ITアーキテクトとシステムエンジニア(SE)の違い【役割~スキル~仕事内容】

本記事ではITアーキテクトとシステムエンジニア(以下、SE)の役割や具体的な仕事内容、求められるスキル・KPIの違いについて触れていきます。

イメージしやすいように、以下のような架空のプロジェクトを前提とします。

■プロジェクト例
・とある会社の顧客管理システムを新規開発するプロジェクト。
・既存の社内システムと接続するために、社内システムとの連携方式などを決める必要がある。
・今回新規構築する顧客管理システムでは、新しい社外システムとの連携が必要となるため、セキュリティ観点は特に注意したうえで連携方式を検討する必要がある。

【目次】

  1. プロジェクト内での役割の違い
  2. 仕事で求められるスキル・KPIの違いと共通点
  3. 実際の仕事内容での違い
  4. まとめ

ITアーキテクトとSEの「プロジェクト内での役割の違い」

ここではITアーキテクトとSEの役割の違いを具体例を挙げて説明します。

ITアーキテクトの役割:ビジネス要求を満たすシステム全体像を「実現すること」

SEの場合、アプリケーションまたはシステムインフラ(ネットワークやハードウェア、セキュリティなどのインフラストラクチャー)といった担当領域を最適化することが求められます。システム開発プロジェクトにおける業務(ビジネス)・システムの両面のスコープのうち、システム面の要求事項を満たすことに注力する役割となります。
一方でITアーキテクトは、システム面の要求事項の実現はもちろんのこと、ビジネス面での要求事項を実現することも役割に含められます。
もちろん直接的にビジネス要求事項を実現することはできない(業務フローを抜本的に変える、など)ことが多いですが、ビジネス要求に十分対応できるシステムアーキテクチャを実現することによって、間接的にビジネス要求事項を実現することが求められます。

まとめると、SEとITアーキテクトの役割は以下のように言えます。

【SE】主にシステム要求事項を満たすことが役割。担当領域ごとの個別最適化を行い、システム要求事項を実現することが求められる。

【ITアーキテクト】主にシステム要求事項を満たすことが役割だが、ビジネス要求事項を満たすようなシステム全体構造を作成する役割もある。システムの全体最適化を行い、システム要求事項を実現することが求められる。

②ITアーキテクトの役割:ビジネス要求を満たすシステム全体像を「描くこと」

ITアーキテクトの仕事内容は、ビジネス要求事項とシステム要求事項を全て具体化することから始まります。
ビジネス要求事項を提示してくる部署やクライアントへヒアリングを行うこともあります。具体的にはビジネス要求事項が出てきた際に、

①システム上で実現可能かどうかアドバイス
②ビジネス要求事項に答えられるようなシステム要求事項を提案
③より高度なシステム要求事項を実現できるようなビジネス要求事項の代替案を提案

といった活動を行います。

上記のプロジェクト例では新規開発する顧客管理システムの全体図に留まらず、他の社内・社外システムとの連携も踏まえたシステム全体像を描くことがITアーキテクトに求められる役割になります。
アプリケーション領域で何か課題が発生し、今のままのシステムインフラだと課題を解消できない場合は、課題を解決できるようにシステムインフラごと検討し直す役割を担当します。

まとめると、ITアーキテクトの役割は「ビジネス側とシステム側とのコミュニケーションハブ」「全体最適化されたシステム構造の構築」の2点と言えるでしょうか。

ITアーキテクトとSEの「仕事で求められるスキル・KPIの違いと共通点」

システムに特化した能力だけでなく、ビジネス要求事項への理解が求められるITアーキテクトと、そうではないSE

ITアーキテクトはビジネス・システム要求事項を具体的なシステムアーキテクチャに反映させるための高度なシステム知見に加え、ビジネス要求事項への一定の理解が必要不可欠になります。一方でSEには高度なシステム知見は要求されるものの、ビジネス要求事項への高い理解は求められません。もちろんアプリケーション領域などの特定領域(業務部門に直接的な影響が多い領域)を担当しているSEにはビジネス要求事項への一定の理解も求められます。

ビジネス要求事項への理解が求められるということで、ビジネス要求事項を提示してくる各業務部門やクライアント、社外ベンダーとの調整を行うためのコミュニケーション能力・調整能力が必要となります。この調整能力はシステム構造を全体最適化する際に、アプリケーション領域とシステムインフラ領域との間で要件の落としどころを決める場合などでも必要となります。

