「ハゲタカ」と呼ばれるPEファンドの手法(手口)とここ20年での変化

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ハゲタカと呼ばれるファンドが日本で初めて存在感を出したのは、1990年代後半から2000年代初めです。NHKのドラマで『ハゲタカ』が放送された際には金融関係者のみならず、一般の人々の間での知名度を高めたものでした。
ハゲタカというと一般的にイメージされるのはアクティビストファンド、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ・ファンド等、企業に対してマジョリティを持ち、買収・支配獲得を狙う金融投資家でしょう。

【目次】

  1. 「ハゲタカファンド」の定義
  2. ハゲタカ投資の事例:ディストレスト投資
  3. ハゲタカファンドはどのように利益を得るのか?
  4. ハゲタカファンドの投資
  5. 日本のハゲタカファンドの黎明期
  6. 外資系のファンドによる過去の日本企業に対する投資
  7. ハゲタカイメージの払しょく
  8. 最近の潮流
  9. 日本企業のノンコアを買収するディストレストファンド
  10. アクティビストファンドの台頭

「ハゲタカファンド」の定義

ハゲタカファンドとは、デフォルトに陥った、あるいは陥ろうとしているハイ・イールド債や、倒産した、あるいは倒産寸前の株式等のディストレスト投資の証券を探して購入する投資ファンドです。その目的は割安な資産を拾い上げ、ハイリスクだがハイリターンの可能性のある賭けをすることで儲けるというシンプルな仕組みです。
プライベート・エクイティ・ファンドもハゲタカと揶揄されることがありますが、割安な資産を買収するという点では変わりはないものの、ディストレスト以外にも普通の企業を買収します。

主なポイントとして、ハゲタカファンドは、市場で価格が著しく下落した資産に投資することでファンダメンタルズの価値よりも不合理に売られすぎた資産、または業績が悪化しているけれども将来的に好転が予測される資産を特定するのが仕事です。ハゲタカファンドは、ディストレスト・デットやハイ・イールド債に極端な賭けをし、契約上の支払いを得るために法的手段も駆使して運用するファンドでもあります。
この戦略を達成するために、ポートフォリオ・マネージャーは、高いデフォルトリスクのために潜在的な収益率が高く、深く割り引かれた投資先(Deep discount)を探します。一般的には、固定金利や変動金利を支払うハイ・イールド債券やローン等の債券に重点が置かれます。多くの場合、投資対象は困窮した国の国債であり、未払い債務の解決にはさらに大きなロビイストの関与が必要となります。リスクが高い反面、大きな見返りが期待できる投資になります。

ハゲタカファンドとは、ヘッジファンド、プライベート・エクイティ・ファンド、ディストレストデットファンド等のことであり、ディストレスト証券と呼ばれる債務不履行が懸念される債券に投資します。ファンドの投資家は、流通市場において割引価格で債券を購入し、その後様々な方法で購入価格よりも大きな金額で債券を売り、利益を得ています。債務者には、企業、国、個人等が含まれハゲタカファンドは、政府債務者である政府に対して差押えと回収の訴訟を起こし、通常は強制売却で差押えを実現する前に政府と和解することで成功を収めています。

ハゲタカ投資の事例:ディストレスト投資

ヘッジファンドは、比較的短期間で巨額のリターンを生み出すこともあれば、同じように短期間で巨額の損失を出すこともあります。このような多様なリターンを生み出す投資対象はどのようなものでしょうか。その一つが、ディストレスト債権への投資です。この種の債務を大まかに定義すると、破産を申請した、あるいは近い将来に破産を申請する可能性が非常に高い企業の債務です。
なぜヘッジファンドが、あるいは他の投資家が、このようなデフォルトリスクの高い債券に投資しようとするのか、不思議に思うかもしれませんが、答えは簡単で「リスクが高ければ高いほど、潜在的なリターンが高くなる」ためです。

主なポイントは、ディストレスト債権に投資するヘッジファンドが、破産を申請した企業や近い将来に破産する可能性のある企業の債券を購入することです。ヘッジファンドは、倒産した企業が再生可能な企業として見事に復活することを期待して、これらの債券を額面よりかなり割安な価格で購入・買収します。
倒産した企業が再生すれば、その債券の価値は上がり、ヘッジファンドは大きな利益を得ることが可能です。不良債権を保有することはリスクが高いため、ヘッジファンドは不良債権を保有する企業のポジションを比較的小さくとることでリスクを抑えることができます。
例えば、ある企業のノンコア部門でEBITDAがマイナスでも、将来的に企業価値が上昇しそうなアセットに投資すれば、当たった時のリターンは非常に大きいものとなります。

ハゲタカファンドはどのように利益を得るのか?

