【投資銀行】リーグテーブルランキング(2019年度/Bloomberg)から見る大手投資銀行の特徴とは?

投資銀行では、運営しているハウスが他の金融業も行なっていることも多く、またどこまでを投資銀行の売り上げとするかが複雑なため、売り上げで比較されることはあまり多くありません。
その代わりに投資銀行の規模の指標としてしばしば用いられるのが今回紹介するリーグテーブルです。
今回はリーグテーブルを元に投資銀行の各プロダクトの上位ハウスをご紹介します。

【目次】

  1. リーグテーブルの紹介
  2. 主要プロダクト合計のリーグテーブル
  3. プロダクト別のリーグテーブル:社債
  4. プロダクト別のリーグテーブル:株式
  5. プロダクト別のリーグテーブル:株式IPO
  6. プロダクト別のリーグテーブル:M&A財務
  7. 上位ハウスの紹介:モルガン・スタンレー
  8. 上位ハウスの紹介:野村ホールディングス
  9. 上位ハウスの紹介:みずほフィナンシャルホールディングス
  10. 上位ハウスの紹介:三井住友フィナンシャルホールディングス
  11. 上位ハウスの紹介:バンク・オブ・アメリカ(メリルリンチ)
  12. 上位ハウスの紹介:ゴールドマン・サックス
  13. 上位ハウスの紹介:大和証券

リーグテーブルの紹介

まずはリーグテーブルの基本と、主要なリーグテーブルについて紹介します。尚、今回紹介するリーグテーブルは全て2019年のブルームバーグのデータに基づいています。

※参考:日本資本市場 リーグテーブル 2019 年度/Bloomberg

ご存じの通り、リーグテーブルは投資銀行の年間(もしくは四半期・半期など)の案件の金額の合計、もしくは案件件数の合計で算出されます。今回はさまざまなプロダクトを合計する都合上、全て金額ベースで計算しています。

リーグテーブルは一般的に投資銀行において多様に存在するプロダクトごとに集計されます。集計しているベンダーによりカテゴリは異なりますが、ブルームバーグでは債券では社債、財投機関債(独立行政法人などが発行する債券)、地方債などがバラバラに計算されます。株式では増資とIPOが分かれています。M&Aは財務アドバイザリー・法務アドバイザリーがありますが、法務は法律事務所が中心なので、今回の記事では財務アドバイザリーのみの金額を紹介します。

投資銀行ではプロダクトごとに強いハウスが異なるため、このようにプロダクト別でリーグテーブルを見ます。現場でも、投資銀行ビジネス全体のリーグテーブルではなく、それぞれが携わっているプロダクトのリーグテーブルを専ら意識してビジネスを行います。プロダクト横断のリーグテーブルは少なくとも一般には公表されておりません。この記事でこの後紹介する全プロダクトのリーグテーブルはブルームバーグのデータを元に独自に集計したものとなっています。

主要プロダクト合計のリーグテーブル

続いては、主要プロダクト合計と、主要なプロダクト別のリーグテーブルを紹介します。尚、合計のリーグテーブルは各プロダクトのTop10までのハウス・金額を合計しています。

まず、主要プロダクト合計のリーグテーブルはこちらです(単位は百万円)。     

1

モルガン・スタンレー

12,329,565

2

野村ホールディングス

11,890,599

3

みずほフィナンシャルグループ

11,566,621

4

三井住友フィナンシャルグループ

8,027,486

5

バンク・オブ・アメリカ

5,274,515

6

ゴールドマン・サックス

4,995,251

7

大和証券グループ本社

4,463,675

8

JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー

4,409,642

9

デロイトトウシュトーマツ

2,554,796

10

ドイツ銀行

2,301,098

https://www.axc.ne.jp/cms/wp-content/uploads/2021/08/c2321f74d9a33f0dc680dc9e954d5f46.pdf
※PDF

1位のモルガン・スタンレーは三菱の投資銀行部門にあたる三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFGの合計です。同社は三菱UFJ証券と、米大手金融機関のモルガン・スタンレー証券の合弁によって成り立っているハウスです。

そのほか、4位まではいわゆる日系証券会社の投資銀行部門がランクインしています。投資銀行というと外資のイメージを持つ方も多いかもしれませんが、ビジネス規模としては日系の方が大きくなっています。ただし、こうした投資銀行はメンバーの人数も多い傾向にあるので、ビジネス規模が大きいからといって年収が高くなるとは限りません。

一方で5〜6位には外資系のハウスもランクインしています。バンク・オブ・アメリカ(旧メリルリンチ)、ゴールドマン・サックスはいずれも外資系投資銀行としても高い知名度を誇るハウスです。

