【STP分析のフレームワークと具体例】戦略策定に向けた情報整理を可能とする考え方

コンサルは環境分析や結論の構築に向けた情報整理の目的でさまざまなフレームワークを活用します。今回紹介するSTP分析はその中でも基本的なフレームワークの1つで、コンサルファーム入社後はもちろん、ケース面接の段階で使えるようにしておくと、選考を優位に進められるはずです。

STP分析とは環境分析で得た情報を整理して、戦略策定において重要な自社の強みもしくは差別化要因を洗い出すための手法。マーケティングや経営戦略の領域で有効なフレームワークです。

今回はSTP分析の基本を、導入事例とともに紹介していきます。

【目次】

  1. STP分析の基本
  2. STP分析のメリット
  3. STP分析の注意点
  4. STP分析の活用事例
  5. STP分析を使いこなして戦略の方向性を定めよう

STP分析の基本

STP分析は、マーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラーが提唱したフレームワーク。自社を取り巻く状況をもとに、S(Segmentation)→T(Targeting)→P(Positioning)の順に分析することで、今後のターゲットの絞り込みやターゲットを見据えたうえでの差別化要因を洗い出すためのものです。

STPそれぞれの要素は具体的に次の通りです。

  • S(Segmentation):自社にとっての市場を分類する
  • T(Targeting):自社が今後狙うターゲットを絞り込む
  • P(Positioning):ターゲットを踏まえた自社の立ち位置を把握する

分析は上記の3つのステップに沿って進められます。

環境分析と戦略策定をつなぐフレームワーク

STP分析は、PEST分析などのフレームワークを通じて環境分析を一通り行ったのちに、その情報をSTP分析の最初のステップであるSegmentationに活用していきます。

またSTP分析で整理された情報は、具体的な戦略策定に活用していきます。そのため、マーケティングの場合は4P分析、経営戦略の策定の場合はSWOT分析など、戦略策定に向けたフレームワークと組み合わせるケースもあります。

ここからは、S・T・P3つの軸について、もう少し詳しく解説していきます。

Segmentation(セグメンテーション)

STP分析でまず進めるのはセグメンテーション。市場全体を特定の要素でグループ分けすることを意味します。グループ分けをする際には、この後に行うターゲティングがスムーズに進むよう工夫することが大切です。

独自の切り分け方をある程度確立している企業も多いですが、もし切り分け方に迷う場合は、次の4つの軸を活用することをおすすめします。

人口統計的変数:
年齢・性別・学歴・職歴・家族構成など、人の基本属性です。

地理的変数:
国・市町村・気候・文化など地理的要因に絡む要素。日本にいると意識しにくいですが宗教も一般的に地理的変数と見なします。

心理的変数:
価値観や性格・ライフスタイル・購入動機など。必要に応じてアンケートやインタビューなどによる情報収集を行います。

行動変数:
買い物の頻度・タイミング・商品の用途など、個人の行動に関するデータです。

1つの軸だけを活用するとは限らず、例えば年齢(人口統計的)×地域(地理的)のように2つの軸からセグメント分けすることもできます。

Targeting(ターゲティング)

切り分けたセグメントから、自社の強みが発揮できると期待されるターゲットを選定します。なお、汎用性の高い清涼飲料水などのように、検討した結果幅広いセグメントをターゲットにするという戦略もあるため、必ずしも「絞り込む」ことを前提とする必要はありません。

おおむね次の3つのターゲティング手法があり、下に行くほど、狭いセグメントを狙うことになります。

無差別型:セグメント感の違いを考えず、市場に1つの商品を投入
差別型:複数のセグメントの範囲を定めて商品を投入
集中型:1つのセグメントに絞って商品を投入

Positioning(ポジショニング)

自社の強みや弱み、もしくはその他の特性を競合他社と比較しながら、ターゲットのセグメントを軸とした際の自社の立ち位置を明確にします。

マーケティングや経営戦略に活かすのが主目的であることから、必然的に他社との差別化や優位性が獲得できるよう、工夫してポジショニングを定めていきます。

ポジショニングのマッピングのイメージ

強み・弱みの他、企業の規模などもポジションを定めるためにはしばしば用いられます。また上図のようにその業界特有の軸を使ってポジショニングを定めることも可能です。

STP分析のメリット

STP分析は、環境分析などによって得た情報を土台に戦略策定を進めるうえで有効です。また自社のポジションを整理することで、他社と差別化できるため、不用意に競合を激化させずに済みます。

ここからは、STP分析のメリットを3点紹介します。

市場環境を、戦略策定に活用する形で整理できる

市場環境が複雑な場合などは、環境分析だけではその後の戦略策定をするのが困難なケースが多いものです。戦略を策定するうえでは、STP分析の要素である「戦略のターゲットと自社の差別化要因・強みを整理しておくこと」が有効ですが、環境分析ではこれらの視点での情報整理は一般的に行わないためです。

