【対談(前編)】未来の事業づくりを支援するデザインファームbridgeの考える「デザインシンキングの本質」とは

bridge様

今回は、新規事業創出のプロジェクト、アクセラレーションプログラムの実施、また組織のイノベーション能力開発を通じて未来の事業づくりを支援するデザインファーム・株式会社bridgeの代表取締役 大長伸行様、取締役 鈴木郁斗様より、デザインファームを設立した経緯や、デザインシンキングとその他の思考法との違い、デザインシンキングのメリットや落とし穴について、アクシスコンサルティングの伊藤がお聞きしました。この記事は2019年4月時点のものです。

後編「デザインファームbridgeが語る『デザインシンキングが企業を改革させる条件』と『プロジェクト成功事例』」と合わせてお読みください。

https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/bridge2

目次
    1. クライアント自身が課題の「所有感」を持てるコンサルティングを目指し、株式会社bridgeを創業
    2. 方法論を教えるだけではない、当事者意識を引き出すファシリテーションに定評あり
    3. デザインシンキングとは「新たな問いを作っていくこと」
    4. 好奇心と、ユーザーのコンテキストで「課題を捉え直す」ことによりデザインシンキングが成り立つ
    5. デザインシンキングは1度で何かが変わる「魔法の杖」ではない

クライアント自身が課題の「所有感」を持てるコンサルティングを目指し、株式会社bridgeを創業

伊藤
まず初めに、お二人のご経歴と、会社についてご説明いただけますでしょうか。

大長様
私が弊社bridgeを創業したのは2017年1月です。それ以前は2011年からデザイン思考を使ったコンサルティングファームで勤務していました。働き始めた当時は、デザインシンキングが流行る少し前でした。当時の幹部がイリノイ工科大学でメソドロジーを学んできて、日本に持ち込み、私もそこでデザイン思考を学びました。2014年前後からは、海外のデザインファームがコンサルティング会社に買収される波もありました。そういった流れの中で、当時は大手企業のお客様から受託した仕事を7割ほど私のいたコンサル側が進め、2〜3割はお客様とワークショップやアイディエーションを一緒に行うという形でした。

ですが、そのやり方にやや限界を感じ始めたのが2015年頃です。外部のコンサルが固めた企画を「これが結果です!」と持って行っても、クライアントの中では所有感が得られません。新規事業は、リードする人の所有感や情熱が欠かせないなと思った時に、今のままのやり方でデザインシンキングを続けるのは難しいのではないかと感じ、bridgeを創業しました。

bridgeのプロセスとしては、お客様が8割、弊社は2割。私たちがレポートを書いたりもしないですし、リサーチに行って報告することはありません。リサーチするのはお客様です。その代わりに、私たちはお客様のチームメンバーとしてデザインシンキングのプロセス全てに関与します。

しかしプロジェクトに関わった一部の人と外部のコンサルだけでデザインシンキングを謳っても、なかなかワークしないことも多く、結局はどのように人材育成をするか、組織の中で文化をどう育むかといった問題に行き着きます。ですので、人材開発事業と、日本企業の米国進出支援事業を手掛ける鈴木にもジョインしてもらい、今は「イノベーションが生まれる組織づくり」に注力しています。

大長様

株式会社bridge 代表取締役 大長伸行様

鈴木様
私がbridgeに参画したのはちょうど2年前の、大長が会社を立ち上げた当初です。10年前に自分で起業をしており、もともと海外教育や研修事業を軸としていました。 研修事業を扱う中で、ここ6〜7年はシリコンバレーに関連した案件も増え始め、どんどん付き合うお客様の案件レベルが高くなりました。すると、デザインシンキングや、シリコンバレーの起業の方法論などをお客様が知りたがる機会が増えました。

そういったときに、体系化された方法論や、企業のセオリーが自分の中にきちんと確立されていないことに課題を感じていました。自分なりにデザインシンキングの方法論を勉強し、振り返るタイミングで大長と出会い、彼はすごく本質的なことを教えているなという印象を持ちました。一方で、bridgeは海外文脈の仕事があまりなかったので、そこは力になれるということで、ジョインしました。

最終的には、大長同様「人」と「組織」に落ち着いて、最近は「どのようにイノベーティブな人を育て、活かしていける組織をつくれるか?」が大きなテーマです。

鈴木様

株式会社bridge 取締役 鈴木郁斗様

方法論を教えるだけではない、当事者意識を引き出すファシリテーションに定評あり

伊藤
ホームページを拝見すると、ご実績として名だたる企業が並んでいます。クライアントから案件を預かる背景にはどのようなものがあると分析されていますか。

大長様
あまり答えを求めずに、ファシリテーターの役割を期待してくれている会社が多いです。私はそれを、「伴走」と捉え直しています。クライアントが大手企業の場合、リサーチ部門、研究部門、マーケ部門など横串でプロジェクトを始める時に、プロジェクトを牽引する人が必要になります。その時に求められるのは、テーマに対するプロジェクト全体のデザインと、それを進めていくファシリテーションの役割です。