ハゲタカファンドは、極めてリスクの高い債権を大幅なディスカウント価格で購入し、法的手段を講じて債権を回収することでリターンを得ます。
政府、企業、個人が借金を返せなくなると、最終的には債務不履行に陥り、債権は無価値となります。無価値な債権は、流通市場で割安で購入でき、このような債権を購入するヘッジファンドが、ハゲタカファンドと呼ばれます。バルクセールで購入した債権を所有し、その後ファンドは元の債務者に対して法的手段を講じます。つまりその債務を負っている国、企業、個人を訴え債権を回収するのです。具体的な例でいえば、ハゲタカファンドが1000万ドルの負債をたった100万ドルで買収し、1000万ドル全額を返済するように訴えた場合、ファンドは1000%の利益を得ることができるのです。

例:アルゼンチンの債務危機
15年にわたる交渉の末、2016年2月、アルゼンチンは同国の債務に投資していたハゲタカファンド4社への返済に合意しました。関与した代表的なヘッジファンドには、エリオット・マネジメントのNMLキャピタル部門やアウレリウス・キャピタル・マネジメント等が含まれます。債券保有者への債務に関する最終的な支払いは65億ドルで交渉され、ファンドは多額の利益を得ました。

ハゲタカファンドの投資

上記は企業ではなく債権を投資対象とするハゲタカに関する説明でしたが、皆さんがイメージするハゲタカは投資ファンドの一種で、特に財務上のパフォーマンスが芳しくない企業や経営難の企業を買収し儲ける機会を狙っているファンドのことです。
ハゲタカとはアグレッシブ、強欲なキャピタリストを意味するスラングです。そのため、その性質上、その名の由来であるハゲタカのように、獲物をしとめる絶好の機会を待ち、できるだけ安い価格で投資対象の資産を買いたたき、利益を得るような行動を取ります。

このような投資方針や行動から、ハゲタカファンドは買収した企業を食い物にしていると見なされその攻撃的な行動がしばしば批判されてきました。
彼らは、財務的に困難な状況にある企業を本当に安い価格で探し出し、投資実行前にまずは投資対象になる企業の経営状態を見ます。そして利益率やキャッシュフローの改善のために、従業員の削減を考えるかもしれません。

日本のハゲタカファンドの黎明期

日本におけるハゲタカファンドの黎明期は1990年代後半から2000年代前半にさかのぼります。この時は、スティールパートナーズやサーベラスといった(今は日本市場から撤退しているが)存在感のあるファンドが紙面をにぎわせたものでした。具体的な例ではブルドックソース、ユシロ化学等(いずれもスティールパートナーズ)、あおぞら銀行(8304)、国際興業、西武ホールディングス(9024)、東芝(6502)等への投資を行っていたサーベラスは有名です。リップルウッド等も米系のファンドとして有名でしょう。

外資系のファンドによる過去の日本企業に対する投資

東京|2003年 1月9日–最近また別の国内銀行が海外投資家に買収されるかもしれないという憶測が流れ、日本経済の窮状につけこむいわゆるハゲタカファンドへの恐怖が高まっていました。これはアメリカのサーベラスによるあおぞら銀行の買収提案の時の模様です。

当時、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)がニューヨークの投資グループ「サーベラス・パートナーズ」によって買収されるのではと懸念がありました。
しかし、あおぞら銀行の株主は、1998年の日本債券信用銀行の破綻に伴い一時国有化され、2000年に民営化された銀行で、海外の投資家に支配されるよりは、日本の株主が所有することを望むと明言していたのです。当時の日本のインターネット系企業で、投資家であるソフトバンク株式会社は、49%の株式を保有し、あおぞら銀行の単独最大株主でした。他の2大株主は保険会社の東京海上火災保険とリース会社のオリックスで、それぞれ約15%の株式を保有していました。
ソフトバンクが筆頭株主となったのは、あおぞら銀行からの融資で新興企業に資金を提供するためでした。政府から好条件で株を買っていたため、一部の人から企業優遇だと激しい非難を浴びたこともありましたが、2000年代のドットコムバブル崩壊後、多くのインターネット関連企業がそうであったように、ソフトバンクもその後、業績が悪化していました。そのため、ソフトバンクは株式を売却し、あおぞらから撤退することを望んでいるのではないかという憶測が飛び交ったのです。

しかし、財務省や金融庁の政府関係者は、あおぞら銀行が日本人経営者の手に残ることを望んでいると示唆していましたが、サーベラスはすでにあおぞら銀行の11%以上の株式を保有しており、20%以上の株式を保有するためには政府の承認が必要、というところまできていました。サーベラスはソフトバンクの株式を少なくとも30%取得し、あおぞら銀行への出資比率を41%以上に引き上げたい意向を明らかにしていましたが、それはなかなか困難でした。
米国を拠点とする投資グループ「リップルウッド」が新生銀行(旧日本長期信用銀行)の株式の過半数を取得したことを皮切りに日本の銀行を外資系のハゲタカファンドが投資、支配する波は1999年に始まりました。リップルウッドは著名な投資ファンドであり、サーベラスと同様、経営不振の企業を見つけ出し、買収し、その後、他の企業に売却して利益を得ることでウォール街では有名な投資ファンドでした。

