コンサル・投資銀行・アセマネの”メンバーマネジメント”での違い

コンサル・投資銀行・アセマネいずれの業種でも、中堅(概ね二十代後半〜三十代前半程度)になると、プロジェクト内でアソシエイトクラス以下のチームメンバーを差配しながら、プロジェクトを進めていく立場となることが一般的です。
(アソシエイト、アナリストなど個社により呼び名は異なりますが、当記事では以下、プロジェクトマネジメントの立場にない若手社員のことをアソシエイトと記載します)

ただし、プロジェクトの特性や業種の特性の違いを背景に、メンバーマネジメントの望ましいあり方についても業種によって大きく異なります。

そこで、今回の記事では、プロジェクト推進時のメンバーマネジメントの業種ごとのポイントについてご紹介します。

【目次】

  1. コンサルでは労働生産性が重要であるため、マネジメント能力がダイレクトに評価に影響する
  2. 投資銀行では、限られた時間の中で高品質の提案書を作る「適材適所のメンバーマネジメント」が重要
  3. アセマネの場合、プロジェクトの中でメンバーを育てるという感覚が薄く、マネジメントの目的は「成果物の品質」チェック

コンサルでは労働生産性が重要であるため、マネジメント能力がダイレクトに評価に影響する

今回紹介する業種の中で、マネージャー層に特に高いマネジメント能力を要求される傾向にあるのがコンサル業界でしょうか。

コンサルのマネージャークラスの職務クライテリアの中にも、アソシエイトメンバーの適切なマネジメント能力が含まれていることが多く、クライテリアの達成度合いがダイレクトに評価に影響している印象があります。
そもそもアソシエイトのマネジメントが一定のレベルでできると期待されなければ、マネージャークラスにプロモーションできません。適切なマネジメントができないマネージャーは降格などのダメージを負う場合もあります。

メンバーマネジメントの要求水準が高い背景には、コンサルのビジネスモデルが関係しています。ご存じの通り、コンサルではプロジェクトの進行期間に応じてフィーが発生するビジネスが一般的ですが、フィー水準の多くの要素を人件費が占めます。
人件費の決め方はファーム、プロジェクトによって異なるものの、端的にいえばチームメンバーがプロジェクトに割く時間×それぞれのメンバーの単価(時給・日給など)×期間で計算されるのが一般的です。ここでメンバーの単価は基本的に職層で決められています。つまり職層ごとに社員の「値段」がついているということになります。

クライアントはプロジェクトメンバーそれぞれにフィーを支払っているのと同等なので、クライアントとしては各メンバーが「値段」相当の働きをしてくれることを期待しています。
マネージャー層は、アソシエイトがフィーに見合う分、有効に付加価値を出すようにマネジメントしていく必要があります。アソシエイトの能力が適切に活きる仕事を振り、もしクオリティが低ければ指導をしなければなりません。

また、アソシエイトの時間管理にも留意する必要があります。上記のようにアソシエイト一人当たりでクライアントから回収できるフィーは決まっています。
一方で残業代は発生するので、アソシエイトをいたずらに長時間働かせるわけにはいきません。アソシエイトの残業時間が嵩むと、回収できるフィーに対して人件費が高くなるため、プロジェクトの収益性が落ちてしまうためです。

これは固定残業代の場合でも、みなし相当時間が過ぎれば残業代が発生するので同様です。コンサルは激務なビジネスの筆頭ですから、かつては残業時間の管理を今ほどは厳密に行っていなかったようですが、時代の流れから近年は残業時間を厳格に管理するファームが増えたので、アソシエイトの労働時間のマネジメントは以前より重要性が高まっています。

このような制約の中で、可能な限りアソシエイトの能力をストレッチして行かなければいけません。一方で、プロジェクトの質を下げることもできませんので、アソシエイトがどうしてもフィー水準にフィットする付加価値を生み出せない場合は、リリースして新たなアソシエイトを探すといった行動も必要になります。

アソシエイトの能力がフィー水準に満たない場合に、指導してストレッチするのか、新たなアソシエイトを探すのかという意思決定はマネージャーにとって重要な判断ポイントになります。能力が足りない、もしくはフィットしないアソシエイトを悪戯に起用することでプロジェクトの質を下げることは避けるべきですが、一方でいたずらにアソシエイトをチェンジすると、自身の指導力が低いと判断され、のちのキャリアパスに影響が出るリスクがあります。

プロジェクトの工数ベースでクライアントからフィーを徴収していることを背景に、最もハイレベルなメンバーマネジメントが要求されるのが、コンサルの特徴です。

投資銀行では、限られた時間の中で高品質の提案書を作る「適材適所のメンバーマネジメント」が重要

投資銀行も普段からプロジェクト単位でのタスクがほとんどであるため、プロジェクトメンバーのマネジメントはマネージャークラスの重要な役割となります。

ご存じの通り、投資銀行の場合はディールをクローズした時に多くのフィーが入ってくるのが一般的なビジネススタイルです。フィーは基本的にディールの難易度とディールによる資金調達規模によって決まるので、メンバーの人件費は考慮されません。