プロダクト別のリーグテーブル:社債

続いてはいくつかのプロダクト別のリーグテーブルを見てみます。        

1

みずほフィナンシャルグループ

3,580,473

2

モルガン・スタンレー

3,064,638

3

三井住友フィナンシャルグループ

2,912,057

4

大和証券グループ本社

2,799,323

5

野村ホールディングス 

2,632,411

6

SBIホールディングス

136,757

7

信金中央金庫

131,955

8

ゴールドマン・サックス

119,900

9

東海東京フィナンシャルHD

104,867

10

岡三証券グループ

36,944

https://www.axc.ne.jp/cms/wp-content/uploads/2021/08/2a293cf36240b43859efaab73ae5094b.pdf
※PDF

社債市場の特徴として日系の5大証券会社が強く、その中でも銀行と同グループに位置するみずほ・三菱(=モルガン・スタンレー)・三井住友(証券会社としてはSMBC日興証券)が強い傾向にあります。案件が非常に多くなりがちな債券の発行市場においては大きな組織となっている日系の投資銀行の方が適しており、またローンビジネスとシナジーが発揮できる銀行系の証券会社が強みを発揮できるためです。

尚、金額で見ると1位のみずほで3.6兆円と、引受金額が非常に大きくなるのも特徴です。社債を始め債券はフィー水準が低い一方で、年間で膨大な金額のビジネスがあります。

プロダクト別のリーグテーブル:株式    

1

三井住友フィナンシャルグループ

416,363

2

野村ホールディングス 

374,915

3

みずほフィナンシャルグループ

337,541

4

モルガン・スタンレー

276,634

5

大和証券グループ本社

265,756

6

ゴールドマン・サックス

130,810

7

バンク・オブ・アメリカ

126,741

8

JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー

81,148

9

シティグループ

26,735

10

SBIホールディングス

18,200

https://www.axc.ne.jp/cms/wp-content/uploads/2021/08/bfd4ffe1b36e5cacf6aa1b8fa6631e08.pdf
※PDF

通常の株式もやはり上位5社は日系証券会社です。日系の方が日本企業と長年のリレーションを築いているというケースが多く、案件を獲得しやすい状況にあると思われます。一方で、社債と比較すると後続の外資系2社との格差が小さいのも特徴です。社債より株式の方が海外投資家への販売比率が高いため、販売の観点からは海外投資家の知見が深い外資系投資銀行でも相応に競争力があるといえます。

プロダクト別のリーグテーブル:株式IPO      

1

野村ホールディングス 

102,079

2

大和証券グループ本社

85,965

3

三井住友フィナンシャルグループ

80,590

4

みずほフィナンシャルグループ

61,378

5

モルガン・スタンレー

24,492

6

NH投資証券

16,642

7

バンク・オブ・アメリカ

12,377

8

SBIホールディングス

12,084

9

いちよし証券

5,268

10

クレディ・スイス・グループ

3,389

https://www.axc.ne.jp/cms/wp-content/uploads/2021/08/3eac541882e6c816171b1bbcebb9d0ce.pdf
※PDF

IPOも順位としては日系5社が占めているものの、中でも野村・大和の独立系証券会社が1位・2位を占めているのが特徴的です。IPOは株式に関する特殊性の高い知見が必要なこともあり、従来の証券会社の方が強みを発揮しやすいという背景があるようです。また、近年は個人投資家もIPO株を好んで購入するようになったため、SBIホールディングス、いちよし証券といったより規模の小さい証券会社もこの分野では投資銀行ビジネスを盛んに行なっています。

プロダクト別のリーグテーブル:M&A財務

(100万ドル単位での公表なので、2019年末の米ドル円為替レートで円換算)

1

モルガン・スタンレー

7,768,040

2

野村ホールディングス 

7,138,088

3

みずほフィナンシャルグループ

6,149,481

4

バンク・オブ・アメリカ

5,008,656

5

ゴールドマン・サックス

4,455,628

6

JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー

4,247,346

7

三井住友フィナンシャルグループ

2,959,735

8

デロイトトウシュトーマツ

2,554,796

9

ドイツ銀行

2,301,098

10

シティグループ

1,985,036

https://www.axc.ne.jp/cms/wp-content/uploads/2021/08/5df26e397daa63a0af1dc1f06cf17b5f.pdf
※PDF

M&Aのリーグテーブルは、買収企業の買収金額の総額で集計されるのが一般的です。M&Aは他のプロダクトよりも外資系の勢いが強く、バンク・オブ・アメリカが3位、ゴールドマン・サックスが4位となっています。クロスオーバー案件などでは外資系の方が買収先を見つける能力にたける場合もあることから、強みを発揮することができるとみられます。

