FAS M&Aアドバイザリー部門の「激務度」の実態とその理由【投資銀行同部門との比較】

FASへの転職をお考えの方から「M&Aアドバイザリー部門は激務であるとよく聞くが、実態についてはどうなのか」というご質問をいただきます。
そこで、今回は、FASのM&Aアドバイザリーが激務と言われる(もしくは激務でない理由)は何か、激務になってしまっている人はどのようなスキルが足りないのか、という点を投資銀行のM&Aアドバイザリー部門と比較してお伝えします。

【目次】

  1. エグゼキューションが佳境でなければ、外資系投資銀行ほどの激務な労働環境にはなりにくい
  2. 投資銀行に比して各タイトルのチームの人数が多く、一人当たりの業務範囲や責任が小さいため
  3. エクセル、パワポ、財務分析、バリュエーションの知識を鍛え、ミスコミュニケーションを減らすことが重要
  4. まとめ

エグゼキューションが佳境でなければ、外資系投資銀行ほどの激務な労働環境にはなりにくい

FASのM&Aアドバイザリーチームは、一般的な投資銀行のM&Aアドバイザリーサービスと同様にM&Aのエグゼキューションに関する財務分析、M&Aプロセスにおけるエグゼキューション全般、資料作成、株式譲渡契約書の交渉、財務モデリング、バリュエーション等の総合的な業務を行うチームです。

投資銀行のM&Aアドバイザリーチームでは日系、外資系問わず、大手であればカバレッジチームとプロダクトチームを分けているところもあります。一方で一部の外資系投資銀行では収益性を意識してプロダクトをM&Aとデットに絞り、比較的M&Aをプロダクトとして注力しているチームもあり、カバレッジもエグゼキューションも境目なく行う投資銀行もあります。証券会社系の外資系投資銀行でこのようなチーム体制であるファームはブティック系外資投資銀行と同様にM&Aのプロダクトを中心に行っていることが多いです。

いずれにせよ、コロナ禍でM&Aの案件が増えていることもあり投資銀行によっては収益性の高い案件に注力する所も多いですし、ディールフローの多い投資銀行であればジュニア、シニア問わず、新規案件の仕込みで行うピッチが続いたり、エグゼキューションを行っている案件が佳境になっていたりすれば相当タフな業務量になることもあります。もっともこれが永久的に続くわけではなく多少の調整は可能です。

FASのM&Aアドバイザリーチームでは、モルガンスタンレーやゴールドマンサックス、UBSのような大手投資銀行が扱うような1000億超の大型案件は扱わず数十億円~100億円程度のスモール~ミッドキャップの案件が中心になることが多いです。また証券会社と異なりファイナンスの機能はないので、バイサイド・セルサイドのM&Aアドバイザリー業務が中心になり、クライアントに対してアドバイザリーサービスを提供することが中心になります。ゆえに比較的ブティック系外資投資銀行と似たようなサービスラインになります。

ただし投資銀行と異なり、FASはDDやTax等の投資銀行にはないサービスラインで勝負することができ、監査法人経由で案件の紹介が来ることもあるのでアグレッシブにピッチを行うということはあまりありません。そのため、エグゼキューションが佳境でなければ、外資系投資銀行ほどのハードな労働環境にはなりがたいと言えるでしょう。もっともFASでもクロスボーダー案件を行うチームであれば海外オフィスとの協働やクライアントとのCall設定等で忙殺されることもありますので、多少の覚悟は必要です。

なお、M&Aアドバイザリー業務はディールサイズに関わらずクライアントビジネスであるため、ディールのエグゼキューションがある時には恒常的に忙しいケースが多いですし、ラージキャップと呼ばれる大型案件ではチームの人数が比較的多くなります。スモール~ミッドキャップ案件では1件あたりのディールチームが数人になりますので業務の負荷は重くなりがちです。そのため、投資銀行のM&Aアドバイザリー部門とそん色ない忙しさになることもあります。これはディールによりますが、デューデリジェンスの時や、セルサイド案件の際にはインフォメーションメモランダム等の作成の際には非常にタフなワークロードになります。

