体としてはコンサルの方がエクセルスキル自体は高いといえそうです。

一方、早さで比較すると、明らかに投資銀行の方が高速作業を求められるでしょう。コンサルも全業種で見れば作業の早さを求められる部類に含まれますが、一方で資料の正確性などの丁寧さも求められることから、スピードに特化する必要はありません。

投資銀行は先のスキル面でも時短術が中心になっていたことからもわかるように、徹底的にスピードアップを必要とされます。ここには、投資銀行で作成しなければならない資料やデータが膨大であることが背景にあります。

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>投資銀行へのキャリアに関する記事

投資銀行は”激務”なのか?部門毎の「働き方の違い」と「激務と言われる理由」について
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankwlb

投資銀行における日系・外資系の違い【年収〜働き方〜社風まで】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankja

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今回は投資銀行のエクセル仕事術の実態を使用頻度や必要とするスキル、コンサルとの比較から紹介しました。実際には、コンサルから転職された方からは「エクセルの難易度の面で困ることはあまり多くない」という意見が多いです。

一方で、スピードアップが必要となりますので、ショートカットやリボンといった便利機能を利用していないという人は、先立って活用できる様にしておくと、投資銀行でも問題なくタスクをこなしていけるでしょうか。

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