ハゲタカイメージの払しょく

このように今から20年ほど前の2000年代前半はファンドと言えば世間的にはあくどい資本主義の権化というイメージが強かったです。

しかしながら最近の日本、および日本市場に根を張っている外資系のプライベート・エクイティ・ファンドは、有望で収益性の高い企業に狙いを定め積極的に買収を行っています。プライベート・エクイティ・ファンドといえば経営難に陥った企業を買収し、リストラを行い、利益を得るというイメージがあります。一方でそのようなネガティブな「ハゲタカ」のイメージを払拭し、成長のための「パートナー」になろうとする新しいタイプのファンドが登場していることも事実です。

具体的には、投資先企業の事業拡大を加速させるための資金調達や助言を必要とする中堅・中小企業に焦点を当てたファンドがあります。日本には大小さまざまなプライベート・エクイティ・ファンドがありますが、スモールからミッドキャップの投資を行うファンドはそれらに該当するでしょう。
プライベート・エクイティ・ファンドと提携する金融機関も出てきています。例えば、静岡銀行は、東京海上ホールディングスのプライベート・エクイティ部門である東京海上キャピタル(現在のT capital)に行員を派遣し、投資のノウハウを吸収していることが挙げられます。また、地方銀行の中には、プライベート・エクイティ・ファンドの株式を購入し、その収益性の高い投資に便乗しようとするところもあります。現在の超低金利の環境において銀行は自前で投資するのは難しく、このような魅力的な投資機会はなかなか無いので銀行側にとっても好都合です。

しかしながら、上記のようなプライベート・エクイティ・ファンドの実績やノウハウが評価される一方で、一部の地方ではハゲタカの汚名はなかなか払拭されないことも事実です。
あるプライベート・エクイティ・ファンドの幹部は、ある企業に投資したところ、その企業のCEOから買収の事実を伏せてほしいと言われたことがあるそうです。
そのCEOは、「プライベート・エクイティ・ファンドと関わることで、地元のビジネス・コミュニティにおける自社の評判が落ちることを懸念」していたというのです。アメリカ等の金融先進国から見れば、甚だおかしいことですが、少し前の日本ではこのようなことが日常茶飯事でした。

このようなファンドに紐づく悪しきイメージの問題は、成長意欲のある企業がバイアウト・ファンドと提携することを躊躇させるものではないでしょう。むしろ日本の多くの中小企業や大企業のノンコア部門は急速な高齢化、シナジー等多くの構造的な問題によって停滞しているので、ハゲタカ、もといバイアウト・ファンドは、そのような状況を打破するチャンスともいえます。

最近の潮流

環境・社会問題に対応するためのサステナビリティプログラムやグローバル化がもたらす課題に対応するためのガバナンスシステムの構築、デジタル技術を活用した改革を進める中で投資家と市場の双方から変革の要求が高まっています。また、追加投資が困難な大企業のノンコア事業の活性化や、後継者がいない場合の事業承継問題にも、プライベート・エクイティは有効に適用されます。このような状況下、改革の迅速化と深化により企業価値を創造するプライベート・エクイティの日本での存在感が一層高まるのは当然のことと言えます。このような時代背景から以前のようにピュアな金融投資としてファイナンシャルにリターンを上げるために行うハゲタカ投資というよりも、より価値を想像するような、双方にとってクリエイティブな投資が求められていることが分かります。

日本企業のノンコアを買収するディストレストファンド

リクシルのイタリア子会社Permaを買収したのは、アメリカのアトラスと呼ばれる投資会社です。(https://www.atlasholdingsllc.com/investment-strategy/
このファンドはディストレストの性質のある投資を行うことで有名で、他にもセントラル硝子の欧米事業も買収しており、意外かもしれませんが日本企業とのかかわりが深いファンドです。

他のハゲタカの要素が強いファンドとしては事業再生やスペシャルシチュエーション投資を行う、Mutaresがあります。同社は東芝の欧州の事業の一部を買収したり、パナソニックの欧州から、Alan Dick Communications Limited (”ADComms”) の買収を成功裏に完了させたりしています。

アクティビストファンドの台頭

日本企業のノンコアの売却や、役員の選任を見直すように株主提案を行うファンドとしてアクティビストファンドがあります。こちらはリストラや経営改善を促すだけでなく、資本市場を代表して建設的な対話を試みるファンドが多く、必ずしもハゲタカではありませんが、一方で彼らの目的は投資先の会社の株価の上昇による値上がりを狙っている点には変わりないので、より短期的な視点で投資をしているといえます。その意味ではプライベート・エクイティよりもハゲタカに近いでしょう。

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>PEファンド・投資に関する記事

PEファンドのタイトル毎の年収レンジ【1億円を稼ぐ人の共通点・私生活とは?】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/pefund_salary_range

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このように、ハゲタカと言っても2000年代とはだいぶ様子が変わってきており、日本も米国の状況に少しずつ近づき洗練されてきていると捉えることもできるでしょう。

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