上位ハウスの紹介:モルガン・スタンレー

ここからは上位ハウスの特徴について簡単に紹介していきます。リーグテーブルは総合ランキングをベースとして順に紹介していきます。

モルガン・スタンレーは先に紹介した通り日本では三菱UFJモルガン・スタンレー証券として運営されているので、実質的に三菱系の投資銀行部門です。米大手のモルガン・スタンレーの合弁という(少なくとも大手では)唯一の特殊な形態をしています。

外資系モルガン・スタンレーの強みと、日本で最大の預かり資産を持つ三菱UFJフィナンシャルグループ(もしくは傘下にある三菱UFJ銀行)の強みを合わせて持っているため、様々なプロダクトで高い順位を獲得しているハウスです。正確な人数は公表されてませんが、全方位的に投資銀行ビジネスを営み、かつ社内は日系証券会社の投資銀行部門の社員と、外資系モルガン・スタンレーの社員のチームが存在するため、組織もメンバーの人数も多くなっています。

転職の観点からは、日系側の投資銀行と、外資系モルガン・スタンレーとしての投資銀行で採用条件が大きく異なるので、自分がどちらで応募しているのか認識しておくことが大切です。

上位ハウスの紹介:野村ホールディングス

2019年は2位ですが、年によっては1位になることも珍しくありません。言わずと知れた日本最大手の証券会社である野村證券です。営業能力の高さを活かして様々な証券の発行〜販売に強みを持っているため、積極的な証券の引き受けが可能です。ファイナンスでは株式系のファイナンスの方が強く、銀行系が強い債券系の案件は、収益性の高いビジネスを効率よく選別していると思われます。また、かつてリーマンショックを引き起こしたリーマン・ブラザーズの一部の部門を取り込んだこともあり、M&Aでも2位と高い地位を築いています。

上位ハウスの紹介:みずほフィナンシャルホールディングス

みずほは銀行系証券会社として、特に債券ファイナンスに強みを持っています。年によっても異なりますが、2019年の社債では2位のモルガン・スタンレーに5000億円もの差をつけて1位となっております。一方、株・M&Aについても概ね5位以内にはつけており、やはり全方位的にビジネスを行う日系証券会社の特徴が表れています。

上位ハウスの紹介:三井住友フィナンシャルホールディングス

こちらも銀行系ですが、投資銀行ビジネスは、元々シティと協働していたSMBC日興証券が運営しています。銀行のリレーションと株式の知見を活かすことで、IPOではない既に上場した株式の引受案件(増資など)では1位です。また株式の知見を活かして、仕組債の一部であるエクイティリンク債の分野にも強みを持っています。

上位ハウスの紹介:バンク・オブ・アメリカ(メリルリンチ)

元々はバンク・オブ・アメリカとメリルリンチは別々の金融機関でしたが、リーマンショックによる経営危機に対処するため、バンク・オブ・アメリカがメリルリンチを買収して現在に至っています。日本の投資銀行の世界ではいまだにメリルリンチとして営業されています。投資銀行ビジネスとしてはM&Aと株式に強く、特にM&Aでは三井住友フィナンシャルグループや大和証券といった日系大手を抑えて4位に位置しています。米系で投資銀行の中でも給与は高い部類に入ります(OpenWork参考:https://www.openwork.jp/company.php?m_id=a0910000000Frq9)。

上位ハウスの紹介:ゴールドマン・サックス

6位は言わずとしれた投資銀行のゴールドマン・サックスが入りました。リーグテーブルは6位でも、OpenWorkの情報(https://www.openwork.jp/company.php?m_id=a0910000000G2fm)からも、おそらく年収水準は今でも一番高いと思われます。また、外資系としてはフルラインナップで日本の投資銀行ビジネスに参画しているのも特徴で、株・M&Aだけでなく債券でも社債・地方債などでtop10以内に入っています。外資系の給与を目指したいが、本来は日系が強い債券ビジネスにチャレンジしたい場合は、ゴールドマン・サックスを目指すのが良いでしょう。

上位ハウスの紹介:大和証券

7位が大和証券でした。ただし、投資銀行部門の組織は大きく、あらゆる投資銀行ビジネスに参画しています。多くのプロダクトでtop10に入っており、いずれも5番手前後という状況です。ただし、M&Aではtop10に入っておらず、今後の復活が期待されるところです。

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>プライベートエクイティファンドへのキャリアに関する記事

コンサルファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank

LBOモデル作成ステップをエクセルで解説【PEファンド/投資銀行への転職希望者向け】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/lbomodel_pefund_howto

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投資銀行というと外資系がイメージされますが、実際にはリーグテーブルの上位は日系の証券会社が占めています。一方で、バンク・オブ・アメリカやゴールドマン・サックスといった米系大手については日系にも引けを取らないほど日本で幅広く投資銀行ビジネスを行なっております。

今回の記事を参考に、自分がやりたいビジネスも踏まえながら、自分に合ったハウスにチャレンジすることをおすすめします。 投資銀行へのキャリアをお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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