双方の繋がりがないことから、メンバーの労働生産性に対する要求水準はコンサルほどではないという声をよくお聞きします。ただし、投資銀行の場合はディールを獲得するために最大限度までリソースを割くのが一般的です。プロジェクトメンバーの数に対してタスク量が多い状況が常態化します。

マネージャー層は最終的に提案プレゼンを担当することも多いので、自分が提案を行って「勝てる」クオリティの提案内容の作成を目指して、プロジェクトメンバーにタスクを配分する必要があります。

ゆったり取り組んで間に合うことは稀で、限られた時間帯の中で高品質な提案がでるように、メンバーの特性とタスク量を鑑みながら適材適所でタスクを配分する能力が求められます。限られたリソースと膨大なタスク量の下では、アソシエイトに最大限の力を発揮してもらわなければ満足に提案活動ができない状態に陥ってしまいます。従って投資銀行でも、アソシエイトの育成も含めた質の高いメンバーマネジメント能力がマネージャー層に求められます。

また、最近では投資銀行といえど年間の残業時間を遵守するようになってきているので、特定のプロジェクトで必要以上に労働時間を費やしてしまうと、どこかのタイミングで「作業を振りたいのに年間の残業時間が足りない」という事態も発生します。
年間のスケジュールをイメージして、特定メンバーに負担を集中させずに、無駄なくプロジェクトを進めていくことが大切です。また、万が一プロジェクトメンバーが過労で体調を崩したりすると、自身のキャリアに致命的なダメージとなるリスクもあるので、アソシエイトの心身が保ち、ルールを守れるギリギリの範囲で適切にタスクを振って行くことが重要です。

投資銀行は、今回ご紹介する3業種の中では若いタイミングからマネージャーに近い仕事を任される傾向にあります。アソシエイトクラスでも後半になるとディール内容によってメンバーマネジメントを行います。従って若手を早期から育成していく必要があります。アソシエイトの中でもプロモーションが近いメンバーには、積極的に権限を移譲したり、指導してマネジメントスキルをつけてもらうことも重要です。

自身が育成したアソシエイトの質が直接的に評価に繋がることはあまりありませんが、アソシエイトの能力が低ければディールをこなせる量が落ちてしまいます。自身の評価がディールの獲得数や収益高に依存する以上、高品質なアソシエイトを育成し、スムーズにプロジェクトを推進していく能力がマネージャーには求められます。

アセマネの場合、プロジェクトの中でメンバーを育てるという感覚が薄く、マネジメントの目的は「成果物の品質」チェック

アセマネでも働き方をよく見るとプロジェクトのように動いている案件も多々あるのですが、プロジェクトベースで働いているという感覚は現場ではあまり持たれないようです。プロジェクトの枠に当てはまらないチーム横断的な作業や、定常ルーティンのような作業がコンサル・投資銀行と比較すると多いといえるでしょう。

このような労働環境であることから、プロジェクトの中でアソシエイトを育てていくという意識は他の業種と比較すると希薄でしょうか。プロジェクトの中でのメンバーマネジメントというと、作業の配分と進捗管理、最終的な成果物の品質チェックが中心となります。間接的にはアソシエイトの成長につながっているとはいえ、マネジメントの主目的はあくまで質の高い提案内容をまとめることにあります。

また、他の2業種を経験された方からは、比較的アソシエイトの労働量を抑制するカルチャーがあるという声をお聞きします。マネージャーレベルで提案時期を柔軟にコントロールできる場面も多いので、メンバーに無理な負荷がかからないように留意しながら提案タイミングなどをコントロールするなど、時間管理が最も厳格な傾向にあるので、過重労働にならないように特に注意が必要です。

一方で提案内容のクオリティや正確性、特に数値面の正確性については隅々までチェックすることが要求されます。余裕を持ったスケジューリングを行いつつ、資料作成や分析の正確性を高めるようアソシエイトを適切に指導していくことが求められます。

さらに、アセマネにおいてはアソシエイトの能力育成はチーム全体で進めている印象が強いです。従って育成に関する責任は、中堅に当たるマネージャー層より上の役職に求められ、マネージャー層がアソシエイトを育成するという意識は他の業種と比較すると希薄な傾向にあります。

もちろんそれでも資料作成など様々な局面でマネージャー層がメンバーのアソシエイトを指導するので、マネージャークラスがアソシエイトの育成において重要な役割を担っていることには変わりません。

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コンサル・投資銀行・アセマネいずれも二十代後半〜三十代前ごろになると、プロジェクトを推進する一環でアソシエイトのメンバーマネジメントを行う局面が少なからず出てきます。

しかし、一口にメンバーマネジメントと言っても、期待されている役割は業種によって様々です。マネージャー層でこれらの業種に転職することを検討している方は、業種ごとのマネジメントの特性の差を理解して、転職先に合ったメンバーマネジメントを実践することが、転職成功の鍵となります。

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