ビジネス要求をシステム要求に落とし込む能力に加え、深いシステムスキルが求められるITアーキテクト

上記のプロジェクト例では、実現したい顧客管理システムの全容やシステム・アプリケーションとしてのあるべき姿についてITアーキテクトは提案することができるだけのスキルが必要となります。具体的には、より効率的に業務フローを実行していくために新たに社外システムと連携してはどうか、フルスクラッチでアプリケーション開発するよりも顧客管理ソリューションを導入した方が費用対効果が○%高いのではないか、といった確かなロジックに基づいた提案を行うことが求められます。
また、システム面ではアプリケーション領域やシステムインフラ領域に跨ってのスキルが必要になります。どちらかの領域のことだけしか分からない、ということなく両方の領域に対して深い知見を持っていることが求められます。

ITアーキテクトのKPIは、構築後の顧客管理システムによってビジネス要求事項を○%満たすことができた、構築後の顧客管理システムで定めていたサービスレベル基準値以内に収めることができた、といったビジネス・システム要求事項の両方に対する達成度が設定されることが多いです。

ITアーキテクトとSEの「実際の仕事内容での違い」

複数の領域をまとめるスキルが求められるITアーキテクトと一つの領域の最適化能力が求められるSE

SEはアプリケーション領域やシステムインフラ領域といった個々の領域に特化した知見が求められますが、ITアーキテクトは個々の領域に対する知見に加え、複数の領域を複合した知見が求められます。

上記のプロジェクト例では、セキュリティ要件について深く検討する立場にあるのはシステムインフラ領域のSEですが、ITアーキテクトは別の観点で同じタスクに取り組むことになります。

基本的に新規接続する社外システムに関して検討するシステムインフラ領域のSEに対し、その社外システムを利用することによるアプリケーション領域への影響(アプリ領域で使う想定だったサービスが使えなくなる、想定していた画面遷移ができなくなる、といった課題など)があるかどうか、といった観点で検討することとなります。

このような取り組みを行うためには、単独の領域だけではない領域横断での複合的な知見が必要となります。

プロジェクトにおけるシステムグランドデザインを作成することがITアーキテクトのタスク

プロジェクト対象となるシステムの全体像を構築することがタスクとなります。
システム全体構成を作成するために、ビジネス側からの要求事項をヒアリング・整理するタスクに加え、システム構築時にはアプリ、接続する社内・社外システム、ハードウェア、ネットワークの最適な組み合わせの調査、検討、動作検証というタスクが発生します。

前者のタスクはプロジェクトマネージャー(PM)やSEと一緒に取り組むことがありますが、リードする立場であるのがITアーキテクトです。後者のタスクではITアーキテクトが具体的な課題・リスク、タスクの洗い出しを行い、各領域のSEと一緒に各自のタスク実施または作業方向性の修正を行っていきます。

そのため、ITアーキテクト単独で何かものづくりを行うことは少なく、他の役割のメンバーと共同で作業を進めていくことが一般的と言えますが、前者と後者のタスクを合わせたアウトプットであるシステム全体像を示した成果物(システム全体図、システムグランドデザインなど)はITアーキテクトが中心となり作成することになります。

まとめ

これまで述べてきたITアーキテクトとSEの違いを要約すると以下のとおりとなります。

・ビジネス観点とシステム観点の両面でプロジェクトの要求事項を満たせるシステム構造を作ることが、ITアーキテクトの役割。場合によってはビジネス要求事項をより良くするための提案も求められる。

・一方で強く求められるスキルはシステム要求事項を満たせること。特に全体最適化されたシステム構造を作ることがITアーキテクトにとっての最重要タスクであるため、アプリケーションやシステムインフラ領域といった複数領域に跨る深い知識や豊富な経験が求められる。

<ITアーキテクトのキャリアに関するコラム>

「ITアーキテクト」と「ITコンサルタント」の違い【年収~スキル・経験~キャリアパスまで】

AWSソリューションアーキテクト資格を取得したエンジニアのキャリアパス【転職事例含む】

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今回の記事では、ITアーキテクトとシステムエンジニア(SE)の違いについてご紹介しました。

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