たとえば今携わっている製薬会社の例ですが、同社ではプロジェクトもマーケティング、研究開発、リサーチなどいろいろな部署が関わっています。どうやってマーケティングプランを考えるかという時に、デザインシンキングのプロセスとしては、まずはその患者さんが「どんなふうに病気と付き合っているのか?」ということを知りたい。患者さんに感情移入するために実際に患者さんの所へ出かけていかないといけないのですが、「リードしてくれる人がいない。代理店に頼むのも違う、社内でスキルがあるわけでもない」という悩みや背景がありました。

鈴木様
ただ方法論を教えてもらうだけでは足りないと考えているクライアントも多いですね。「所有感を持つ」というところにお客様は潜在的な課題を持っていることが多く、方法論を勉強するだけでは駄目だということに気づいています。そこを私たちがどうファシリテートしていくかに期待があるのだと思います。

結局、成功するまでやり続ける原動力は、「当事者意識」でしかないです。いかに当事者意識の高い人、そして環境をクライアント内で作るかというところが課題になります。

デザインシンキングとは「新たな問いを作っていくこと」

伊藤
「デザインシンキング」と「ロジカルシンキング」や「ストラテジーシンキング」それぞれの定義や違いがあれば教えていただけますか。

大長様
まず、我々は「機能的な問題解決」と「創造的な問題解決」と切り分けしています。「機能的な問題解決」は、解き方がある程度分かっているような問題解決。つまり効率性や合理性・客観性を重視して、意思決定するための素材をロジカルに積み上げる方法です。ロジカルシンキングとストラテジーシンキングが、これに当たると思います。

一方デザインシンキングの場合は、「創造的な問題解決」になるので、何が答えか、どんなアプローチがいいのか、誰も正しく掴めていないのです。

鈴木様
「答えが決まっている問いを解いていく力」というのは、今までのロジカルシンキングに求められていたことだと思いますが、これから必要なのは、「決まっている答えを解く力よりも、新たな問いを作っていく力」のようなものですよね。

デザインシンキングは、もともとデザイナーの素養をビジネスに応用しようという概念なのです。直感的なものや、アーティストが持っているような右脳的な感性をビジネスに取り入れていこうというのが主な違いだと思います。

伊藤
IBMが1000人ほどデザイナーを採用している時代がありましたね。

大長様
今でも世界中の企業で、デザインシンキングを通した最大の進化を果たしているのはIBMです。最近ですとSAPも同様の取り組みをしていますね。不思議なことに、両社ともIT企業です。「デザインシンキングはBtoBで使えるのか?」「あの2社はなぜ取り入れてるのか?」といった問いをいただくのですが、まだまだ解明されてないところはあります。 ただ、「お客様に共感し、お客様の問題を広く捉え直そう」という活動をしているのだと思います。

デザインシンキングはエンドユーザーに共感し、自社製品やサービスが利用される周辺の活動や前後関係、気持ちも含めて、背景にある状況を理解しようという活動です。IBMやSAPは、自分たちの製品・サービスの周辺で起こっていることを見た結果、自分たちの問題解決の製品だけではなく、もっとテリトリーを広く取り直し、ソリューションを組み立てられるようになったと考えています。

「従来のツールの機能的な価値では差別化できない」「どんどん上流の問題にアクセスしよう」と皆さん言いますが、川上にアクセスするというのは、お客様の問題にある背景、そのテリトリーを捉え直す活動のことを指すのだと思います。

伊藤
なるほど、「テリトリーを取り直す」という考え方は非常に面白いですね。

大長様
世の中的にもチャレンジしている企業は、「どれだけ機能的なところで稼いで、創造的な活動に時間・余裕・お金・権限を使えるか」を考えていると思います。うまく出来ている企業はそういうことを仕組みとして進めていますよね。

鈴木様
分析や最適化など、オペレーション的な仕事は、よく巷でも言われるようにロボット・AIができるようになるので、よりクリエイティブなことが人間に求められているという背景もあると思います。

好奇心とユーザーのコンテキストで「課題を捉え直す」ことによりデザインシンキングが成り立つ

伊藤
基本的な考え方として、デザインシンキングを身につけるためには何をすると良いのか、もしくは普段から意識されていることがあればお聞かせいただけますか。

大長様
1番のポイントは、ユーザー側のコンテキスト・環境に浸って問題やテリトリーを捉え直すことだと個人的には思っています。具体的にはインタビューや観察を通して、「自分たちはこう思っているけど、本当にお客様が実現したいことは何か?」を、類推のように考えることです。

特に大手企業がクライアントの際は、「現場インタビューに行っていただく」ことを徹底的に行います。製薬会社の例であれば、疾患のことをインタビュールームで聞いても、情報としては本来の10分の1程度しか分かりません。患者さんの自宅に行き、その疾患を抱えた人がどんな生活をしているかを見ることで、五感を使ってその人たちを理解できるようになります。その体験をしているのと、していないのとでは、その後のアウトプットが全く違うということは実感値として持っています。