STP分析を取り入れることで、環境分析で得た情報から、戦略策定に必要な情報を整理できて、スムーズに戦略策定に移ることができます。

マーケティングや経営戦略の方向性が定まる

コンサルに案件が寄せられる段階で、マーケティングや今後の経営の方向性を決めたいと考えているものの、その策定の重要要素となるターゲットや自社の特性の整理が済んでいないケースは少なくありません。

そのような状況で戦略を無理に策定しても、実効性のある戦略とならない、もしくは企業のビジネスの方向性が企業にとって望ましいものにはならないリスクがあります。

STP分析により、これら戦略策定に重要な要素が定まります。何のために戦略を立てようとしているのか、どのターゲットに対して、どのような強みや特性を活用しようとしているのか、といった戦略の方向性を定めることができるのです。

他社との無用な競合を避けられる

STP分析は、その使用過程でポジションを明確にします。競合との立ち位置を整理するということは、必然的に競合との差別化を追求することになります。ビジネスにおいて他社と競合することは、リスクもコストもかかる行動であり、不要であれば避けるに越したことはありません。

STP分析を取り入れれば、他社との違いを明確にできるため、無用な競合を避けた戦略が立てられるのです。

STP分析の注意点

STP分析はシンプルなフレームワークで応用しやすいものですが、有効な戦略を策定するためにはいくつか注意点があります。ここからはSTP分析の注意点を3つ紹介します。

最初はS→T→Pの順に一通り行った後、適宜見返す

STP分析は基本的には特定のアルファベットの順に整理することで、うまく自社のターゲットと差別化ポイントを整理できます。まずはS→T→Pの順番で進めるのが基本です。

しかし、一通り行う中で、より戦略策定に有効なセグメンテーションやターゲティングの方法が見えてくることもあります。中途半端な分析で終えることなく、全体を見渡しながら必要に応じてステップバックして分析し、自社にとって有効な情報整理を行いましょう。

客観的な内容になるよう意識する

特にターゲティングやポジショニングは、自社の方向性を定めるフェーズであるため、どうしても分析者の主観が入ってしまいます。ある程度はやむを得ないのですが、客観的に見てターゲットやポジションが合理的であることを確認しながら進めましょう。

統計値などのハードデータや調査に基づく情報を活用して整理を進めれば、より客観性のある分析が可能です。

市場・セグメントの規模や成長率を考慮する

STP分析は市場内部のセグメンテーションから分析が始まるため、そもそも市場の規模・成長性は、意識しなければ考慮できません。しかしこれらの情報は、市場で優位に立つ必要があるのか判断するのに重要なため、必ず考慮しましょう。

またセグメントについても、切り分け方によってセグメントごとの規模や成長率には差が出ます。自社がターゲットにしようとしているセグメントがたとえ自社にとって強みを発揮しやすい場所だったとしても、セグメント内の規模自体が衰退傾向にある場合は、必ずしもそこに注力するのが有効とは限りません。

このように市場やセグメントの規模・成長率に関しては、常に考慮して、将来性を図ったうえでターゲットを絞っていくことが大切です。

STP分析の活用事例

最後にアパレル大手のユニクロを例に、STP分析を行ってみます。

セグメンテーション

あまり地域を限定せず全国展開し、幅広い年齢層に向けて服を販売しているユニクロは、先に紹介したところの「行動変数」でセグメント分けするとわかりやすいのではないでしょうか。

例えば、横軸をトレンドに対する敏感さ、縦軸に価格を取ると、次のような4象限に切り分けられます。

ユニクロを分析する際のセグメンテーションのイメージ

ターゲティング

先ほど切り分けた4象限のうち、ユニクロについてはベーシックで価格の安いゾーンをターゲットにしていることがわかります。トレンドを追求せず、また求めやすい価格にすることで、ユーザーに継続的に購入してもらう店舗を目指していると考えられます。

ポジショニング

ターゲティングを踏まえたユニクロの差別化要因は、まず老若男女問わず普遍的に受け入れられる、ベーシックな商品を継続的に供給できるノウハウがあること。誰にでも好まれるデザインを用意し、安心・高品質な服を継続的に生産できるのは、ユニクロの重要な強みです。

この安定した商品供給と安価な価格を下支えしているのが、企画から製造・販売までの一貫対応です。全国に広がる店舗網に、高品質な商品を安定供給する製造ラインを構築することに成功しています。

STP分析を使いこなして戦略の方向性を定めよう

STP分析は、環境分析によって得た情報から、戦略策定に進むためのフレームワークです。市場環境の中から、自社のターゲットや差別化要素のヒントを見つけて、実効性のある戦略を構築していきましょう。

実際のコンサルプロジェクトではもちろんのこと、選考におけるケース面接などでも活用できる基本的なフレームワークのため、この記事を参考に、しっかりとおさえておくことをおすすめします。

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>選考対策・戦略の立て方に関する記事

【ケース面接対策】代表的な4パターンと例題・解答まで【戦略コンサル転職希望者の方向け】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/casefour_pattern

マーケティング戦略の立て方(プロセス)とは【有効な戦略を立てるための4つのステップと具体的な手法】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/howtomake_marketingstrategy

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今回は、STP分析の基本について導入事例とともに紹介しました。キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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