なお、FASでは投資銀行のように延々とエグゼキューションとピッチが交互に続くという環境はあまりないので、エグゼキューションが佳境でない限り毎日深夜まで働くことは少ないと思われます。また、投資銀行とは異なり、FASではデューデリジェンス、税務ストラクチャー策定等のサービスを総合的に提案できるのが特徴であり、提案書の作成の際もそのようなサービスライン(トランザクションアドバイザリーや税理士法人)と連携しながら進めていきますので、社内関係者との調整が多くなる点に注意が必要です。

ただし、FASのM&Aアドバイザリーチームでも、外資系投資銀行出身者のシニアが多く揃っているようなチームでは、社風が外資系投資銀行のような環境になる可能性もあります。一方で会計士や銀行出身者が多いようなチームではそこまでハードなカルチャーにならない可能性もあります。ゆえにFASのM&Aアドバイザリーチームでも、所属するチームのシニアオフィサーの出身やキャリアに仕事の進め方が影響されることが多いのでその点は注意した方が良いと思われます。

上記をまとめると、ディールのエグゼキューションが走っている際にはFASもIBDも一様に激務になりがちです。ただしFASでは年柄年中忙しいのではなくIBDのようにピッチヘビーになることがほぼないのでエグゼキューションと並行してピッチを行うことで毎日深夜が続くことはあまり想定しなくても良いと思います。

投資銀行に比して各タイトルのチームの人数が多く、一人当たりの業務範囲や責任が小さいため

FASのM&Aアドバイザリーチームのワークライフバランスは、投資銀行のM&Aアドバイザリーチームほどではないですが激務な傾向にあります。これはクライアントサービスである以上は、エグゼキューションの段階では忙しくなりがちであるということもありますし、M&Aアドバイザリーという仕事の特性上致し方のないところではあります。

ただしFASがメインで扱うようなミッドキャップの国内案件であれば時差はないので、そこまで深夜の対応が続くこともないと思われます。一方でBig4のFASのM&Aアドバイザリーチームでもクロスボーダー案件のM&Aのエグゼキューションが続いている場合は比較的タフな時間が続くことは想定されます。(特に欧米案件などは時差が日本と比べて大きいのでそのようなシチュエーションになります)クライアントは日本企業ですが、ブルーチップと呼ばれる優良企業が多いのでクライアントの期待値も高くなります。そのためエグゼキューションの中で資料作成やディールのタイムマネジメント、電話会議なども続くことが多いです。

またFASのM&Aアドバイザリーチームとして提案を行う際にも、M&Aアドバイザリーチームと、DDチームやバリュエーションチームが一体となってワンストップのサービスが提供できるという点を強みとしているので、ピッチの際は各サービスチームからのインプットをとりまとめていくことが多くなるので比較的忙しくなります。ただし外資系投資銀行でよくあるようにフォーマットに異様にうるさい、海外のチームからのインプット等が必要になる、ということは中々無いと思われます。また一般的にはエグゼキューションの時と異なり、ピッチの際にはタイムスケジュールをクライアントに振り回されるというよりは、自分たちでコントロール可能というメリットがあります。

M&Aアドバイザリー業務はクライアントサービスである以上、忙しくなることが多いですが最近は働き方改革などの圧力もありそこまで過度な働き方が行われることはすくないでしょう。最近は在宅ワークが推奨されることもあり遅くなっても休み休み行うことができるので精神的・肉体的な負担も少ないと思われます。

FASが投資銀行に比して激務になりづらい理由があるとすれば、投資銀行に比して各タイトルのチームの人数が多く一人当たりの業務範囲や責任が小さいということが挙げられるでしょう。またチームのカルチャーが外資系投資銀行に比してソフトであるという特徴もあると思われます。