ですが時間とお金が掛かるうえに、何が出るか分からないという意味では、一見「非生産的」な活動でもあるので、「代わりにそれやっておいてよ」と嫌がられてしまうこともあります。しかしそれをクライアントがやらないと、最終的には所有感を持っていただけません。

鈴木様
日頃からデザインシンキングや創造性を身に付けるという意味でいうと、大事なのは、日々の仕事や生活に、できるだけ余白を持っておくことだと思っています。たとえば当たり前のことを疑って問いを立てていくなど、好奇心を持つことが大切です。仕事に追われて毎日残業をして、新しいことを考える暇もなかったら、どうしても視野が狭まり、創造性も何もなくなってしまいます。

「これは、どうしてこうなっているのだろう?」とか「この方が本質的に良いはずなのに、何故そうなってないのだろう?」といったように、生活や仕事の余白を意図的に持つことが必要だと思っています。

デザインシンキングは1度で何かが変わる「魔法の杖」ではない

伊藤
デザインシンキングに対しては「やったからといって成果が出るわけではない」といった否定的な意見も一部聞くことがありますが、そこに関してはどのように捉えていますか。

鈴木様
魔法の杖のように、「使えばイノベーションが生まれる」と誤解されているところはあると思います。もちろん体系化された方法はありますが、それを理解して何かを当てはめてみたらすぐ結果が出るかというと、そうではありません。デザインシンキングを習慣付けて、繰り返し顧客に対してきちんと共感をし、アイディアを出して、プロトタイプを作り、施策と検証を繰り返していく。そういう習慣・文化を企業が持ち、それが当たり前になることによって、価値が生まれていきます。

アイディアが生まれやすい文化をつくるのが、おそらくデザインシンキングの真髄なのではないかと思います。ですから1回のワークショップで学べば何かできるようになるほど簡単なものではないですね。

大長様
ビジネスサイドから考えるか、テクノロジーから考えるか、とよく言われますが、これだけテクノロジーが1年ごとに変化して、ビジネスモデルもどんどん新しいもの出てくる中で、その両方から考えようとすると振り回されます。ですが、「人々にとってそれは意味があるか?」という問いの1点において答えている間は活路が見出せます。人間の欲求は普遍的ですので。

人間から入り「意味があるか?」を考えた後に、ブロックチェーンや、IoTなど技術を使うとどうなるか。それをビジネスとして「このような儲け方ができるのではないか」と描く順番が、最も簡単に課題と解決策に直結できると思います。実際に、「なぜデザインシンキングが必要なのですか?」と聞かれると、「成功するかどうかは別にして、ここから入るのが1番簡単だからです」と伝えています。

また、ビジネスやテクノロジーにどれだけ精通していても、それが人々にとってどういう意味があるのか検証できないと、結果は持続しないのではないですね。

ただ唯一欠点があるとすれば、語弊を恐れず言うと、相手に共感ばかりしていては何も生まれないことです。課題解決には、「自分がこれをやりたい」という強烈な願望を起点にする方法もあります。スタートアップが実践しているリーンスタートアップは、個人が「これに困っているから、実現したい!」という思いから、世界をより良くしたい、と自分のビジョンドリブンで始まります。

一方でデザインシンキングの場合、特に大手企業がクライアントの場合には「この人・このターゲットを理解しよう」と言っても、別に誰もやりたくないことが多いのです。顧客はこうだから、ペルソナはこうだから、ユーザーがこういうことを言っていたからを理由に作ろうとしても、それだけでは気持ちがこもらないところが難しい点です。

※後編「デザインファームbridgeが語る『デザインシンキングが企業を改革させる条件』と『プロジェクト成功事例』」に続きます。

https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/bridge2

bridge 大長様
株式会社bridge
代表取締役
大長伸行 様

2009年よりデザインファームのコンサルタントとしてデザイン思考を活用した商品・サービス開発、イノベーション人材育成プロジェクトをリード。2017年1月株式会社bridgeを創業。多様な業種、組織の200を超えるイノベーションプロジェクトを横断し得た数々の失敗経験を形式知化し、企業内新規事業の創出とイノベーション組織づくりを支援する。特技は、後先考えずに安請け合いすること。 株式会社アイスリーデザイン取締役HCD-Net認定人間中心設計スペシャリスト。
株式会社bridge公式HP:https://www.bridgedesigners.com/

bridge 鈴木様
株式会社bridge
取締役
鈴木郁斗 様

航空宇宙業界のメカニカルエンジニアを経て2009年に米国で起業。以降日米で20以上の新規事業立上に参画した経験とシリコンバレーでの事業開発ノウハウを活かし、イノベーション人材・組織開発を中心に、日本、米国、東南アジア各都市でプロジェクトを支援。昨今はイノベーションと働く人の「Well Being(幸福)」に注目し、イノベーション創発をキャリアデザインの観点から追求し実践中。サーフィンと海釣りをこよなく愛する。

アクシスコンサルティング

アクシスコンサルティング

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