エクセル、パワポ、財務分析、バリュエーションの知識を鍛え、ミスコミュニケーションを減らすことが重要

FASのM&Aアドバイザリーチームで激務になることは多くありますが、スキルが足りないということは少ないと思います。これはFASのM&Aアドバイザリーチームは新卒採用することは投資銀行と異なりあまりなく、基本的には中途で経験のある方の採用が中心になります。そのため入社時点においてスキル面で大きく劣るということはあまり想定できないためです。

ただし、スキルが足りないとすれば、エクセルのショートカットやパワポの資料作成のスキルが足りないケースがあると思います(特にジュニアのアナリストの方)。そのような場合はハードスキルを鍛えることが重要です。FASでは社内の研修できっちりとバリュエーションや財務モデリング、M&Aのプロセスなどを行うところもあります。そのため社内の研修資料を理解することに加えて、自助努力で学習することがポイントです。

例えば、エクセルでバリュエーションを行う際にもバリュエーションのメソッドを良く知らないと作業が遅れてしまい、どうしても激務、遅くまでの作業になってしまいます。クライアントへのプレゼンテーション資料を作成する際にはパワポのフォーマットや、上司やチームでディスカッションした内容を上手く織り込めていないとレビューが何度も発生して遅くまで業務をすることになってしまいます。

そのため、激務になりがちな人はエクセル、パワポ、財務分析、バリュエーションの知識等のハードスキルをカバーすることで必要以上に激務になることを避けることができます。また上司やチームとのコミュニケーションを密に行い、ミスコミュニケーションを減らすことも重要です。

他にも、業務の中で重要なもの、そうでないものを峻別して効率よく、パラレルに仕事を処理していく能力は適性もありますのでその点で苦手意識がある人はキツいかもしれません。ただ投資銀行のように同時並行的に業務が降ってくることはFASではあまり想定しがたいのでその点は心配しすぎなくても良いと思います。カルチャー的にも投資銀行ほどアグレッシブな人の多さや、パワポ資料のビジュアルに対するこだわりの強さは”マシ”な傾向があります。

基本的にFASのチーム構成は日系投資銀行と同様に人数が多くなりがちですので、ジュニア一人当たりの業務の負担量は比較的調整されがちです。チームで毎週行う案件会議やアサイン会議で、プロジェクトごとのアサインメントの調整を行いますので、アサインの希望を通す、もしくは関与案件の数を相談することができます。FASではM&A以外にも会計関係のプロジェクトもありますので、ジュニアやVPの段階ではアドバイザリー業務以外のプロジェクトにアサインされることもありますので注意が必要です。

外資系のように少数精鋭でチーム編成を行いディールを年間数件行うことはFASではあまりなく、海外オフィスと連携してエグゼキューションを行うことも中々ないというのもFASのM&Aアドバイザリーチームの特徴です。

まとめ

このようにFASのM&Aアドバイザリーチームでも投資銀行と同様にディールの最中は忙しくなりますが、投資銀行で行うピッチ作成がエグゼキューションの合間に行われることは稀なので、激務度は投資銀行のIBD(M&A)チームほどではないでしょう。ただし求められるスキルセットは投資銀行のM&Aチームとそこまで遜色はないです。具体的には、財務分析やDCF,類似上場会社比較法、類似取引比較法などの会計やファイナンスに関するスキルがポイントになります。

なお、ハードスキルを鍛えることに加えて、M&Aアドバイザリー業務の全体像を早めに把握することで激務になりすぎることを避けることができるでしょう。将来的に投資銀行やプライベートエクイティファンドを見据えた転職を行う場合は、FASに在籍しているときにバリュエーションや財務モデリング、英語やドキュメント作成のスキル等を磨く必要があるでしょう。

そのため、IBDほどの激務ではないですが、空いた時間でスキルアップや将来のキャリアを見据えてアサインされるプロジェクトを考慮していく必要があります。

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今回は、FASのM&Aアドバイザリーが激務と言われる(もしくは激務でない理由)は何か、激務になってしまっている人はどのようなスキルが足りないのかについてお伝えしました。
FASや投資銀行へのキャリアについてお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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